159. スズキノヤマ帝国 権力と政治(12)
目が覚めると昼餉の時間が過ぎていた時だった。
ローズは一瞬自分が今どこにいるかと、周りを見渡した。そこは見慣れない部屋だった。レンドラ公爵の屋敷で起きた出来事の後、医療棟に運ばれて、それから宮殿の一室に運ばれたことまで覚えた。けれど、その時、部屋の様子などを見る余裕がなかった。薬の影響もあったから、運ばれてすぐに寝てしまったようだ。
改めて見ると、とても豪華な部屋だった。上品の色合いと金の組み合わせで、華やかであるのに、とても居心地の良い空間に感じる。多分デザインのこともあるから、と彼女が思うけれど、金色の使い方もとても上手だ。華やかなのに、派手ではなかった。
部屋の中に、人の気配がしたので寝台から降りようとしたら、気配がある方向から足音が聞こえている。
「起きましたか?」
ガレーが来た。脈と熱を測って、目や喉を診て、確認した。後ろにいる侍女は白湯を持って差し出した。隣にハティがいて、うなずいた。白湯はもう鑑定されていたという合図だ。ローズは差し出された白湯で喉を潤し、美味しく感じた。
「リンカとアマンジャヤは?」
ローズが尋ねると、ガレーは微笑んだ。
「リンカさんは今寝ています。毒を我慢して戦ったため、全身に回ってしまいました。しかし、元から体が丈夫で、毒消しも効いたところで、問題がなさそうです。今夜はもう元気になれるのでしょう」
「そうか。良かった」
「アマンジャヤ殿はまだしばらく入院が必要です。強力な毒だったので、ローズ様のご判断と適切な指示がなければ、多分もう死んでしまったかもしれません。本当に助かって良かったと思います」
ガレーが脈を測って、優しい言葉で言った。
「本当の事を言うと、確信がなかった。ただ、彼を失いたくなかったから、絶対助けたいと思って、必死になったんだ。今ならまだ助かると思って、本物の医療師のガレーに命令してしまって、ごめんね」
ローズが言うと、ガレーが笑った。
「時には諦めなければならない状況もありますが、ローズ様のお気持ちがきっと、アマンジャヤ殿の命を救ったのでしょう」
ガレーが言うと、隣にいるハティもうなずいた。
「私は長ではありませんが、一族の代表として、アマンジャヤの命を助けて頂いて、御礼を申し上げます」
ハティは手を胸の当てて頭をさげながら礼を言った。
「ううん、お互い様ですから、気にしなくても良いよ」
「ローズ様・・」
ハティは目を擦った。ガレーは微笑みながらハティを見つめた。
「あ、そうだ。聞いても良いかな?」
「はい、なんなりと」
ローズの質問にガレーはうなずきながら答えた。
「えーと、敵はどうやってアマンジャヤに毒を盛ったの?アマンジャヤは毒の専門家なのに、毒にやられたとは驚いたんだ」
この質問に対して、ハティがガレーをみて、了承を確認した。ガレーがうなずいて、許可を出した。やはりかなり敏感な問題に触れることになるかもしれない、とローズが思った。
「あれは飲み物に仕組まれた毒だったのですが、無臭無味で区別しにくい物でした。色は薄い紅色なんですが、色が付いた飲み物に混ぜるとほとんど分かりません」
「でも私はアマンジャヤよりもたくさん飲んだよ?なのになぜアマンジャヤがあんなに重傷になったんだ?」
「その毒は男性にしか効かないのです」
「え?」
「しかも発動するまで時間がかかり、もう一つの条件が必要です」
「条件?」
「はい、それは香に含まれている毒が体内に入ると即時に反応するのです」
あの虫除けの香りか、とローズは思い出した。
「だからあの絨毯の部屋に入って間もまくアマンジャヤが倒れてしまったわけか」
「はい。単体では働かない毒なんですが、両方を揃うと猛毒になります」
