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ボス

このダンジョンは、他のダンジョンより比較的広い方だ。

故に、生息している魔物も大きい。

そして、魔物の強さは、ダンジョンの大きさによる。

小さなダンジョンだと、やはり住み着く魔物も小さいし、弱い。

だが、大きくて、まるで迷宮みたいなダンジョンには大きくて強い魔物がいる。

そう、それがボスだ。

ボスのいるダンジョンには、決まってお宝が存在する。

おや、もしかしたらお宝があるからボスがいるのかもしれない。

どちらが先かは分からないが、そんなこと些細な事だ。

鶏が先か卵が先か。ただそれだけの違い。

しかし、お宝の中身には興味がある。

ゲームでやった限りだと、例えば古代の超強い武器や、装備などの実用的なものから、チャームや換金に使える水晶。綺麗な玉。宝石。などなど、様々だ。

しかし、このダンジョンの場合はどうやらさっきのビルがお宝みたいだな。

それが妥当な考えだ。まだ確定ではない。

普通、ボスというのはボス部屋におり、主人公達を待っていて、倒すとお宝が手に入る。

というイメージがあるだろうが、それはゲームでの話だ。

確かにこの世界も、俺のいた所ではゲームだったが、少なくとも俺が今いるこの世界はゲームでは無い。現実だ。

そりゃあボスだって動くだろうし、別にお宝を守っているわけでもない。

中にはそういう、守護神タイプの魔物のいるが、ここのダンジョンのボスは、どうやらそうではないらしい。


「どんな魔物なんでしょうか」

「さぁな。だが、デカいことだけは確かだ。もしかしたら大蛇かもしれないし、スライムかもしれない。ゴブリンってことも無くはない」


ん?

道中、何やら石にへばりついた白い物がキラキラと光っていた。

なんだこれ。

足を止め、手に取って見てみる。


「蜘蛛の......糸?」


もうこれだけで、ここのボスがどんなやつなのか分かってしまった。


「二人とも気を引き締めろ。蜘蛛だ」


俺達は、再び走り出した。






反応があった場所に辿り着いた。

しかしそこにはもう、反応が無かった。

あんなに大量にあった呼吸も、今では虫の息程しか残っていない。

すると、


「おっと......ッ!?」


そこには、蜘蛛の糸でぐるぐる巻きにされている人達の姿があった。

クラスメイト達だ。

まるで、後で食べるために残されているかのようだ。


「んー!んー!!」


まだ生きている!

