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新装備

無事、外に出ると、まずはため息が漏れた。


「はぁぁぁ」


もうなんだか、わけがわからないといった感じだ。

俺のいた世界にあったビルが、ボロボロの状態だったが見つかるし、でっかい蜘蛛のボス魔物に出会ったと思ったら、今度はでかいヤモリが出てくるし。


「あーもうめちゃくちゃだよ」


俺が大の字になって寝転がっていると、リーネとアマリアが近付いてきた。

二人も疲れている様子だ。


「大丈夫か?お前ら」

「はい。シルビオさんは大丈夫ですか?」

「まぁ俺はな。それよりもアマリアは?」

「は、はい。私も......すみません。足を引っ張ってばかりで」


アマリアは、ダンジョン内で俺にキツく言われたことをまだ引きずっているようだった。

確かに、あれは俺が悪かったな。


「すまない、あの時は言い過ぎだった。俺も焦っていてな」


アマリアはまだ転校してきたばかりだし、戦闘向きではないのだ。

俺とリーネは、あんなのよりも大きな魔物を見たことがあるから何ともなかったが。

アマリアや、クラスメイト達からすれば、巨大な怪物。

腰を抜かしても無理はない。


「いえいえ、弱い私が悪いんです。シルビオさんが謝ることではありません」


アマリアは真面目だな。


「ところで、シルビオさん。何か不満そうな顔ですね」


と、リーネが今の俺の心情を読み取ってきた。

よく分かったな。俺そんなに表情に出てたか?


「あぁいや、あのビルをもう少し見たかったなぁと思ってな。少し気になるものが多かったんだ」


そう。まだまだ気になることだらけだ。

時間さえあれば、ずっとあそこに居座ってそうなくらい、知りたいことがある。

すると、アマリアが何やら言いにくそうにモジモジとしながら何かを訴えようとしている。


「どうした?アマリア」

「あの、後で聞こうと思って、いくつか持ってきてしまった物があるのですが......」

「!?」


もうおそらくは、あのデカい二体の魔物のせいで、俺達学生はこのダンジョンに入れないと思う。

だからもちろん、ビルだって調べることは出来ないと残念に思っていたのにまさか!


「ナイスだアマリア。良くやった」

「え?」

「くれぐれも先生達には内緒だ」

「分かりました。あの、私、役に立てたでしょうか?」

「あぁ、もちろんだ。本当に助かった」


その言葉を聞くと、アマリアは嬉しそうに微笑んだ。

それを見て、俺も安心する。


「さてと」


アマリアが服の中に隠していたものを、全て出してもらった。

持って来ていたのは、スマホと書類と拳銃だった。

......って銃!?


「あの......」


おっと。驚きが隠せていなかったようで、アマリアが心配して来た。


「あぁ。いや、普通あの場所にないはずのものがあってな。少し驚いただけだ」


そんなことを言い出しら、そもそも廃ビルがダンジョン内にあること自体、あるはずのないものなのだがな。


「......」


一つ一つ見ていく。

書類は、文字が気になったらしい。

そういえば、この世界の文字を、何故か自然と読めている俺だが......おそらくシルビオの影響か。

しかしまだ日本語も読めるみたいだ。


「ふむ。案外普通の文章だな」


企画書......みたいだ。

本当に普通の、どこの会社にもあるようなものだ。

拳銃は......何があったのかは分からないが、オフィスにあったものに違いないだろう。

もしかしてマフィアのオフィスだったのか?