「ではリンカと私はなぜかかった?やはりあの香の煙が原因か?」
「はい。その香の煙が体内に入ると激しい咳き込みの後、窒息させる効果があります」
「ふむ」
「リンカさんはアマンジャヤを外に連れ出したため、咳き込まなかったが、戦闘で激しい運動をしてしまったため、毒が思った以上に体内に回り、激痛をもたらすのです」
「・・・リンカが何にも言わなかった」
「元から我慢強い方ですから、敵の全滅を優先して働いたのでしょう」
「そうなんだ・・」
ローズがうなずいた。
「でも毒消しが効いて良かったです」
「はい・・ねぇ、ハティ、私に毒消しの技術を教えて下さい」
「それは・・」
ハティは困った顔でガレーに助けを求めている。ガレーはうなずいて、ゆっくりと口を開く。
「これはまだ新種の毒ですから、大変危険な情報です。まだ出回っていないのなら、今の内にその毒の調合技術など破壊する必要があります。レンドラ公爵の屋敷でその毒の残量や調合する技術などについて、ただいま調査中です。皇帝陛下に報告しなければならないため、それらの毒の情報に関して今のところ秘密となっています」
ガレーは優しい口調で教えてくれた。
「そうか。分かった」
「ローズ様はしばらく一般的な毒の知識を持ってから、次を習うと良いでしょう。私の課題もまだ全部終わっていませんでしょう?」
「うん。難しいから、毎日トダと勉強しているんだ」
「ならば、それを先に十分理解してもらわないと、次に進めませんね」
「うむ。分かった」
やはり難しいか、とローズが思った。しかし、いつか解毒の知識を持ちたいと彼女が思う。なので、もっと頑張って勉強する、と彼女が決めた。
「ガレー、もう一つ聞いても良い?」
「はい、なんでしょう?」
「なぜアマンジャヤが狙われていたの?私じゃなくて?」
「敵の目標はローズ様お一人ですよ。アマンジャヤ殿とリンカさんが邪魔なので、先に片づけられ、ローズ様を一人にする必要があります」
「そうか」
「彼らはローズ様の魔石が欲しがっているため、これからもっと注意しなければなりませんね」
「うん。エファインがいなかったら、多分私が逃げ遅れてしまう」
「そうですね」
「エファインは大丈夫だった?」
「はい。今はこのお部屋の前で警備をしているのですよ」
「もう元気になったんだ」
「ほほほ、元々丈夫な人ですから、短時間で魔石に閉じこめられただけなら、問題がありません」
「そうか。良かった」
「ふふふ」
ガレーは突然一人で笑ってしまった。怪しい・・、とローズがガレーをにらんだ。
「どうしたの?」
「いや、ふふふ」
「ガレー、思いっきり怪しいよ?」
ガレーが微笑んで、うなずいた。
「エファイン殿は魔石で閉じこめられたよりも、他の護衛官にからかわれた事の方が大変だったようで・・」
「え?!」
「ふふふ」
「うむ、まさか、私が彼の魔石を胸の谷間に置いたからじゃ・・ない・・よね?」
ガレーは答えず、ただ怪しく笑っただけだった。ハティも侍女も笑いを堪えている。
「うむ、エファインに謝らないといけないんだな。あれは、パトリアが壁を破壊して、破片が飛び散ったから、魔石に当たってしまうと、割れてしまうんだ。割れるとエファインが死んでしまうため、衝撃を防ぐ必要があると思った。あの状況で思いつくことは胸の間に入れることだったんだ・・」
「そうですね。理由が分かっていても、やはり皆から見ると刺激が強いので、どうしてもからかわれてしまいます」
「うむ」
「でも当然、本人が石の中に閉じこめられたわけだからその認識もなく、感覚もなかったようです」
「当然だ」
「殿下も理解して下さって、素直に礼を伝えましたよ」
