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模擬戦再び

保健室。

案外あっさり、というか本当に秒で終わってしまった。

なんだこれ。別にパワーアップでもなんでも無いじゃないか。


「いやーオルナレン君。恐れ入ったよ」


先生だ。

俺はフレデリックを倒した後、また元の姿に戻ったフレデリックを保健室まで連れて行ったのだった。

俺が怒らせて、キレたフレデリックを俺が倒す。なんだこれ。


「まさか魔人を一人で倒してしまうなんてな」

「え?」


魔人?


「今の、魔人だったんですか?」


魔人。人が、魔物化してしまったもの。

もうこんなところで出て来るのか。

ゲームだと、もっと後だった気がするし、もっと強かった気もするが......

そういえば、今はアランが強化合宿に行っている時期だったな。

道理で見たことないはずだ。

もう、本当にゲームは当てにならない。

俺の知っているストーリーと、全くかけ離れている。

いっそ忘れて、このルートを新規で攻略していった方が良さそうだ。


「あぁ。普通なら、魔人に自我は無いからな。分からなくても無理はない」


そう。魔人には自我がない。

冷静さの欠けらも無い。はずなのに、フレデリックは今までその事を隠していた。

自分が魔人であることを。

意図的に隠し通していた。


「隠すだなんて......果たしてそんなことが出来るのか?」

「実際やっている。なら出来るのだろう。もしくは、別の方法で魔人化したか......」


別の方法......?

方法も何も、そもそも魔人とは一体どうしたらなってしまうのか分からないものだ。

決まった年齢が無ければ、性別も、時期も、魔力量も性格も。

なにも関係がない。

ただ、突然自我を失って、人を襲うようになるのだ。

それが別の方法?つまり、意図的に魔人化したという事か。


「まぁ、そんなことはどうだっていいさ。それよりも、君は早く教室に戻りなさい。このことは黙っておくし、くれぐれも外部には漏らすなよ。魔人を倒したなんて知れたら、すぐさま騎士に呼ばれてしまう」

「ダメなんですか?」

「まだ君は教わっていないことが沢山あるだろう?実力はあっても、それを使いこなせるように経験しなければ、騎士になっても死ぬだけだ」


それもそうだな。

まぁそもそも、別に俺は騎士を目指していたわけでもないし、面倒事には巻き込まれたくない。

このことは内緒にしておいた方がいいな。


「それじゃあまた、フレデリックが起きたら教えて下さい。彼に聞きたいことがあるので」

「任せろ」

「では」


「失礼しました」と、俺は保健室を出た。

いつもの教室......は壊れているので、今回は別の教室での授業だ。

クラスのみんなからの視線が痛い。

あちらこちらで、コソコソと俺の話をしているのが聞こえる。

が、何を言っているのかまではちゃんと聞き取ることが出来ない。

タチ悪いな。


「シルビオさん」


と、リーネが近付いてきた。

そういえばもうリーネも嫌われてしまっていたのだな。

悲しいことに、この学園で本当に心を許せるのはリーネだけのようだ。


「どうやら皆さん。フレデリックさんをまだ良い奴だ。友達だと思っているみたいです」

「なに?」


あれだけのことをしておいて、まだ仲間だと言いきれるのか。

どう見ても俺に恨みを持ち、そして襲ってきたじゃないか。


「......もう、クラスメイトのことを気にするのはよそう。時間の無駄だ」

「えっ?」

「無駄でしかない。だから、俺達は俺達の生活をおくろう」


例え嫌われていようとも。

もう諦めるしかないのだ。

(シルビオ)が、好かれることはもう無いのだ。









「これからまた、模擬戦を行う。各自、二人チームを組め」


二人チームという所に、先生の優しさを感じられた。

俺はもちろんリーネと組む。リーネとしか組めないからな。


「久しぶりですね。模擬戦」

「あぁ。というか、俺達はしばらく授業を受けていなかったんだがな......」


その分、皆に追い抜かされていると思っておいた方がいいだろう。

俺達はまだ、闘い方すらも学んでいないからな。

特に俺は、(シルビオ)になったのが途中からだったから、知識はほぼゲームでしか学べていない。


「組んだな。それじゃあ、適当に近くのチームと闘え」


近く?


