770. 襲撃の真相(33)
彼が今まで頑張ってきたけれど、築いた物はすべて、何もかも崩れた。イスタやドスティナからの手紙通り、彼の家族、彼の仲間、彼の同僚、彼の配下、彼の知り合いの全員が・・死んだ。そして、彼を探してきた人でさえ、死んだ。
これは呪いだ。
誰かが彼を呪っている。なぜなら、それしか考えられないからだ。どう考えてもおかしい。納得いかない、と彼は思った。
けれども、呪いをかけた人はどこの誰か、彼は知らない。というよりか、心当たりが多すぎて、見当も付かない。暗部だから、それはどうしようもないことだ。仕事で他人の恨みを買うのはリスクの一つだ。
それに、彼の仲間の言う通り、相手は変化できる人だ。極めて厄介の相手に、イブラヒムは頭痛がするほど、困っている。
けれど、今はアルハトロスとの戦時中だ。アルハトロスが関わりがあるとは思えない。あの国は弱すぎるからだ。いくら鬼神がいても、人が少ない。彼が考えた作戦は宰相に採用されたから、間違いなくアルハトロスは落ちる。だから、何かを見落としたのかもしれない、とイブラヒムは考え込んだ。
仮にモルグ人が彼の家族を呪い殺したとしても、その理由が分からない。彼はモルグ人の要求を答えて、いろいろと手伝った。今回の戦争だって、彼の手引きで、モルグ人らがアルハトロスに入ることができた。
モルグ人からお金をもらったけれど、彼の努力によって、彼らだって薔薇姫に近づくことができるはずだ。エルムンド国内にある暗殺ギルドとササノハの暗殺ギルドの力を借りれば、簡単に手に入ることができるはずだ。なのに、一回目は失敗したという連絡を受けた。確かに予想していなかったスズキノヤマ国軍基地からの兵士らが激しく抵抗したと聞いた。だからササノハの暗殺ギルドの残党をエルムンドへ逃がした。それに、失敗したからと言って、モルグ人らは彼に恨むことは考えられない。それに、攻撃はまだ続いているから、問題ないはずだ。
あの里は絶対落ちる。
イブラヒムはそう確信した。いくら鬼神らが強くても、所詮数が少ない種族だ。数人しかいない鬼神、そしてその下には蛇人族と山猫人族がいる。けれど、数が多くても数百人しかいない。徹底的に攻めれば、いずれか落ちる。スズキノヤマ軍が来る前にアルハトロスが落ちれば、彼らは何もできない。第一、狙いは鬼神たちの抹殺だからだ。宰相は彼らの死を望んでいる。世界のために、と。
アルハトロスは自国を守るために、龍神の国だとわざと嘘を言ったことに違いない。存在すら確認できていない龍の国など、嘘八百の国だ、とイブラヒムは思った。それで周りの国が怖くて攻めて来ない効果もあるけれど、エルムンドは彼らの嘘などが怖くない。実際にモルグ王国のアクバー・モーガンが何度も攻めて来た。薔薇姫を手に入れたアクバー・モーガンだったけれど、逃げられたあげく、最後の瞬間で鬼神に首をにぎり潰された。
運が悪い奴だ。所詮、そんなもんだ、と。
泣き疲れたイブラヒムは立ち上がって、ゆらゆらと歩いている。そして彼は開いている飲み屋に入って、酒を注文した。店員が酒を持って差し出した。すると、イブラヒムはすぐにその酒を一気に飲み干した。
「おい!酒をくれ!」
「ですが・・お代は・・」
「早く!」
彼は怒って店員を殴ろうとした。けれど、その横から一人の男がイブラヒムの手を軽く振り払った。
「お代は俺が払う。これで良いか?」
「はい」
