左腕
「......?なんだ?君は」
「何かしら」
「シルビオ......うむ。覚えておこう」
......なるほど。
そんな反応ということは、俺のことを知らないということだ。
ならば教えてやろう、この俺の恐ろしさを!
......と言いたい所だが、それは後回しだ。今の俺は、お荷物以外の何者でもない。
「是非とも覚えておいてくれ。......フローリカ、状況は?」
「腕の回収完了。今─────」
ドゴォン!!
と、ビルの壁が、勢いよく破壊された。
「爆発完了」
「ナイスだ。よし、撤収!」
まずはアランを回収し......
「そうはさせない!」
「なっ!?」
刀のメシアが、その刀を振り、俺達に斬りかかってくる。
そして、フレンとビルの間に挟まる形で居座った。
そうか、やはり俺達の目的はバレているのか。
「一つ聞いてもいいか?お前らは、あのビルに閉じ込められていた物が何かを知っているのか?」
「知らんな。知ろうとも思わない。ただ我々は、ルインズを倒しに来ただけだ」
「そうか......」
なら、やはりこのメシア達にも秘密にしているようだな。
俺、つまりシルビオのことを。
「貴様、本当に何者だ?ルインズを手懐けているということは、今までのは全て貴様が送り込んで来た刺客ということなのか?」
「そうだ。今までお前らに送り込んだルインズ達は、全て俺の刺客達だ」
「......そうか、なら話は早い。貴様を潰す!」
かかってこい人類共。
俺が相手だ。
と、言いたいところだが......正直な所、左腕のない状態ではかなりキツイ。
「フレン、時間を稼げるか───────」
「させるかッ!」
再び斬りかかって来た日本刀。
くっ、退却までの時間稼ぎすらも出来ない......のか。まぁ、そう簡単に逃がしてくれるわけもないよな。
フレンよりも、相手の方が若干速度が早い。
このままでは振り切れないか。
「シルビオ!」
「......?」
「こいつを!」
アランが、他の魔物に乗った状態で、俺に向かって何かを投げて来た。
そうか、他の魔物達が既に脱出を......いや待て、その投げた物ってもしかして......
「腕だ」
おいおい嘘だろ。
そんな大事な物、投げてんじゃねぇよ。
しかも、俺の位置からじゃ大分遠いし下の方だ。
「フレン、急速降下!腕を回収する!!」
ま、間に合うか!?
確かにこの状況、今のままではかなりキツイ。
しかし、だからと言って俺に腕を渡すなど愚策も愚策。
三人に目を付けられた状態で、俺がそれを受け取るとでも?
「何だか分からないが、させはしない!」
「くっ!アランの馬鹿野郎!!」
落ちる腕。
上から向かうフレン。そしてそのフレンに乗った俺。
もう少し、もう少しで手が──────
「バーンナウト!!」
──────────
視界が赤く染まる。
熱い。
焼けるように熱い。
いや、これは実際に焼けているのだ。
目の前には炎が広がり、俺を焼き付くさんと真っ赤に燃える。
ならば......
「消すまで」
左腕を──────振った。
「なッ!?」
「嘘......でしょ」
「これは予想外だな」
一振。
左腕を、左側から右に向けて大振り。
それだけで、周りの炎は一気に消し飛び、視界が開ける。
「さぁ......俺のターンだ」
なるほどな。
炎を自由に操る固有魔法......とでもいった所かな。
それも、発火剤も不必要。
無から創り出し、無を燃やす。
まぁ、固有魔法......この時代ではスキルと言ったか?スキルとは、そういうものだ。
「久しぶりなだなオーヴェイン。頼りにしているぜ」
『お前は我がいないと、何も出来ないようだな』
と、鼻で笑われた気がした。
あぁ、そうだよ。その通りだ。
お前がいないと、何も出来ない俺を助けてくれ。
俺に、力をくれ。
「醜い腕だな......だが、そんな物が付いたぐらいで......!」
「何が出来るってんだ!」
ならば見せてやろう。
俺の......オーヴェインの力を。
左腕を一振り。
それだけで、強い風が吹く。
オーヴェインは風のドラゴン、風を自在に操る魔物。
「全員、撤退!俺が─────」
この痛み......苦しみ......全てが懐かしく感じる。
今では逆に、心地良いくらいに。
背中に力を込めると、大きな翼が生えてくる。
その姿は、まるで悪魔のようだと自身でも思った。
全身にみなぎる力、そして魔力。
今なら......やれる!
「─────時間を稼ぐ!」
フレンの背中を飛び降り、自分の翼で羽ばたいた。
自由に飛べるというのは、こんなにも便利だったのだなと、改めて感じた。
「フレン、アランの回収を頼んだ」
「分かった......シルビオ、帰って来いよ」
「ふん。誰に向かって言ってるんだか」
この俺を誰だと思っているんだ。
まぁいいさ。時間稼ぎだけではなく、むしろここでこいつらを始末してやろう。
「先程はすまなかったな。俺には、こいつがいないと駄目なんだ」
そう言って、左腕を見せつける。
この、禍々しいオーラを放つ左腕を。
鱗の付いている爬虫類のような見た目、爪は尖っており、とても人間には似合わないような腕だ。
しかし、鎧のお陰で少しは格好付いているかな......。
「ならば、これで貴様を思う存分倒せる」
刀は、そう言った。
倒せる......ね。随分と軽く言ってくれるじゃないか。
「三人まとめてかかって来い!」
もう一度、左腕を大きく横に振る。
すると、強い風がメシアの三人を包み込んだ。
いや、包むだなんて優しいものでは無い。
強風どころか、嵐のようなその風は、三人をズタズタに引き裂かんとばかりに暴れ回る。
まるで竜巻のようだ。
「ぐあっ!」
「な、なんて力......」
「くそっ!!」
スキルは、使わせない。
三人がまとまっていたことが、今回のお前らの敗因だ。
竜巻により、防御することしか出来ないことだろう。
そして、視界も何も見えない。見ることが出来ない。
その間に俺も、退散させてもらった。
「ククク......よぉく覚えておくんだな。この俺の名を」