「うん、良かった」
ローズは彼女の盾である護衛官エファインの無事が確認されて、ほっとした。
「ガレー、結局犯人はレンドラ公爵だったの?あのモルグ人剣士はどういう関わりがあるの?」
「まだ調査中なので、今は何にも言えません。例え私が分かっていても、この件について、殿下に直接お聞きなさいませ」
「そうか」
結局ガレーは何にも教えてくれなかった。おなかが空いたので、食事をもらって、また薬を飲まされて、眠らされた。
ローズが再び目を覚ますと、日が暗くなってしまったころだった。昼間よりもずっと体が軽いけれど、窓から見える満月で、ローズが凍り付いてしまった。
今日は、あの同時満月だ。
それは、彼女の悪夢であり、苦しみでもある。あの凄まじい痛みがもうすぐ襲ってくる。しかもエフェルガンが見あたらない。ものすごい不安に襲われ、衣服を整えて、エフェルガンを探しに部屋を出ようとしたら、ハインズとエファインが扉の前で彼女に気づいた。
「ローズ様、もう起きられるのですか?」
「あ、はい。エファインはもう大丈夫ですか?」
「はい。お助けを頂いてありがとうございました」
「ううん。私もエファインに助けられたからお互い様だよ」
「それは私の役目ですから」
「そうだ。エファイン、私がやったことで、エファインが皆にひどくからかわれた、とガレーから聞いた。ごめんね」
「いいえ、問題ありません。むしろ、幸栄です。自覚がないのは残念でしたが・・」
エファインが言うと、ローズが思わず笑った。
「あはは。あのことは二度や三度に起きて欲しくないよね。心配したのよ、本当に」
「はい。恐ろしかったです」
エファインがうなずいた。
「ねぇ、エファイン」
「はい」
「例えエファインじゃなくても、私の周りの人々であるなら、私は同じことをするからと、あなたをからかった人にそう言ってやって下さい。例えばハインズが魔石に閉じこめられて、そこでパトリアの爆発を起こしたら、どうしても危険だと思ったから、同じように、一番安全な所に置くからね」
それを聞いたエファインが笑いながらハインズを見ている。
「聞いたか、ハインズ殿」
ハインズは苦笑いした。
「もう二度と、敵の術に墜ちたくないな」
ハインズが言うとエファインがうなずいた。
「うん。そうだな」
ローズもうなずいた。ガリカの町で起きた出来事を言おうと思ったけれど、やめた。ハインズにとってきっとそれが思い出したくない黒歴史であるからだ。
「ねぇ、ハインズ、殿下は知りませんか?」
「まだお仕事かと思います。どうしましたか?」
「ちょっと・・急用を思い出した」
「私に教えて下されば手配します」
ハインズが言うと、困った。満月のことを言っても良いかどうか・・迷う。
「うむ・・この宮殿に聖龍神殿があるんだよね?」
「はい」
「案内してくれる?」
「今からですか?」
「うん」
「理由を尋ねても良いですか?」
「うむ・・・どうしても神殿に行かないと・・」
エフェルガンがいないなら、神殿の中だと少しマシかな・・と思ったけれど、試したことがない。あの痛みは辛すぎるから、なんとか月が高く昇る前に神殿の中へ逃げ込みたい。
「分かりました。案内します」
「エファイン!」
エファインが言うと、ハインズがびっくりして、阻止しようとした。しかし、エファインがハインズに首を振った。
「ローズ様は聖龍様の姫君ですから、神殿を訪れるなら問題ないだと思います」
「しかし、殿下の許可が必要だ」
ハインズが言うことも正しいけど、ローズは待つ余裕がもうなくなっていく。
「すぐに神殿に向かってはダメなの?」
「どうしても今すぐですか?」
二人の護衛官がローズに聞いた。
「うん・・」
ドックン・・!
