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人形姫ローズ  作者: ブリガンティア
アフター・ウォーズ

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785/811

785. 穏やかな日々

「気分はどうだ、ローズ?」

「あら、陛下」


突然エフェルガンの声が聞こえてくると、ローズは立ち上がって、頭を下げようとした。けれど、エフェルガンはしなくても良い、と合図を出した。


その理由は単純だ。神殿では、皇帝であるエフェルガンよりも、龍神の娘であるローズの立場の方が上だ。なぜなら、龍神にとって、ローズはすべてだからだ。


そもそも、紋章を持っている人は、普通の人ではない。皇帝であるエフェルガンを含めて、彼らは龍達の代わりにローズを世話するための存在だ。龍達の加護によって、彼らは人離れの力に与えられた。けれど、その対価は龍達に忠誠をしなければならない。


裏切ったら、死ぬ。思ったことだけでも許されない。


つまり、命と引き換えな力だ。その目的はただ一つ、ローズを守るためだ。


「うーん、元気だけど、とてもおなかが空いたの」

「そうか」


エフェルガンは微笑んで、愛しい我が妃を見つめている。


「後ほど、料理長に美味しい料理を作ってもらうように言おう。準備がもう少しで整う」

「うん」


ローズはうなずいた。


「私はどのぐらい寝てた?誰も教えてくれないの」

「あの日から、一ヶ月間ぐらいだ」

「あら・・、結構長かったね」


ローズは瞬いた。


「でも、戦争は本当にもう終わったの?」

「終わったよ」


エフェルガンはうなずいた。


「エルムンドは負けを認めた。エスティナモルグは・・、残念ながら、責任追及は不可能になってしまった」

「うむ、まさか、どちらの龍に滅ぼされたりして・・」

「その通りだ」


エフェルガンはうなずいた。


「エスティナモルグは龍神様に滅ぼされた。余は見なかったが、報告によると、あの日は龍神様が空中で現れて、エスティナモルグを滅ぼしたらしい。スズキノヤマ暗部隊がエスティナモルグに到着した時、もう国その物はなかった。燃えた大地と海に呑まれていく大陸で、その周囲で波で呑まれた人々や遺体の数々・・、建物の跡はあったものの、生命を感じることができなかった」

「うむ、聞いても良いなら、・・誰の報告だった?」

「ロッコ殿の報告だ」


エフェルガンが答えると、ローズは無言で彼を見つめている。ハインズ達は息を呑んで、瞬いた。


と言うことは、ロッコはスズキノヤマ暗部部隊よりも早くエスティナモルグに着いて、滅亡を目撃した。


けれど、どうやって・・?そしてどこから目撃したのか?場所移動の魔法でエスティナモルグへ?・・いつの間に?


ローズは昨夜出会ったロッコから何一つもそのようなことを読み取ることができなかった。


「そうなんだ。分かったわ」

「疑問に思っていないのか?」

「何を?」

「ロッコ殿はどうやってエルムンドからエスティナモルグへ行ったか・・、ローズを助けた後、子どもたちをアルハトロスへ送って、・・いつの間にかエスティナモルグへ移動して・・。距離短縮するために、エルカモルグ方面からフクロウで移動した暗部隊よりも早く・・、魔法なら一瞬で行けるが、一度行ったことがあるところしか行けない。彼は事前にエスティナモルグへ行ったとしても、日にちが合わない・・」

「それは彼の秘密でしょう?」


ローズは即答した。


「それに、彼はきっと一度エスティナモルグへ行ったと思うけど、確信はないけど・・」

「短期間で?エルムンドからエスティナモルグまで、船で一ヶ月間かかるのに?」


ロッコがエルムンドに行ったことを、エフェルガンは知っている。けれど、その一週間もない日にちで、襲撃の中心人物らを捕らえて、ファリズに引き渡した。考えてみれば、その中にエスティナモルグの人もいた・・。


