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人形姫ローズ  作者: ブリガンティア
アフター・ウォーズ

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756/811

756. 襲撃の真相(19)

「閣下、屋根裏部屋から出入り口がございます」

「暗殺武器も多数あります」


エッゼルが殺した暗部達の屋根裏部屋に入った騎士達が周囲を確認した。


「その暗殺武器を触るな」


ファリズが地面に転がっているエルムンドの暗部達を見ている。


「出でよ、地獄の番人、ザルズ」


その命令を発した後、ムクムクと半透明の者が現れた。魔力が封じられたはずの彼が、地獄の番人を召喚できた。


「あの遺体と上にある彼らの暗殺武器や道具を処分してくれ。あと、その屋根裏部屋を直すための道具を一式もくれ」

『御意』


ザルズが消えると、遺体と上の暗殺道具も消えた。しばらく経つと、何もないところから一箱の道具がファリズの足下に現れた。騎士達が不思議にそれを見たけれど、何も言わなかった。


それを見たファリズは適当に魔法を放ってみたけれど、やはりできなかった。


そうなると、ザルズたちは彼の魔力に依存しているのではなく、何かもっと大きな存在によって動かされているに違いない。


しかし、それが誰なのか、ファリズは分からない。龍と同じぐらい大きな存在なのか、と彼は思ったけれど、答えがどう考えても出て来ない。この能力は異世界にいた頃から身につけて、この世界に来てからでも普通に使えたから、調整する必要もなかった。思えば、この世界に来た他の召喚師や魔法師らが自分たちの魔法を再調整せざるを得なかった。なのに、ファリズはザルズとケルズを普通に使えたから、調整する必要がなかった。と言うよりか、そのようなことを考える余裕すらなかったからだ。


エッゼルと出会うまで。


ファリズはため息ついて、考え込んだ。エッゼルと出会うまで、彼はこのことについて、考えたことはなかった。


エッゼルは、魔力が封じられる場所でも、問題なく魔法を放つことができる。なぜなら、彼には火龍の加護があるからだ。


では、自分はどうなのか、とファリズは自分の手を見ている。この部屋では魔力を封じられていることが分かった。けれども、ザルズを召喚できた。そうなると、ケルズも召喚可能だろう、とファリズは思った。


「出でよ、地獄の番犬、ケルズ」


ファリズが言うと、黒くて、奇妙な模様をしている犬が現れた。


「王は探しているが、ここにいるのか?」


ファリズが聞くと、ケルズが動かなかった。


「名前はアグリア・ゾルメイン・ド・エルムンドだ」

「ガルル」

「ここにいるのか?」

「・・・」


先ほどと同じく、ケルズが動かなかった。


「別の所にいるのか?」


ファリズが聞くと、ケルズはうなずいた。騎士達は集まって、ファリズとケルズを見ている。


「この町のどこかにいるのか?」


ケルズは首を振った。


「王がここにいなければ、俺たちの役目ここで終わりか・・」


ファリズがまた考え込んだ。


「ケルズ、あの青蛇を手伝って、王の行方を追ってくれ」

「ガルルル」

「良い子だ。行け!」


ファリズはあの奇妙な犬をなでてから犬が消えた。


「閣下、これからどう致しましょうか?」

「晩餐会までここにいる」

「ですが・・」

「彼らは俺たちを殺すつもりだろう?」

「はい」

「俺はそう簡単に殺せる存在ではない。傲慢に聞こえるだろうが、あのエッゼルという奴も、それを許さないだろう」


ファリズは笑った。


「我々も閣下をお守りします」


騎士の一人が言った。


「当然だ。それに妹、皇后様のために、お前らも生きて帰らなければ、彼女が泣いてしまうだろう」


ファリズが笑みを見せた。


「よし、遺体も消えたし、おまえら、天井を直せ!」

「えっ?!」

「適当で良いから、そこら辺にあるもので直せ!」

「あ、はい」


ファリズが言うと騎士達が道具箱を開けて、その中にある道具を手にして、エッゼルが壊した天井を直し始めた。


忙しい騎士達と違って、ファリズがただ座って、いろいろと考え込んだ。騎士達が天井を修理し終えた時は、時刻は午後ぐらいになった。突然エッゼルが現れて、箱を持って来た。彼の服装はもうすでにスズキノヤマ軍服だった。


