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ローテリトリー

「シルビオ様、またローテリトリーの時間が来ました」

「またか......」


ローテリトリー。

下級の魔物達がいる場所だ。

しかし、前回はなぜかドラゴンがいて、そのせいで下級魔物は一匹もいなかった。

後から聞いた話だと、騎士達が見に行った時には何もいなかったらしい。

ドラゴンも、下級魔物も。

下級の魔物ならそのうち出てくるということで、この件は一時保留だそうだ。


「それで、まだドラゴンの詳細は分からないんだよな?」

「えぇ。だから、それを含めても行くのです」


なるほど。

俺が魔物を相手に、特訓するついでに、ドラゴンのいた理由を調査するというわけだな。

ん?だとしたら、調査するなら俺よりもヴィオレッタの方が向いているのでは?


「今回は私も同行させていただきます」

「え?」


突然だった。


「前回、予想外のことがありましたから、警戒して行きましょう」

「いやいや、待て。なぜ当たり前かのように付いてこようとする?」


ヴィオレッタは首を傾げる。

つまり、森へは俺とリーネとヴィオレッタの三人で行くということだろう?

それは、ドラゴンが出ることを想定するならあまりにも危険な行為だ。いや、だからこそなのか。

危険だからこそ、三人で行く。

普通なら三人なんかでは行かず、もっと数百人、いや、数千人単位で行かなければ、ドラゴンには勝てないのだがな。


「ご安心を。何も、ドラゴンと闘いに行くわけではございませんので。ただ、調査がしたいだけです」

「そ、そうか」

「それと少しの心配です」


少し......なんだか寂しいことを言うな。

もっと心配してくれてもバチは当たらないだろう。


「それでは早速行きましょう」


もう行くのか。

......まぁ、特にやることもないし、準備も出来ているから別にいいのだが。

俺はリーネを呼んで、一緒に行く。

と、ヴィオレッタが背中に背負っている物に気付いた。


「ヴィオレッタ、それ持つよ」


めちゃくちゃ大きいリュックサックだ。

山にでも行くんじゃないかと、いや、山に行くにも大きすぎるリュックを背負いっている。

ここは男として、やはり主人として良いところを見せなくては。

そう思っていたのだが、ヴィオレッタにはあっさりと断られてしまった。


「ダメです。メイドである私が持ち運びます」

「いやいや、俺が持って行くよ」

「いえ、私が持っていきます」

「「それは無い」」


リーネは一番無理だ。

俺やヴィオレッタよりも小さい体で、重い荷物を運ばせるのは不可能。よって、俺とヴィオレッタのどちらかになるわけだが。


「ダメです」

「......ならせめて、軽くなる魔法だけでも付与させてくれ」


そう言って俺は、軽量化の魔法を付与した。

これでこのリュックサックに入れた物は軽量化する。

よし、これで準備は完了した。

一体何をこんなにもリュックに詰めているのか分からないが、概ねサバイバル用品などだろう。

野宿を想定して。

ヴィオレッタはわりと心配性だ。







ローテリトリー。魔物の森。

前に比べると、霧が晴れている。

やはり、あの霧はドラゴンの仕業なのか?分からないが、辺りが見渡しやすいのはありがたい。

俺達は、しばらく歩いて辺りを散策する。


「やはりいないな......」

「ええ、さっきから影も形も、痕跡さえも見つかりません」

「でも確かにいたんです!私もこの目で見ました」

「それは分かっています。しかし、こうも跡形もないと、不自然にも程がありますね」


本当にその通りだ。

まるで不自然。自然じゃない。


「仕方ない。さっきから下級魔物ですらも、まだ見かけないし、今日のところは帰るとするか」

「......はい」


ヴィオレッタは、あまり納得いってるようには見えなかったが、帰ることにした。

俺達は元来た道を戻る。

が、


「あれ?こっち......でしたっけ?」

「いや、こっちじゃないか?」


どうやら迷ってしまったようだ。

心做しか、さっきよりも霧が濃くなって来たような気がする。

なんだか嫌な予感がする。


「これは......まずいんじゃないか?」


帰り道が分からなければ、道すらも見えない。

辺り一面森ばかりだ。どこを取っても同じ景色。ただただ白い霧が舞っているだけ。


「お二人共、落ち着いて下さい。離れないようにするのが最優先です」

「そ、そうだな。一旦落ち着こう」


深呼吸をして、心を静める。

リーネも、自分を落ち着かせる。

よし。


「まずはここを動かないことです。ここを動かなければ、いつかは助けが「シッ!」


俺は無理矢理、ヴィオレッタの口を塞いだ。


「おいおい、まるで俺達がここから出られないと確認してから出てきたみたいだぜ」


魔物のお出ましだ。


「グオオオオオオ!!」


一匹の魔物が吠えると、他の魔物達も一斉に吠えだした。

タイプは狼。

だが、俺の知っている狼よりも、一回りも二回りも大きい。


「そのようですね。ハメられたようです」