心臓が強く鳴った。ああ、この感じが・・あの痛みがやってくる前兆だ、とローズが思った。
「ローズ様?」
エファインがかたまってしまったローズをみて、心配そうに声をかけた。
「あ・・あ・・」
額が光り出してしまった。強烈な痛みが額に襲ってきた。
「あ・・あああ!」
痛い!とっても痛い!頭が割れそうな気がした、と。
「エファイン、ローズ様を部屋に!俺はガレーを呼びに行く!」
「はい!」
エファインは素早くローズを抱きかかえて部屋の中に入って、寝台の上に寝かした。しかし、凄まじい痛さで頭が割れそうな気がした。痛い、痛すぎる。助けて、エフェルガン!ローズはぐるぐると動き、頭をかかえている。
ガレーが入って来たが、この痛みは普通の痛みではないから為す術がない。痛み止めを飲まそうとしたが、ローズが暴れて、はじき飛ばした。体が光り出して、激痛が体中を襲った。ローズの悲鳴が部屋の外まで聞こえてきて、周囲が騒然となった。騒ぎを聞いた皇帝が来て、ローズの様子をガレーに聞いたらしいけれど、ガレーが首を振り、カバンから針を取り出している。
凄まじい力が体の中に入り、体がこれらのエネルギーに対してパンパンに膨らんでいるような感覚だった。割れる、とそう感じながら思った。体が割れてしまうような感覚になって、激痛と伴い、光も強くなってきた。
「ああああああああああああああああ!」
痛い・・痛いよ、エフェルガン。あなたは今どこにいるの?、とローズが必死に彼を呼びかけた。
「ローズ!」
扉からエフェルガンが現れた。顔色がとても悪い。彼の額も光っている。
「大丈夫だ!ローズ!僕が今ここにいるから、大丈夫だ!」
エフェルガンはローズを強く抱きしめてくれた。ともに痛みを感じている彼の顔に大粒の汗が見えている。エフェルガンが抱きしめてくれると、まぶしい光が二人を包み込んでいて、痛みが少し減った気がする。
「皆、出ててくれ。これは聖龍様からの・・僕たちの試練だ。一晩過ぎたら、・・治まる」
「分かった」
皇帝は人払いの合図を出した。ガレー達も外に出て行った。
「あ・・あ・・ああ」
「大丈夫だ。僕がここにいるから・・ともに・・ともに・・乗り越えよう」
体が、これらのエネルギーを受け取り、どこまで耐えられるか、分からない。この体が耐えきれなかったら、多分粉々になり壊れてしまうのでしょう。何となくそんな感じがした、とローズが思った。本当の姿に戻れば、楽になるけれど、同時にそれは人を捨てること瞬間でもある。人を捨てたら、ローズはもうエフェルガンと一緒に居られなくなる。すべての生活とさようならという意味するのだ。しかし今は、それはしたくない。まだこの体が必要だ、とローズが痛みを耐えながら、思う。
「少し楽になったか?」
「あ・・ああ・・はい」
「しばらくじっとしよう。仕事で忙しく、忘れてしまった。許せ、ローズ」
「う、うん」
ローズがうなずいた。
「また痛む?」
「痛い」
「そうか」
「体が膨張している・・そんな感覚」
「ああ、分かるよ。僕も同じ感覚だ。痛いな・・うっ!」
エフェルガンがまた目を閉じて、痛みを堪えている。ローズの目から涙が川のように流れている。もうあまりの痛さに言葉さえ言えなくなってきた。部屋の外から祈りの歌が聞こえている。神殿の司祭が唱えているのか、分からない。
しばらく抱き合って、息を整えて、目を閉じると体が軽くなった気がした。目を開けるとエフェルガンと一緒に空にいた。どういうことだ?、とローズが周囲を見て、思った。
「エフェルガン」
「ああ、僕も驚いた」
「私達が死んじゃったかな」
「さぁ、分からない」
「だって体が軽いの」
「不思議な感覚だな」
「うん」
エフェルガンはローズを離さず、しっかりと抱きしめている。
「ここはどこだ?」
「宮殿の上?でも違う気がするな」
二人は自分たちが今どこにいることさえ分からない。
「誰かいる」
目の前の風景が変わっている。夜空の風景から華やかな都の風景が映し出されている。
「宮殿の中のようだ」
