61. スズキノヤマ帝国 過去
「ここは僕の勉強部屋だ。自由に使って良い。ここにない物は、どうしても勉強したいなら、先生を呼ぶか、学校に行くか、先に僕に相談してから決めよう」
ある日の夕方。
お風呂の後、少し休憩してからエフェルガンはローズに自分の勉強部屋兼図書室を案内した。場所はエフェルガンの執務室の隣にある。とても広く、本がたくさん並んでいる。これを全部読んだら、すごい量の知識になる。二年間、これを全部読みきることができるのか、とローズが周囲を見つめている。
図書室を走り回ったローズを見ると、エフェルガンが笑った。ローズは純粋に、こんなにたくさんの本を見たことがなかった。ミライヤ先生の本の書庫は覗いたことがあるけれど、あれは他の物もごちゃ混ぜに置かれていたからよく分からない。それに当時、まだ読み書きも上手にできなかったから、まともに勉強もできなかった。けれど、今なら本を読んで、理解もできる、とローズは思う。
「こんなにたくさんの本があるのね・・」
「気に入った?」
「うん。アルハトロスでは本は高級品だから貴重な物だよ。図書室も存在しない。全部戦争で焼かれてなくなったんだ」
「それは残念だ」
エフェルガンがそう言いながら、一冊の本を取って、中身を確認した。
「でもこんなにたくさんの本があるなら、いっぱい勉強ができる」
「ローズって本を見るとこんな幸せそうな顔をするんだね、宝石の時よりも幸せそうだ。意外だ」
「そう?」
「僕にはそう見える。でも良かった、これでローズも毎日忙しくなるんだね」
「うん」
ローズがにっこりと笑った。エフェルガンがその本を再び棚に入れて、机に向かって歩いた。
「ここにきれいな紙とノートとペンとインクもあるから、自由に使って良いよ。無くなったら、僕に言うか、侍女か、執事にでも構わない。また新しいものを準備するからね」
「うん」
「あと、分からないことがあれば、教えてあげるから、遠慮無く聞いて下さい」
「はい!」
ローズは嬉しそうにうなずいた。
「エフェルガンはこれらの本を全部読んだのか?」
「もちろん。学校に行かない分、自分で勉強するしかなかった」
「なんで学校に行かなかったの?この国には学校がたくさんあるのに」
「ちょっと・・行きづらかったんだ」
「そうか」
「そこは追求しないよね、ローズって」
「エフェルガンが辛そうだから。思い出したくないことをわざわざ聞いたら、悲しくなるだけだし」
「気遣ってくれたんだ。ありがとう。でも言うよ。僕のすべてを知ってもらいたいから」
エフェルガンが彼女を見て、微笑んだ。
「うん。でも無理しないで」
「無理はしない。実は、昔は一度だけ、学校に行こうと思った。入学が決まったその日に、僕は制服を着て、カバンを持って、学校に行ったら、他の子どもたちが僕の護衛官に怖がってね、泣いてしまった」
「あらら」
「それでね、護衛官を外したら、今度はその子どもたちの親が自分の子どもを使って僕に賄賂を送ろうとしてきた、おもちゃをあげるからお父さんに良い仕事を与えてね・・とか」
「あらま・・」
「そして、一番いやだったのは、女の子たちが僕の妃になりたがって、互いに喧嘩をしたり、嘘をついたり、とにかく思った以上に面倒なことが多かった。暗殺者までいたし・・」
「それは大変だ」
ローズはそれを聞いて、エフェルガンを見ている。哀れだ、と彼女が思った。
「あの一日で僕の学校生活は終わった。自分で勉強した方が楽だと思った。どうしても先生が必要なら呼べば良いとズルグンに言われた」
「ズルグンさんは昔からエフェルガンのそばにいたんだ」
「僕の家庭教師であり、剣の先生であり、人生の師匠であり、友であり、親の代わりでもある」
「エフェルガンにとってすべてなんだね」
「そうだね」
ローズが言うと、エフェルガンがうなずいた。
「辛い記憶を聞いてしまって、ごめんね。でも教えてくれて、ありがとう。これで少しエフェルガンのことが分かった」