いや、そんなことは無いか。

書類がそう物語っている。

なら、オフィスに置いておく必要があったというわけか。

何かしらの、理由で。


「考えても仕方ない......か」


とりあえずこれは、俺が預かっておくことにした。アマリアが持っていてもしょうがないし、俺もこれらで何か少しでも手掛かりになるものを探したい。

手掛かり、ね......自分で言っておいて、手掛かりってなんの手掛かりなのかと疑問に思った。


「......」


俺達は、家に帰された。

自分でダンジョンに連れてきたくせに、「危険だったからもう家に帰れ」だそうだ。

そんな言い方では無かったが、概ねそんなところだ。

まぁ、今後あのダンジョンには二度と行くことが出来ないだろう。





後日、あのダンジョンについての報告があった。

ヤモリは、国家騎士達で倒したらしい。

大人数でダンジョンを攻略し、その後は研究者達に引き渡されたらしい。

興味深い研究対象だと言っていたが、確かにその通りだろう。

あのビルにあったもののことを俺が知っている事は内緒だ。

もちろん、そのいくつかを持ち帰ったこともだ。


「何してるのですか?」


家の庭で、一人でいる俺にリーネは問いかけてきた。

今日は休日だ。

昨日のダンジョンでの怪我人が多く、今日の学園は仕方なく休み。

重傷者は少なく、主に軽傷者が多いのだが、死者は一人もいなかったということが幸いだ。

そしてこの、束の間の休日を利用して、俺は何か新しい武器でも作ろうと思ったわけだ。

アイデア。というか、作りたいものはいくつかあるが、とりあえずはこれだな。


「俺の武器を作る」


用意したものは、材料である金属。

俺が昨日徹夜して描いた設計図。

今回は銃を作る。

モデルとなるのは、ビルにあったリボルバー銃だ。

それと、手伝ってもらうメイドとして、一人呼んでいる人がいる。


「マルグレット」

「はい」


マルグレット。

彼女は、触れたものを自由に変形させられるという固有魔法を持っている。

この実に主人公っぽい能力は、残念ながら(シルビオ)には無い。

だから、こうして他の人に頼るしかないのだ。


「早速、この金属片を、設計図通りに形作ってくれないか?」

「お任せ下さい」


触れたものを自由に変形させられるといっても、その限度はある。

例えば、触れたもののサイズが自分よりも大きいと変形に時間がかかるし、細かい形への変形は出来ない。

ただし、どんなに硬いものでも変形出来るらしい。時間もそう変わらない。

そんな羨ましい能力で、マルグレットは金属片を変形させる。

俺は残念ながら見ているだけになるので、その間に別のことでもしよう。

マルグレットは、大人しめの性格のメイドだ。

何でも言われたことはキチンとこなし、何より要領がいい。

しかし......


「ったく、なんで私がこんなことをしなくちゃならないんですかね」


少し口が悪い。

ヴィオレッタといい勝負だが、ヴィオレッタの方がまだ愛情がある。

マルグレットは、単に口が悪いだけだ。

まぁ、文句を言ってもやることはやってくれるので、ありがたいのだが。


「こんなよく分からないもの作って、どうするんですか?時間の無駄じゃないです?」

「あー......いや、俺の武器になる」


武器が欲しいのだ。

さすがに風だけでは何とか出来ないこともあるし、風ばかりに頼っていては左腕への負担が大き過ぎる。

よって、あまり魔力を使わなくてもいい闘い方にしたいのだ。


「ふーん。ま、いいですけど」


なんだかんだ言って、やっぱり手伝ってくれた。

手伝ってくれたというか、ほとんどやってもらったんだけどな。

金属で形を作り、それに俺の付与魔法で爆破属性を付ける。

すると......


「出来た!」


リボルバー銃の完成だ。

ビルにあったのがリボルバーで良かった。

もし、オートマチックだったら、仕組みがわからなくてまた時間がかかっていただろう。

357マグナム弾。

こいつは、優れたストッピングパワーで知られている。

ストッピングパワーとは、銃弾が生物に命中した際、その目標となった生物をどれほど行動不能に至らしめるかの指数的概念のことだ。

まぁ要するに、強いということらしい。

俺も、少しFPSやサバゲーをやっていただけなので、詳しいことはよく分からない。


「リーネ」

「ふぇあ!?」


飛び起きた。

どうやら寝てしまっていたようだ。


「完成したぞ。今から威力を見せてやる」


予め用意しておいた的を、木に貼り付ける。

的は、紙にダーツの的のように円を描いただけだがな。

銃に弾丸を込め、的を狙う。

そして引き金を引くと、バンッという音と共に、銃弾が発射された。


「うわっ!!」

「ッ!!」


リーネも、マルグレットも音に驚いて、耳を塞ぐ。

確かに、銃声なんて初めて聞くもんな。

あ、クソ。

的には当たったが、真ん中を外れてしまった。


「な、なんですか!?今のは!」

「すごい音」

「こういう武器だ。カッコイイだろ?」

「よ、よく分かりませんが、カッコイイです!」


カッコイイことは分かってもらえたようで良かった。

ふむ。実用性もありそうだし、これで完成だな。


「ありがとな、マルグレット。また呼ぶ」

「二度と呼ばないで欲しいですが、なんなりとお申し付けくださいませ」


お申し付けづらいわ。


「あ、待ってくれ。もう一つだけあるんだった」

「嫌です」


そう言いつつも、踵を返して帰ってきてくれるのはなんだろうか。

ツンデレなのだろうか。

だとしたらツンツンというかトゲトゲしている。

トゲデレだ。


「このパーツだけ作ってくれればいい。給料は弾んでおく」

「では、お給料では無く......」


マルグレットは、もっと近付いてきて言った。


「シルビオ様との休暇が欲しいです」

「は?」

「正確に言えば、シルビオ様とお出かけしたい」

「......」


耳を疑った。

聞き返すも、同じ返答が返ってくるばかり。


「だいぶ前に、シルビオ様はリーネとメイド長とあとバカ二人で買い物に行きましたよね?」


あー、確かに行ったな。

てか、バカ二人って......


「それです。私もそれがしたい......です」


おい。なぜ頬を赤らめる。

やめろ。本当にツンデレなのか?お前は。

トゲデレか?トゲデレなのか?


