表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/80

体術と魔道具と固有魔法

広場のような場所で、俺達は止まっていた。

最上階では無いが、どうやらここは城のど真ん中らしい。

天井がガラスで出来ており、光が差し込んでいる。

そこで俺達は、一人の騎士と睨み合っていた。


「副長がやられたのか......まぁいい。ここで私が殺ればいいだけのこと」

「ということはお前も騎士団だな」


青い甲冑に短弓。

頭には何も被っておらず、その素顔が明らかとなっている。

女だ。

後ろで髪を結んだポニーテール。

その美しい金色の髪が、風でなびいている。

俺はなぜか、この弓兵に違和感を感じた。


「ヴァレンティーノ王直属の騎士団。グリエラ=ドラーギ」

「ニース=サジェンド」

「キャスバル=レイ」

「レイン」


当たり前のように偽名を名乗っていく。


「お前らの素性はもう割れている。偽名など使う意味は無い」


なんだ。

やはり騎士団全員には知れ渡っているようだ。


「やはり、闘うしかないのか」

「いいや、闘う必要は無い。お前らが私に、一方的に殺られてくれればいい話さ」

「ふん。そんなこと、あるわけがない!」


また、フレデリックが突撃した。

こいつ、実は脳筋なのか?

しかし、前回よりはマシかもしれない。相手は弓、不意打ちのようにいきなり突撃してしまえば、相手の隙を突けるかもしれない。


「愚かな」


グリエラは、膝から崩れ落ちて低姿勢になった。

しかし、フレデリックも低姿勢の突撃、素早くジグザグに動くことによって、矢に当たらないようにしている。だが、弓は構えるが矢は引かない。

かと思うと、正面から来たフレデリックよりもさらに低く構え、背を地面に付けながら巴投のように、フレデリックを足で促した。

そして、足で持ち上げている瞬間、弓を引き、至近距離でフレデリックに矢を放った。


「なっ!?」


そんな距離で外すわけがなく、フレデリックは見事に撃ち抜かれ、投げ飛ばされた。


「ぐっ」

「フレデリック!!」


俺が向かう前に、グリエラはサマーソルトのように後方に回転しながら距離を取ってきた。

素早い判断だ。

それに、よく周りが見えている。

グリエラは、地面に着地と同時に俺に向かって、矢を放った。

特別速いわけでもない。普通の矢だ。

走りながら、難なくかわす。

第二射、今度は二連だ。

矢を二本同時に放って来た。が、それもかわす。

なんだ?凄いのは身体能力だけか?

第三射。次は二回連続で放って来た。

弓は引くのに時間がかかる。それなのに、どうして二連放てるのかは分からないが、それでもこれぐらいならなんてことはない。

と、気を抜いてしまった。

一発はそのまま直線的に俺を狙ってきた。

これもまたかわした。

つもりだった。


「バウンドアロー」


二本目は、地面に放った。

そしてそれは地面を跳ね返り、一本目をかわした俺を、あらぬ方向から狙ってきた。

跳弾。そんな魔法もあったのか。

いかん、このままだと命中する!

ギリギリだが、右腕で振り払う。

なんとか風で防ぐことが出来た。

が、バランスを崩し、地面に体が打たれてしまった。

受け身でなんとか体勢を立て直す。

しかし、起き上がった先で、もう矢は目の前まで来ていた。

ヤバい......終わった。


「シルビオさん!」


その声と同時に、目の前の矢が消えた。

リーネだ。

横から矢を掴んで、払ってくれた。


「ナイスタイミングだ。リーネ」

「ありがとうございます。それにしても......あの人、何かおかしいです」

「あぁ」


早すぎる。

いくらなんでも、引くのが早すぎる。

身体能力と、弓が短いことを利用したトリッキーな闘い方は分かる。

確かにそれが強みであるというのは、闘ってみてわかる事だ。

しかし、矢は矢筒から取り出さなくてはならない。

矢筒から取り出し弓を引くまでに、早くても0.5秒はかかるはず、だが、グリエラはほぼノーモーションで放ってみせた。


「おいてめぇ!コッチを見ろォ!!」


フレデリック!?どうやら動けるほどには無事なようだった。

グリエラは俺達を見ている。

その隙に、フレデリックが後ろから襲いかかったのだが、


「うっ」


フレデリックには見向きもせずに、矢を刺した。

右手で持っていた矢を、そのまま直接。

それは、またフレデリックの腹に突き刺さっていた。


「サンダーアロー。しばらく大人しくしていなさい」

「く、そ......」


強い......!

