表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/80

トップスリー

「なるほど......」


《M.E.S.I.A.(メシア)》の中でも最強と呼ばれるトップスリー。

その実力は、確かにトップと呼ばれるほどのものではある。

現に俺は、結構な劣勢だった。


「ただの人間のくせに......やるじゃないか」

「見くびってもらっては困る。俺達はトップスリーだ。たかが魔物の生き残りくらい、簡単に殺してやる!」


大口を叩くほどの実力はある。

確かに良い連携だ。だが、やはり詰めが甘い。

奴らの、炎を使うスキルを持つ男。

あのスキル、見たところ炎は自分で生成することができないようだ。

水はそこまで脅威では無く、侍も接近しなければ致命傷にはならない。

ならば......


「悪いが、早々に終わらせてもらう」


俺は、大きく翼を羽ばたかせ、一気に距離を詰める。

狙うは一点。

炎使いのガジェットだけだ。

奴はそこで着火し、その火を使って炎にしている。それさえ壊してしまえば、こちらの勝ちだ。


「うぉりゃあああ!!」


風を巻き起こし、収束させる。

集まった風は、一点に向かって流れて行く。

だが、エリート達はそう甘くはなかった。

突如現れた水の塊が、炎使いを囲むようにして広がった。

そして展開された水により、俺の起こした風は消え去ってしまった。


「......どうやら、一筋縄ではいかないようだな」


遊びはここまでだ。

時間稼ぎだけでも出来ればいいのだが、ここでコイツらをやっても支障はない。

むしろ、後のことを考えれば、こういう邪魔者は排除しておくべきだ。


「来いよ人類共。魔王の力を見せてやる......!」


—————————


両腕に風を纏わせ、回転させる。

そうする事で、まるで腕の周りに鋭い刃が付いているかのような、ドリルのような武器となる。

どちらかと言えば、俺は近接戦闘の方が得意だ。

しかし、今回は空中戦。

敵に近距離型もいるというのもあって、遠距離からの攻撃ばかりしていたが......もうやめだ。

確実に、コイツらを落とす。


「ふんっ!」


一気に距離を詰め、まずは炎使いを殴りに行く......と見せかけて急転換。

標的は水のスキルを使う女だ。


「まず、お前から始末する!」

「ッ!?」


フェイントが効いたようで、自分には来ないとでも思っていたのか、女は驚いたような表情を見せる。

俺は、構わず風を纏った拳を叩き込んだ。


「ふぐッ!?」


間一髪、水での防御が間に合ったようで、感触は柔らかかった。


「がはッ」


防御はしたものの、耐えきれずに吹き飛んで行った。

懇親の一撃だ。耐えられては困る。


「ロイス......!」

「他人より自分の心配でもしたらどうだ?」


女を追いかけようとする、炎使いの男に向かった。

確かにフライトシステムは機動力が高い。しかし、やはり機械には限界がある。

急旋回などの細かい動きはできまい。


「バーン―――」

「遅い!」


フライトシステムに向かって、思っきり殴りかかった。

ガィインと、空に響く音。

だがそれは、フライトシステムに命中した音では無かった。

目の前には二人の男。

炎使いと侍だ。


「ほう......」


炎使いを庇って、俺の拳を刀で弾いたようだ。

その刀の強度と反射神経、そして俺の拳を弾く正確性。

褒めるべき能力だ。


「よく弾けたな。それがお前のスキルってやつか?」

「いや。我はスキルなど持っていない。その代わりにこの『黒志剣流』によって、貴様を地獄に葬りされる」


黒志剣流......ね。

何だかよく分からないが、恐らく剣術の一種だろう。

スキルも無いのにトップスリーの座に居るというのは、中々凄腕の実力者だな。

それか、トップスリーもそこまでレベルが高いものでは無いのか?

まぁ、どちらにせよ脅威ではない。


「なら、これならどうだ?受け止めきって見せろ!」


標的を変更。

まずは鬱陶しい侍から殺ることにした。

俺はその場で急降下。

そして背後へと高速で回り込み、急上昇しながらアッパーを食らわせた。


「くッ!」


ガィン。

と、これもまた弾かれる。

だがここまでは計算通りだ。俺はそのままもう一度殴りかかる。


「ぐッ!」


右手、左手、と爆速で交互に繰り出される拳を、刀で何とか受け流す侍。

大したものだ。

ここまでやるとは思っていなかった。

だが、段々とその腕にも力が入らなくなっていくのが分かる。


「どうしたどうしたァ!その程度かァ?」

「ふん、闘っているのは......我だけでは......無い!」

「後ろだぜ!バーンナ―――」


俺は勢いよく振り向き、炎使いの頭を掴んだ。

まだまだ、だな。

俺が侍だけに集中しているとでも思っていたのか?