「もう今は辛くないから、大丈夫だよ」
エフェルガンが微笑みながら、うなずいた。
「じゃ、良かった」
「今度はローズのことが聞きたい」
「どんなことが知りたいの?」
「ここに来る前の生活が知りたい」
「うーん、4年間しか無いけど、大した話にはならないと思うけど。それでも良いの?」
ローズが聞くと、エフェルガンはうなずいた。
「聞かせて」
「うーん、この世界に来て、この体を与えられて、一年間ぐらいずっと寝ていたらしい。やっと目覚めて二日目で雷鳥に襲われて、目の前でお兄さんが戦ってくれたんだ」
「いきなり大変な展開だ」
エフェルガンが苦笑いすると、ローズも笑った。
「うん。それで、その数週間後、契約もしない魔法を唱えてしまって、屋敷を半壊にした」
ローズが言うと、エフェルガンがまた驚いてしまった。
「それは大変だ」
「うん。怪我が完治して次の日に屋敷から追い出されて、ミライヤ先生のところで修業することになったんだ。その時一緒にいたのはリンカと護衛官のダルガさんと侍女のモイだった。リンカはさりげなく守ってくれたけど、ダルガさんとモイは私の親代わりで、とても優しくしてくれた」
「なるほど。小さかったローズも大変だったんだろう」
エフェルガンが言うと、ローズがうなずいた。
「うん。そして、エスコドリアの町でまた雷鳥に襲われて、大変だったけど、あの二人は私を必死に守ってくれたんだ」
「本当にローズって雷鳥と頻繁に遭遇するんだね」
「あれは自然発生じゃなかった。モルグ人の術式によって呼び出された雷鳥だった」
「詳しく話して」
エフェルガンは急にシリアスな顔で見つめている。
「えーと、モルグ人は紙で術式を書いて、飛行船であちらこちらにばらまいていたの。どういう条件で発動したか詳しい話はミライヤ先生なら分かるけど、私は術式のことをあまり知らないから、何とも言えない。ただエスコドリアの町で四羽も出現した。船と港を襲って、犠牲者がたくさん出たの」
ローズが言うと、エフェルガンがうなずいた。
「ミライヤさんなら分かるんですね。なるほど」
「うん。もしかすると、私が狙われてしまうという可能性もある、とミライヤ先生から聞いた。だから魔法の練習や武術の練習を徹底的にやらされていたの」
「その時、ローズは目覚めてからどのぐらい経った?」
「うーん、数ヶ月だったかな」
「そんなに幼い時からだったか?!」
エフェルガンが驚いて、目の前にいる彼女を見つめている。
「仕方がなかったんだ。私はこの世界にあるすべての属性魔法と金の能力を持っているから狙われているんだ」
「とても珍しい能力だからね」
「うん。自分自身を守らないと、万が一、誰一人も守ってくれる人がいなかったら、どうするかと言われた。だから覚醒してから魔法の練習や武術の練習は欠かさずやらされた。危険クラスから獰猛クラスの獣や鳥まで戦わされていた」
「それは大変だっただろう」
ローズがうなずいた。
「うん、何度も死にそうになったよ。でもモルグ人の餌食になるよりかましだと思う」
「そんなに頻繁に襲われていたのか?」
「私を直接狙っている襲撃はまだないけど、龍神の都への襲撃は二回ほど経験した」
「本当か?」
「うん。最初は侍女のモイが謎の蛇に噛まれて瀕死状態になった。原因を調べたらそれは風に飛ばされたモルグ人の術式の紙だったと分かった。魔力がある者の近くに落ちると発動する仕組みだった」
「ふむ、ちょっと書くね・・」
エフェルガンは机にある紙を出してメモを書いている。勉強机に向かって座り、先まで聞いた話を細かく書いた。
「話を続けて、ローズ」
「はい。ミライヤ先生がエスコドリアから帰ってきて、話を聞いたら、なんと都が襲撃されていて、全滅になりかけていた。将軍が二人も死亡したって」
「女王様はどうした?」
「まだいなかったの。長い間、王がいなくて、将軍五人と国軍で守っていたの。国の貴族はほとんど死んでしまって、生き残ったのはただ一人、母上だったんだ」