「やぁ、エッゼル。良い情報は集まったのか?」

「多くありませんが、なんとか集まりましたよ、ファリズ様」


エッゼルが箱を開けると、中身は書類ではなく、弁当だった。


「青竹屋敷の料理長の特製弁当でございます。安心して、お召し上がり下さい。皆さんの分もどうぞ。白湯はここに置きます」

「かたじけない」


騎士の一人が嬉しそうにうなずいて、エッゼルの手から弁当を受け取った。


「毒味が必要なら、私がやりましょうか?」

「必要ない」


ファリズが弁当箱を開けた。料理長セティはファリズの大好物を知っている。それは、以外と、とても地味な卵料理だった。その料理が見えた途端、ファリズの顔に笑顔が表れた。本物の「料理長の弁当」だ。


「頂きます」


スプーンでそれを口に入れた瞬間、ファリズの顔に幸せの色が現れた。


「エッゼル、おまえは飯を食ったのか?」

「はい。お弁当が出来上がるまでの待ち時間に、ご馳走を頂きました」


エッゼルがうなずいた。


「すべての情報はダルゴダス様の配下とエトゥレ殿が今一つ一つと確認しております。ミレーヌ姫殿下にも後ほどダルゴダス邸の会議室へ向かいます」

「ご苦労だった。ご馳走様でした」


ファリズが手を合わせて、弁当箱を閉めた。卵料理は彼が知った味で、やはりうまかった。エッゼルは空になった弁当箱を受け取ってから、白湯を注いでファリズに差し出した。そして騎士達からの箱を回収してから、その箱を魔法で飛ばした。


「里へ帰したのか?」

「はい」

「便利だな、その魔法は・・」

「ソライヤ姫殿下の直伝でございます」

「叔母上か」


ファリズがうなずいた。


「この問題が終わったら、俺にも教えて欲しいな」

「ミレーヌ姫殿下もできますよ、ファリズ様」


エッゼルが微笑みながら言うと、ファリズはうなずいた。


「分かった。まぁ、叔母上に声をかけるよりか、従兄弟のミライヤの方が声かけやすいのも事実だが、ははは」


ファリズは立ち上がった。外で人の声が聞こえている。すると、騎士達がビシッとファリズの周りに立っている。


扉が開くと、一人の男が現れて、丁寧に頭を下げた。今朝の宰相第一補佐官のエマヌエル・ドルビと違って、今回は王太子サルマの秘書、セルディナ・シルパという人が来た。見た目は大体中年の男性で、痩せている人だった。けれど、彼はエマヌエルと違って、まったく怖がる様子を見せなかった。セルディナは丁寧にファリズに挨拶してから、彼らを丁寧にダイニングルームまで案内した。


「ところで、従者の方々は・・、あれ?5人でございましたか?報告だと4人で・・」

「俺がついさっき召喚した。彼は毒味役だ」

「あの部屋で?」

「当然だ。俺がどこにも行かなかったぞ?」

「・・そうでございますね」


セルディナは戸惑いながら、うなずいた。あの部屋では魔法が使えないはずだけれど、とセルディナは思った。けれど、今はそのことを深く考えないようにした。


「となると、従者の方々のお夕餉を一つ足りませんね」

「彼らの分は気にしなくても良い。三日間食べなくても、ちゃんと戦えるように訓練したからだ」


ファリズが言うと、騎士達がビシッとしている。その様子を見たエッゼルは思わず微笑んだ。騎士達は事前に食事したから、今夜はエルムンド側の食事を口にしなくても良い、とエッゼルは思った。