「それに、疑問を思っても、いくら考えても答えは出ないよ。結局疲れるだけだし、聞いても教えてくれないわ。だって、企業秘密なんだから」


ローズは笑って、ロッコからもらったかんざしを見つめている。とてもきれいだ、と彼女は思った。


「元々ロッコは暗部だし、どこで、何をしているか、分からない。一番親しい人にも、秘密を漏らさない人なんだから」


ローズはロッコからもらったかんざしを自分の髪の毛に挿しながら言った。


「ただ、一つだけ言える」


ローズはエフェルガンを見て、微笑んだ。


「私に見せた彼の姿は、彼の優しさだと思う」

「優しさ・・か」

「まぁ、でも、暗部は大体そんな感じだよ」


ローズが言うと、ずっと静かに彼女を見ている柳はうなずいた。


「ローズの言うとおりだ。ロッコは謎が多い人だ」


柳はそう言って、立ち上がった。


「エフェルガン殿、これからローズは青竹屋敷に戻るか、ダルゴダス邸にしばらくいるか、決めてくれ」

「青竹屋敷へ」

「護衛は整ったか?」

「問題ない」

「分かった」


柳はローズを見て、ため息ついた。本当は彼女をどこかへ連れて行きたい。けれど、それは叶わぬ願いだ。


「ん?」


ローズは柳を見て、首を傾げた。


「大丈夫だ。本当に安全になるまで、俺はしばらくここにいる」

「大丈夫よ、お兄様」

「いや」


柳は柔らかい口調でローズをまっすぐに見ている。


「俺はもうあなたを失いたくない。だから、そうさせてくれ」

「でも、学校は?」

「学校は待ってられる。そうだろう、エフェルガン殿?」


柳が聞くと、エフェルガンは思わずうなずいた。一瞬、エフェルガンはその答えを後悔した。けれど、この状況だから、一人も多く、ローズを守れる者が必要だ。


「学校は問題ない。調整は可能だ」


エフェルガンも優しい声で答えた。その後、彼はハインズにいくつかの指示を出した後、神殿を後にした。





その日、ローズ達は神殿を出て、そのまま青竹屋敷へ向かった。ローズは馬車からダルゴダス邸を見たけれど、寄らなかった。ただ、彼女は門で立っているフレイと檀を見て、手を振って微笑んだ。フレイも微笑みながら手を振った。けれど、馬車が止まらなかった。フレイも理解している、状況がまだ良くない。馬車の後ろで座っている柳は母親を見たものの、無言でうなずいただけだった。