「そんなに長い間に王がいなかったのか」
信じがたいことだけれど、それが事実だ、とローズは言った。
「うん。玉座は龍神様が預かっていたの。新しい王が選ばれるまで国民はずっと我慢した。新しい女王が選ばれたのはつい最近だったよ」
「大変だったんだろう」
「多分ね。私はまだそのとき状況がよく分からなかった。とにかく都が襲撃されて、ほぼ壊滅状態になって、父上の配下と義勇軍と残った国軍で都の奪還作戦が行われた」
「聞くのが怖いが、ローズも参加したのか」
エフェルガンがローズを見つめている。
「うん。卒業試験だとミライヤ先生が言ったから、戦場に行ったよ。あれは人生初めての戦場だった。その時、二歳前後だったかな」
「なんていう強引な試験だったのか」
「仕方なかった。滅びるよりかずっとましな選択だったんだ。ちなみに、その都の襲撃で住民や兵士、宮殿の人々まで魔石にされてしまったの。都に大量のモルグ人兵士がいて、飛行船が5機もあった」
「飛行船・・あれは飛行船というんだ」
「うん」
ローズがうなずいた。
「なんでそれらは飛行船だということが分かった?」
「昔の記憶」
「そういうものが龍神の世界にもあったのか」
「うむ、あった気がした。この記憶が不完全だから詳しくは知らない。ただあれは飛行船だと分かるだけだ」
「なるほど」
答えになっていない、とローズが分かっているけれど、それが彼女が知ったすべてだったのだ。
「暗部とお兄さんが宮殿の中に入って敵の将軍を倒そうとしたら、オオラモルグのと同じ化け物が召喚されていたの。リンカとミライヤ先生は五機の飛行船を落としたため、敵将軍は逃げられなかった。あの化け物を召喚してこっそりと逃げようとしていたらしい。これは暗部の人に聞かされた話たけど」
「なるほど。だが、リンカってそんなに強い武人なんだ」
「強いよ。レベルSらしい。でも詳しく知らない、猫だから」
そう聞いたエフェルガンが微笑んだ。
「なるほど、これじゃ、やはり夜這いは不可能だ」
「計画していたのか?」
「なんとなく」
「うむ」
ローズが困った顔をすると、エフェルガンは笑った。
「ごめん、話を続けて」
「うん。どこまでだった?」
「化け物と5機の飛行船だった」
「うん、そこでね、私は戦闘の途中で覚醒してしまったの。必死にあの化け物と戦っていたお兄さんを助けようと思って、いつの間に瞬間移動して、敵を宮殿から町の中まで追いだしたの。最後にお兄さんの力を解放してとどめをさせた」
「お兄さんって・・柳というんだよね。強いのか?」
「強いよ。鬼神だから」
「鬼神・・」
エフェルガンが戸惑った。
「うん。父上も鬼神だよ」
「龍神様が異世界から呼び出したあの伝説の鬼神か」
「うん。父上のことだよ」
「僕は今ものすごくびっくりして興奮してしまった。というか、ダルゴダス様と会って、話し合ったけど、彼が鬼神であることを知らなかった」
「うむ」
ローズがエフェルガンを見て、複雑な顔をした。
「で、結果的にいうと、都奪還は成功したと・・」
「うん。暗部の影丸さんは敵の将軍の首を執ったの。その時の影丸さんのペアは女王様だったんだ。まだその時、彼女が暗部の人だったけど」
「女王様もお父上の配下だったと聞いたが・・」
「そうだったよ。今は女王様の方が上だけど」
「なるほど」
エフェルガンがうなずいた。
「その後、色々な噂がたって、私たちを守るためにミライヤ先生とジャタユ王子はドイパ国まで連れて行ってくれた」
「噂か。そこまでしたのに、そんなにひどい噂にされたのか。英雄に向かって無礼だ」
「うん、仕方がない、私たちは異様だったんだもの。それでね、休暇中に護衛官が飛行船にやられて、倒れていたのを見つけて、助けたの。その関係でドイパ国の国王陛下に呼ばれて、ズルグンさんと会った。その流れでエフェルガンの救出作戦にドイパ軍として参加したわけ」
