56. スズキノヤマへ旅経つ
「絶対に、絶対に、エフェルガンとの結婚を考えないで下さいね。絶対にですよ?!」
鈴にそこまで念入りに言われた。よっぽど心配だったのでしょう。
「良いですか、ローズ。良く聞いて。大国であるスズキノヤマはなんでこの滅びかけたアルハトロスにそこまで物資支援や防衛支援、同盟条約に教育支援ともろもろと協力体への意志宣言までしたと思いますか?スズキノヤマは魔法や武力戦力は世界上位であり、実際に、とても強い国です。面積もこのアルハトロスの8倍もある大国で、技術も戦力も優れている国だ。陸軍、海軍、そして彼らがもっとも得意とする空軍も、とても優れている。そんな大国が、アルハトロスに、皇太子の奪還作戦に御礼のだけで、ここまでするということは考えられないのです。本当の理由は、何だと思いますか?ローズ、あなたが目的なんですよ!」
そう、鈴は本音でローズと会話している。この国とその民を背負っている鈴が、ここまで感情を露わにして本音で語っていた。
「最初はあなたに半年ぐらいの遊学を認めようとしたけれど、あの図々しい皇子は、教育改善のために全面的支援をするなどと、話を持ちかけてきた。しかも!しかもですよ?!ダルゴダス殿に国民全体の教育の必要性の話を持ちかけてから、私の前にダルゴダス殿の手紙を差し出した。ローズにはちゃんとした教育を受けさせたいという内容だったが、あのエフェルガンに聞いたら、最低でも二年が必要だと・・!あああ、私は途轍もなく不安で、朝も夜もあなたをどうやって守ろうかと考えて、考えて・・」
女王鈴が絶望の中でローズを見つめている。
「姉上・・」
「だから、良いですか、ローズ」
「はい」
「本音をいうなら、私はあなたをスズキノヤマへ行かせたくありません。ですが、あの皇子が訴えていた教育の改善や防衛条約、経済や貿易の協定が、この国にとってとてもありがたい話です。敵の空からの攻撃への対応のために、スズキノヤマの空軍の支援が必要です。国民全体を背負っている私にとって、断るのはとても難しい。だから、涙を呑んで、皇太子が持ちかけたあなたの留学期間二年間に同意することにしました」
「姉上・・」
「聖龍様のところに行きたいと聞かされた時に、もしかするとこれは天からの導きだと思いした。あなたのことだから、偶然ではない、と私は思います。この国にとって必要な道かもしれません。ですから、スズキノヤマにいても、忘れないで欲しい。あなたは今何を背負っているのか、と」
「はい」
「あなたは、アルハトロスの第一姫、龍神の姫で、ダルゴダス殿の娘で、私の妹で、あの暗部のロッコの友達である。そしてあなたはこの国の希望でもある。生き残るための希望であり、立ち直るための希望でもある。決して、決して、忘れないで欲しい。分かりましたか?」
「はい」
「エフェルガンは恐らく、二年の間に友人としてだけではなく、男として、あなたに接触してくるでしょう。私には分かります。あなたもエフェルガンに対して好意を持っていることぐらいは、分かります。エフェルガンは力が強い、魔力も強い、武人としての能力が高い。それ以上に、あの人は将来大国スズキノヤマの皇帝になる人だ。当然なことだが、並大抵な人ではない。指導者としての教育も小さい頃から受けている。頭も良く、顔も良い。そしてあなたに対して好意を持っている。あなたが好きになってもおかしくないすべての条件が揃っています。皇太子はあなたが欲しいと隠さずに私の前で言ったのです。ですが、私はすべて龍神様の導きに従うと返事をした。龍神様がその縁を認めれば、私はそれに従う。ですが、あなたにも努力してもらわないと困ります。決して、あの人と結婚しないように・・」
鈴は玉座から立ち上がって、ローズの前に立った。そして跪いて、両手を床に置いて、頭をローズの足につけた。
「すべてのアルハトロスの民のために、この姉、この国の女王として、頭を下げて、お願い申し上げます。どうか、この国のために、エフェルガンとの婚姻はなさらないように・・」
「姉上、頭を上げて下さい」
「いいえ、あなたがはいと言うまでやめません」
