アードルフ再び
「アランは、上手くやっているだろうか」
アランを派遣してから三日。
こちらには、時々軍がちょっかいをかけてくる程度で、アランの帰りを待つばかりだ。
「あぁ。しかしなぁ、シルビオ。アランを敵側にやる意味はあったのか?スパイなら既にフローリカがやっているだろう?」
「送ったのは、アランでは無い。銀騎士だ」
「......どういう意味だ?」
「正直、中身は誰でもいいんだ。ただ、銀騎士には、アランが一番都合良かっただけのこと。銀騎士という存在が目的だった」
「ふむ......?よく分からんな」
「そのうち分かる」
実はフレンには、あまり計画の詳しい内容を知っていて欲しくない。
なぜなら、必ず反対するからだ。
しかしもう、後には退けない。やるしかないのだ。
「さてと......フローリカが何とか動ければ良いのだがな」
ここからは、ほぼアランに任せっきりだ。
アランが上手いこと《M.A》へと侵入し、フローリカに計画の詳細を伝えることが出来れば、ことは上手く運ぶ。
フローリカには随分と仕事をやらせてしまったな......すまないと思っている。
だが、これで最後だ。
この作戦さえクリア出来れば、計画は大きく進行する。
「マオウサマ!」
と、窓から飛んで入って来たガーゴイル。
鎧を着ている最中の俺に対して、跪いた。
「グィルか。状況は?」
「はい。それが、ソラからキョダイなテツのカタマリがセッキンしております」
「鉄の塊......?アードルフか!」
アードルフが遂に動きだしたようだな。
思っていたよりも早かったな......もし今日のうちに姿を現さなければ、近くの街から攻撃しようと思っていたところだった。
「アランは?」
「アラン=カイバールにカンしては、ウマくいっているようです」
「ならば、すぐに合流ポイントへ向かう。アランと合流後、戦闘準備だ」
アードルフめ、本当に完成させていたとはな。
空から来る巨大な鉄の塊、間違いなく空中要塞だ。
「さぁ......戦争をしようじゃないか。アードルフ=ヴェロニア」
──────────
今時鎧とは......時代遅れも甚だしいな。
黒い鎧を着終えてから、そんなことを思う。
俺とフレンは、準備が出来次第すぐに合流ポイントへと向かった。
魔物達も連れては行くが、後方で待機させている。
全軍突撃にならなければ、それが一番だ。
「今回はあくまで、アードルフとの交渉だ。フレンは俺と共に来い」
「了解」
交渉。
まぁ、奴が俺の意見を受け入れるとは思っていないが、向こうの戦力を知ることが大切だ。
もちろん一番の目的はリーネ。
リーネの位置をしっかりと把握することだ。
「ここら辺のはずだが」
俺達の拠点に一番近い所にあるビル付近。
ここら辺をアランと合流するための場所として、ここを指定したのだ。
しかし、アランの姿が見えない。
フレンの上から辺りを見渡すが、人影すら見つからない。
「ん......?」
遠くの方から、ゆっくりと接近してくる大きな影。
それも、空中に浮いている。
「まさか......もうお出ましか」
空中要塞。
四つの花弁のようなものが、スカートのように下に着いており、そこから見えるジェットエンジンにより飛行している巨大な物体。
東京ドームが空を飛んでいると思えば、一番分かりやすい大きさだろうか。
その形はまるで、スズメバチの巣のように丸みを帯びている。
しかし要塞の上半分には、城のような形をしており、六年前の王城を思い出させる。
「フレン、少し下へ降りてくれ」
いつの間にか、辺り一面に人間の姿あった。
軍の連中だろう。全員が武器を装備しており、俺達にそれを向けている。
「アードルフ王の言った通りだったな。まさか本当に現れるとは」
「シルビオ、ここで貴様を捕らえる!」
俺も随分と有名人になったものだな。
しかし、こんな歓迎の仕方はあまり嬉しいとは言い難いな。
まさか軍だけでなく......