もしかしたらあの赤い騎士、ウリエン=パーリは、相手が俺達なだけに手を抜いていたのかもしれない。

本人のその意思がなくとも、無意識のうちに。


「......!?リーネ!矢筒が......」

「無い......」


今更気が付いた。

こいつ、矢筒が無い。

どころか、どこにも矢がないのだ。

初めから違和感はのだ。しかし、何が足りないのか分からなかった。

そうか、矢筒が無い。

持っているのは弓だけ。

それでどうして矢を放てるというのか。


「やっと気が付いたようだな。この弓、アルカリスの特性に」

「そういうことか。それがその魔道具の力というわけだな」

「そうだ。矢を必要としない弓、それがアルカリスだ」


そんな力を持つ魔道具もあるのか。

どうやら魔道具は、魔鉱石の純度百パーセントというだけではないようだ。

それにより、何らかの特殊能力が備わっている。


「故に、弓を引けば矢は出てくる」


グリエラは、そう言いながら弓を引いた。

確かに言っている通り、どこからともなく矢は現れた。

連射の秘密はこれか。


「こんなことも出来るぞ?」


するとグリエラは、弓を上に向ける。

高い高い天井に向かって。

まさか......!


「アローレイン」


弓を引く。

それと同時に、一本の矢は無数に増え、矢の雨がシャワーのように降り注ぐ。


「リーネ!俺の近くに!」

「はい!」


左腕で振り払う。

大きな風を起こし、俺達の周りだけだが矢を吹き飛ばした。


「シルビオさん!」

「ッ!!」


至近距離に矢。

また油断してしまった。

もうかわせる距離ではないし、振り払うことも出来ない。

左腕を盾にし、守る。

オーヴェインの腕は硬い。

矢の一本や二本くらい、防げるはずだ。

だが─────


「ぐっ」


刺さる。

腕では無く、肩に。


「ほう、本当に寸前で体をずらしたか。驚異的な身体能力だ」


もう少しで胸に刺さるところだった。

しかし、腕で完全にカバー出来ていたはずなのに......カスリすらもせず、まるで腕を貫通して通ったかのような射線だ。

おかしい。


「確かに防いだはずなのに......か?」

「......」

「図星のようだな。それは、分かるの固有魔法だ」

「なに?」

「私の飛ばした物は、どこまでも貫通する。例えそれが壁だろうが布だろうが、どんなに硬かろうが柔らかかろうが、薄かろうが厚かろうが、関係ない」


全てを貫通する。

それは、相性が良すぎる能力だ。

弓にしても固有魔法にしても身体能力にしても、どれも弓兵としてはトップクラスの才能。

文句なしの強さだ。


「だが、風なら!」


グリエラはジリジリと近づき、再び矢を放つ。

壁や物を貫通する矢。

なら、空気ならどうだ。

空気を動かす風なら──────


「貫通しないとでも?」


痛み。

今度は腹に命中した。

そんな......防げないなんて......


「風の抵抗を受けないということは、それだけ速度も上がるということだ」


矢一本の威力は低いが、こんなのを食らっていたらすぐに殺られてしまう。

全てかわしきれる自信も無い。

これは厳しい闘いだ......


「それでは、終わりにしよう」

「まだです!」


リーネだ。

リーネは、距離を置いた場所から糸を飛ばす。


「邪魔をするな」


グリエラは、矢で糸を切ろうとする。

だが、リーネの糸は他の糸とは違う。

硬い状態なら、普通の矢では切ることが出来ないほどの強度で、柔化していれば、それはそれで切れないほど柔らかいのだ。


「切れない......?ほう、面白いものを持っているじゃないか」


グリエラは、糸をかわすと、またリーネに近づいた。

どんどん近づく、糸に対して近距離というのは不利ではないか?


