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ディアノ=カール

「いらっしゃい」


ここがアマリアの家か。

まさか王の城に連れて行かれる、ってわけじゃあ無かったようだ。


「今日は父上も母上も今日はいないので、ゆっくりしていってくださいね」

「あぁ。ところで、アマリアのお父さんはどんな仕事を?」


失礼などしるか。

相手が相手だ。少しでも嘘を暴いてやる。


「あー......えっと、あまり人に自慢出来るようなものではないので......」

「そうか。それはすまなかった」


大丈夫です。

と、アマリアはニコッと笑った。

今見ればどうも嘘くさい笑顔だ。

......ふん。どうやら俺は随分と人に流されやすいタイプみたいだな。

こうしてアマリアを見る目が変わってしまったところを見ると、完全にオーセリーを信じ込んでしまっているらしい。

まだ分からない。

ただオーセリーが、俺を混乱させるためについただけの嘘かもしれない。

それを確かめるために俺はここへ来たのだ。


「そういえばアマリアは、なぜ学園に?」

「言いましたよ。それは。シルビオさんがいるからです」


そうだっけかなぁ。

俺の記憶も曖昧だが、別にそれはいい。

そんなこと、どうでもいい。


「あの、なぜ急に私の素性を調べようとしているのですか......?」


ほう。

鋭いじゃないか。まぁ、このぐらいなら誰でも気が付くか。


「いや別に。ただ、ちょっと知りたくなっただけさ。ディアノ=カール姫のことを......な」


ボソッとそんなことを付け足した。

これは、ほんの少しのイタズラみたいなものだった。

彼女の反応が見てみたかったのだ。

だから少しだけ、王の娘の名前を呼んでみただけだ。

もし違っていたのなら、「あぁ、似ていたからつい......な」と言って誤魔化そうと思っていた。

のだが......


「......」


彼女の表情は、それはもう驚いた。

俺でも驚くほどに、

笑っていた。

ニヤリとしていた。ニヤニヤしていた。

口でも裂けているのかと思うくらい、不敵で不気味な笑顔をこちらに向ける。


「おっと......思わず笑顔が漏れてしまいました。正体を当てられたのにも関わらず」

「おいおい、マジかよ」

「はい。マジです。私はディアノ=カールです」

「......」


その堂々っぷりに、俺はまた驚いてしまう。

なんだ?こいつは。

と、今まで一緒にいたのに、一緒にいたはずなのに、目の前にいるのが誰なのか分からなくなってしまう。

それほどに、雰囲気が、空気が豹変してしまっていた。

否、風向きが変わった。


「どうせなので全て教えてあげましょう」


アマリア改めディアノは、部屋の奥へと歩いて行った。

俺とリーネは、その後をついて行く。

部屋は、随分と長い廊下が続いており、その最奥でついに行き止まりとなった。

かと思いきや、ディアノがしゃがんで廊下を触ると、床がパッカリと口を開け、何やら隠し部屋に続くと思われる階段が現れた。


「な......」


少しカッコイイと思ってしまった。


「さぁどうぞ」


そんなに長くもない螺旋階段を、グルグルと回りながら降りれば、その下にはやはり隠し部屋があった。

隠し部屋。

たしかにこれは隠すべきだ。

隠すべき部屋となっていた。


「着きました♡」


俺とリーネは、唖然とした。

大きな鉄の檻が、何段も重ねられて部屋の端に並べられている。

そして真ん中にはいくつかの拷問器具と思わしき物体と、天井から吊り下げられた鎖。

どれも血がついており......って、違う。

それじゃないだろ。

問題は血がついていることではない。

もっと大きなものがある。

俺は、それを見たくなかった。受け入れたくなかった。

気が付きたくなかった。

慌ててリーネの目を隠すも、もう遅い。


「......あぁ」


人がいた。

たくさん。

檻の中にも、床に転がってもいた。

そして、拷問器具に取り付けられたままの人も、鎖で吊り下げられている人も。

どれも人だった。

檻の中の人は、何人か生きている人がいて、悲鳴がたくさん聞こえる。

「出してくれ」「助けてくれ」という声が止まない。


「きゃはっ!あなた達もあんな風になるのよ」


あんな風。とは、どれを指すのだろうか。

全裸で檻に入れられている人達だろうか。

それとも、身体中鞭の傷痕がある人達だろうか。

はたまた、手足が無残に切り落とされている死体のことだろうか。


「私はね。金のある男や女をいたぶるのが好きなの。虐めるのが好きなの。拷問が、嘖むのが、責めるのが、痛めつけるのが、傷をつけるのが、悲鳴を聞くのが、苦しませるのが、死を感じさせるのが」