馬車はそのまま青竹屋敷に入った。柳はローズが屋敷内に入ったことを見送った後、自分の家に帰った。屋根に上がって行くと、もうすでに隣の家の屋根の上にロッコがいる。


「あんたは仕事しないのか?」

「これも仕事だ」


柳が聞くと、ロッコはお酒を飲みながら即答した。


「来週、彼女はスズキノヤマへ行くらしい。二週間ほどだ」

「分かった」

「俺も彼女と一緒にスズキノヤマへ行く」

「学校か?」

「ああ」

「あいよ」


ロッコはうなずいた。


「ダルスクマイネ公爵は三日後ここに来る。家は俺が手配した。場所はあの屋敷の西側辺りだ」

「了解」

「来週はスズキノヤマの住処も決定されるだろう」

「やはり宮殿の近くか?」

「恐らくそうだろう」


ロッコはグラスに残った酒を飲み干して、ため息ついた。


「一つだけ教えてくれ」


柳は立ち上がったロッコを見て、尋ねた。


「なぜあんたが龍神と会話できた?」

「さぁ、な」


ロッコは顔色を変えずに空になった瓶を拾った。


「ローズが教えたのか?」

「それは秘密だ」

「俺にも、あの言葉を教えてくれ・・。頼む」

「やだね」


ロッコは首を振った。


「これだけは、・・例え親方様のご命令でも、他人に教えられない。これは、俺とローズの間に交わした約束だからな」


ロッコは振り向きながら言った。


「どうしても習いたいなら、直接彼女に言いな。教えてくれるかもしれんが、・・俺はあんたに教えることはない」


ロッコはそのまま家の屋根にある扉を開けて、入った。残された柳はため息つきながらしばらく青竹屋敷を見つめている。





「やぁ、柊」


その日の午後、レベル4の第一部隊がロッコの家の前に通った。柊は声が聞こえた方向に見上げると、窓から声をかけたフェルザが見えた。


「やぁ、フェルザ」


柊は足を止めて、微笑んだ。


「瓦礫の撤去作業は終わったの?」

「うん」


柊はうなずいた。そして、近くに足を止めた先生に何かを言ってから、頭を下げた。先生と他の隊員らがフェルザを見てから、そのまままた歩いた。


「そっちに行っても良い?」

「良いよ。扉に鍵をしていないから、そのまま入って」

「うん」


柊はうなずいて、扉を開けた。中ですでに一階へ降りたフェルザの護衛官のレスタがいて、丁寧に柊を二階へ案内した。


「結構大きな家なんだね」

「屋敷と比べると小さいけど」


柊はフェルザの部屋に入って、周囲を見渡した。感じの良い部屋だ、と柊は思った。


「柊、土産があったんだ」

「へぇ、誰から?」

「ロッコ先生から」


フェルザが二つの箱を取り出して、柊に差し出した。


「一つ柊、もう一つはエフェリューの分。中身は同じだけど、手作りなので、微妙な差がある、と先生が言った」

「へぇ。中身を見た?」

「見てない。多分一緒だと思う」


フェルザは自分のペンを見せた。柊は目を大きくして、そのペンを見つめている。


きれいだ、と彼は思った。


「じゃ、俺はこれにする」

「中身を見なくても良いの?」

「良いさ」


柊は箱を開けて、中身のペンを見つめている。


「とてもきれいだ。ロッコ先生にありがとう、と伝えて」

「うん、とても使いやすいよ」


柊が言うと、フェルザはうなずいた。柊はフェルザの寝台で腰をかけて外を見ている。自分もここに住んでいたら、多分一日中をその屋敷を見てしまうだろう、と柊は思った。


「柊、母上は起きたよ」

「へ?!本当に?」

「うん、レスタがさっき教えてくれた」


フェルザはそう言いながら引き出しから箱を取り出して、開けた。中身は焼き菓子だった。


「これは欅伯父上が好きな焼き菓子らしい。本国では販売されていないけど、意外ととても美味しかった。食べて見て」

「へぇ~、じゃ、もらうね。頂きます」

「うん。頂きます」


二人は焼き菓子を食べながら窓から外へ見つめている。


「本当に美味しい」

「うん」


柊が言うと、フェルザはうなずいた。


「この部屋から屋敷が見えたね」

「うん、でも門から先は建物が邪魔で、中まで見えない」

「うん」


柊は青竹屋敷を見つめながら、もう一枚の焼き菓子を取った。美味しい、と彼は味わいながら思った。


「多分明日に会えると思う。念のため、俺は明日一日を開けた」

「じゃ、明日に予定を調整するか」

「できるの?」

「できるよ」


柊は窓に並んでいるローズのぬいぐるみを見て、思わず手を伸ばした。宮殿で見かけたローズの絵にそっくりだ、と柊は思った。


「あれはロッコ先生のぬいぐるみだよ」

「かわいい」

「うん」


フェルザはうなずいた。


「俺も欲しい」

「そういうぬいぐるみが欲しいなら、ズルグンに言えば、本国から送ってもらえるよ。ロッコ先生から聞いた話だと、タマラやダナでは普通に露店で売っているらしい」


フェルザが言うと、柊はキラキラとした目で自分の護衛官を見た。柊の護衛官ラジは思わず笑って、うなずいた。そんな柊の様子を見てフェルザは、自分の引き出しを開けて、その中から人形を取りだした。


