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人形姫ローズ  作者: ブリガンティア
スズキノヤマ編
68/811

68. スズキノヤマ帝国 真実

「ローズ様!」


城に到着すると、中に入った時に、聞こえて来たのはフォレットと侍女達の声だった。驚きのあまり、悲鳴をした侍女もいた。布に包まれてボロボロな姿のローズを抱きかかえている険しい顔のエフェルガン、誰もが大変なことが起きていたことを、一目でも分かる。


「医療師を呼べ。しびれ薬の毒消しを用意せよ」


エフェルガンは歩きながらフォレットに命令した。向かい先はローズの寝室だった。エフェルガンはゆっくりと彼女を寝台に寝かして、寝台の隣に座った。彼がまだ汗とホコリまみれの姿で、体の所々に乾いた敵の返り血があった。彼の体にもいくつかの切り傷もあった。でも先からずっと無言でローズの手をにぎっている。


医療師と執事のフォレットが入ると、エフェルガンは立ち上がって、フォレットにいくつかの指示を出した。フォレットは頭を下げて退室した。代わりに侍女二人が入り、てきぱきとローズの着替えを準備している。リンカも猫の姿で入って、まくらの隣で座る。


医療師は解毒剤を飲まして、侍女達に細かい指示を出した。医療師はエフェルガンの布を外し、彼女の体を異常がないか検査した。ずたずたに破れ裂かれた服をみて侍女達は思わず口を隠して、驚きの声をした。エフェルガンは目をそらさずに、ずっと見ていた。険しい顔で、無言で、立ったままで、医療師の検車結果を待っている。医療師は侍女達にまた指示を出して、エフェルガンの方に向かって検車の結果を伝えた。しびれ薬の影響以外は異常なしだ、という結果だった。ただ精神的なショックがしばらく残るから眠り薬を処方される、と医療師が告げた。エフェルガンはうなずいて、医療師が外に出てから再びローズのそばに来て、その険しい顔を優しい顔に変えた。


「今日はゆっくりと休め。明日また来る」

「うん」

「お休み」

「エフェルガンも・・お休み」


エフェルガンは優しく彼女の額に口づけをした。そして部屋を出て行った。侍女達は医療師の指示通り、ローズの服を脱がし、万遍なくお湯で体を拭き、髪の毛まできれいに拭いてくれた。薬の残留が皮膚から入るからだと説明された。


清潔な寝間着に着替え気分がサッパリした。小腹が空いたので、侍女は台所から軽食をもらいに出て行った。


「そばを離れて、ごめんね」


リンカは猫の姿のままで話をかけた。


「ううん、仕方なかったんだ。どうしてもしなければいけなっかたことがあったのでしょう?」

「そう、エフェルガンはどうしても私の力が必要だ、と言った。気づかれずに敵の陣に入ることができるのが私だけだったから」

「そうだね。リンカならできる。暗部よりも、うまく入れるもんな」


ローズが言うと、リンカがうなずいた。


「まぁ、猫だから」

「世界一賢い猫だ」

「みゃ~」

「かわいい猫らしいな」

「ありがとう」


ローズが微笑んだ。


「ねぇ、リンカ。何が起きたか教えてくれる?」

「明日エフェルガンは説明するって。私が説明したら話が複雑になるから、とりあえず今夜ご飯の後、休んだ方が良い。体中にまだ毒があるから」

「分かった」


リンカは猫の冷たい鼻でローズの顔にキスをした。懐かしい猫のキスだ。ローズは里の屋敷でよくリンカに鼻キスされた。まだその時はリンカは人であることが知らなかった。ただの賢い猫だと思ったころだった。まさかこの猫は里の美しい死神と呼ばれるほどのレベルSの武人だったとは、知らなかった。


しばらくしたら、侍女達がお粥とスープを持ってきた。もちろん毒味役のハティも来た。戦場から帰ってきたばかりというのに、嫌な顔をせず、丁寧に毒味の鑑定をしてくれた。安全宣言が出てから、侍女達に手伝ってもらって遅い夕餉を食べることになった。一口ずつ、すべて食べきるまで、味わうことにした。食事終えたら眠り薬を飲まされ、あっという間に眠りに落ちた。