「俺にも一本ちょうだい。お金は足りる?」
「はい」
店員はうなずいて、すぐさま厨房へ走った。
「誰だ、お前?」
「お前こそ、何者のつもりだ?あの店員はびびってるんじゃないか」
その男が戻って来た店員ににっこりと笑って、銀貨を渡して、つまみを頼んだ。
「俺のことを知ってるのか?」
「当たり前だ。俺はセスナ、あのお方の勅命を受けて、エルムンディアから来たんだ」
「あのお方?」
「緊急報告が上がったんだ」
セスナと名乗った男性は店員が持って来たつまみを受け取って、うなずいた。お釣りは良い、と彼が言うと、店員は嬉しそうにうなずいて、また厨房へ戻った。
「俺に近づくと、お前も死ぬよ。アルザックのように」
「案ずるな。俺はそう簡単に死なないよ、マラ」
ロッコがつまみを食べながらお酒をグラスに注いだ。そしてイブラヒムのグラスにも注いだ。
「だが、俺はお前のことを知らない」
イブラヒムがセスナを凝視した。
「当然知らないだろう。俺はあのお方の影だからな」
「影か」
影とは、権力者の専属暗部のことだ。主に暗殺の仕事をするため、普通の暗部とはより深い闇に包まれている。「あのお方」の影となると、一般の暗部であるイブラヒムは知らなくても当然なことだ。
「まぁ、飲め」
「ありがとう」
イブラヒムが一気にまた飲んだ。
「聞いたかと思うが、エルムンド各地にある防衛塔が完全に破壊された」
「嘘だろう?」
イブラヒムが驚いて、セスナを見ている。
「ことが判明したのは一昨日だ。最初はただの故障だと思われた。が、調べてみると、術式は完全に破壊されたことが判明した。その防衛装置も、な」
「術式ならすぐ直せるはずだ」
「俺もそう思ったが、残念ながら、術式に詳しい魔法師らが、全員、死んだ」
「・・全員?」
イブラヒムは信じられない様子だった。
「ああ、全員だ。一人も、残らず、全員死んだ」
セスナはお酒を一気に飲み干した。
「俺はそのためにここへ調査しに来た。心当たりはあるか?」
「心当たりというか・・」
イブラヒムはため息ついた。
「関係あるかどうか・・、俺の家族もやられて、ドスティナに続いて、この町の暗部達も、全滅した。彼らを殺したと言われるのはモルグ人だ、とアルザックが言ったが、・・彼もついさっき死んだ」
「モルグ人か・・。でもなぜだ?」
「俺も分からない。モルグ人に喧嘩を売った覚えがない。何かが間違っている、・・モルグは俺を殺す理由もないはずだ」
イブラヒムはまた酒を飲んだ。セスナは静かにイブラヒムのグラスに酒を注いだ。
「となると、モルグ側に尋ねるしかないな」
「尋ねても答えてくれるかどうか・・俺の家族はもう戻って来ない」
「少なくても、なぜモルグ人があなたの家族を殺したか分かるだろう?それに、どうも、魔法師らの死にも、彼らが関係している気がした」
セスナがため息ついて、酒をゆっくりと飲んだ。
「それに、モルグ人と繋がりを持っている暗部はあなただけだ」
「・・・」
セスナの言葉を聞いた途端に、イブラヒムがしばらく無言になった。
「モルグか・・。あのお方は知っているのか?」
「あのお方は知らないとでも思うのか?」
「俺がうまく隠したと思ったけど」
「浅はかなことだ。だから俺がここにいた。あなたに真実を尋ねるために」
「真実・・」
イブラヒムはため息ついた。
「言うよ」
しばらくの沈黙の後、イブラヒムが口を開いた。
「カンタ・フィデルだ」
「奴は何者だ?」
