表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/80

転校生

「降参する」


突然、オーセリーが両手を上げてそう言った。


「は?」

「降参すると言ったのだ。私はもう闘う気がない。私の中で、降参は負けには入らないのだよ」


意味が分からない。

一体どうしたというのだ。


「私の固有魔法である洗脳が解かれてしまった今、私の武器はもう何も残っていない。闘うだけ無駄だ」

「......また、騙すつもりか?」

「いいや、今度は本当だ。早く騎士を呼べ。私は、ここから逃げも隠れもしない」

「......」


なら、無理に闘う必要はない。

街をこんなにしておいて、殴りのひとつでも入れたかったのだが、大人しく捕まると言うのであれば仕方がない。

俺とリーネは、もう騙されないように細心の注意をはらって、騎士を待っていた。

騎士は、国の警察のような役目をしている。

俺達は騎士ではないので、オーセリーがこれからどういう刑になるのかは分からないが、恐らく死刑。または、無期懲役にはなるだろう。


しばらく待って、騎士達が来た。

オーセリーは、本当に何をするでもなく捕まった。最後は案外呆気ないものだった。

俺は、逆にそれが心残りだったがな。


「あ、そうそう。俺の計画を邪魔した貴様はゆるせないが、一つ助言をしてやろう」


オーセリーは、最後に振り向いて俺に言った。


「ヴァレンティーノ=カールには、娘がいる」

「......」


どういう事だ。

そりゃあ王様だし、娘の一人や二人はいるだろうが、改めて言うことか?

そんなことが助言?聞いて呆れる。

俺は、特に気にするでもなく、その事を聞き流した。

今は疲れでいっぱいいっぱいだ。


「お前も、後で事情を聞かせてもらうからな」


と、俺とリーネも騎士に連れていかれてしまった。

どうやら休める時間は無いようだ。








怒られてしまった。

やはり、俺の独断専行が悪かったのだろう。

もしこれがアランだったら、オーヴェインを倒したことを褒め讃えられ、許され、そして国を守ったという賞賛を貰えることだろう。

確かにオーヴェインを倒したことは認められた。だが、その結果として学園の謹慎処分が免除になっただけで、特に賞賛はされなかった。

代わりに俺は、激怒を食らうことになった。


「......シルビオさん」

「......なんだ」


帰りも、先生が送ってくれた。

随分と怒られたので、少し気まずい雰囲気だ。


「ありがとうございました」

「....何がだ」

「私が洗脳されていた時に、シルビオさんは私を洗脳から解いて下さった。私を助けて下さったお礼です」


リーネは、軽く頭を下げる。


「いや、そんなものはいらん。お礼を言われるほど、大きなことじゃあない。当たり前のことを、しただけだ」


そう言うと、馬車の前方で先生が吹き出すように笑った。

大爆笑では無かったが、それがまた馬鹿にしているようで腹ただしかった。


「いやぁ、オルナレンもそんなこと言うんだなぁと思ってね。悪い悪い」


先生ズラしているのがまた腹立つ。

ウザい先生だな、こいつ。


「随分と前から変わったようだね」

「ふん。『変わったようだね』か。そうだといいですけどね」

「あ、そういう所は変わってねぇな」


......まぁいいさ。

そんな事よりも気がかりなのはオーセリー。

あんなにも呆気なく降参するのは、不自然すぎる。

単に戦闘能力の差という理由だけで降参したとは、とてもじゃないが思えない。

何か他に理由がある可能性が高い。

王に恨みがあるようなことを言っていたな。

いくら王様でも、百パーセントの支持率なんて無理ってことか。


「......」


『ヴァレンティーノ=カールには、娘がいる』か......

なんだろうな。


「......先生」

「なんだ?」

「ヴァレンティーノ王に、娘って......いますよね?」

「あぁ、いるが。それがどうした?」

「いえ。そういえば、見たことないなぁと思いまして」


そうだ。見たことない。

こともない......か?

遠目でなら、一度お目にかかったことがあるな。

ゲームでだけど。


「そういえば、王の娘ではないが、そう言われても違和感無いくらいの女の子が、明日転校してくるらしい」

「へぇ......」


それくらい美人......というか、高貴なオーラを纏っているってことか?

やはりこれも、ゲームでは見られなかったイベントだ。

もう完全にルートから外れているな。

番外編、隠しルートもいいところだ。いままでのゲームでのストーリーが全くもって通用しない。


「どんな子なんですか?」

「ああそうだなぁ。確か名前は─────」


「アマリア=ウェンデルです。どうぞよろしくお願いします」


ま、まじかよ......