「そうだったんだ。そこで僕たちが初めて出会ったんだね」
エフェルガンが微笑んだ。
「きっとこれも龍神様の導きだと思うけど」
「僕もそう思う」
「あとは、エフェルガンが知っている通りかな。オオラモルグの戦いでいろいろと細かい情報が入ったはずだと思うけど」
「そのことは確かにいろいろと情報が入った。その後のローズの生活はどうなった?」
「ドイパ国から帰国してから兄さんが私を置いてどこかに修業に出て行方不明になっている。置いてけぼりの私はどうしたら良いか分からないから、イライラして、しまいに父上と喧嘩した。その原因は、里に現れた雷鳥を倒そうとしたことだった」
「また雷鳥か」
「うん。あのぐらいの雷鳥なら倒せるはずだったのに、と思って立ち向かったの。しかし、逆に私が暗部に押さえられて、父上に怒られて・・、そのせいでたまった不満も爆発して、喧嘩してしまった。もちろん、負けたよ。相手は鬼神だもの、小娘の私は勝てるわけがなかった」
「それもまたすごいな」
エフェルガンが苦笑いした。
「うーん、グラウンド二枚と暗部本部と壁を破壊してしまった・・あはは」
「ローズと喧嘩してはいけない・・ちゃんと書いた」
「む」
「これも重要だから」
彼が真面目にそう書いたようだ。
「うむ」
「その後はどうなった?」
「その後は、暗部に見張られて・・結局三歳ぐらいまでおとなしくしていた。女王様が即位してまもなく都に呼ばれて、女王の妹として姫の身分を与えられて、宮殿に住むようになった。でもしばらくして、謀反が起きたの」
「大変だ」
「うん、謀反の中心の人物は姉上の補佐官だった。しかもモルグ人と組んでいて、女王様を魔石にするつもりだった」
「それも大変だ」
彼とまったく同じことが起きようとしたのか、とエフェルガンが思った。
「その夜、私の部屋が襲撃されて、護衛官三名と侍女一名が犠牲になった。リンカは外で戦っていて、私も参戦した。敵一人捕まえたけど、その敵の仲間によって捕まった者が殺されてしまった。私はリンカと一緒に敵を追ったけど、待ち伏せされた。偶然そのとき知り合いの暗部と出会って、なんとか助かったたが、状況を判断して、リンカに宮殿に戻るようにお願いしたの」
「それはどうして?」
「上空に飛行船一機が見えた。状況的に、スズキノヤマと同じではないかと思ったから、女王を守るためにリンカを帰した」
「ローズはそのあと、その暗部の人と行動することになったか」
「うん。ロッコというんだ。私の親友で、すごい暗部隊員だ。ロッコと一緒にその飛行船を落としたの」
「下からドーンと魔法で撃ったか」
エフェルガンの質問に、ローズが首を振って、笑った。
「まさか。あの高さだと魔法が届くかどうか、分からないよ。しかも、あちらの方が迎撃武器があるんだから、そんなことをしたらこちらが先に撃たれて、町の人々に当たってしまう」
「じゃ、どうやって?」
「二人で飛んで、そのあと二人で飛行船の中に瞬間移動した。中にいたモルグ人兵士を片づけてくれたのはロッコだったんだ」
「なるほど」
かなり大胆だ、とエフェルガンが思った。
「で、飛行船を奪い、ロッコに皆殺されてしまったから、操縦方法が分からなくて山に激突しちゃった。あはは」
「そこは、あはは、そういう笑うところではないと思うよ?」
確かに、とローズはまた苦笑いした。
「まぁ、生きていて良かった。その飛行船のことで分かったのは魔石で動力を得て、船を操縦するような感じで操作する仕組みだった」
「なるほど。これはオオラモルグの飛行船とほぼ同じだな」
「うん。その後、姉上から宮殿が反乱軍に制圧されたと伝えられた。と言うよりも、混乱していた状況だった。敵味方が分からず、暗殺者は衛兵の格好していた。兵士同士が殺し合いをしていた。でも私が現れると皆武器を捨ていてくれて、なんとかおさまった。けど、たくさんの大臣が殺されて死んでしまった。犠牲になった兵士もたくさんいた。でも、なんとか、一日で反乱が収まったから状況が良い方向に動いた」