「全てが好きなの」と、ディアノは言った。


「なぜ金がある人なのかって?そりゃあ、そいつらは簡単に私に付いてくるからよ。『自分ならこの娘と釣り合う』などと思って、私が少し上目遣いにしただけで言いなりよ」

「ほう。それで俺も引っ掛けたわけか」

「ええそうよ。結婚も何回したのかしら、分からないくらい結婚して、死別を繰り返したわ」

「この部屋は?なぜこんな広い部屋で、よくもこんな金があったな」

「父上が出してくれたのよ♡父上は私の趣味を理解して下さるの。まぁ、ここは父上のお下がりだけどね」


お下がり。

ということは、ディアノ=カールの父親、ヴァレンティーノ=カールも、同じこと、または似たようなことをしていたという事か。


「さて、お喋りはここまで。話し過ぎちゃったかしら?私楽しみすぎてウキウキしているの」

「そいつは良かったな。さっきの笑顔もウキウキからか?」

「ええそうよ。あなたが私の正体を見抜いたということは、もう殺すしかないってことでしょ?そう考えるとワクワクしてドキドキしちゃう♡」


あぁダメだ。

こいつは、イカれている。


「どうしようかしら。あなたは生かして拷問しましょう。リーネちゃんは可愛いから、標本にでもしましょうか」


これが本性。

よくもまぁ、こんなにデカいものを隠せていたものだ。

催眠術系の魔法を使ってこなかっただけまだマシか。


「それでどうします?抵抗します?」

「もちろん。てめぇを許すわけにはいかないな」

「そうですか。でも......私だって無意味にここに連れて来たわけじゃないのよ♡」


そう言ってディアノは、部屋の壁に掛かっていた鞭を手に取った。

なるほど、ここはある意味武器庫でもあるわけか。


「さぁ、バトルスタートだ」

「......」

「......」

「............」

「............」

「......あの」


しばらくの沈黙。

なんだ?自分からは攻撃しないタイプなのか?

鞭の戦い方は無知なのだが、自分から仕掛けるのは不利な武器なのだろうか。

確かに、距離が命の武器だろうが。


「まぁいい。リーネ!」

「ッ!?」


リーネが後ろから蹴りを入れた。

が、かわされた。

上手く身を捻って、間一髪避けた。


「不意打ちとは......」

「てめぇが勝手にリーネを見失ってただけだろうが」


まぁ、リーネは気配隠蔽の魔法を使ったんだけどな。

前の蜘蛛が使っていた所を見ると、結構実用性がありそうだったからな。

至近距離でも、背後からの接近は気配を頼りにする。

その際に、背後から近付かれていることに気付かせないということが出来る。


「ここで新しい武器を試す、良い機会だ」

「はい!」


ディアノが、戦闘があまり得意ではないことは知っている。

だから、リーネには少し弱すぎる相手だろうが、武器の練習には丁度いいかもしれない。

リーネは、武器から糸を出す。

糸は直線に、勢い良く飛び出し、ディアノに向かって突き刺さる。

はずだったのだが、


「戦闘が苦手だと、言った覚えはないわ」

「なに?」


またかわされた。

どころか、今度は鞭で反撃もして来る。


「鞭は先端に行くほど最高速度が出せるの。その速度は、音速をも超えるわ」


音速......その話は嘘ではないらしい。

リーネは、避ける間もなく鞭に当たってしまった。

あんなのが直接命中すれば、当たった所は一溜りもない。


「ぐっ」


しかもこいつ、魔法で鞭をもっと加速させており、もはやリーネは近づく事が出来ない。

リーネは近距離戦闘型。

鞭で中距離を保たれてしまっては、攻撃すら出来ない。


「リーネ!」

「大丈夫です!まだやれます」


リーネの体はもう、鞭の後でいっぱいだ。

血も出ている。


「まだまだッ!!」


リーネは再び糸を出す。

だが硬い糸はまさしく、いとも容易く弾かれてしまう。


「ふん。興ざめね。もう少し強いと思っていたけれど、もう終わりみたいね」

「へへ、それはどうですかね」


リーネは、笑顔を見せる。

その手を見ると、糸が出ている!

しかも糸が......