「実を言うと、他のメイド達も羨ましがっているのですよ。皆シルビオ様とお出かけしたいのです」


他のメイド達も?

どういうことだ。今までそんなこと聞いた覚えはないぞ。


「そう、だったのか......俺はてっきり嫌われているものかと」

「そんなわけがございません。私たちが一体どれほど、シルビオ様を見てきたと思っているのですか?確かに、ずっと前はそうだったかもしれません。今すぐにでもこの仕事をやめたいと思っていました。しかし、今は違います。シルビオ様が変わってからというもの、毎日シルビオ様に会うのが楽しくなって来ました。知っているのですよ?シルビオ様はこっそりと私達の名前を覚えてくれていたことを」


!?

バレて......いたのか。


「前は名前を呼んですらくれなかったのに、今では全員名前を呼んでくれます。一人一人を見てくれます。私達がここにいる時間を、楽しませてくれます」


......面と向かって言われると恥ずかしいな。


「シルビオ様。だから、どうかお気になさらずに。あなたは充分、好かれていますよ」


その言葉を聞いた途端。

俺は、涙が出そうになった。

報われたと。そう思ってしまいそうになった。

だがしかし、ギリギリでくい止めた。

ここで泣いてはダメだ。全てを終わりにしてしまう。

これで終了にしてしまう。

それではダメだ。

これはまだ一歩なんだ。歩んでいる途中なんだと、自分に言い聞かせる。

これで、満足しちゃダメだ。


「......そうか」


でも......


「考えてやっても、いいかな」


恥ずかしくて、そっぽは向いてしまったが、でも答えた。

マルグレットは、嬉しさを噛み締めるように「ありがとうございます」と静かに言った。


「じょ、条件はそれでいいだろ。納得したらさっさとやってくれ」

「それにしても嫌ですね」

「つべこべ言うな」


今ので少し怪しくなったな。

本当はこいつの嘘なんじゃないか?

まぁそれでも、嫌いなやつとこんな風には話してくれないだろう。

なら、今度は。

信じてやってもいいかもしれない。








マルグレットが変形してくれた物を、組み合わせる。

これは銃と違い、金属ばかり使っていると重くなってしまう。

本当はプラスチックなどを使いところだが、あいにくこの世界には存在しないものだ。

代わりに、似たような材質の鉱物や、植物を使って作る。


「これは何ですか?」

「糸を出す装置だ」

「糸を?」

「そうだ」


イメージはスパイダーマン。

昨日の、蜘蛛と闘ってみて思いついたことなのだが、糸というのはとても汎用性が高い。

武器としても使えるし、それこそスパイダーマンのように使えば、機動性が上がること間違いなしだ。


「ただ、本当は手首にはめるくらいのサイズにしたかったんだけどな......」


やはり現実と映画は違う。

俺が作れるのは、せいぜいペットボトルほどのサイズが限界だ。

それを腕に付けて完成。

スイッチを入れ、手首を下に曲げると発射される仕組みになっている。


「すごい!何これ、どうやって作ったですか!!?」

「別に。魔法をいろいろくっ付けて、応用しただけだ」


そして、完成品をリーネに渡す。


「これはお前にやる」

「え!?そんな!私は......」

「お前にしか使えない」

「......」


リーネは、今まで短剣だけでやってきた。

しかし、それではあまりに危険すぎる。

ということで、得意な近距離を生かしつつ攻撃できるものを作ったという訳だ。


「いいんですか?」

「もちろんだ」

「ッ!ありがとうございます!!」


喜んでもらえて何よりだ。


「さっそく試して見てくれ」

「はい!」


俺が撃ったのと、同じ木を目掛けて飛ばす。

すると、針金のような糸伸び、すごい勢いで木に刺さった。


「......え?」


うむ。成功だな。


「あの......糸......」

「あぁ。出たな」

「いや、これ糸じゃないですよね」

「ん?糸だぞ」


あぁなるほど。

あまりにも硬いから驚いているのか。

まぁ、これは本当にリーネにしか使えない、リーネ専用の装備だからな。


「全然柔らかくないですよ!これ!どうやって木に巻き付けるって言うんですか!」

「それはだな。お前がやるんだよ」

「へ?」

「お前がその針金を糸にするんだ」


何を言っているのか分からないという表情だな。

無理もない。

その時、お前は洗脳されていたからな。

しかし、ここで俺が答えを出しても、リーネは成長しないだろう。

最初から答えを知っていても、次は教えてもらえないかもしれない。

自分で解くからこそ、使いこなすことが出来ると俺は信じている。


「さぁ行くぞ」

「へ?行くって、どこにですか?」

「決まっている」


これは、試みだ。

ほんの少しの試し。

これによって何かが分かるわけでも無ければ、俺の未来に繋がる訳でも無い。

だが、知っていて見過ごす訳には行かない。

正義感と言うやつだ。


「新装備を試しに行くんだ」

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