どうしよう、とローズが困った顔をした。女王陛下が頭を下げたから、周りの衛兵もそこにいる大臣も皆平伏した。すごく困ったから、心を落ち着かせた。
「はい。心得ています。私も姉上と同じく、この国を愛している。だから、この国を裏切りません」
姉上は頭を上げて、その目に涙が溢れている。
「本当に?本当にそうしてくれますか?」
「はい」
「嬉しいです。ですが、あなたは辛くなるかもしれない。でも龍神様はきっとあなたに良い導きをしてくれます」
「はい」
「この国のために、アルハトロスの民のために、二年間の長い期間、この姉は毎日あなたのために祈ります。ちゃんと勉強して、彼らの良い所をみて、感じて、その知識や知恵をお持ち帰り下さい」
「はい」
「ちゃんと手紙も送って下さい。あなたの貴重な意見はこの国に必要ですから」
「はい」
鈴がローズを強く抱きしめた。
「明日は長い旅になりましょう。早くお休みなさい」
鈴はローズの頭をなでた。ローズは頭を下げて、別れの挨拶をしてから、退室した。内容がとても濃い話だった。朝になってもその内容は彼女の頭の中から離れなかった。
翌朝。
旅姿で宮殿の広場で出発の準備を整えていた。ローズは念のため、防具を身に付けている。ローズの腰に柳の短剣を付けている。これはいつも肌に離さず持って行く武器だ。ローズの見送りに、女王鈴、里から駆けつけたダルゴダス、暗部総隊長のミリナも来た。けれど、ロッコの姿がいない。まだ任務が終わってないようだ。5人の将軍と大臣たちやズルグン大使も来た。同盟になった以上、ズルグン大使はアルハトロスに大使館を設けることになった。ミリナは武人姿のリンカと会話している。二人ともとても真剣に話し合っている。何しろ交通の関係で連れて行ける付き人は一人だけとなっている。恐らく、これもエフェルガンが考えたことだ、とローズは思った。頭が良いあの人なら、彼女の周りをできるだけ自分の配下でかためたい、という考えもあるのでしょう。
ダルゴダスはローズに長さ50センチぐらいの両刃剣をプレゼントにした。欅の師匠が急いで作ってくれた、とローズはダルゴダスから聞いた。重さは気に入るかどうか分からないけれど、ローズの身長に合わせて、使いやすさを重視に作られた、とダルゴダスは言った。練習用の剣はローズの荷物の箱の中に入れてもらった。ダルゴダスからもらった剣は、背中に固定した。ちなみにその鞘は、欅が作った、とダルゴダスは言った。アルハトロスの旗の色、青い色がベースで、アルハトロスの国の紋章と青竹の里の紋章が刻まれている。そして赤い宝石で薔薇の花をモチーフにした飾りが鞘にもあった。とてもシンプルだけれど、センスが良かった。ローズはとても嬉しくて、ダルゴダスに礼を言った。すると、ダルゴダスはローズを抱いて、気をつけるようにと言った。
将軍達も挨拶をしてくれた。第三将軍、あの熊の将軍はローズと別れてしばらく寂しくなると別れを惜しんでいる。そして数々の挨拶を終え、エフェルガンはローズの手を取って、自分が乗る大きなフクロウの上に乗せた。エフェルガンは自らその鳥の操縦をすると言った。リンカはオレファと一緒に乗ることになった。アルハトロス大使ニエルさんはケルゼックと一緒に乗った。
ドイパ国だと、護衛達が大きな鳥に変身したけど、スズキノヤマの場合、移動用の巨大フクロウが別にいるのだ。大きさ的にドイパ国のレイさんと比べたら小さめけれど、操縦が可能なので、いちいち変身しなくても済むため、兵士や護衛への負担が少ない。この優れているフクロウたちは防衛条約の一環として、アルハトロス国内に年内十数羽を配備されることになる、とローズが鈴から聞いた。空を飛ぶ手段があれば、空からの襲撃に対応できるという鈴の判断に、ローズが賛同する。ローズを二年間もスズキノヤマへ行かせる代わりに手に入れた国の防衛手段で、鈴にとって苦渋の決断だったのでしょう。
エフェルガンは出発の合図を出した。手を振ってくれた大切な人々は段々小さくみえた。
「怖くないか?ローズ」
「うん、大丈夫だ」
「じゃ、しばらくきれいな景色を楽しんで」
「はい」
「もうすぐアルハトロスの国から出る」
