《ラプス》
「超高濃度魔力兵器。広範囲、かつ桁違いな威力を発揮するミサイル型殲滅兵器。まずはその仕組みから、簡単に説明しよう」
「頼む」
俺達は、フレン以外のほぼ全ての人員で集まっていた。
魔物側から数名、整備士が数人。そして、俺とアランを含めての会議だ。
フレンも呼びたかったのだが......残念だ。
「その前に、アードルフは今何をしている?こちらに攻めてくることは無いのか?」
その事が気になってしまって仕方ない。
敵が弱っているのなら、すぐに詰めてトドメをさすのがよくある考え方だと思うが。
アードルフは、やることが丁寧だ。
罠などの可能性を考えて、慎重に倒そうとしているのか。
アードルフの性格上、追ってこない......そう考えても良いかな。
「無いとは言いきれないが、追ってこないところを見ると、追撃は無いだろう。それに、この船にはステルス機能もある。そう簡単には見つからないはずだ」
優秀な船だな。
元々は、《フォートレスガーデン》の補助として設計された《フォートレスエアクラフト》。
こうしてコソコソと隠れるだけで、手一杯のようだ。
「どちらにせよ。《ラプス》の対策を練らねば、勝つことはできまい」
「それもそうだな」
小型ミサイルなら防ぐことが出来たシールドも、流石に《ラプス》となると防ぎきることは不可能らしい。
何とかして対策しなければ、俺達に明日は無い。
「まず、《ラプス》の爆発は何から生まれるのか知っているか?」
「......いや」
「魔力石だ。それも純正の。魔力で出来た塊に、魔力を注ぎ込む......するとどうなるか?答えは簡単。耐えきれなくなった魔力石は、膨張し、破裂する。だが......普通ならあれほどの威力は出ない」
ならなぜ?
などと問う必要は無い。
分かっている。そんなこと、言われたくもないほど、よく知っている。
「《コードL》。規格外の高濃度な魔力や、純度の高い魔力石はそこから採られている」
「......」
だろうな、それ以外考えられない。
アードルフは、リーネを使って世界を平和にすると言った。
それは、この事だろう。
リーネを利用して作り上げた兵器。その圧倒的なまでの破壊力に、世界は怯えることしか出来ない。
武力による支配。それにより、世界はアードルフの思い通りになる。
結果だけなら、それは平和と言えるかもしれない......だが、アードルフの気まぐれ一つで、すぐに戦争となってしまう可能性もある。
そんなのは、真の平和では無い。
「ミサイルの内部には、大量の魔法石が詰め込まれており、その外側に板を一枚挟んで、液状化させた魔力を積んでいる。それが爆発すると、ミサイルの中はグチャグチャになり、魔力が魔力石と混ざり合うことによって爆発を起こしている。その爆発させるための装置を取り除けられれば一番安全なのだが......現実的じゃない」
「なら、どうする?」
ふぅむ......と、全員で頭を抱えて考え込む。
今度こそお手上げかと思われたその時、言葉を発した者がいた。
「なら、『エイレネ』はどうだろうか」
「......ッ!」
アランだ。
「えいれね......?とは何だ?」
「魔力を打ち消すことの出来る石だ。しかし、あれは嶺風康人が持っている......再び学園に入ることなんて、不可能だ」
「だが、『エイレネ』ならあの爆発を消すことが出来るはずだ」
......確かにそうかもしれない。
魔力さえなくなってしまえば、《ラプス》はただの鉄の塊に過ぎない。
「しかし、『エイレネ』を入手出来たとして、その効果が十分に発揮されるのか怪しいところではある。嶺風康人が持っていたものは、既に欠片でしか無かった」
俺が、戦闘中に『エイレネ』を破壊されてしまったのだ。
それにより、『エイレネ』の能力は半分も出ない。近距離で、ある程度の魔力しか消せなくなってしまったらしい。
「『エイレネ』は諦めるしかない」
「......そうか」
再び頭を抱える。
あのミサイルを何とかしなければ、近づくことすら出来ない。
全滅だ。
「アラン。お前の固有魔法で、何とか出来ないのか?」
「出来れば苦労はしないさ......そもそも俺の能力を過信しているんだ。ただ、他人の能力を真似できるってだけなのに......」
アランの悲しみの言葉に、反応したのはスティーグだった。
「何!?勇者のスキルって、他人のスキルの真似ができるというものだったのか!」
「......そうだが、知らなかったのか」
意外と知られていないんだな。
アランと言えば、結構有名な勇者だった。
その固有魔法による多彩な攻撃方法で、敵を翻弄し、桁違いな魔力による圧倒的な強さを持っていた。
「固有魔法......スキル......」
それに比べて俺の固有魔法は......