The・貴族というような、上品な立ち振る舞い。

その姿はとても美しく、見とれてしまいそうなくらい良い雰囲気を纏っている。

パーティーの時は、他の人ばかり気にしていてあまり見ていなかったけれど、学生服とはいえ、こうして見てみるととても美しい。

綺麗な人だ。








「......それで?」


なぜこの学園に来たのか。と、休み時間になって、俺は質問した。

本当はもっと早く話したかったのだが、転校生がこんな美人だなんて、クラスメイトの男共が黙っちゃいない。

休み時間になった途端に、一斉に群がり出した。

まるで、夜の電灯に集まる蛾のように。


「あなたがいるなんて知らなかったんです。私、様々な学園に入学しては転校してを繰り返していたので、ここに来たのも別におかしくはありません」


なるほど。本当に偶然ということか。


「それにしても、なんて言うか......運命ですね。こうして再び出会えたことが......」


そう言って、アマリアは顔を赤らめた。

自分で言ってて恥ずかしくなったようだ。


「あー......まぁ、一人でも知り合いがいた方が馴染めるだろうし。良かったんじゃないか?」

「うぅ......」


知り合いと言っても、クラスメイトには嫌われているがな。

クラスメイトというか、この学園全体だな。


「そういえば、あなた。シルビオさんの護衛さんですね?」

「あ、はっ、はい!」


そうか。アマリアは直接会っては居ないが、護衛としてリーネを連れて行ったから、知っていてもおかしくないか。

ただ、リーネは外で待機して貰っていたので、中にいたアマリアがリーネを見たかは分からない。それに、外には他の貴族の護衛だっていたわけだし、リーネを護衛だとなぜ分かったんだ?


「護衛と言っても、クラスメイトだなんて......随分と信用出来るお友達なのね」

「お友達じゃない。家族だ」


一緒に暮らしている、家族。

そう、リーネは家族同然だ。


「家族......ね」


アマリアは、少し寂しそうな顔をした。


「アマリア?」

「ううん。なんでもない。ただ、ちょっと悩みがあるだけ」


悩みか。

知ってしまったからには、俺が解決してやろう。

あんな寂しそうな顔をしておいて、放っておく訳にはいかないだろう。


「悩みがあるなら、打ち明けた方がいい。その方が楽だ」

「......ええ、そうします。転校して来たばかりなのに、こんな生意気なこと言ってすみません」

「気にすんな。困った時はお互い様だ」


アマリアは、ニコッと笑った。

そして、悩みを打ち明ける。


「前に言った婚約者のことですが、実はお父様が勝手に決めてしまって......」


なるほどな。

割とよくあるパターンだ。大抵、貴族の子供は勝手に婚約相手を決められるものだ。

それは今まで、まるで伝統であるかのようにそうして来たというのもあるが、やはり、親の願望なのだろう。

より、金の多い所へ。

より、地位の高い所へ。

結局、自分の利益しか考えていないんだよな。いくら親とは言え、子供のことを第一に考えているとは、必ずしも言えるわけではないのだ。

(シルビオ)の親も......同じようなものだ。


「納得いかない。と?」

「はい......」


アマリアは、また悲しげな表情をした。


「見た目は良いのですが、中身が少し厳しくて。私と意見が合わないと言いますか、優しさに欠けると言いますか......なんというか、運命を感じない人なんです」

「運命を、感じない......ね。なら、俺が婚約者になってやろう」

「え?」

「もちろん仮だがな。俺が代わりに婚約するふりをして、とりあえずそいつとの婚約を破棄させるんだ。そしたら新しい別の人でも探せばいいさ。それまで俺が、婚約者の席を守っておいてやるからよ」


俺は案を提示した。

この作戦には少々問題があるが、俺が思いつく限りではこれしかない。

果たしてアマリアの親が、俺のことを認めてくれるとは限らないがな。

だから、アマリアがこの作戦に乗るとは考えにくいが、一応案として出しておいた。


「本当ですか!?」


と、思ってたよりも食いついてきた。


「あぁ、いいだろう。ただ、(シルビオ)は嫌われ者だ。お前の両親が許してくれるとは......」

「それなら問題ありません!財産と地位さえあれば、誰でも良いと思うような人達ですから」


そ、そうなのか。

本当に親か?その人達は。

全く娘のことを考えていないようだが......


「シルビオさんなら余裕で越えています。少し恥ずかしいですが、是非!その作戦で!」

「お、おう。分かった」


アマリアはとても嬉しそうだった。

なんだが、よく考えてみると恥ずかしいものだな。

嘘だとはいえ、結婚する事になるとは。


「それじゃあ、すぐにでも」

「もう実行するのか?」

「はい。相手側との面談は明日です。シルビオさんも来てもらいます」


早っ。


「大丈夫です。早速今から練習しましょう」


わりと大胆な子だな。

見た目は大人しめなのに、行動力はある人だ。

そういう所も、魅力的だな。


「本当に大丈夫か?」


俺は、少し心配になる。

しかしアマリアは、自信たっぷりに言った。


「私、騙すの得意ですから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