翌日、目を開けたら、エフェルガンが隣にいた。彼は背もたれで背中をかけて、座って目を閉じている。寝ているかと思ったら、ローズが手を動かしたら目を開けた。そのオレンジ色の瞳がとても優しく見える。


「おはようございます」

「おはよう、ローズ。気分はどう?」

「うん、昨日と比べたらずっと良くなったと思う」

「良かった。起きられる?」


エフェルガンはローズの体を動かして、起こした。彼女が何とか問題なく寝台に座り、手を上に大きく伸ばした。


「んーーー!」


ローズが体を伸ばして、しばらくストレッチした。


「大丈夫そうだね」

「うん」

「痛い所はない?」

「おなかが空いた以外は今のところ大丈夫みたいわ」

「良かった」

「リンカは?」

「僕が入ると、任せたと言って、そのまま外に出て行った」

「珍しいね」

「そう?」

「リンカは鳥人族の男性を信用してないんだ。その原因はジャタユ王子なんだけどね。多分エフェルガンは世界中の鳥人族の男性の中でリンカに信用された男性第一号だね」


それを聞いたエフェルガンは思わず笑った。


「そうか、それは幸栄だ。嬉しいな」

「で、何を任されていたの?」

「まず、何があったかという説明だ」

「うん」


ローズがうなずいた。


「バナダ村の化け物の戦いの後はローズが倒れて、意識不明になったんだ。その時に、突然新たな襲撃があったんだ」

「なんと・・」

「やはりローズが魔力を使い切ったところで狙っていたようで、計画された襲撃だったんだ」

「えっ!」

「狙いは僕とローズだったんだ。僕を殺して、ローズを奪うという流れだったようで、残った力を振り絞ってなんとか抵抗できた。やっとの思いで、生き延びたところで、今度は雷鳥が現れたんだ」

「・・・」

「しかも巨大クラスの雷鳥だったんだ」

「大変・・」


ローズが瞬いた。


「もうダメだと思ったら、突然ローズが光って、一人でその雷鳥を倒した」

「記憶にない・・」


確かに、記憶にないことだ、とローズは思った。


「だろうなぁ。とても様子が変だった。だって片手をかざしてあの雷鳥が一瞬で空中でバラバラになった」

「・・・」

「雷鳥が絶命してからローズがまた気を失ったが、ローズのおかげで、全員無事で、なんとかヒスイ城に帰ることができた。それから二週間後に、突然と起きて、また気を失った。そこまでは大丈夫だよね」

「うん」


ローズがうなずいた。


「その間に捕らえた暗殺者や襲撃者の取り調べで分かったことがいくつかあった。一つは僕の命を狙っている者の中でやはり母上が名前があった。おそらく弟のことで、ひどく僕のことを憎んでしまわれた。その母と組んでいたのはカルディーズを初めとする複数の皇子だと分かった。簡単にいうと権力争いだ」

「なるほど」


カルディーズがエフェルガンよりも強い、と本人が言った。しかし、その彼がエフェルガンに殺された。


「これだから複数の妃や側室を持つことで、このような面倒なことが起きてしまう。やはり僕の妃はローズ一人で十分だ」


エフェルガンがため息して、言った。


「うむ。その次は?」

「そうだな、その皇子達を束ねていたのは元将軍の一人でね、母上が父上と結婚した時に、唯一反対の声をあげた者だった。当時父上はまだ皇帝ではなかった。母上と結婚したことで、次期皇帝という座についた。父上はかなりの敵が多かったが、軍の支持者と政治的な強い影響力があったから、先皇帝陛下は一人娘である母上を託した。先皇帝には、男子がいなかった。遠い親戚であるズルグンは権力に興味がないと辞退し、外交に集中した」

「ズルグンさんは親戚だったんだ」

「そうだ。僕の遠縁にあたるが、正妻でも側室でもない者が産んだ子どもだったから、ほとんど平民として育てられていた。軍に入った時に、その身元がばれて一時的に騒ぎになったが、権力に興味がないと辞退を正式に示した。それで暗殺や勢力争いに巻き込まずに済んだ。また仕事上で外交に特化したから、ほとんど国内にいないため、無事でいられた」