「でね、俺はこのような人形を持ってるんだ。陶器でできている」

「俺にくれ」

「ダメ」


フェルザは人形を見せながら首を振った。陶器でできた人形で、皇后になる前のローズの姿だった。頭の上に花があった。


「欲しいなら市場のメジャカ店に行けば、売ってるよ」

「メジャカ店?」

「うん」


フェルザが誇らしくその人形を見せた。


「トルド魚店の隣にある店だ。一番奥の棚にあるよ」

「随分と詳しいね」

「うん。たまに行くから」


柊はその人形を見ながら言った。


「でも、これって、ここで売っても売れるの?」

「売れるよ。狐族の人に人気商品だ、とお店の人が言った」

「狐族・・?」

「ミレーヌ伯母上やその部隊の隊員らね、ごっそりと買うらしい」

「ふむふむ。何に使うか想像付かないけど」

「俺も分からない」


フェルザはその人形を見て、笑った。


「ソラも、休みの日にその店に行くこともたまに見かけたよ。彼は良くその店で買い物するらしい」

「へぇ」


柊はフェルザを見て、うなずいた。


「分かった。明日行くよ」

「うん」


柊が言うと、フェルザはうなずいた。柊はぬいぐるみを元の場所へ戻して、しばらく外を見ている。


「ねぇ、フェルザ」

「うん?」

「あの日、ロッコ先生から透明な玉をもらっただろう?」

「うん」

「あれって、何だろう・・?」


柊が聞くと、フェルザは机の上にある箱を開けた。透明なビー玉を一つあった。


「これはビー玉というらしい」

「ビー玉?」

「うん」


フェルザはうなずいた。


「ビー玉って何?武器?魔法の塊とか?」

「おもちゃ」


フェルザが答えると、柊は唖然となった。


「おもちゃ?」

「うん」

「でもあの日、あれで敵の結界や魔法を浄化できた」

「あれは柊の力だよ」


フェルザはそのビー玉を取って、光に照らした。きれいな玉だ、とフェルザは思った。


「このビー玉で柊が力を込めて、敵の魔法を無効化にした。俺が真似してもできなかった。だから、ただのおもちゃ」

「そうだったんだ」

「うん。柊はそのビー玉がなくても、敵の魔法を無効化できるんだ。ただあの日、柊はまだ今のように戦いになれていなかったから、自分が弱い、失敗するかもしれない、そういう気持ちがあっただろう?」

「確かにそうだった」

「だからそのビー玉を貸したの。ロッコ先生が少し魔力を込めただろうから、柊の魔力を加えれば、できるかな、と思ったの」


フェルザが説明すると、柊は思わず笑った。


「そうだったんだ。ずっと気になったけど、今すっきりした。ありがとう」

「うん」


フェルザがうなずいて、ビー玉を再び箱に入れた。柊は焼き菓子をもう一枚食べてから、立ち上がった。


「そろそろ門限だから、帰るね。ロッコ先生からのお土産をエフェリューに渡すよ」

「うん。じゃ、お気を付けて、柊皇子」

「ありがとう、フェルザ皇子」


柊はにっこりと微笑んで、護衛官ラジと一緒にロッコの家を出た。フェルザは再び振り向いた柊に手を振って、窓を閉めた。





あの日から数ヶ月間の時が流れた。カール・ダルスクマイネ公爵は正式に青竹の里に特使として配属された。スズキノヤマでも、カールのために大きな屋敷が与えられた。場所はちょうど宮殿の向かい側だった。けれども、両国にある屋敷の家具はすべてレネッタから運ばれた。それが両国の間に話題になって、しばらくの間、人々は毎日興味津々と彼の屋敷を外から見ている。その話を聞いたローズは、ただ笑っただけだった。


カールらしい、と。


ローズは再び仕事に復帰した。戦争で破壊された家々や設備の復旧作業が始まった。それだけではなく、エフェルガンはまたローズの名義で広い土地を買った。


その土地は牧場を作るためだった。里で、ローズの馬を育てるための牧場にした。そこでローズの馬、トッロは思いっきり走ることができるようになった。元々馬の群の長であるトッロは、狭い馬小屋に入れられると、ストレスになってしまう。なので、ローズがトッロを牧場につれて行くと、トッロは嬉しそうに走った。


