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戦争を始めようか

「冒険者ギルドが、この俺に何の用だ」


恐る恐る......ではなく、思いっきり手紙を開ける。

こんなことにいちいち気を使ってはいられない。


「ふむ」


内容は招集だ。

簡単に言えば、「魔王へ攻め入る作戦へ参加しませんか?」とのこと。

フェランドから聞き出した情報とも一致しているし、ギルドからの手紙だって言うのも本当のようだ。だとしたら、場所がバレているのはまずいことだが。


「ミネスが『銀騎士(おれ)』と繋がっていると知って、手紙を渡してくれと頼まれたそうだ。で、ミネスの代わりにガーゴイルが......」


ここへ届けに来たと言うわけか。

なら納得は行く。

それで、向こうの国はどうやら、近いうちに総攻撃を仕掛けるらしい。勇者を筆頭に、主力は全員使い、ここで決着を付けるつもりのようだ。

なるほど、少しでも戦力を......ね。


「行くか」


せっかく呼ばれているのだから、行くのが礼儀というものだろう。

それに、即戦力である『銀騎士(おれ)』が突然消えたら、計画や指揮は崩れることだろう。

いや、もしかしたらそこまで『銀騎士(ぎんのきし)』を頼っていないかもしれないが、だとしても意表を突くことはできる。

内側から急に魔王が現れたとすれば、進行も楽になることだろう。


「全員待機、俺が一人で行ってくる」

「なんだと?せめて私だけでもついて行く」

「いや、ここでまた怪しまれたくはない」


フレンは幼女姿なんだから、変に人目に付いてしまう。それは避けるべきだ。


──────────



「よぉ」

「『銀騎士(ぎんのきし)』さん!お待ちしていました!」


ギルドに入るや否や、ギルド内のほとんどの人が俺の到着に喜びを隠しきれないでいた。

前来た時はそんなに人気無かったはずだが......いつの間にこんな人気者になったんだ?


「あんたが『銀騎士(ぎんのきし)』か。会えて嬉しいよ」


と、一人の男が寄ってきて、片手を差し出してきた。

俺はその手を少しだけ握ると、すぐに離す。

俺は知らない奴と握手をするような、甘い男では無い。


「それで、詳細は?」

「明日、魔王の拠点へとついに攻め込みます。今回は、ギルドの冒険者全員で出動だそうです」

「それは、王の考えなのか?そういえばここの王は、少し前に代わったと聞いていたが......」

「あ、はい。今はアードルフ=ヴェロニア王が、この国の国王です。とても頭の良い人で、この作戦も王のお考えだそうです」


アードルフ=ヴェロニア......これが作戦と言えるのかは置いておいて、王自らが発案するとは珍しいな。まぁ、警戒する程ではないだろう。

明日......ギルドの雑魚が何人増えようと、人類側の死体が増えるだけだが、問題は勇者だ。

作戦はあるのか?勇者パーティーはどう攻める?

知りたいことは沢山だ。

勇者パーティーにいるミネスは、最近連絡が付かない。

勇者パーティーは極秘で動いているため、なかなか忙しいようだ。

だが無事であることは確か。ならひとまず安心だ。


「『銀騎士』さんには、私達と同じ、裏取りのチームに配属されます」

「裏取り?」

「はい。簡単に説明します。本作戦は、勇者パーティーなどの主力戦力を正面、私達ギルドパーティーを、裏取りとします。敵の本拠地は、山に囲まれているので、山の外側を回れば見つかりにくいらしいです。そして、挟み撃ち」

「なるほど。だが、こんなに話していいのか?」

「今は少しでも戦力が必要なようですから。それに、『銀騎士』さんは実績があります」


実績......ね。皮肉だな、依頼を達成できなかった実績しか、俺は持っていないよ。

あぁ、裏切り者の噂も流したっけか?


「よぉ、銀銀のにぃちゃん?」

「......」


いかにもチンピラみたいな格好のやつ二人組が、話しかけてきた。


「てめぇ本当に強いのかよ......けっけっけ、雑魚そうだな」

「ひっひっひ、その鎧良いなぁ、かっこいいなぁ。俺も欲しぃなぁそういうの」

「でも全身鎧だなんて、高くて買えねぇよなぁ......なぁ?貴族の坊ちゃんよ。親に買って貰って嬉しいのは分かるけど、実力が無いのにギルドなんかに着てきちゃいけまちぇんよぉ」

「......」

「ちょっと、そんな言い方やめてください!この人の実力は本物です!」


受付のお姉さんが、庇ってくれた。


「このギンギンが闘ってるところ、だーれも見たこと無いのに、よくそんなこと言えるなぁ」

「見たことある人ならいます!」

「オレグだろ?」


オレグって誰だ?


「どうせ賄賂か何かだ。俺達ぁ自分の目ぇで確かめねぇと気がすまねぇ性分なんでね」



「今は少しでも戦力が欲しい時だそうだ。貴様らのような野蛮な連中でも、役に立てるだろう」

「あぁ?なんだてめぇ!!殺すぞ!!」

「殺すだなんて......冗談でもそんなこと言ってはいけない事と教わらなかったのか?」

「黙れ!俺は本気だ!」


つまり、本気で殺すと?

よりにもよって、この俺に向かって?