「そうですか・・」

「ああ、問題ない」

「では、こちらへ」


セルディナは扉を開けると、中で王子らしい人がすでに彼らを待っている姿が見えた。その人は体が大きく、筋肉質で、とても強そうな人だった。その人の隣で、一人の女性がいる。とてもかわいらしい女性で、緊張した顔で彼らを見つめている。


「ようこそ、エルムンド王国へ。私は王太子、サルマ・ザフレナ・ド・エルムンド。こちらは妹の第九姫、エメリンダ・カルミナ・ド・エルムンド姫だ」


サルマは丁寧に自己紹介した。ファリズも頭を下げて、自己紹介した。


「スズキノヤマ帝国、皇帝陛下を代表した第一将軍、ファリズ・ダルゴダス公爵だ。後ろにいるのは護衛官らと毒味役だ」


ファリズが自己紹介すると、サルマも丁寧にうなずいた。そして彼は丁寧に座るようにと合図した。ファリズは椅子に座った。彼の前にサルマと妹のエメリンダが座った。


「エルムンド王国の国王陛下宛に手紙を持参して、宰相第一補佐官に渡したが、ちゃんと国王陛下に届けられただろうか?可能なら、今日中に返事を頂きたい」


ファリズが話をし始めた。


「手紙・・?私は何ももらっていない」


サルマが困った顔でセルディナに聞いた。


「エマヌエルから何も聞いていないのか?」

「はい」


セルディナも首を振った。


「なら、エマヌエルを探せ。手紙のことを聞き出してくれ」

「かしこまりました」


サルマの命令で、セルディナが一人の護衛に合図を出した。その護衛官がダイニング・ルームから出ると、サルマがため息ついた。


「大変申し訳ない。見ての通り、今朝からバタバタしていて、大変だ」

「ふむ」

「良ければ、その手紙の内容を教えて下さい。後ほど国王陛下にお伝えしますから」

「ふむ。果たして、陛下は口で言う内容を信じてくださるかどうか・・」

「大丈夫だと思う。王太子である私が陛下に言うから・・」

「ふむ」


ファリズは考え込んだ。


「分かった。簡単にいうと、アルハトロス王国にいる特別大使が襲われた。犯人はアーチバルト王国の者だったが、彼らの証言によると、エルムンド王国の依頼で動いたらしい。陛下は、そのことの真偽を、エルムンド国王陛下に伺った訳だ」