「お前はそこで寝てろ」


炎使いの全身に、風を纏わせた。

それは、体を守るものではなく、削るもの。

まるで無数の刃物に、全身を削がれているかのような攻撃に、炎使いは為す術もない。


「ぐあぁああああ!!?」


防護スーツを着ているようだが、どうだろうな。

さすがにこれは、死んでもおかしくはない。

全身を風が切り裂き、炎使いの抵抗していた力が抜けたのを感じた。


「ジーリオォオ!!」


俺が手を離すと、炎使いの男は、重力に従って落ちていった。


「てめぇえ!!」


侍が叫ぶ。

炎使いを俺が掴んでいた際に、一応攻撃はして来ていたようだが、俺の風によって攻撃は通らなかった。


「さぁ次はお前―――」


突然、横方向から何かが飛んできた。

矢だ。まるで水で出来ているかのような、透明な矢。

俺はそれを片手で掴んで、止めた。

すると、矢じりが爆発し、尖った水が飛び散った。

ダメージは無かったものの、少し腹が立つ。


「遠距離からの狙撃......」


小賢しい攻撃だ。

まぁ、それもこれで終わりだ。

一人死んで、連携が取れなくなったお前らも、抵抗はできまい。

俺の、勝ちだ。


「......ッ!?」


また、何かが飛んで来た。

しかし今度は音がする。矢では無い。

ジェットのような轟音、これは......


「ミサイルか!」


目視で確認した。

沢山の小型ミサイルが俺に向かって一直線に飛んでくる。

すかさず風で迎え撃った。

だが―――


「ぐぁっ!何だこの威力は......!」


ミサイルの爆風。

まだ数十メートルも離れているというのに、まるで台風でも起こったかのような爆発。

侍は、ミサイルが見えた瞬間に、全力で逃げて行った。


「こ......これは!」


魔力!?

あのミサイルの爆発から、高濃度の魔力を感じた。

ここまで濃い魔力を、一体どこで......?


「まさか......!」

『そのまさかだよ。シルビオ君』


アードルフ......今更手を出てきたのか。


『やっと完成したミサイルだ、間に合ってよかった。とは言え試作品だけどね。対、魔王用特殊ミサイルさ』

「これは......この魔力は何だ!」

『君もよく知る物を原料として作っているんだよ。ほら』


そう言うとアードルフは、《フォートレスガーデン》の一部を動かした。

アードルフの立っている場所の、すぐ後ろ。

巨大な扉のようなものがある。

アードルフの言葉と共に、その扉が開き、中から現れたものは......


「―――リーネ!」


氷のように張った魔力結晶に、上半身だけを乗り出す形で拘束されている女の子。

目を瞑っており、意識はないようだ。


『《コードL》は素晴らしい武器だ。君に放ったミサイルも、これから抽出される魔力を使っている』

「貴様ァ!!!」


リーネ、そこに居たのか。

アードルフ......貴様だけは、絶対に許さねぇ!!


『発射』


再びミサイルか放たれた。

が、今度は一発だけ。

その代わり、とても大きなミサイルのようで、形も少し歪な形状をしていた。


「なに?」


何か......何かがおかしい。

周りには誰もおらず、いるのは俺だけ。

下を見るも、陸上で戦闘していたはずの敵兵部隊が、どんどん退いて行くのが見える。

残ったのは俺達、魔王軍だけだ。


「......まずい!」


俺は、全力でその場を離れた。


「退け!全員退け!!今すぐに!」


と言っても、陸上も空中も、俺に比べると魔物達の移動速度は遅い。

戦闘中だったことも相まって、いのミサイルから距離を取れるとは思えない。


「くそっ!」


俺は、何とか暴風を吹かせ、俺の逃げる方向と同じ向きに風を起こした。

これで少しでも、魔物達の逃げる距離が稼げれば良いのだが。


「間に合え!!」


ドォォォオオオン。

低くて重い音が聞こえ、背後から凄まじい光が押し寄せてきた。

振り向くとそこには、何も無かった。


「―――!!」


何も無い。

一言で表現するならば、それ以上の言葉は無いだろう。

地面は丸く凹んでおり、雲も同じく切り抜かれ、そこ一体が丸い形に抉られていた。


「何だよ......これ」


巻き込まれた魔物も少しいたようだが、跡形もなく消え去っている。

抉られた地面とギリギリ範囲外だった場所、その狭間に、魔物の腕だけが残っていた。


『《ラプス》。それが、この兵器の名だ。《コードL》にはピッタリだとは思わないかい?』

「何だと......?」

「言ったことあったよね?私は、平和を築くと。《コードL》、彼女の犠牲は無駄にはしない」


平和......か。お前の平和など、真の平和ではない。

リーネ......今度は、必ずお前を助ける。

兵器になんかさせない。

アードルフは、俺が倒す!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