「モルグ人、商人だ。奴は俺にお金を渡して、エルムンドで商売できるように上へ働きかけるように頼んだ。それで、上層部に賄賂を送って、エスティナモルグとの貿易ができるわけだ。場所を限定すれば、他の国にはばれない。ばれれば、文句を言ったら、その国を乗っ取れば良いだけのことだし」
「だからイスタは貿易拠点になったんだ」
「ああ。あそこは閉鎖的で、安全だ」
「ふむふむ。それは何年前から?」
「三年ぐらい前からだ。あの戦争が終わって、その間もないころだった」
「ちょうどあの時エルムンドも力を広げるところだったな」
セスナがそう言うと、イブラヒムは無言でうなずいた。
「カンタ・フィデルは多大な費用を注ぎ込んで、エングラシアとの戦争を支援した」
「モルグ人が?エルムンドのために?」
「そうだ。陛下が彼のことを知らない。が、あのお方は知っているだろう。名無しの商人はあのカンタ・フィデルのことだ。俺はあのお方の前で彼の名前を一度も出したことがないが、やはりお気づきだったのか?」
「俺はそこまで分からない。ただ、あのお方はこれらの問題に、赤い瞳の男が関わっている、と睨んだ。モルグ人が関係するなら、マラに聞け、と」
「マラに聞け、か」
イブラヒムは酒を飲み干した。
「俺が真実を言わなかったら、どうするつもりなのか?」
「この状況はますます悪化するだろう。最悪、エルムンドが戦争に負けて、落ちる」
「まさか」
「考えてみろ。もうすでに全町の防衛が落ちたんだ。国軍がアルハトロスに出動している今、エルムンドを守れる軍隊はない。丸腰だ。この時にスズキノヤマ軍が来たら、間違いなく、エルムンドは落ちる」
「・・・」
セスナは酒を注いで、ゆっくりと飲んだ。そして彼はまたイブラヒムのグラスに酒を注いだ。
「カンタ・フィデルについて、分かる範囲をすべて教えてくれ」
「すべてか・・、時間がかかるよ」
「構わん」
セスナの言葉を聞いたイブラヒムは考え込んだ。そしてまたしばらくの沈黙の後、彼は口を開いた。結局、二人は酒を飲みながら、遅くまで話し合っていた。
「俺はもう疲れた。もう良いだろう?馳走になった」
イブラヒムがゆらゆらと立ち上がった。かなり飲んだ、と彼自身も分かっている。セスナは無言でイブラヒムの隣で座って、うなずいた。
「もう俺に構うな。あのお方へ申し上げよう、俺はもう引退したんだ。もう十分だろう」
「そうだな」
セスナが立ち上がって、店員にお金を渡して、先に出ていくイブラヒムの後ろに歩いた。
「これからどこへ行くのか?」
「家だ」
「もうそこに誰もいないのに?」
「・・別邸に、妾ならいる。彼女と結婚していないから、無事だろう」
「妾か」
セスナは彼の後ろに歩いた。そしていつの間に彼の気配はなくなった。イブラヒムは振り向いて、誰もいないと確信してから、路地裏へ入った。そして一軒家の前に足を止めて、扉を開けた。
けれど、彼が見たのは首を吊った一人の女性だった。イブラヒムが崩れ落ちて、泣き叫んだ。いくら訓練された暗部でも、このように彼が知った者ら全員が死んでしまったら、心も折れた。
しばらくしてから、イブラヒムは寝室へ入って、隠し棚から剣を取りだした。彼は部屋のど真ん中に首を吊った妾を降ろしてから、外へ出て行った。けれど、彼の家の前に、一人の男がいる。
セスナだ。
しかも、彼の瞳が、赤い。
「あなただったのか」
怒りを包めた声で、イブラヒムは剣を抜いて、構えている。