「ふむふむ」


かなり複雑な家族関係だ、とローズは思った。


「それで、先皇帝が亡くなられて、父上が皇帝陛下になった。恋人がまだ愛しく思っている母上は、父上を無視し続けていたため、父上は複数の妃や側室を持つようになった。それで次々と兄上と姉上が産まれてきたわけだ」

「なるほど」

「でもやはり先皇帝の血をひく子どもが必要だったため、父上は、・・まぁ・・、力づくで、・・僕を作った、・・らしいんだ」


エフェルガンが自分が生まれた訳を言った。


「うむ、・・なるほど、ねぇ・・」


そうなんだ、とローズがうなずいた。


「その言い方に気になるけど・・」

「気にしない、気にしない」


カルディーズと言い、エフェルガンと言い、その激しい感情は、父親譲りかもしれない、とローズは思った。


「まぁ、あとで、追求するから覚悟してね」

「えっ」


このしつこい性格も父親譲りに違いない、とローズは呆れた様子でエフェルガンを見ている。


「じゃ、続けるね」

「うん」

「僕が産まれた時に、母上がものすごく泣いてしまったらしい。彼女が何度も僕を殺そうとしていた。一緒にいると、何されるか分からないから、皇帝陛下はまだ生まれたてのひなだった僕をズルグンに託して、育ててもらった。その時の乳母は今台所で働いている料理人だ。彼女がその時、産まれたばかりの子を失ったばかりで、僕のことを自分の子のように育ててくれた」


エフェルガンがそう言いながら、ローズの髪の毛をなでた。気づいたら、短くなった、とエフェルガンは思った。


「そうか。あの人はとても優しい人で、私も好きです。良く一緒に焼き菓子を作ってくれた」


ローズがうなずいた。


「ローズも好きになって良かった。僕にとって、ズルグンとその人は親同然だ」

「うん」

「それから、母上はどのようにしたか分からないが、恐らく昔好きだった男と再び接触するようになった。その人は、弟の本当の父親だった」

「そうか」

「大きくなった僕は、皇太子の位につき宮殿で良く弟と遊んだ。他人も兄弟もあまり関わらなかったから、弟の存在が大きかった。寂しかった日々が、あっという間に楽しい日々になった。が、やはり権力の話になると、兄弟でも敵になる。弟もその一人になった」


エフェルガンが悔しい顔になった。


「そして、あのオオラモルグの事件になったのか」

「そうだ。弟に罠をかける方法などを教えたのはモルグ人手先になったその人、・・弟の本当の父親だった」

「なぜ・・?」

「簡単な話だ。僕に唯一仲が良い兄弟はその弟一人だけだったからだ。警戒されずに計画の実行できるのは弟だけだった」

「なんていう悲しいこと・・」

「まぁ、それも仕方ないことだ。弟の処刑が終わって、今度は彼らは敵討ちのつもりで僕を殺すために数回も暗殺者を送り込んだ」

「ふむふむ」

「ローズが捕まえた暗殺者の口からその人の居場所が分かって、探索してみたが、なんどもばれて逃げられた。もう次がないと思って、皆を集めて相談したら、オレファがリンカの猫の姿で探索してみてはどうかと意見をしたから、ズルグンの話を思い出した。オオラモルグで僕を捜しに行ったのもリンカだったから、頭を下げて、リンカにお願いした。他国の者を巻き込んでしまうことはマナー違反であることを十二分も理解したが、今回だけは、どうしてもリンカの力が必要だと恥を忍んでお願いした」

「リンカはなんと言った?」

「ローズのためでもあるから良いよ、と」

「リンカらしいね」

「ただし、確実な情報が手に入れるまで、ローズの警備を代わりにやることだ。だからギリギリまで僕が、ここにいたわけだ」


そうなんだ、とローズがうなずいた。


「そうか、だから私が目覚めた時にエフェルガンがここにいたのか」

「その日はリンカからの連絡があって、出陣の準備をしていた。ローズが長い眠りから起きたという連絡を受けて急いで来たんだ。本当に起きてくれて、気持ちを確かめることができて、嬉しかった。これで安心して討伐に征けるかと思ったら、まさか母上とカルディーズがローズを拉致したなんて、思いもしなかった。僕の考えが甘かった」