下を見るとエコリアの山が見えている。あそこで過ごした時のことが頭に浮かび上がった。ミライヤの屋敷が見えた。けれど、今は誰もいない屋敷だ。ミライヤは今里にいて飛行船やモルグ人の術式を調べている最中だからだ。
「どうした?」
「あそこは私の魔法の先生の屋敷なの。昔あそこで修業した」
「そうか。なんていう先生?」
「ミライヤ先生だ」
「ああ。あの有名な発明家か?!あの人の屋敷はそこだったんだ。てっきりドイパ国にいるかと思った」
「知っているの?」
「もちろん。僕を魔石から出した人で、恩人だ。それにあの人の発明はとても画期的で、スズキノヤマでも人気がある。例えば魔法瓶や魔法用の灯りとか」
「使ってるんだ・・」
「そうだね、あると便利なものを、次々と発明してくれた。ありがたい」
「そうか」
エコリアの山を越えると、そこはもうアルハトロスではない。巨大な大陸には数々の国があり、数年前まで互いに戦争状態だった、今も大陸のどこかで戦争状態の国々もある。モルグ王国も武力で国を拡大を企んでいるし、国の未来を考えれば考えるほど、鈴の気持ちが理解できる。
「ほら、海が見えるよ!」
エフェルガンは手で示した先には青く広がった海がある。
「きれいだね」
「海が好きか?」
「うん」
「じゃ、ローズの部屋の窓から海が見える景色の部屋にするか」
「任せるわ」
「僕の隣の部屋もあるけど、全部見て回って、好きな部屋を選べば良いよ。でもあまり離れた場所はできればあまり選ばないようにして」
「どうして?」
「守りにくいからだ」
「エフェルガンも暗殺者に狙われているの?」
「そうだな。立場的にそうなるから、困った」
「私も狙われているし、もっとまずいじゃないの?」
「僕は女王陛下に誓ったんだ。必ずローズを守ると」
エフェルガンがそう言いながらフクロウを操縦している。
「うむ」
「大丈夫だ。狙われている者同士だから、お互いの背中を預けて守り合いも良いんじゃないか」
「そうか。それも良いね」
「ローズは強いから、僕は安心して背中をローズに守ってもらう。逆に、ローズの背中を僕に守らせて下さい」
「はい」
「毎朝、一緒に練習もしよう」
「うん、あなたの呼吸法を教えて」
「いいよ。その代わりだが、ローズも波動の読み方を教えて」
「うん」
「よし、これで僕とローズの防衛条約が成立した」
エフェルガンが微笑みながら言うと、ローズがまた複雑な顔をした。
「うむ」
「そのうむを言う度に、ローズの眉間のしわが増えてしまう」
「うーむ・・」
「今のうーむでかなり考え込む顔になっているだろう」
「・・・」
「でもそんな顔のローズも好きだ」
「うむ」
複雑な気持ちだ。この人はいちいち彼女の顔や言葉を分析している、とローズは思った。毎回言われると、うっとしい・・。
ぐ~~~~~~~~~~~
恥ずかしい音がおなかから聞こえてきた。正確な時間で昼餉タイムを知らせている。
「おなかが空いたか」
「うん」
「じゃ、ちょっと待ってね。止まれる島を探そう」
「いいよ、大丈夫。我慢できるから」
「僕もおなか空いたから、皆で昼餉をしよう。フクロウたちにも水をあげないとね」
「はい」
エフェルガンは隣に飛んでいるオレファに合図を出した。オレファは先に降下して、休めるところを探す。一つの島を見つけたそうで合図を出した。ローズたちはその島へ降りた。
その島はとても小さな島だけれど、どうやらこのあたりの島々は船や空旅の休憩場所として、たくさんの旅人が訪れる島だ、とローズはオレファに教えてもらった。食べ物はそこそこ美味しくて、価格も良心的で、評判が良いだ、とケルゼックも言った。
ケルゼックは一つの料理屋を案内すると、ローズたちが休憩できる場所を頼んだ。団体の客人に一つの大きな部屋を丸ごと使わせてくれるのだ。また外で休憩している兵士らにも食べ物を届けに行ってくれるそうだ。無論、鳥たちにあげるための水も餌も注文すれば提供してくれる。とても便利な休憩所だ。ちなみにエフェルガンのような他国のえらい人は、お店にとって大変幸栄なことなので、サービスが良い。光輝く布や首飾りをしているエフェルガンを見た瞬間に、店主が大変丁寧な態度になった。