「ど、どうしますか?」

「もちろん、全員ぶっ倒す」


ここは逃げると言いたいところだったが、ちょうどいい機会だ。

まだ魔物とは一度も闘ったことなかったし、自分の実力を知りたい。

ヴィオレッタにも余裕の表情が見られる。なら、簡単に倒せるという事だ。


「ヴィオレッタ、危なくなったら助けてくれ。それまで手を出さないで欲しい」

「承知しました」


だんだん俺の扱いに慣れてきたようだな。

今までなら止めていたはずなのに。


「爆破属性付与!ストライクアーム!!」


魔法を付与した右手袋で、一匹の狼を殴り飛ばした。

拳は、狼の腹に当たったかと思うと、同時に爆発した。

凄い破裂音と爆風で、俺も少し後ろへ飛ばされてしまった。

だが狼はもっと飛ばされ、大きな木に当たって止まった。

一撃だ。


「......お、驚いた。まさかこんな威力だとは」

「......凄い」


ヴィオレッタも、驚きを隠せないといった様子。

しかしそれでも、いや、そのせいで他の狼達が一気に襲ってきた。

遊びは終わりだと言わんばかりに、仲間の敵を討つかのように。


「グアオオオォオオ!!」


俺は、そんな狼達を薙ぎ払い、殴り飛ばし、叩きのめした。


右手が狼に強く触れる度に、手袋を爆破し、狼にダメージを与える。

森には爆発音が響き渡り、辺りが黒い煙で充満してしまった。

火薬の匂い。

一方的過ぎて、闘いにすらなっていない。


「まだ軽く付与しただけなのにな......」


俺の真骨頂の魔法を付与する前に、狼達はどんどんやられていく。

見た目ほど強くない魔物だったのか?

と、あっという間に魔物は片付いてしまった。


「ふぅ、意外と簡単に倒せたな」

「お疲れ様です。お強くなりましたね。まさかワイルドウルフを倒されるとは」


ワイルドウルフ......と言うのか。


「所詮下級だろ?」

「いえ、下級の中でも結構強い魔物ですよ」


そうなのか。まぁ、そんなやつをこれだけ簡単に倒せたという事は、おそらく俺は中級までは闘えるという事だな。


「シルビオ様は充分お強いと思いますよ」

「そうか......ありがとう。そう言ってくれると、自信がつくよ」


とは言ったものの、俺達がいくら強くたってここから脱出出来なければ意味が無い。

目的は、このテリトリーから脱出することだ。






しばらく、真っ白な道を歩く。

特に何も無い。

あるのは、ジャングルのように生えている木々と草。

それと霧のみ。

方角が分からなければ、道もわからない。

ただひたすら、真っ直ぐと進んでいる。


「まだ見えませんね」

「あぁ、全く出口の見当もつかん」


こんなことをしていては、夜になってしまう。

夜は、魔物が活発になるから危険なのだ。

まぁ、ここじゃ夜になったか分からないが。

ローテリトリーとは言え、夜は危険だ。


「もうすでに夜なのか分からないが、ここら辺は安全そうだ」

「はい。索敵にも引っかかりません」

「そうですか、それならここらで一旦休憩にしましょう」


それがいいかもしれない。

これ以上歩いていても出口が見つかるとは思えないし、体力を消耗する一方じゃいざと言う時に疲れ果ててしまう。

なら、今のような安全な時に休憩しておいた方がいいだろう。

ヴィオレッタは、持ってきた大きなリュックサックから、様々な道具を取り出した。

まずは寝巻き......ではなく布団だ。

いや、これ普通の布団......どうりでこんなに大荷物になるわけだ。


「とりあえずは食事をしましょう。腹が減ってはなんとやらです」

「確かにお腹が空いてるな」

「わ、私は空いてませんよ」


ぐぅううと、リーネから大きな音がした。

リーネはお腹を押さえて、恥ずかしそうに顔を赤らめる。

別に無理しなくてもいいのに。


「はは、別に我慢しなくてもいいんだぞ。俺に構わず食え」

「す、すいません......」


俺達は、非常食料を食った。

さすがに美味しいとは言いがたかったが、さすがはサバイバルなのか、多少はマシな味になった気がする。

ほら、海で食べる焼きそばはなぜか美味しいものだろ?あれと一緒さ。


「私達、ちゃんと帰れますかね......」

「何言ってんだ。帰るに決まってるだろ」


まだやり残したことは沢山ある。

こんな所で死んでたまるか。


「......そういえば」


と、ヴィオレッタが唐突に話を始めた。


「失礼を承知で聞きます。リーネはなぜ、奴隷になったのですか?」


こんな状況でそんな質問?ただでさえ聞くに耐えない質問なのに、わざわざこの状況で?

いや、きっとヴィオレッタには考えがあるのだろう。

この状況で言うことによって、場を落ち着かせる。

リーネに集中させることが出来ると踏んだのか。


「......私が、奴隷になった理由......ですか」


リーネは、悲しげな表情をした。

やはり話したくないといった感じだ。


「無理はしなくていいぞ」

「い、いえ。大丈夫です」


リーネは語ってくれた。

その過去を。

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