「《M.E.S.I.A.(メシア)》までいるなんて。そんなに俺は人気者なのか?」
「そうかもしれないな」
三機......あいつらは確か、トップスリーとか言ってたか?
学園でも屈指のエリート達で、俺も以前苦戦した相手だ。
「アードルフと話したい」
「それは出来ないな。ここで貴様を死刑にせねばならんのだ」
「構わないよ」
ッ!?この声は!
優しい口調の安らかな声色。
怒りなど知らないとでも言うような、その態度。
「アードルフ......」
《フォートレスガーデン》の城部分から、人影が出て来た。
俺の目は既にドラゴンのものとなっており、常人よりも何倍も倍率を上げることが出来るが、そうでもなくても分かる。
あれは、アードルフ=ヴェロニアその人だ。
「ア、アードルフ王......!し、しかし!」
「私は構わないと言ったんだよ。下がりたまえ」
「はっ!」
アードルフは、街中に設置してあるスピーカーから、マイクを通して喋っている。
なるほど、あくまで《フォートレスガーデン》からは降りないつもりのようだ。
「久しぶりだね、シルビオ。なぜ今更、私を呼んだのかな?」
そんなこと、決まってんだろ。
お前から、リーネを取り返すためだ。
しかし、この声をアードルフへ届ける手段がない。
だから俺は、分かりやすく態度で示した。
「おい。アードルフに、お前を殺すためだと伝えろ」
「あ?何だと?」
「お前らしかアードルフと連絡取れねぇんだ。こちとらマイクなんぞ持ってないんでね」
「......いいだろう。アードルフ王!聞こえますでしょうか?奴は───────」
その言葉を言い切る前に、俺は戦闘態勢へと入った。
翼を広げ、《フォートレスガーデン》へと一気に飛び上がる。
「なっ!?貴様!おい待てッ!!」
軍の連中なんか相手にしてられるか。
いざとなればフレンがカバーしてくれるはずだ。俺は気にせず、アードルフの元へと向かった。
「アァドルフゥゥウ!!!」
左腕を構え、前方のデカブツに向かって力強く押し出すようにした。
すると、風は直線的に勢いよく起こり、まるで砲撃のような威力を発揮する。
───────はずだった。
突然風は、《フォートレスガーデン》の目の前で消え去ってしまったのだ。
「何!?」
射程距離外?いや、そんなことは無いはずだ。
『エイレネ』でも無い。ならこれは......?
もう一度、今度は威力を半減。距離を伸ばして放つ。
すると、よく見ることが出来た。
「なるほど......な」
シールドバリア。
《フォートレスガーデン》の周りには、ドーム状の透明な壁が出来ていたのだ。
そのせいで、風はシールドによって弾き返されてしまう。
「相当頑丈に造られているようだな......」
まぁそうでも無ければ、こんなに堂々と姿を現したりしないだろう。
俺の風でも破れない......か。
近づいて直接腕をぶつければ、可能性はあるかもしれないが。
「ジーリオは右方から!弦雷は左方!」
「「了解!」」
簡単には近づかせてくれない......か。
だが、さすがはトップスリー。
俺の速度について来れている。
「バーンナウト!」
「ハイドロクリエイト!」
「黒志剣流奥義、一刀断裂!」
三方向からの攻撃。
一見、ただの同時攻撃による一撃必殺かと思われるが、しっかりと連携が取れている。
男のスキルの炎で逃げ場を無くし、女のスキルによって水で動きを封じる。
そして、動けなくなった所に奥義とか言うのを食らわせる。
なるほどな。シンプルだが連携は取れている。
だが─────
「ぬるいな」
ブワァッ、と吹き抜ける風。
三人まとめて吹き飛ばした。
「ぬぁっ!?」
「くっ!」
「無念」
しかし、三人はすぐに体勢を立て直し、再び俺に向き直る。
大したものだな。
あまり全力ではやっていなかったとはいえ、俺の風に耐えるとは。
「やっと面白くなってきたな」
さて、ここからはショータイムだ。
「せいぜい死なないように気をつけるんだな」
俺とトップスリーとの、バトルが始まった。