「トッロの息子らを数頭、スズキノヤマへ連れて行く。義父上(ちちうえ)が許可なさった」

「へぇ。スズキノヤマで増やすの?」


ローズがうなずきながらトッロの背中を乗った。エフェリューたちも嬉しそうにそれぞれの馬に乗っている。エフェルガンは馬に乗りながら広々とした風景を見渡した。


「そうだ」


エフェルガンは答えた。


「本国でも大きな牧場を作る」

「場所は決まったの?」

「場所をいくつか見当したが、最終判断はローズに決めてもらおうかな」

「あら、良いの?」

「かまわん。その牧場で、良い馬を育って、陸軍を強化したい。皇子らも帰国するときに、その牧場で練習できるようにする」

「ふむふむ。ということは、宮殿から近いんだ」

「そなたの移動範囲も計算に入れたから、できるだけ首都からそう遠くないところにした」

「陸軍が管理するの?」

「そうだ。陸軍から飼育と調教師を配属する予定だ」


エフェルガンが言うと、ローズはうなずいた。向こうではエフェリュー達が護衛官らに付き添わせて乗馬の練習をしている。その三人の中から一番上手に馬を乗っているのはフェルザだった。柳は弟の(だん)に乗馬を教えながら、柊達をチラッと見ている。


あの三人はもうすでに嬉しそうに馬を走らせた。護衛官らが彼らの周囲で一緒に馬に乗って走っている。


上手だ、と柳は思った。けれど、柳は何も言わなかった。あの三人に檀を比べてはいけない。なぜなら、個人差があるからだ。これからは檀がここで練習すれば乗馬も上手になるだろう、と柳は思った。


「レネッタの馬がやはり良い」


ロッコはローズたちを見守りながらカールに言った。カールはレネッタから連れて来た自分の馬に乗って、笑った。


「ありがとうございます」


カールは周囲を見渡しながらゆっくりと馬を走らせている。


「だが、ローズ様の馬は特別だ。あれは火龍様の馬だ、と言った人もいるぐらい、不思議な馬だ」

「そうなの?」

「はい」


カールが言うと、ロッコはローズの馬を見て笑った。明らかにローズはまったく馬の操縦をしていなかった。トッロは彼女が思う方向へ走っている様子が明らかだ、とロッコは思った。


「あの馬は数々の戦をくぐり抜いた馬だ」

「そうか・・、アルハトロスとササノハの戦争の時も、あの馬がすごく活躍したよ」

「ここでも?」

「はい」


ロッコがうなずいた。


「あの馬は、アクバー・モーガンと戦って、ローズを守ったさ」

「すごい。やはり火龍様の馬だ」


カールは不思議そうな目でトッロを見ている。


「そうだね・・。神の加護がある馬かもしれない」


ロッコが笑って、周囲を見渡す。広い牧場だ。多額の投資で牧場一つを作るだけだと精算が合わない。牧場はただの表向きの口実だ。本当の理由は里を守るための壁の建設費用を稼ぐためだった。ローズを理由にして、ダルゴダスとエフェルガンはうまくやりとりしている。


元々馬や牛を育てるための牧場を作る計画があったものの、ダルゴダスは先に外から来る学生達のために学生寮を先に建てようとした。けれども、学生寮の建設予定地に神殿が移動してしまった。だから新たに土地を整地して、住宅と寮を建設予定だ。ついでに、この牧場も作られた訳だ。


その費用もほとんどスズキノヤマが出している。


「ところで、エルムンドからは何か知らせがあったのか?」


カールは周囲を見渡しながらロッコに聞いた。


「戦争の損害賠償の話し合いがあった。その辺りは上の方々が話し合ってたけど、俺が下っ端役員だから細かい話は分からん」

「なるほど・・。レネッタの力が必要なら、いつでも力を貸すよ」


カールが言うと、ロッコはにっこりと笑った。


「あいよ」


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