「糸が、鞭に絡まって......?」

「これが私の固有魔法。物を柔らかくする魔法です!」


そう。これがリーネの魔法だ。

やっと使えるようになったようだ。

柔らかくなって糸は、弾いた際に鞭に絡みついたようだ。


「く、くそ!」


リーネは、そのまま糸を引っ張るだけで、ディアノとの距離を詰めた。

糸は、一度に三本出すことが出来る。

そしてその糸を、ディアノの体にまきつけた。


「たかが糸くらい!」

「柔化解除」


その言葉と同時に、糸は再び硬くなる。

形状が、戻る。

まるでバネのように。

元に戻った。


「ぐああああああ!!!」


戻った糸は、ディアノの体を切り刻む。


「おいおい、カッコイイ能力じゃねぇか。名前はどうする?スパイスガールにでもするか?」

「?」

「いや、すまない。テンション上がってしまった」


ちょっと落ち着こう。


「それにしても、やはり流石だな。リーネは物覚えが早い」

「いえ、そんな大したことではありません。それより、アマリアさん......いえ、ディアノさんはどうしますか?」

「そうだな......」


あまりの痛みにか、気絶してしまっている。

死んではいないはずだが......いやしかし、人には拷問としてやっていることを、自らが受けたらこれか。

やる側はやられる側の気持ちになってみないと、分からないものなのか。


「とりあえずは外に運ぼう。そいつを頼むぞ。だが気を付けろ、気絶したフリかもしれない。俺はまだ生きている人を助ける」

「はい」


迅速かつ丁寧に事は運んだ。

ディアノはどうやら本当に気絶しているようで、これからどうするかは検討中だ。

王の手がどれほど回っているのか分からない限りは、もしかすると騎士達も支配されている可能性がある。

そうすると、ディアノを渡しても逆に俺達がつかまるかもしれないからな。

ディアノはこのまま放置でいいかもしれない。

いやだがしかし......


「私が預かろう」


突然、後ろから声がした。


「......!?」


声の主は、オーセリー=イルペだった。


「なぜここに?」

「なぁに。このために脱獄したと言っても過言ではない。そして、そのためにわざと捕まったと言うのもな」

「どういうことだ?」

「簡単な話だ。わざと捕まり、騎士達がどれくらい王の支配下にいるのかを確かめたのだ」


なんて有能な人なんだ。

なるほど、俺との闘いをやめたのにはちゃんとした理由があったわけだ。


「それで、結果は?」

「王近辺の騎士は支配下だ。くらいにしかまだ分からない。少なくとも私が捕まっていたあの最悪な場所なら問題は無いだろう」


それは良かった。

なら、ディアノのことはオーセリーに任せるとしよう。


「ていうか、来るならもっと早く来いよ。もしかしたら俺達がやられていたかもしれないんだぜ?」

「抜かせ。そんな弱い奴に、私がわざわざ降参した覚えはない。本当は他にやることがあってだな。それを済ませてから来ようとしたのだが、先に貴様らが来ていただけだ」


なんだ。

俺達が来ることは分かっていなかったのか。

オーセリーだって何でも知っているわけではないんだな。


「後は全て任せておけ。被害者も加害者も全て私が面倒を見よう」

「信用出来るかっての。いくら王に恨みがあるからと言って、ドラゴンで王都に来るような奴を信用しろって方がイカれている」

「別に信用はいらない。もし私が嘘をついていたら、その時は殺せばいい。そんなことよりも、貴様らには他にやって欲しい事があるのだ」


オーセリーは、不敵な笑みをやめ、急に真面目な顔になった。


「ヴァレンティーノ=カール王を、殺して来てくれ」

「......」


ヴァレンティーノ王。

娘であるディアノが言うには、王も同じように悪い奴だ。

ディアノにこの拷問部屋をあげたのも、王らしい。


「詳しい話は後で聞け。とにかく今は行くんだ。一刻も早く、王を始末して欲しい」

「詳しい話って、誰に?」


するとオーセリーの後ろから人が出てきた。

全く気が付かなかった。

魔物並の気配隠蔽。


「なっ」


そいつは、俺も見た事がある人だった。


「フレデリック......」

「久しぶりだな。シルビオ=オルナレン」

「話はフレデリックから聞いてくれ。馬車は出す」

「......」


確かに、王と闘うのなら少なからず騎士達と闘うことになるだろうし、イルペの事情も聞きたいところだ。


「......分かった」


俺は決意した。


「リーネもいいな?」

「はい。私はシルビオさんにならどこへでもついて行きます」


嬉しいこと言ってくれるじゃないか。

よし、なら行くとするか。

俺達は馬車に乗る。

ヴァレンティーノ王......一体何をしていると言うんだ。

ブックマーク登録ありがとうございます!!

おかげさまで100を超えました!

まだまだ続くので、読んでくださるとありがたいです。

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