「スレッドネット!」


糸を、蜘蛛の巣状にして矢を受け止める。

矢はその網目よりも大きい。だから、通ることは無いのだが、『貫通』のせいで呆気なく破られてしまう。

糸の巣は破られていないのに、技は破られる。

しかしそこに、俺は僅かながらの違和感を感じた。

わざわざ近づく必要は無くないか?

いくらショートボウとは言え、たかが数十メートルくらい届くだろう。

......まさか。


「リーネ、距離を取れ。とりあえず取れるだけ距離を取るんだ」

「は、はい」


すると、リーネへと飛んで行った矢は、リーネがかわした後に地面や壁に当たった。

どうやら読みは当たったようだな。


「その固有魔法の射程距離、つまり有効範囲は十メートル程度。それより遠くは、効果が及ばないんだろ」


射程距離外へ出てしまえば、少なくとも固有魔法は無くなる。

かわす以外の選択肢が増えるだけでも、だいぶ楽になるってもんだ。


「ふむ。なかなかの観察力に、察しがいいな。副長でも知らないことを見事に当ててみせるとは」

「お前が分かりやすいだけだ」


対策は分かった。

後はもう倒すだけだ。


「だが、私とて簡単にやられるわけにはいかないのだよ。王の......国民の平和は邪魔させない!」

「国民の平和?はっ、国民を犠牲にしておいて平和のためだってか?」

「犠牲......?」


なんだ?なぜそんな顔をする?

まるで初めて聞いたかのような。


「王は、直々に研究に協力し、魔物を絶滅させるために武器を作っておられると」

「その武器とは、どんなものか知っているのか?」

「......」


どうやら、知らないようだな。


「知っているかのよう口ぶりだな」

「知っているさ。知っているとも。だから俺達はここにいる」

「......」


グリエラは構えを解き、弓を降ろした。


「その話、聞かせてくれないだろうか」


それから、俺達は話した。

王の真の目的。

兵器について。

イルペ家がどのような仕打ちにあったのか。

全ての信じてを話した。

その間にフレデリックを回復させてくれるのを、グリエラは許してくれた。

もし俺達がそれを目的に時間稼ぎしているとしたら、どうするのだろうか。


「......そうか。そうだったのか」


グリエラは、まだ信じられないといった感じだ。

無理もない。今まで仕えていた王が、本当は悪いヤツだったと知っては。


「信じて、くれるか?」

「分からない。お前達は侵入者だ。そうやって私を騙そうと言う風に取れないこともない。だが、思い当たる節はある」

「......なら「だが、全て信じることは出来ない。私がこの目で確認するまでは。だから......」


グリエラは少し黙る。

考えているのだ。

俺達としてはなるべく闘いたくないわけだし、こんな強い協力者がいるとなれば心強い。


「私も同行しよう」

「かきょ......いいのか?」

「己の目で確かめるまで、お前とは一時休戦だ。ただし、嘘だと分かればすぐにお前らを撃つ」

「構わない。逆に俺達が正しいと分ければ、真実だと分かれば協力してもらう」

「もちろんだ。私は、王に仕えてはいるが、それよりも国民を優先する」


ありがたい。

もしここで証明できれば、こんなに心強い味方が出来ることになる。


「......師匠、フィオン副長も、それは知らなかったのか?」

「分からない。ただ、私と副長は王とはあまり直接話すことは無い。だから、知っているとしたら団長だ」


団長。

もしフレデリックの師匠も王の真実を知らなかったのなら......いや、考えるのはやめておこう。

もう終わってしまったことだ。

今更考えたって、生き返るわけじゃない。


「それなら、早く行きましょう。こうしている間にも、王は逃げようとしているかもしれません」

「たしかにそうだな。リーネの言う通りだ」

「もう次の階層で最後だ。おそらく団長はそこにいるだろう」


そのために騎士団で時間を稼ぐという作戦かもしれない。

急がなければ。

俺達は覚悟を決めて、最後の階段を上った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