三人がかりで、急いで蜘蛛の糸を取り払らおうとした、がその時。

俺は忘れていた。

目の前のクラスメイトに気を取られ、すっかり警戒を怠っていた。


「そういえば、気配を消せるんだったな......」


大蜘蛛はいつの間にか、俺の背後を取っていた。

デカい。

体内で暮らせるのではないかというくらい、巨大だ。

一つ一つが俺の二倍以上のサイズで、六つもある目は、どれも俺を捉えている。


「リーネ、アマリア。俺がこいつを引き受ける。お前らは素早くみんなを解放しろ」

「了解です」


リーネは、迅速に物事を判断できる。

だから、俺が背後を取られた時点で、もう行動を起こす準備は出来ていた。

しかし、腰を抜かして動けないでいるのはアマリアだ。

蜘蛛を目の前にし、まるで蛇に睨まれた蛙のように固まってしまっている。


「どうした!何をやっているアマリア!」

「で......でも......」

「俺が引きつけると言っているだろう!早くしろ!」


もう限界だ。

蜘蛛はゆっくりと俺に近付いてきている。

俺が動かない限り、大声を出しても蜘蛛は襲ってこない。

しかし動けば、たちまち捕まえに来るだろう。

例え動かなくとも、近付けば捕まえてくる。

クラスメイトが全員捕まっているということは、それなりの強さという事だ。

どう見ても、ここのダンジョンのボスだ。


「あ......あ、あぁ」

「チッ、もういい!リーネ!アマリアを守ってくれ!こいつは俺が......」


勢いよく振り向く。

それと同時に、蜘蛛は飛びかかってきた。

その巨体にもし捕まれば、一溜りも無い。


「遠くに連れて行く!!」


バァンといつ爆発音。

ここに来る途中で拾って来た石に、爆破属性を付与しておいたのだ。

小石だが、沢山投げれば炸裂弾のようにはなる。

飛んで来ている蜘蛛を吹き飛ばすほどの力は無いが、視界を遮ることぐらいは出来る。

その間に俺は横へと回避した。


「こっちだデカブツ。そうだ、俺を捉え続けろ」


蜘蛛はすぐに方向転換し、俺を追う。

四本ある足が、その素早い自由な動きを可能としている。


「風魔法。ウィンドアーマー」


全身を風で覆う。

風の鎧が完成だ。これで万が一攻撃を受けても、まぁ、数回なら防げる。

俺自信にはノーダメージだ。


「ウィンドブラスト!」


そしてその鎧の両手と、両足から、高出力の風を噴出する。

まるで金属のスーツを身に纏うアメコミヒーローのように、空を飛ぶことが出来る。


「まだ、自由自在とまではいかないな」


やはり、噴出の調整が難しいところだ。

爆破や炎噴射に比べれば、全然曲がることも出来るし、高速で移動が可能だ。何より体への負担が少ない。

しかし、慣れていない分動きがおぼつかない。

特に、場所がダンジョンのように狭い。というか、開けていない場所だと、高度なテクニックを要求される。


「まぁ、お前を相手にするなら、これぐらいで充分だがな」


蜘蛛は、俺を追う。

だが、蜘蛛にとっては俺という的が小さい。

クラスメイト達は固まっていたし、地面しか移動出来なかったが、俺は空を行く。

その分、立体的な動きが可能なため、蜘蛛を翻弄することが出来る。


「おっと、危ねぇ」


蜘蛛の足をかわす。

リーチが長く、素早い攻撃だが歩くのに数本用している分、攻撃に使える足も少ない。

これぐらいなら避けられる。


「ふん。大したことないな」


と、思っていると、蜘蛛は新しい技を出てきた。

蜘蛛の糸だ。

出さないわけがない。

蜘蛛なのだから。


「無駄だ」


当たらない。

蜘蛛の糸を球のように飛ばしてきたり、分散させてネットのようにして捕まえようとしてくる。

が、どれもギリギリだが、かわせないことも無い。

それに、さすがに大きいので重量があるが、所詮は糸。

風で、吹き飛ばすとまではいかなくとも、少しズラすことぐらいなら出来る。


「だいぶ離れてはみたが、リーネ達は、どうだ」


こちらから状況を知ることは出来ない。

ウィンドサーチを使えば、だいたいのことは分かるのだが、今は戦闘中だ。

こんな時に、そんな繊細な技は使えない。


「クソ!蜘蛛野郎が!」


逃げてばかりじゃ、そのうち捕まる。

そうなる前に倒してやる。

くらえ。


「おりゃぁあ!!」


俺は振り向きざまに炎を食らわせる。

ただの炎魔法が、ボスに効くとは思えないが、俺の火力なら分からない。

もしかしたら効くかもしれないと、そう思いたかったが


「なっ」


早い。

早すぎる。

まだ数十メートルの距離があると思っていたが、振り向けばもうすぐそこに蜘蛛がいた。


「マジかよ」


これは......終わったな。

俺の魔法は、見事に糸に掻き消され、そのまま俺の体に絡みついた。

まさか耐熱性の糸だとはな。


「ぐああ!」


糸が絡まって解けない。

ベタベタしていて、思うように体も動かせず、もちろん引き剥がすことも出来ない。


「クソ......」


まぁいいか。

これで充分だったろう。

十分はもっただろう。

せめて、リーネとアマリアが逃げられるだけの時間は稼げたことだろう。


「チクショウ......ここまでか」


そう思った時だった。

目の前の蜘蛛は、急に俺の視界から消え去った。

高速で横へ吹き飛んで行ったのだ。


「なにっ!?」


蜘蛛は......何か、巨大な何かに持って行かれたのだ。

トカゲ......?いや違う。

ダンジョン内の壁を、自由自在に動き回る能力。これは、ヤモリだ。

だが、何故こんな大きなヤモリが?

まるで蜘蛛と同じ大きさ。か、もしくはそれ以上のサイズだ。

まさか......二体目の、ボス?


「シルビオさん!」


と、リーネの声が聞こえる。

丁度いいタイミングだった。リーネの後ろには、アマリアとクラスメイト達の姿が。


「大丈夫ですか!?」

「あぁ、問題ない。それよりもこの糸を切ってくれ」


リーネの短剣で、拘束を解いてもらった。


「何ですか!この大きな魔物は!なぜ二体も......」

「俺も分からない!だが、とりあえずは今のうちに逃げるぞ!急げ!」


ヤモリが蜘蛛と闘っているうちに、俺達はコソコソと間を通って逃げた。

一体あのヤモリは何なのか。

なぜ俺を助けてくれたのか。

謎は残ったままだが、今は生き残るのが優先だ。

そのままダンジョンの出口まで直行した。

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