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ヴィオレッタ達を倒し、あらかた敵は片付いたと思われる。

だがやはり、敵主力戦艦なことだけあって、廊下でエンカウントする雑魚も多い。

だが、所詮雑魚は雑魚。時間を取られる間でもなく、すれ違いついでに倒していける。


「しかし......結構奥まで来たな」


大体の地図は、フローリカが送ってくれたデータによって把握してはいる。


「待ち合わせ場所はここら辺のはずだが......」


要塞のど真ん中。

一番大きな部屋、ほぼ全ての通路から繋がっている場所。ここを、アランとの集合場所に指定していたのだ。


「待たせちゃったかな?魔王様」


と、申し訳なさのある笑みを浮かべながら、アランが部屋に入って来た。

良かった。見たところ、どうやら無事のようだ。


「俺も今来た所だ。それより、その感じだとお前も敵と遭遇したようだな」

「『お前も』ということは、お互い様らしいね。俺も君も、人気者みたいだ」

「だな......アラン、休憩はもう終わりのようだ」

「あぁ、分かっている」


部屋の外に気配を感じ、すぐに戦闘態勢へ入る。

俺とアランがいれば無敵だ。とは言えこの場所に、あとどれくらいの敵が残っているのか分からない。まだ、切り札が残っている可能性だってある。気は抜けない。

するといきなり、バゴォンと大きな音を立てて部屋の壁が崩れた。


「ッ!」


それは、破壊されたのだとすぐに分かった。

壊れた壁の向こうには、数人の重装備兵と白衣を着た研究員達。

そして──────────


「銀色の鎧......」


銀騎士(ぎんのきし)。俺がかつて使っていた鎧で、少し前にアランに着させていた物だ。

それが、兵達の後方に見える。


「......」

「あ、あれは!?元勇者のアランと、魔王シルビオ!!?に、逃げましょう!勝てるわけがありません!」

「待ってくれ」


銃をしまい、さっさと逃げようとした人達を、片手で制止させた銀色の鎧。

兵達を押しのけ、こちらに近付いてくる。


「なっ、何を!?」

「ここは任せて貰いたい。そろそろ働かないと、せっかくここにいる意味も無いのでね」


騎士は、腰に付けた剣を鞘から抜き出し、剣先をこちらに突きつける。

かっこいい騎士だ。惚れ惚れしてしまうな。

さて、向こうから一人で来ると言うのだから、こちらも一人に任せたい。こんな所でさらに時間を食うことは避けたいのだ。リーネを一刻も早く救いたいし、アードルフが今何をしているのか分からないしな。


「アラン」

「あぁ、ここは俺に任せてもらおう。シルビオは先に行っていてくれ」


そうさせてもらおう。

全く、俺も良い味方を持ったものだ。

あの主人公、アランが敵であるシルビオと組んで、しかもこは任せろと言うシーンなんて誰が想像出来ただろうか。


「シルビオ」

「......?」

「死ぬなよ」


......あの日と同じだな。

六年前のあの日、あの時と。

俺はリーネを助け出すために、アードルフと対峙した。その際もアランは、俺を先に行かせてくれた。

『リーネは、君に任せる』。それが、あの時アランがくれた言葉だ。


「当たり前だ」


俺は、笑顔を見せた。

あの時、俺は失敗した。大量の犠牲を払ってまで、リーネを助けようとした。

しかし、助けられなかった。

どれだけ償っても、償いきれないほどの罪を背負った。だがそれでも、俺はリーネを手放してしまった。


「今度は違う」


あの時とは違う。

助け出して見せるさ......必ず。

俺は強く歩き出した。


「さて......アードルフを探すとするか」


アードルフがどのフロアにいるのかは、大体分かる。おそらく、そこにリーネもいるのだろう。

アードルフ本人の戦闘力はそこまで高い訳では無いはずだ。俺1人でも十分勝てる見込みはある。

......しかし、ここからが本当の本番。

気は抜けないな。


「インペリアル・オペレーター。目を、覚まさせてあげよう」


──────────


俺は一体、何者なのだろうか。

なぜこんな所にいて、何をしているのだろうか。

そんなこと、俺には分からない。

誰にも、分からない。


「よっ、おはよ」

「......?」

「もう授業終わっちまってるぞ。早く昼飯買いに行かなきゃ、売り切れちまうぜ?」


馴れ馴れしく話しかけてくる男。

重い頭を起こし、姿勢を正す。どうやら、机に突っ伏していたようだ。


「あ、あぁ......」

「何ボーッとしてんだよ。ほら、さっさと行くぞ」


男に手を引かれ、俺はダルい体を無理に動かす。

普通、男にこんな無理矢理連れて行かれることは、嫌だと思うだろう。

ただし、それが知らない男ならだが。

俺は知っている。

この男を。

連れて行かれた先は、人が群がる食堂。

我先にと人が混み合っており、まるで鯉の餌やりのようだ。


「焼きそばパンで良いよな?じゃ、取ってくるから待ってろ」


男は、その鯉達の中へ入って行った。

寝起きで動けない俺の代わりに。俺の焼きそばパンも買ってくると約束して。

そう、俺の昼飯はいつも焼きそばパンだった。

食堂で格闘し、焼きそばパンを得て、それから教室に帰ってゆっくり食べる事が俺の......俺達の日課だ。


「いやぁ......それにしてもお前、久しぶりじゃないか?そんなにガッツリ眠ったのは。授業中寝ることはよくあるけどよ、完全に意識失ってただろ?先生呼んでも起きなかったぞ」