次々と料理が運ばれてきた。主には魚料理だけれど、見たこともない料理もたくさんあった。とても大きな魚や、色が青か緑かの魚もあった。海がないアルハトロスには、海の魚料理はとても高価な物である。一年間に一回でも海の魚が食べられたら、大変幸運だ、と言われるほどのレア物である。
念のため、毒のチェックされてから、ローズたちは食事を始めた。エフェルガンはいつも毒味役に食事の前にチェックしてもらってから食べるようにしている。とても慎重な人だ。飲み物まですべてチェックされている。宮殿にいた時のパーティでは宮殿の使用人から飲み物を受け取ったけれど、それも、実はチェック済みだった。だから毒味役が一緒に入れなかったローズの部屋での食事の誘いを断った理由でもあった。いつも微笑んでいるエフェルガンは、実は毎日危険と背中合わせをしている。それと比べたら、毎日平和な生活しているローズはどれだけ幸せだったのか、今、分かった。毒を一度だけ盛られたけれど、あれから暗部の目も厳しかったから、都では安心して食事ができた。
「ズルグンの言った通りだ。本当に美味しそうにご飯を食べる」
エフェルガンは笑いながら食事をしているローズをみている。いや、上品に食べるつもりだったけれど、つい本性が出てしまった。
「うむ・・」
なんか恥ずかしくなった。少しペースダウンをした方が良いかな、と迷ってしまった。
「気にしなくても良いよ、ローズ。たくさん食べて、これからまだ遠いから。一応ドイパ国の手前にある国、コモリア国に一泊泊まる予定だ。僕たち男だけなら夜の飛行は問題ないけど、ローズを連れていくと、やはり無難に一泊休憩して、翌朝に出発して、夕方あたりにスズキノヤマへ到着する予定だ」
エフェルガンがそう説明すると、ローズが驚いた。
「そんなに遠い国なんだね」
「そうだな。だから前にも言ったけど、近くなら毎日会いに行きたい、と。こんなにも距離があるから、頻繁に遊びにいけない」
「そうだな」
「まぁ、食べましょう。でもあまり無理をしないで。おなかがいっぱいなら残しても構わない」
「うん」
そう言いながら再び食べ始めたローズであった。そして、予想通り、ローズがすべて食べ尽くした。
はしたない姫でごめんなさい。姉上、これでアルハトロスの女性は大食いだという噂がたったら、きっとそれは私のせいである、とローズは思った。
食事の休憩を終えて、再び出発した。しばらく海の景色が続いて、いくつかの島々に休憩して、日が沈む時にコモリア王国に着いた。やはりドイパ国への旅と違って、スピードがかなり調整されている。ドイパ国へ行った時、同じぐらいの時刻で出発したが、着いたのが昼間だった。荷物があまり無かったからでもあるけれど、明らかに移動速度が違っていた。その日の夕餉のあと、ローズたちは早く寝るようにした。
翌朝。
ローズたちは日が上る前に、朝餉を終えて、再び出発した。コモリア国をもっとゆっくりと散策したいのだけれど、皇帝陛下に渡す女王陛下からの手紙も荷物にあるから、早くスズキノヤマへ行かないといけない。
いくつかの島々で休憩を終えて、そろそろ見慣れていた景色がみえた。ドイパ国だ。下を見ると、覚えがある大きな島がみえた。
「うむ」
「気づいたか」
「うん」
「オオラモルグは今ただのオオラ島となった。ドイパ国の一部だ」
「ですね」
「その辺りが、僕とローズが初めて出会った場所だ」
「はい」
「あの時のローズの声を、今でも覚えているよ」
「中に閉じこめられて、どんな感じだった?」
「しばらく気を失っていたが、その後は恐怖と焦りだった。出られなくて、どうしようもなかった。魔力が使われていた時は、死ぬかと思ったぐらい、体全身に痛みを感じた」
エフェルガンが言うと、ローズは彼の言葉を聞いて、ただ瞬いた。
「大変だったんだ」
「その絶望にたたされた時に、ローズの声が聞こえた。生きる希望が湧いた。そしてその後、知っての通り、リンカさんとジャタユ王子とミライヤさんに助けられて魔石から出られた。目を開けたら、ローズがいた」
「まるで生まれたての雛の目だったな」
ローズが言うと、エフェルガンがうなずいた。
「そうかもしれない。僕にとって、あれは生まれ変わった瞬間でもあるよ」