「エルムンドは、断じて、そのようなことをしていない」


サルマが言うと、エメリンダもうなずいた。


「だが、我々も、証拠なしで、ここまで行動することもなかった。何しろ、このことを訴えたのはただ者ではなかったから、その真偽を確かめる必要がある」

「と言いますと?」


サルマが神経を尖らしながら聞いた。


「まぁ、とある国のえらい人がそう言ったからだ。念のため、名前を言わないことにする」

「きっとそれは我が国を悪者にしようとしただけだよ」

「そうなのか?」

「はい。エルムンド王国はそのような野蛮なことをしない、とスズキノヤマ帝国の皇帝陛下にそう伝えてください」

「分かった。だが、皇帝陛下は、ちゃんと手紙で送ったので、手紙で返事してもらおう」

「もちろん、そうする」


ファリズの注文に、サルマが微笑んだ。彼は手を叩くと、扉が開いて、数々のご馳走が机に並べられた。すると、エッゼルが素早く、ファリズの食事を確認してからうなずいた。


「両国の栄光と平和へ」


サルマが祝杯すると、ファリズとエメリンダも同じく(さかずき)をあげた。そして軽く祝杯してから、和やかな雰囲気で晩餐会が始まった。


「ところで、聞いても良いか?」


ファリズは舌鼓ながら聞いた。


「はい」


サルマがうなずいた。


「なぜ俺たちが魔力封印の部屋に閉じ込められたか、説明してもらいたい」

「・・・」


その質問を聞いたサルマが後ろにいるセルディナに視線を移した。


「事前にご連絡がなかったから、そのように安全装置を取らなければならないのでございます。ご不快をお詫び致します」


セルディナが答えた。


「なるほど」


ファリズがうなずいて、エッゼルが置いた魔法瓶から白湯をグラスに注いで、飲んだ。


「あともう一つ。本当はこれが国王陛下に直接言わないといけないが・・」

「はい」


サルマが緊張した様子でファリズを見ている。


「サマルディ王子は、我が妹を求愛するためにアルハトロスへ行った、と聞いた」

「妹・・?」

「菫・ダルゴダス公爵令嬢だ」


ファリズは鋭い目でサルマを見ている。


「それは何か?」

「彼はアルハトロスで逮捕された。まぁ、そのうち、アルハトロスから正式な連絡が来るだろう」

「逮捕・・?なぜだ?」

「無礼を働いたからだ。サマルディ王子が菫の手を強くつかんだ、という報告を受けた。アルハトロスでは、公爵令嬢に対して、そのような行いは侮辱罪に値する罪だ。下手したら、死罪になる」

「・・・」


ファリズが言うと、サルマは固まった。


「それだけではなく、送られて来た使節団は、団長を含めて、ほとんど暗部だったとは、な」

「それは・・」


嘘だ、と言い切れない。サルマがここで自分が否定しなければならないことを分かっても、使節団に行く人のことをすべて宰相に任せていたからだ。


「そのことについて、後ほど確認する」


食欲を失ったサルマが落胆した様子で言った。


「それにしても、ファリズ公爵はスズキノヤマ帝国の将軍なのに、なぜアルハトロスのことを?」

「国が違っても、親子や兄弟の繋がりが変わらない。俺のか弱い妹が、サマルディ王子に侮辱されたと聞いて、兄として、彼女の名誉を守らなければならない。だから、この件に関しては、俺がただのファリズ・ダルゴダスとして、エルムンド側に文句を言う」


ファリズが怒りを込めた声で言った。サルマとセルディナが固まった。冷たい空気が部屋中に漂った。


「サマルディ王子に関しては、後ほど状況を確認してからアルハトロス側と話し合うようにする。大変申し訳なく思っている」

「分かった。父上にもそうと伝えておく」


ファリズがため息ついた。


「他には、何かあれば、国王陛下にまとめて伝えよう」

「そうだな・・」


ファリズがため息ついた。


「これもきっとエルムンド側が否定するだろう」

「我々がやっていないときに、毅然とする態度で示すしかない」

「なるほど」


ファリズがまたため息ついた。


「この問題が発展するまで、スズキノヤマは遠くにあるエルムンドのことなど、全く気にしなかったが・・」


ファリズが少し考え込んだ。


「何が言いたい?」


サルマがファリズに尋ねた。


「皇后様、俺の妹、薔薇・ダルゴダス・クリシュナが住んでいる屋敷が襲撃された。捕まった犯人は白状した。とある外交官、ガビルタ・セルジョという人からの依頼だった、と証言した」

「知らない名前だ」


サルマは首を振りながらあっさりと否定した。


「そうか。だが、我々はそのガビルタ・セルジョという人を見つけて、証言も得た。彼の国籍はエルムンドだと分かった」

「それは彼の個人的な行動であって、この国とは関わらない」

「なるほど」


ファリズがうなずいた。


「彼は貴族だと言ったが、どう思う?」

「そのような名前の貴族はこの国にはありません」

「分かった」


ファリズがため息ついて、サルマを見ている。


「もう一つ。エルムンド王国はスズキノヤマ帝国を敵として認識しているのか?」

「・・・」


これもまた否定できない、とサルマが思った。実際に国王の命令でエルムンドがずっとスズキノヤマのことを敵国として認識している。


「今の所はなんとも言えない。国王陛下がそう思っているかもしれないが、私は可能なら戦いたくない」

「俺もそう思っている。というか、そもそも場所が遠い。戦争に行くのも大変だ」

「そうだね」

「だが、スズキノヤマは同盟上で、同盟国を守らなければならない立場にある。知っていると思うが、アルハトロスはスズキノヤマの同盟国の一つだ。よって、アルハトロスに対する攻撃は、スズキノヤマに対する攻撃として我々がそう認識している」