そこに見えているのが一人の美しい若い女性だった。女性は音楽に合わせてしなやかに舞っている。とても美しく、とても華やかで、その目線の先には一人の若い男性がいる。男性は手を伸ばし、女性はその手を取って、互いを見つめ合っている。二人は愛し合っているかのように見える。二人の舞いが続き、木々から散った花びらとともに景色が変わった。
戦場が見えていて、男性は女性の前から姿を消した。泣き叫ぶ女性の姿が映り、手にしたのは一つの卵だった。そして別の男性が現れ、その卵を女性の手から受け取った。木々から散った枯れ葉とともに、卵をもった男性は遙か彼方へ姿を消した・・。
華やかな雰囲気の中、また女性は一人で舞う。美しくしなやかに・・蝶々のような鮮やかな姿で、見た者を魅了した姿で、まるで天女だった。そしてその女性の目の先には戦場へ行った男性だった。帰ってきたのか。男性は手を伸ばし、女性はその手を取ろうとしたが・・卵を持って行った男性が現れて、その女性の手を取り、口づけをした。女性はその男性と舞うけれど、目をそらし、遠くにいる男性を見つめている。風に飛ばされた花びらとともに、景色がまた変わっていく。
卵を持って行った男性は、また新たな卵を手に入れた。今度はそれを大切に両手で持っている。一方、女性は一人で舞い、悲しい顔をした。華やかに、しなやかな動きをして、美しく舞う姿はやはり天女のように美しい。女性の目の先にいたのはやはり戦場に行った男性だった。男性は手を伸ばし、女性はその手をとって、二人は見つめ合っている。だが、別の男性もそばにいる。その男性が女性に手を伸ばしたが、女性は見向きすらなかった。女性の目に映ったのはあの最初の男性だった。そして風に飛ばされた草花とともに景色が変わり、再び夜空に戻った。
「エフェルガン・・」
エフェルガンの目に涙が流れている。
「気づいたと思うが、あれは母上のことだった」
「うん」
「母上が愛した男は、あの最初にみえた男だ」
「戦場へ行った男性ね」
「ああ」
「卵を持って行った男性は・・父上だったかな」
「そうだ。あの卵は恐らくガザレだと思う」
エフェルガンがうなずいた。
「二番目の卵は、エフェルガンの卵だった」
「ああ。そうだな」
「あの男性は結局どうなった?まさか、あのときの・・」
「そうだ。僕が彼の首をもって母上に差し出した。父上の命令で謀叛軍を討伐していて、彼の首を刎ねた。その時、母上はローズを監禁し、カルディーズにローズを侮辱させた・・」
エフェルガンが言った。
「思い出したくないことだが、あえて見せたことに意味があるかもしれない」
「あの最後の男性・・あの人はだれ?」
「分からない。母上を慕う男がほかにいるということだ。恐らくこれらの事件の黒幕だろう」
「愛する女性を手に入れるために、国を裏切るまでするの?」
「僕だって、ローズを愛するあまり、何があっても、何をしても、ものにしたいと思うことがある」
「諦めることは・・」
「ない」
エフェルガンがはっきりと答えた。
「他人のものになっても?」
「僕はロッコ殿と同じだ。幸せなら仕方ないと思うが、不幸ならば解放する方法を考えてしまう。必要ならその男を殺すことも考える」
「うむ、結構怖いな」
「だから僕は何してもローズを幸せにしなければならない。でないと、ロッコ殿が僕を殺しに来るからな」
「うむ・・」
エフェルガンは自分の立場を理解している。しかし、今考えると、彼女の周りの男達は、結構怖い人たちばかりだ。
「うむ、問題を元に戻そう。あの三番目の男性をどうやって捜し出す?」
「ガレーに聞くしかない」
「分かるのか?」
「ガレーは父上の近衛だ。昔から、ずっと父上を支えている人だから、色々と詳しい」
「教えてくれるのか?」
「教えてくれるように、頼んでみる。うまくいかないなら父上に頼むしかない」
「うん」
突然まぶしい光が現れ、二人を包み込んだ。ローズが覚えたのは、エフェルガンがしっかりと抱きしめたことだった。そしてすべてが真っ白に変わり、それからの記憶はない。