エフェルガンが反省した顔で言った。


「私を権力のために使うとカルディーズ皇子がはっきりと言ったの。私ってそんな政治的な価値はあるの?」

「民衆を味方にしたいなら、まず民の心の支えである龍神様が味方だと示さなければいけない。一番簡単な方法は、龍神様の娘を手に入れることで、誰が皇帝になっても神様が許す、ということになる。神様の許しを得た者は、民に支持され大きな権力を手に入れることができる。つまりローズをものにすれば、僕の代わりに誰でも皇太子になれるのだ」

「迷惑な話だ」


ローズは口を尖らせて、言った。


「だろうな。でも、今どの国もローズを欲しがっているんだ。ローズを所有すれば誰もが王になれると思われている」

「私はそんな万能な置物ではない、と文句を言いたい。本当に失礼だわ」

「ですよね。恐らくカルディーズもそう思って、ローズを襲ったのだろう」

「うん。本人がはっきりと言ったから」

「このことも考えて、アルハトロスの女王様の考えも一理ありと、僕も理解しているが・・」

「うむ」

「僕がローズを愛してしまった」

「難しい話になってしまった」


本当にそうかもしれない、とローズがうなずいた。


「そうだよね。はぁ~。さて、続きを話すよ」

「うん」

「戦いの結果からいうと、リンカはその人の首をとったから反乱軍をほぼ一日で制圧さた。そして、比較的にこちらの被害が少なかった」

「良かった」

「本当にアルハトロスの女武人って強い。同盟国であって、良かったと思う。敵対したら、かなり大きな被害になりそうだ。下手したら国が滅びてしまう」

「うん。父上たちはたった200人で、モルグ王国を撃退したんだから、強いと思うよ。モルグ王国が負けを認めたほどに」

「本当か?」

「うん。その200人は全員武人ばかりではなかった。料理人も、職人も、侍女も含めていたんだ」

「驚いた」

「うん、本当の武人だけだと計算したらその半分ぐらいだったかもしれない」

「やはりローズの家族と仲良くしたい」


エフェルガンが微笑んで、うなずいた。


「私はエフェルガンの家族と仲良くできるかどうか分からない。でもズルグンさんと乳母の料理人、名前は知らないけど・・とは仲良くできそうだ」

「エメルさんだ」


その料理長の名前がエメルだったのか、とローズがうなずいた。


「今度エメルさんにエフェルガンの昔話を聞いてみようかな」

「なんで直接僕に聞かないんだ?」

「だって、自分でおかしなことを言わないんでしょう?」

「そのおかしなことを聞いてどうするんだ?」

「エフェルガンが気づかないことを知ることができる。エフェルガンへの理解に繋がるんだ」

「でもエメルさんはほんとんど生まれたてのひなだった僕の世話だったからな・・」

「私はエフェルガンが小さかった時の話は知らないから、興味があるわ。自慢できない話もあるかもしれないね。楽しみ」

「怖いな・・」


いろいろな彼の恥ずかしい話もあったのでしょう、とローズは微笑みながら思った。


「ふふふ。で、話を戻すけど、結局これからはどうする?エフェルガンはカルディーズ皇子を殺してしまったから、罰せられるの?」

「正当防衛だから問題ないかと。それに他国の姫君に毒を盛り、侮辱したこともあって、彼に非がある。彼がやったことは無礼というレベルを超えたんだ。あれは万死に値する罪になる」

「エフェルガンは・・その、・・うむ、カルディーズ皇子によって、・・あの時の私を見て、どう思った?」


ローズが聞きづらいことを聞いた。確かにカルディーズはまだ何もしていなかったけれど、ローズが裸の状態で、彼が彼女の体の上にいるから、恥ずかしかった。


「目を疑った」


エフェルガンが隠さず言った。


「でもそれ以上に、ローズのあの乱れた姿を何とかしないといけないと焦って、急いで考えた。その姿は他の者に見られてしまったらローズの名誉に関わるから、せめてそれを守らないといけないと思って、布で体を包んで隠した。その後は頭の中に怒りでいっぱいだった。でもケルゼック達が来てくれて、冷静にしないとダメだと必死に頭と感情の整理しながら母上を会いに行った。どうしても母上から説明をしてもらわないと冷静な判断ができないと思った」