「そうなんだ」
「すごく感謝しているよ、ローズ」
「あなたを命がけで救ったのはあのリンカさんとジャタユさんたちだよ。ちゃんと御礼も言った?」
「もちろん。恩義ある方々には当然御礼を申し上げた」
エフェルガンがうなずいた。
「そうか」
「でもローズは特別だ」
「なんで?」
「一目を見ただけで分かるほどの特別な存在だったんだ」
「うむ、全身光っていれば誰もがそう思うでしょう」
ローズが言うと、エフェルガンが微笑んだ。
「どうだったんだろう。僕の目にはローズの青い目が印象的だった」
「私も、本当のことを言うと、アルハトロス訪問に来るまで、エフェルガンの顔が覚えてなかったんだ」
「えっ?!」
「でも、オレンジ色の目と頭にあるあの羽根耳を覚えていた」
「そうだったのか」
ローズの言葉を聞いたエフェルガンがかなりショックのようだ。
「エフェルガンの頭の羽根耳が、・・なんだかとてもかわいく思って・・」
「他人にそう言われたのは初めてだ」
エフェルガンは苦笑いながら言った。
「ごめんなさい」
「いや、嬉しいよ。違う視点で見てくれる人がいるということだ。ありがとう」
「うん」
「あ、そろそろドイパ国の首都の島がみえるよ」
「ジャタユ王子がいるかな」
「さぁ・・」
ローズはジャタユ王子にリンクをかけて見た。一発で繋がった。
(ローズ?!)
「うん」
(今どこに?)
「ドイパ国の首都の真上ですよ」
(お!今行く!)
しばらくすると、下からとても早いスピードで飛んでくるジャタユが見えてきた。エフェルガンはスピードを落とした。ジャタユ王子は隣に飛んできた。
「ジャタユ王子!ヤーホー!」
「ローズ!元気か!」
「うん」
ローズが手を振って、挨拶した。
「こんにちは、ジャタユ王子」
「ススキノヤマのエフェルガン皇太子か。どうしてローズと一緒に?」
「ローズ姫を招いて、これからスズキノヤマに二年間留学することになったのです」
エフェルガンが答えると、ジャタユがうなずいた。
「そうか。頑張れ、ローズ!あれ?黒猫がいるけど、柳さんは?」
「ふん」
リンカが何も答えなかった。
「うーん・・、今どこかに修業中です」
「へぇ。あの柳さんがローズ置いて行ったなんて・・。まぁ、事情があるんだろう」
「うん、多分」
「じゃ、たまにドイパに遊びに来てな。その鎧も小さくなったみたいだ。来たら直すよ」
「うん、ありがとう!」
「会えて良かったよ!またな!」
「うん、じゃ、また!」
ローズが手を振ると、ジャタユも手を振った。エフェルガンは再びフクロウのスピードを上げた。頭の中にジャタユの言葉聞こえた。
(ローズ、万が一、何がかあったら、俺に頼れ)
「はい」
ローズは後ろを向いて手を振った。
「ジャタユ王子と仲が良いんだ」
「うん、彼はミライヤ先生の恋人だからね。将来の従兄弟だって」
「あのミライヤさんが?」
「そうだよ」
「ミライヤさんがローズの従兄弟?」
「うん。ミライヤ先生の母上は私の父上の妹君だと聞かされた」
「そうだったか」
「うん」
「ちなみに柳さんとは誰?」
「・・・お兄さんです」
「ローズの兄上か」
「うん」
「修業中って?」
「多分。行方不明なの」
「それは心配だ」
「うん」
「無事に帰ってくると良いね」
「うん」
「さて、もう少しでスズキノヤマ領土に入る。その前にちょっと休憩するよ。首都まであと少しだ」
「はい」
しばらくしたら、スズキノヤマの国に入った。ローズたちがしばらく休んでから、再び出発した。険しい山々に囲まれて、断崖絶壁の海辺が見えた。ドイパ国とまったく違う風景だった。町には高い建物が多いが、町から離れると草花や森がたくさん見えた。また海の近くに所々小さな島がある。
波が穏やかなドイパ国と違って、スズキノヤマ国の波はかなり高く、激しく岩とぶつかる。しばらく進むと、高い山々に囲まれた大きな町がみえた。とても近代的な町だ。高い建物が多く見えた。上からでも見えるほど、たくさん人がいる。けれども、エフェルガン達はその町で止まらずに、ずっと山の砲へ向かった。その高い山の上に大きな城が見えた。エフェルガンが住んでいる城、ヒスイ城だ。




