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秀頼戦記  作者: 浮き草
プロローグ・三国志編
1/8

司馬懿の野望(1)

はじめまして。拙い部分もありますがよろしくお願いします。

「ふぅ~ やれやれ、やっと陸地が見えてきたの。この歳になると長い海旅は堪えるわい」、深く皺が刻まれたその顔はまさしく老人だが、それでもなお整った顔となにより野心に満ち溢れた油断の出来ない眼力、それがこの言葉を否定するようにまだまだ第一線で活動出来る事を裏付けている。


その言葉にお付の将官征北将軍が苦笑しながら同意する。顔には戦でついたと思わしき無数の傷、そして立っているだけで歴戦の勇士だと思える雰囲気を醸し出している。「まったくですね。必要な事とはいえ、なぜ我々がこのような蛮族の地に行かねばならぬのか。ましてや天朝に仕え、さらに天命まで下されている閣下を呼びつけるなど、蛮夷どもは礼が全くなっておりません。」と上官の愚痴にあわせてついつい不満が口から出るこの男は胡曼才(遵)。


「おいおい、そんな事言うもんじゃないぜ。せっかく力を貸してくれそうなんだ。もう少し穏やかに行こうぜ」、ヘラヘラしながらそんな軽口を叩くもう一人のお付の将官左将軍からは不平不満の雰囲気どころか、つねに笑みを絶やさず一見するとふざけた雰囲気だ。だが持ち前のイケメンルックが、マイナスにも取られがちな態度を打ち消しているこの男は張齢宗(永)。


「カカカカカ、左将軍の言うとおりじゃぞ。まあおぬしの言いたい事も解からない事もないのじゃがな、わしは必要とあらば誰に対しても頭を下げるにやぶさかではないぞ。それになこの一時さえ凌げれば、後はどうとでもなるんじゃからな。よいか? 征北将軍よ、わしが若き頃令君殿より教えられた事じゃが、人を見る目をきちんと養い、自分より優れたる物が一つでもあり、頭を下げる時というものがあれば下げねばならぬ。それは蛮夷どもにも当てはまるのじゃ、しかと心にきざめよ。」と老将が好々爺の様な笑みを浮かべる。老人の名は大将軍司馬仲達(懿)であった。


司馬仲達の話を尊敬のまなざしで見つめながら胡曼才は頷く。張齢宗が上官の意見にかこつけて「そうだぞ~」とチャチャを入れると曼才は「黙れ」と睨みつけながらすごむ。


しばらくすると、いくつかの船団が見えてきた。その船は一艘こそ帆がかけられているがその他は手漕ぎのようである。すこし立派と思われる帆船を良く見ると先程からキラキラ光っている。よく目をこらすとマストのテッペンに鏡の様なものがつけられていた。


その船団はしばらく進むと海上で泊まり、こちらが進むのを待っているかのように見える。自分達の船団と迎えの船団が一つになり、同時に海上で一艘の帆船が自分達が乗っている船に板をかける。奥の方から男女二人の人物が現れ、話をしながら歩いてくる。その言葉は独特で解からなかったがしばらく二人で話をしていたかと思うと、こちらに向き直り槍を横に置き両手を地面につけて伏したかと思うと女の方が挨拶をしてきた。


「女王陛下よりお話は聞いております。大将軍閣下と征北将軍閣下・左将軍閣下でありますね?」


突然の事に面食らったが、すぐに表情を崩して笑顔になりながら誰何する。


「わし等の事を尋ねるとは、女王の臣か? 名前はなんと言う? 確か案内は不要と伝えたはずじゃが?」と余裕を持ってたずねる。


「はっ!! まさしく女王の臣であります。私はシマコ、こちらの男はセココと申します。不要とはお聞きしましたが、それでもここは海上、万が一という事もあります。対馬や沖ノ島駐留の我々だけでは不安が残りますので」と生真面目で笑みの一つも浮かべぬ体で女は答える。


「ほほほ、そうかそうか。それはご苦労。では、女王の下に案内いたせ」と命令すると船は再び動き出す。波に揺られながら時を過ごしていると陸地が見えてきた。時間が経つにつれ集落や港らしき物も見えてきたが、家はまばらで大国というのもおこがましいくらいなのは明らかだ。


しばらくして船が着岸して岸に降り立つと、セココが進み出て「それではこちらが皆様の逗留場所となっております。不便がありましたなら、家人にお申し付け下さい。今日の夜はこの集落伊都を治めている一大率様とのお食事、そして陛下との会談は明日になりますので」


「あい解かった。ご苦労じゃった。もう下げってよいぞ。おおそうじゃ、使用人の者達もわしが呼ぶまで下げてくれ」と穏やかな口調で言うと、「「はっ」」と返事をして下がらせた。それを見届けた司馬仲達は、お付の将官二人が席に付きお茶が出されるのを待ったのであった。

とりあえず2話投稿します

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