「え......?」


俺達は無事に昼食を手に入れ、教室の席で向かい合って食べる。これが、いつもの俺達のスタイルだ。

そしてどうやら、俺は本気で眠ってしまっていたらしい。

確かに、起こされる以前の記憶が曖昧だ。まるで、ずっと夢を見ていたかのよう。

長い長い、第二の人生のような壮大な夢。現実と区別がつかないほどリアルで、細かい所まで描かれていた。

夢。

しかし、夢というのは見ている時には長く感じるものだ。

夢が醒めてから思い返してみると、感じていたより短い時間だったと思う。そう、それが夢というもの。

現実ではないもの。


「どんな夢見てたんだ?お前、笑ったり泣いたりしてたから、皆ドン引きして起こさなかったんだぜ?もしかしたら現実より表情豊かだったかもな」


はははと笑い、俺をからかう西原(にしばら) 康太郎(こうたろう)

高校生になって最初の友達だ。

西原はスポーツ万能で、勉強は少し苦手だが悪い成績ではない。

そして、とても良い奴。良い奴というのは、具体的に何だ?と聞かれてしまうと少し困るが、とにかく良い奴だ。


「そうだな......どんな夢だったんだろうな」

「いや知らねぇっつーの。お前がさっきまで見てたもんだぞ?それとも、夢も見ずに笑ったり泣いてたりしてたってのか?」


そんなことは無い。

夢は見ていた。それだけは覚えている。

それに、夢というのは必ずしも覚えているわけでは無いらしい。

だから、忘れていてもおかしくは無いのだ。


「忘れるくらい、どうでもいい夢だったって事だろう。最も、どうでも良くない夢というものを、俺は知らないがな」

「ふぅん......ま、何でもいいけどよ。そんなことより、最近面白いゲームが出たらしいぜ。知ってるか?」

「ゲーム?」

「『魔法のソードファンタジー』。略して『魔剣フ』だ」


魔剣フ......全然聞いた事もないゲームだ。

俺と西原は、ゲームが好きだ。毎日のように二人でオンラインゲームをやったり、新しいゲームをチェックしたりして楽しんでいる。

だから、有名なゲームなら俺も知らないはずが無いと思うが。

初めて聞いた名だ。


「ジャンルはノベルゲーム......かな?少しアクションもあるけど、殆どはストーリーがメインのPCゲームだ。お前はFPSとかアクションにしか興味ないから、知らなくても無理はねぇ」


なるほどな。

確かに、俺はノベルゲームには興味ない。

だが、最近少し気になっていた所だ。


「面白いのか?」

「俺はまだやってないけど、ネットでの評価は高いぜ。何せアクション要素もあるから、ノベルゲームが苦手でも十分楽しめるそうだ。それに、ストーリーが驚くほど良いとも」

「なるほど......ま、色々と聞いといて悪いが、俺は買わないけどな」

「なに?」

「金が無いんだ。今週末に、新作FPSが出るだろ?それ買う予定だから、金が足りないし時間も足りない」

「あぁ、それなら仕方ないな。俺もそのゲーム買うし。俺も金の余裕ねぇわ」


とりあえず今は、そのゲームのことを忘れることにした。

また金と時間に余裕があったら、思い出すとしよう。それまでは、忘れていようと思う。


「ところでさ、さっきの授業中......俺どんな夢見てたんだ?」

「知るかよ。俺はお前じゃねぇんだし、知るわけねぇだろうが」

「......だよな。悪い、変なことを聞いた」


どうしてだろう。

夢が、気になる。

泣いたり笑ったり、そんなことをしてしまうようなの夢を見ていた......ようだ。

しかし、どんな夢だったのか少しも思い出すことが出来ない。

興味......ではない。ただ、気になるからという理由だけで、夢を知りたいと思っている訳では無い。

知らなくてはいけない。

なんとなく、そう思うのだ。


「俺は何か、大事なことを忘れていると思うんだ」

「はっ、主人公か何かかよ。どうせ課題か何かだろ?次の授業提出の。ちなみに自分で言っておいてなんだが、今俺も思い出した」


西原は、急に席を立って自分の席へと戻った。

そして、ペンとプリントを持ってくると、その課題に取り掛かった。

その一連の流れは結構面白いものだったが、俺もプリントを忘れていたので笑うことは出来なかった。

俺達は二人して、次の授業の課題に取り掛かった。

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