「・・・」


ファリズが言うと、そのダイニング・ルームまた凍るような雰囲気になった。


「そのガビルタ・セルジョは、本当にエルムンドの人なのか?」


サルマが再び前の話題を振った。やはり彼はガビルタ・セルジョについて気になっている様子だった。


「そうだ。身元もはっきりとしている」

「誰だ、その者は、何者なんだ?」

「殿下に告げても、何か変わるという保証がないと思うが・・」

「私は王太子として、その権限がある。言ってくれ、誰なんだ、そのガビルタ・セルジョという人は・・」


サルマは思わず立ち上がった。セルディナや護衛官らが最悪の状況を覚悟している。


「ガーフィールド・フェルディナント侯爵のご子息、ガルニサ・フェルディナント令息、という人だ」

「・・うそだ」

「信じないなら、どうぞご勝手に」


ファリズが立ち上がった。


「だが、残念ながら、ガーフィールド・フェルディナント侯爵はすべて白状した。この国が何を企んでいるか、皇后様の住まいを襲撃した理由も、その証拠は我々の手元にある」

「・・どうやって?」


サルマが思わずそのことを尋ねた。けれど、ファリズは答えなかった。


「我が国の力だ、と考えれば良い」

「貴殿は、戦争を望んでいるのか?」

「先に手を出したのはエルムンドだぞ?」


ファリズはまっすぐにサルマを見ている。


「もっとも、エルムンドは手を出してはいけない人に手を出してしまったからだ」

「あの大使か・・?」

「彼以上に・・。俺の大切な妹で、鬼神のかわいい娘、龍神の愛娘、薔薇姫だ」


ファリズは怒りを満ちた顔でサルマを見ている。


「皇帝陛下は、そのことについて、許す気がない、と仰った。俺自身も、当然、陛下と同じことを思っている。そして父上も、弟も、その話を聞いて、今機嫌が悪い。いつでもこの国を滅ぼしに行くと言っているが、今は女王に止められて、我慢している」

「弟・・もしや・・」

「アクバー・モーガンの首を、素手で潰した奴だ」

「・・ま、待ってくれ」


サルマが震えている。あのモルグの大王を素手でにぎり潰したのは若き鬼神族、柳だ。それだけで、人々にとって、とても関心深い話だ。信じない人もいるけれど、噂になるほど、その話はとても有名だ。


その人は、ファリズの弟というのか?


サルマが息を呑んだ。最初に計画した穏やかな食事会が意外な展開になった。サルマは自分の妹である第九の姫君エメリンダをファリズと縁を結んで、この国の権力の基板を強くしようとしたものの、ファリズがとんでもない話を持って来た。


「宰相を、宰相を呼んで、話を聞いてからにする。なので・・」

「国王陛下と直接お話しすることができないのなら、俺がここに長くいても仕方がない」


ファリズは震えているサルマとエメリンダを見ている。エメリンダが恐怖のあまり、泣いてしまった。


「エメリンダ姫、このような話し合いになって、申し訳ない」


ファリズは声を柔らかにして、泣いているエメリンダに言った。けれども、エメリンダは何も言わず、ただファリズを見ているだけだった。


「一週間後、エルムンド王国の正式な返事をもらいに来る。もし、その日で正式な返事がなければ、我々はこのことについて、宣戦布告として受け止める」


ファリズがはっきりとその言葉を言った。そして彼は丁寧に頭を下げてからエッゼルの元へ歩いた。騎士達もファリズの周りに集まって、転移魔法で一瞬で消えた。


その日は、エルムンドにとって大変な一日となった。エルムンド全土の町々にあるすべての魔法塔が、原因不明で破壊された。それだけではなく、宰相や数人の大臣らも行方不明になった。不在の王の代わりに政権を取った王太子サルマは、現状の悪さに気づいたのがその数日が経ってからのである。


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