「やっと気づいたか」
セスナが笑った。彼は暗闇の中から出て、イブラヒムを見ている。
「なぜ俺の家族を殺した?」
「お前がやっていることを真似しただけだよ」
セスナは顔色を変えずに言った。
「俺は何をしたと言うんだ?!言われた通り、モルグのためにいろいろやったんだ。あの姫の居場所もちゃんと手配しただろう?なのに・・」
「それが一番やってはいけないことだよ」
突然周囲に黒いオーラで包まれた。彼らの会話は、外にいる人たちから聞こえなくなった。二人の男性がいることさえ、誰も気づかない。
「いけないって・・、まさか、お前は・・」
「あのお方の使いだよ」
「宰相様ではないのか?」
「まさか」
セスナが微笑んで、首を振った。
「せっかく分かりやすいヒントを出したのに、分からないなんて、暗部失格だね」
「ヒントって・・」
イブラヒムは剣を強くにぎった。酔いが覚めた、と彼は危険を感じた。
「赤い瞳をしているのはモルグだけではない」
「・・鬼神」
「正解♪」
セスナは微笑んで、前に進んで歩いて、足を止めた。彼の瞳がとても鮮やかな赤色だった。
「暗部が引退したからと言って、あんたは深く関わっているから重要参考人として名前が上がっている。そのことについて、俺はあんたに問いに来た訳ね」
「・・・」
「まぁ、そもそも戦争中だから、この方法が一番最適だ。丁寧にお願いしても、あんたは絶対応じないだろうから、互いに仕方がないことだがな」
セスナがまた数歩を前に出ると、イブラヒムは後ろへ下がった。距離を取りたいとイブラヒムは思った。
「俺は命令を実行しただけだ。宰相、あの宰相が俺に命じたんだ。あの姫の居場所も、そう、彼女を救うために・・」
「金貨千枚で居場所を記憶して、暗殺者を送った。宰相が気づく前に、その情報はカンタ・フィデルに売っただろう?」
「・・・」
イブラヒムはまた後ろへ下がった。けれど、見えない壁にぶつかって、これ以上後ろへ下がることができなくなった。
「お金は返す、返すから、見逃してくれ」
「返すぐらいなら、最初からやらなければ良いのに」
セスナが素早く動いて、イブラヒムの剣を落とそうとした。けれど、イブラヒムは素早く剣を振り降ろして、横へ移動した。
当たった、とイブラヒムが思ったけれど、セスナはそこにいなかった。イブラヒムは緊張しながら周囲を見渡した。
セスナの姿は見当たらない。
「出て来い!」
イブラヒムが声を荒げて、叫んだ。
「そうだね」
突然彼の前でセスナが現れた。
「一つだけ確認する。アルハトロス全体の攻撃も、あんたが関わっているのか?」
ザッシュ!
イブラヒムは返事せず、セスナを攻撃した。けれど、それも空振りだった。セスナがまた消えて、声だけを残した。
「言うもんか!」
「そう? それは残念だ」
ザッシュ! ザッシュ!
イブラヒムがまた剣を振り降ろした。けれども、それもまやかしだった。
「あんたはすごい暗部だから、それを高く評価した」
ザッシュ!ザッシュ!ザッシュ!
また空振りした。褒められても嬉しくない、とイブラヒムが焦り始めた。
「そんなあなたに、痛みなくあの世へ送っても良いと思ったけどな」
ザッシュ! ザッシュ!
「まぁ、暗部だから、口が軽いのも困るもんね」
ザッシュ!
「本当に大した頭脳を持った。商人に化けて、至る所を記憶して、大した者だ。褒めてやるよ」
ザッシュ!ザッシュ!ザッシュ!