「表へ出ろ!決闘だ、俺と闘え」


やはり、闘うことが当たり前の世界なんだから仕方の無いことなのだろうが、話し合いでの解決をしようとしない。


「......」


辺りを見回す。が、誰一人として俺を擁護してくれる人はいなくなってしまった。

誰もが皆、俺の実力を知らない。

「百聞は一見にしかず」とは少し違うが、これも、ある意味では同じだろう。

皆、聞くよりも見た方が理解できる、分かるんだ。

なら、見せるだけ。


「いいだろう。だが雑魚が相手じゃ、私の本当の実力が見られないと思うが?」

「んだと?ゴラ!」

「二人でかかって来い。それが条件だ」

「上等だ、ぶち殺してやんよ」


──────────


俺達は、ギルドの外へ出た。ギルド内で見ていた人達のほとんども、一緒に外へ出て、俺達の決闘を見届けてくれている。

やはり、ほとんどの人が『銀騎士』の実力を知りたいようだ。


「一撃で決める」

「おう」

「......」


弱い犬ほどよく吠える。と言ったものの、やはり多少なりとも実力が無くては、吠えることも出来ないと俺は考える。

自分が弱いと知っていて、吠えるようなことはあまり無いだろう。だが、強いと思っている。また、それが勘違いであれ、自分が強いと信じているのであれば、よく吠えるのだろう。

つまり、何が言いたいのかと言うと......


「少しは闘えそうだな」


片方は槍、そして片方が弓か。

遠距離中距離、共にお互いの射程距離をカバーする武器だ。

何よりその構え方。

俺だって前の世界の学校で、武道は少しだけ習ったことがあった。

と言っても、槍道や弓道を授業でやった訳では無いが、単なる知識として、そして俺の単純な興味として少しだけ知っていることはある。

目の前の敵は、中段構えをする。

槍は、攻防が幾重にも変化する。槍は剣に比べて、リーチが強みだ。三段突きなどで、その敵を近づけない様が分かる。

弓術の方は、言うまでもなく弓矢だ。

厄介なのは、連携されることで、隙なく攻撃されることだ。


「だが」


どうな技術や戦術も、圧倒的な力の前では無に等しい。

無駄なんだよ。


「ッ!!なっ!?」


剣術なんて知らないし分からない。

下手な剣術よりも、もっとシンプルな攻撃。ただ素早く抜刀し、素早く斬る。

気が付いたころには、槍使いの後ろに立っていて、槍が真っ二つに斬られていた。

いくらなんでも殺すのはよくない。だから、武器を斬らせてもらった。


「ば、化けものがァ!」


今度は弓。

二本同時に放ったようだ。それだけでも、褒めるべき技術かもしれない。だが、遅い。

まるでバッティングセンターの最低速度かのような遅さだ。

俺は、そのゆっくり飛んでくる矢を一本づつ斬りながら、弓使いに近づいて行く。

間合いが十分詰まったところで、弓使いは俺を見て驚いたような顔をした。


「なっ!?」


先程同様、弓も破壊する。

戦闘終了。


「勝者は......『銀騎士(ぎんのきし)』さん!!」


歓声は、少し遅れて上がった。

その圧倒的なまでの速度と技術。

反射神経に精密さを見て、大衆は驚いたようだ。


「そんな......」

「これが私の実力......には、少し足りない気もするが、まぁこんなものだ。どうだ?これで満足かな?」


──────────


まずい。

まずい、まずい、まずい!

遊んでいる場合じゃなかった!!


「地図を出せ」


急いで帰って来た俺は、時間が無いことに今更気付いた。

だいたいのことは魔王軍に話した。作戦内容や、新しい王。王が代わったせいで、名前も変わることになった、新生ヴェロニア国。ふむ、王については、またフェランドに聞くとしよう。

それよりも、まだ色々と準備し足りないことがある。

作戦も、練り直さなければならない。


「あんな雑魚ども、放っておけばよかった」

「反省はあとだ。今は作戦を練ろう」


フレンの言う通り、切り替えさせてもらう。

まず、我が国の場所を地図上の真ん中に置くとする。するとヴェロニア国を北、イムアトル国を正反対の南に置ける。

相手が裏取りを考えているということは、裏。つまり南側にあるイムアトル国のことを知らないということだ。


「イムアトルは独立している国だからな。情報が漏れないのは助かる」


そして俺の担当は裏取り、本陣とは離れて、山の反対側から攻める役回りだ。

開始は明日、俺達にも準備の時間は限られている。


「......イムアトル国とここで、裏取りに来たやつらを全軍で挟み撃ちにする」

「全軍で?そんなに兵力を使う必要は......」

「その後、全軍で撤退だ」

「て、撤退!?」

「あぁ。裏取りの奴らが使っていたルートを使って、ヴェロニア国へ直接向かう。山を挟んでいるから、タイミングさえ合えばバレやしないだろう」

「だが、さすがに全軍は無理じゃないのか?」

「元奴隷の者は置いて行き、少しでも前線で闘わせて時間を稼ぐ。その間に攻めるんだ」


逃げるのではない、これは攻めだ。

やつらの主力が着く頃には、もうそこに俺達はいない。むしろ、一時的に戦力の無くなったやつらの国を────王を取る。


「今更、戦いたくないだなんて言うなよ?魔王よ」

「あぁ、分かっているさ。いや、分かっていたさ......人類と魔物は、分かり合えないということなんて」


最初から無理だったんだ。

聞く耳を持たない人類に、魔物と仲良くなることなんて。

ならいっそ、支配してしまおう。全てを手に入れ、俺が無理やりにでも操って、平和な世界を作り上げる。

それが、例え間違った平和だとしても。


「なら私は、どこまでもお前について行こう。魔王シルビオよ。私はあなたの剣であり、盾でもある。あなたを全力でお守りします」

「フッ、俺も優秀な部下に恵まれたものだ」


思えば最初の頃は....いや、思い出に浸っている場合ではなかったな。


「準備を開始する!各自持ち場へ付け!!」


さぁ、戦争を始めようか。

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