「付与魔法......か」
最弱だと言われた魔法。
身体強化魔法と何が違うのか、付けたら二度と外すことの出来ない付与は、一体どんな強みがあるのか。
自身にも使ったこの魔法。
とてもじゃないが、決して強いと言えるものでは無かった。
だが......
「俺の付与魔法なら、爆発を無理やり抑えられるかもしれない」
「なんだと?それは本当か!」
「分からない......だが、俺がミサイルに触れてミサイルそのものを強化すれば、爆発によって混ざり合うことは無いだろう」
付与魔法。
強化魔法よりも数段威力や能力が優れている魔法。
しかし、一度付与されたものは二度と外せないというデメリットがあるため、普通、付与魔法は武器や道具に使われることが多い。
「確かに......ミサイルそのものを破壊できなくさせれば、混ざり合うことは防げるかもしれない」
「だか、危険過ぎる!直接近づくだなんて......」
「いいや。中々有効な方法かもしれない」
反対するアランとは正反対に、賛成のスティーグ。
「あのミサイルは、爆発までの大体の距離を予めコントロールしている。だから、逆に近づけば、爆発前に接近できる可能性がある」
爆発する前に、急接近か......危険なことではあるが、やってみるしかない。
それしか、方法は無さそうだ。
「シルビオ......」
「俺なら構わない。そんなことで死ぬような俺でも無いしな」
アランは不安そうな表情を浮かべた。
アランは、俺のように翼を生やすことが出来ない。機動力や速度で言えば、俺の方が上だ。
アランでは、ミサイルの爆発までに近づけない。
「代わりは出来ないか......」
「あぁ......その気持ちだけで、ありがたい」
例えアランがその役を引き受けられたとしても、俺は譲るつもりは無い。
お前には生きて欲しい。
最後まで他人任せで悪いとは思っている。だが、お前にはどうしても任せたいことがあるのだ。
アラン......お前にしか出来ない事が。
「決まりだな。それでは、この作戦で行く」
アランも納得し、全会一致で作戦は決定した。
まだ必ず成功するとは言いきれないような、運任せの作戦ではあるが、やるしかない。
俺には、時間も無いのだから。
「それにしても......あんな兵器、自分達で作っておいてなんだが、危険すぎる。俺は嫌いだね」
と、スティーグは言った。
それならばなぜ作ったのかと聞きたい所だが、どうせアードルフの命令とかだろう。
「命令か」
「そんな所だ。けど、やっぱり兵器は良くねぇ。あれで殺した分だけ、俺に罪がのしかかってくる」
「なら、なぜそこまでアードルフを支持するのか分からないな。奴はリーネを......お前らは《コードL》の正体を知らないのか?」
「知っているに決まってんだろ。お前が殺した女の子、それをアードルフ王が何とかして保護した。だが、その時には既に命は無かった......」
......は?
「だから、アードルフ王は悲しみを堪えつつも、死んでしまった《コードL》を無駄にはしないと言い、兵器へと形を変えたのだ......残酷な話だ」
「......なるほど、それがアードルフの言葉か」
何とも許し難い作り話だな。
ただでさえ《カタストロフィ》によって恨まれている俺に、追い討ちをかけるようなヘイトだ。
「もちろん。この話は俺達整備士と、王の側近にしか伝えられていない」
「......そうか」
それが、リーネの酷い扱いを許していたりゆう
《コードL》の尊い犠牲によって、アードルフは兵器を作りあげ、国を統一するお考えだとアスケル部隊整備士達は言った。
「話が長くなるので、俺の言い分は言わないが......これだけは言っておく」
「......?」
「《コードL》は生きている」
「......ッ!?」
なんだと?と、全員が目を見開いて驚いた。
嘘だろ?と皆口々に言い、混乱しているようだ。
「別に信じなくても良い。ここまで協力してくれただけでも、感謝する。だが、《コードL》は......リーネは、生きているんだ。だから俺は、助けに行く」
「......」
皆は、しばらく沈黙した後、スティーグが皆を代表して「分かった」と言った。
信じてくれていないことは分かっている。
だが、俺はリーネを助けに行くという
ことを理解して欲しかった。
「感謝する」
そうと決まれば、早速行動開始だ。
俺達は、最後と思われる戦いに備えて、準備を始めた。
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メインルーム。
コードに、魔物達のほとんどを集めた。
全員は入り切らなかったが、一応艦内で放送されているので、声は聞こえるはずだ。
「皆、ここまでよくぞ着いてきてくれた。俺達はこれから、最終決戦だと思われる戦いへ挑む。最後の戦いだ......身を引き締めろ!」
おぉ!!と、歓声が上がる。
やる気は十分。作戦もある。
「それじゃあ行くぞ!目標、アードルフの《フォートレスガーデン》!発進!」
「全速前進!」
船は動き出し、アードルフの元へと向かう。
これで全て終わらせる......そう覚悟して。