「そして、外交官にも化けて、あのお方の屋敷内を記憶しただろう?」
ズサッ
イブラヒムの手が強く叩かれた。その反動で剣が彼の手から離れて、高く飛んでいった。
「殺せ!」
「ダメだよ」
セスナがまた現れた。そして素早くイブラヒムの手をつかんで、そのままへし折った。イブラヒムが痛みをで大きな声をしたけれど、セスナは顔色を変えずに、イブラヒムの髪の毛をつかんで、彼を見ている。
「これから地獄が待っているんだ。途轍もない痛みを感じて、そしてまた回復される。その繰り返しだ」
「殺せ・・」
「最終的にそうなる。が、今は殺さない。それに、あなたはもっとも手に出してはいけない人に、手を出した。だからあなたのすべてを対価として、奪い取った。裁きの時まで、反省するが良い」
セスナが冷たい表情で彼を見ている。イブラヒムは必死に舌を噛もうとしたけれど、ダメだった。舌がかたくなって、噛めなかった。
『ザルズ、この男を地獄へ送れ。もっとも厳しい奥の部屋へ』
『御意』
半透明のザルズがイブラヒムをそのまま引っ張り出して、闇へ消えた。そして黒いオーラも夜の暗闇に紛れて、消えた。
「青蛇か」
「ああ」
地獄の神殿へ戻ったロッコは振り向いた。ファリズが声をかけると、ロッコは変化を解いて、うなずいた。セスナに化けたロッコは、玉座に座っているファリズの前へ歩いた。
「奥の部屋に、マラという暗部を捕まえた。彼の本当の名前はイブラヒム・ジョナスだ」
「ほう」
「しばらく地獄を味わってもらわないとね」
「奴は青竹屋敷を記憶したのか?」
「そうだ。そして親方様の屋敷にもね」
「怖い物知らずな奴め」
ファリズはため息ついた。
「恐らく数日後に攻撃が行われるだろう。内部への襲撃に注意するように、護衛官らに連絡してくれ」
「分かった」
ファリズがうなずいた。
「俺はこれから敵の懐へ乗り込む」
「危険だ」
「気を付けるから、問題ないよ」
ロッコが微笑んで、ファリズを見ている。
「だが、これは極めて危険な任務であることは確かだ。俺はしばらく連絡不能になるが、ザルズを送ってくれれば、連絡が可能だ」
「分かった」
ファリズはうなずいた。
「お前も、何があったら、ザルズ経由で俺に連絡してくれ。必ず力になる」
「分かった、ありがとうよ」
ロッコがうなずいた。
「じゃ、あの暗部はあんたに任せたよ。しっかりと彼の口から情報を取り出してくれ」
「分かった」
ファリズがうなずいた。
「そうだ、彼の家族や知り合いを、全員、殺したから、それだけを頭に入れて」
「守る人がいなくなると、彼はますます白状しないじゃねぇか」
「大丈夫だ」
ロッコがにっこりと微笑んだ。
「まだ家族にはなっていないけど、彼が好きな女がいる。名前はカリニア・ドゥワセル、モルグ人だ」
「ほう」
「それをうまく利用して、彼の情報を引き出してくれ」
「分かった」
ファリズはうなずいた。
「俺はこれからそのカリニアを会いに行くんだ」
「気を付けてくれよ」
「ああ。じゃ、な」
ロッコは手を振って、消えた。ファリズはしばらく考え込んで、ザルズに何かを命じた。数分後、部屋の中に入ったスズキノヤマ暗部長官のエトゥレと第一将軍所属暗部隊隊長のアルミナを見て、うなずいた。ファリズは彼らを地獄神殿へ招いて、ロッコが捕らえた者らの取り調べをしている。
「エトゥレ殿、ついさっき、ロッコ殿が来た。彼はエルムンドの暗部を、生きたまま捕まえた。そいつをしっかりと取り調べてくれ」
「はい。その暗部の身元は?」
「奴の名前はマラ、またの名はイブラヒム・ジョナスだ」
「マラ・・」
最も欲しい人がこの神殿の中にいる、とエトゥレは瞬いた。
「青竹屋敷を記憶した奴だ。あいつをしっかりと絞ってくれ」
「分かった」
エトゥレ達が驚いた。この数日間、とんでもない早さで次々と相手の重要な参考人らが捕まった。何よりも、生きたまま捕らえることを考えると、非情に興味深いことだ。
しかもロッコはたった一人で、すべてやり遂げた、とエトゥレ達は息を呑んだ。敵になれば、とんでもない脅威だ。
「俺は陛下に報告しに行く。しばらく留守にするが、大丈夫だな?何か分かったら、ザルズに言ってくれ。また食事などが必要な時に、ザルズに言えば、用意してくれる」
「はい」
エトゥレがうなずいた。ファリズは立ち上がって、そのまま魔法でどこかへ行った。