彼が本当に彼女のことが心配だったんだ、とローズはうなずいた。


「ありがとう」

「本当のことをいうと、僕はとても悲しかった。身内が、ローズを・・苦しめた」

「その状況なら、理解します」

「身内の無礼にお詫びする。ごめんなさい」


エフェルガンが頭を下げた。


「うん。エフェルガンはカルディーズ皇子を殺してくれたから、その気持ちをお受けします。でなければ多分、私は自分の手でその人を殺すかもしれない」

「ひどく・・されていたのか?」

「・・・」


エフェルガンはぎゅっとローズを抱きしめた。何もなかった、と彼女が思ったけれど、服がズタズタにされたことが彼女にとって、怖かったことだったのかもしれない。


「でも、リンカは私の操を守ってくれた。助かった」

「それは何よりだ」


エフェルガンがうなずいた。


「ねぇ、エフェルガン」

「はい」

「もし彼の関係者はその行為はただの夜這いだと言ったらどうしよう」

「夜這いは合意の元でやることだから、しびれ薬や脅迫を使ってはいけない。ちゃんと決まりがあるんだ」

「詳しいね」

「伝統行事だからね」

「体験したことは?」

「ない」

「ふむふむ」

「ローズが望むなら今夜でも・・」

「昼間じゃダメなんだ」

「明るい時にやると・・大丈夫?僕は興味があるから、歓迎するけど・・」

「うむ・・恥ずかしいかも」

「ローズって意外と大胆だね」

「む、気になっただけ。本気にしないで下さい」


エフェルガンが笑った。大胆だ、と彼が思った。


「夜這いの話になると、リンカに聞こえたら、僕の首が飛びそう・・」

「大丈夫、夜這いになるとリンカは大体噛むんだ」

「そこは猫らしいね」

「かなり痛いらしいよ」

「なるほど」


エフェルガンはにやっと笑った。


「なんだその笑みは・・何を企んでいるの?」

「いや、何も」

「怪しすぎる」

「気にしなくて良いよ。さて、朝餉食べたら支度しよう」

「支度?今日はどこかに行くの?」


ローズが首を傾げた。


「皇帝陛下に事情を説明しなければいけないんだ。そしてこの事件はどうしたら国際問題にならないように、陛下と相談しないといけないところだ」

「国際問題か・・確かにこのことが(おおやけ)になってしまったら問題になる」


ローズがうなずいた。まだこの話が大使の耳に入っていないようだ。


「そうだね。この国の皇子が留学中の他国の姫君をさらって、侮辱したということで、戦争になる条件が揃ってしまった。どうにかしないと、僕とローズが敵同士になってしまう。戦争になったら、大変だ。神に祟られるし、鬼神も来るし、第一僕とローズが殺し合うことになってしまったら、僕が辛すぎて、耐えられないと思う」

「私もだ。戦争はいやだ」

「だから、何とかしないといけない」

「分かった。じゃ、朝餉を食べよう。でないと、エフェルガンが美味しそうに見えてしまう・・」

「ローズが僕を食べたいというなら・・」


エフェルガンがまた笑って、ローズを見ている。


「ねぇ、あなたたち。話が終わったら、早く朝餉を食べに行きなさい。食事が冷めてしまうとフォレット殿が困っているんだ」


機嫌が悪そうなリンカが寝台の上にいた。いつからそこにいたか分からないけれど、リンカの存在に気づかなかったほど、二人で夢中に会話していた。


ローズの心の中に、エフェルガンの存在の大きさに気づいた瞬間だった。


「あ、はい!」

「今終わりました!朝餉を食べに行こう、ローズ!」

「あ、でも今寝間着のまま」

「良いんじゃない。僕も寝間着だから」

「ええー!じゃ、ご飯食べに行ってきます・・!」


ローズが笑って、寝台から降りた。


「ふん!」


猫のリンカが言って、二人を見つめている。エフェルガンも笑いながらローズの手を引っ張って、フォレットが待ってるダイニングルームへ向かって走った。


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