「ローズはすごいな」
「ううん、私はただ光って戦闘やめろうと言っただけ。いろいろ頑張ったのはロッコだった。私に攻撃してきた敵の暗殺者を片っ端から切り捨てた」
「なるほど」
ロッコ、という人物が重要だ、とエフェルガンが思った。
「で、女王様が宮殿に戻って、なんとか平和が戻ったと思ったら今度は私が死にそうになった」
「何があったの?」
「侍女に毒を盛られたの。その侍女は謀反した人物といい仲だったんだ。敵を討とうとして私に毒入りお茶を差し出して、知らずにそれを飲んでしまった」
「ほら、僕の言う通りだ。毒味役が必要だよ」
エフェルガンがそう言いながら、指摘した。
「うむ。でもロッコがいたから助かった。ロッコは毒に詳しいから解毒剤を飲ませてくれて助かった」
「良かった」
ローズはロッコが口移しで飲ましてくれたなんてとても言えない。これは死ぬまで、彼女の秘密だ。
「どうしたの?急に黙りして・・」
「あ、ううん。思い出すと大変だったなぁ・・」
ローズが首を振った。
「大変だったね。ローズにとってこの世界に来て、本当に良かったかどうか分からないけど、僕はローズと出会ったことによって、人生が変わった」
「大変なこともたくさんあったけど、この世界にきて良かったと思う。エフェルガンと出会えて良かった」
ローズがそう言って、エフェルガンを見つめている。エフェルガンの顔はとても優しい表情を見せた。
「良かった」
「エフェルガンはどのように人生が変わったの?」
「ローズのために強くなりたいと思って、努力を惜しまないことを決めた。この二年間、自分も驚くぐらい強くなってきた。それでもローズを守れるぐらいの強さにはまだほど遠いと自覚した。だからこれからも努力し続ける」
「ますますエフェルガンと剣の試合で勝てなくなるよ」
ローズが言うと、エフェルガンが笑った。
「いつでもかかってきて」
「返り討ちにされそうだ。わざと負けることはしない?」
「しない」
「けち」
「わざと負けると、ローズに失礼だからだ」
言い訳に聞こえているかもしれないけれど、それが彼の本音だったのかもしれない、とローズは思った。
「エフェルガンって本当に17歳?」
「もうすぐ18だ」
「うーん、なんか、すごくかたい人かな」
「そう言われると困るんだけどね。このような立場にいると、どうしてもこの態度になってしまう。えらそうか?」
「ちょっとね。でもそれもまたエフェルガンらしい」
「らしい・・か」
「ん?」
「この前の狩りの時にも言われたけど、らしいって。自分らしいとは何かと考えてみたけど、分からない」
「私にとって印象的なエフェルガンの行動や仕草、そして言葉も含めている。私から見たエフェルガンの印象そのものかな」
「そうか。今度僕もローズのことをたくさん観察しないといけないな。ローズらしいとは何かってね」
エフェルガンが笑いながら、言った。
「いやぁ~無理しなくても良いよ。私は自分が変で、面倒くさがり屋で、不器用で、寂しがり屋で、大食いであることは自覚している」
「なるほど。書いておこう」
「む、書くな!」
「書いた。遅かったね、ローズ」
「むむむ」
「ははは。でも今日はローズの過去が少し分かった。今度僕のことを話そう。けど、もうそろそろ寝る時間だから、今日はここまでにしよう」
「うん。明日からこの部屋使うね」
「どうぞ。欲しい本があれば、またその時一緒に本を買いに行こう」
「ありがとう」
「どういたしまして」
エフェルガンは立ち上がって、ローズの手を取り、口づけした。
「お休み、ローズ」
「お休み、エフェルガン」
ローズたちは外に出て行った。エフェルガンは、ローズが護衛官らと一緒に部屋へ戻ることを見守ってから部屋の隣にある執務室に入った。今夜も彼はまた夜遅くまで仕事をするかもしれない。