「げっ!?シルビオかよ......」


おい。聞こえるくらいの声量で言うな。

こいつの名前は覚えていないが、まぁどちらにせよ俺に恨みがあるのは分かる。

無くとも嫌っているだろう。


「でもシルビオは弱いって聞いてたよ」

「なんだそうなのか。なら余裕」


俺の左手は、なるべく使いたくないな。

となると、リーネにほぼ闘ってもらう形になるが。


「すまないなリーネ。悪いが少し闘ってくれないか?俺はサポートに回らせてほしい」

「分かりました。お任せください!」


リーネの装備に魔法を付与しておいた。

身体能力を上げるのは、それに依存してしまう可能性があるため、付与しなかった。

あくまでリーネの力で。

相手は二人とはいえ、リーネなら大丈夫だろう。

危なくなったら俺も加勢する。

果たして、俺達がいない間にどれほど皆が強くなったのか......


「それでは、始めっ!」

「やぁあああああ!!」


始めと同時に、相手の一人が俺に向かって突進して来た。

しかし、そこにリーネが挟まる形で間に入った。

今回は武器無しなので、相手は俺に殴りかかろうとして来ていたが、リーネはその手を掴み、素早く背後へ回った。

手は掴んだままだったので、背後で捻った。


「いでででででで!」

「私が相手です!」


おぉ......なかなかやるじゃねぇか。

リーネもたくましくなったなぁ。


「てめぇ!離せ!」


もう一人が助けに来た。

だが


「ぐふっ」


リーネの蹴りが入った。

そりゃあそうだ。何も考えずに正面から突撃したらそうなるに決まっている。

ったく、リーネは両手が塞がっていて蹴りしか出来ないのは見てわかるのに、どうしてそれをかわせないんだ。


「ぐああああ」

「う......」


二人は、倒れてしまった。

呆気なかった。

俺が何もせず、何をするでもなく立っていただけで。

リーネが一人一撃づつ食らわせただけで。

このザマだ。


「お、お前シルビオ!女の子に闘わせるなんて最低なやろうだな!おかげで女の子には攻撃できなかったぞ!」


......しかもこんなことを言っている。


「......」

「な、なんだよ!その目は!」


こんな程度なのか?

早めに終わってしまったので。他の試合も見てみるが、みんな大して変わらない。

前はアランがいたので、まだレベルが高かったが、今では強いと思う人が一人もいない。

正直言って、


「弱い」

「シルビオさん?」

「弱すぎる」


これじゃあ学園に行けてなかった俺達の方がよっぽど強いじゃあないか。

ここまでガッカリだと、逆に腹が立ってくる。

お前らはこの数日間、何を学んでいたのだ?と、問いただしたくなる。


「おいシルビオ!」


まただ。

もう次の試合の相手が、俺に挑発に来たようだ。


「お前が闘え」

「......」

「俺とタイマンだ」


傲慢だな。

別に俺は構わないけど、どうなっても知らないぞ。


「かかって来い!」


次の試合が始まった。

もう授業でもなんでもない。

ただの、弱さの証明だ。


「怪我しても知らないぞ」

「お前が俺に怪我?かっはっはっ!笑わせるな!」


......少し、黙らせるか。

俺は、左腕で扇いだ。

まるで暑い時に手で扇ぐ時のように。

それを、相手にやる時と同じことをした。

パタパタではなく、ゆっくりと大きく弧を描いて。

ストロークをした。


「ん?」


周りに風が起こる。

抑えに抑えての風だが、それでも感じる程度には吹いている。


「お、お、おお??なんだ!?これ!」


遅れて、風はどんどん強くなる。

風向きは、俺から相手へ。

始めは、前へ進めない程度だが、そのうち......


「う、うおおおお!?」


足は浮き、地面との接触を絶たれる。

そして宙へと浮いた体は、後ろへと吹き飛ばされる。


「ぐはっ」


飛ばされた体は、最終的に壁へぶつかり、止まった。

オーヴェインの尻尾に比べれば、そんなに勢いよくぶつかったわけでも無いだろうに、相手はとても痛がっていた。


「ぐ......くそ」


相手はもう、立ち上がらなかった。

もう一人に至っては、攻撃すらしてくる気がないようで、大きな口を開けて俺を見ているだけだ。


「い、一体どんな魔法を使ったんだ!?」


珍しい。

(シルビオ)の実力だと認めるのか。

普通は俺のことを弱いと決めつけて、俺の攻撃だとそもそも思わないからな。


「リーネ、だったよな?お前強いな」


......おい。

俺がやったように見せて、実はリーネの攻撃でしたってか?

ったく、本当に腹の立つ奴らだ。


「......リーネ」

「はい?」

「もう学園に通う必要がないかもしれない」

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