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人形姫ローズ  作者: ブリガンティア
スズキノヤマ編

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151/811

151. スズキノヤマ帝国 権力と政治(4)

数百人・・。


はっきりと数が分からないぐらい多い。だからファリズが国軍が攻めてきたのではないかと聞いたわけだ。どうやってそんなにたくさんの殺し屋を集めていたか気になるところだけれど、今はそんな余計なことを考えなくても良い、とローズは思った。生き延びることが最優先の課題だ。


「モトレア・・」


ローズはモトレアを呼んだ。


「はい」


モトレアは緊張した声で答えた。


「ごめんね、巻き込んでしまって」

「いいえ、私はローズ様とともに戦います」

「あなたはメジャカの民を背負っている身で、こんな所で死んだら、メジャカの民が悲しむよ」

「ローズ様こそ・・もし何かあったら、この国が龍神様に祟られてしまいます」

「うむ」

「国が祟られたら、メジャカの民も無事でいられません。だから私はメジャカのためにもローズ様をお守りします」

「そうか・・」

「はい」

「ありがとう」

「これも私の役目です」


ローズは目を閉じた。覚悟の上でモトレアが言った言葉を心に響く。祟られるか、と。


「ミルザ」

「はい」

「フォレットを探して、ペンとインクと紙と蔓系の植物の種があるか聞いて欲しい」

「種・・ですか?」

「うん。薔薇があると良いな。なければ豆類でも良い」

「はい。種はどのぐらいあれば良いですか?」

「あるだけ持ってきて欲しい・・まぁ、あればの話だ」

「分かりました。行って参ります」

「ミルザ」

「はい。また何か?」

「ううん。いつもありがとう。気をつけて行っていらっしゃい」

「はい」


ミルザは頭を下げて、部屋を出て行って、外でハインズと会話してから、フォレットを探しに行った。


ミルザを待っている間、ローズはフォレットが用意した食べ物を食べて、三つの鏡をじっと見ている。リンカは相変わらずコツコツと敵の首を刎ねている。ジョルグは衛兵や護衛官達を遠距離に集中するように命じた。敵軍は手槍を投げ始めている。しかし、それらの手槍がシールドの魔法で、ほぼ弾かれた。ファリズはまた凄まじい覇気を放ち、前にいる敵が覇気に当たって、気を失った様子が見えた。やはりすごい。ローズも覇気を習いたい、と。


しばらくして、ミルザがフォレットとともに戻ってきた。フォレットは一袋の種を持ってきた。ミルザの手には書く道具一式がある。


「ただいま戻りました」


ミルザは書く道具一式を差し出した。フォレットも種一袋を渡してくれた。


「ありがとう」


ローズは種を受け取った。


「薔薇の種でございます。殿下はこの城の庭に薔薇の花を植えて欲しいと仰いましたので、仕入れてきました」

「そうか。良かった。また仕入れてもらうことになるけど、良いかな?」

「問題ございません」

「ありがとう。使わせてもらうよ」

「はい」


フォレットはうなずいた。しかし全員が不思議な目で見ている。ローズは薔薇の種を両手で持って念じている。彼女の気をこの種に閉じこめて、魔力を含ませている。


「聖龍様、どうか私達を助けて下さい」


ローズは最後にそう言いながら聖龍の姿を思って、願いを種に閉じこめた。そして、その種をフォレットに渡した。


「フォレット、その種ができれば、城の外側の壁にぐるっとまいて欲しい。ぱらぱらで良いんだ。土の上であればそれで良い。でも外はあの状態だから、とても危険な仕事で、暗部か護衛官か兵士にでもお願いして、気をつけてやって下さい」

「はい」

「裏庭にはリンカがいるから、遠くから声をかけてから近づいて、事情を説明して下さいね。いきなり近づくと、首が飛ぶから注意してね」

「かしこまりました」

「頼んだよ」


フォレットは頭を下げて退室した。そしてローズは手紙を書いた。皇帝宛とガレー宛だった。エフェルガンはこういう手紙もらったら、焦ってしまうから余計に危険度が増していく。


手紙を絨毯の上に置いて、呪文を唱えて手であてると、ポンと消えた。ガレー宛の手紙も同様にした。これで宮殿に連絡が届くはずだ。後は、この危機を乗り越えなければいけない。


「フォレット、返事して」

(はい)


繋がった。


「まき終わったら、言ってね」

(かしこまりました)


フォレットとのリンクはしばらく維持しておく。意外と彼は、とても行動が早い人だ。エフェルガンは優秀な人材に恵まれている、とローズが鏡で彼を見て、思った。


「ジョルグに、ファリズに、リンカに、バリアー!速度増加エンチャント!攻撃力増加エンチャント!」


支援の更新をした。


「ジョルグ、目を貸して下さい」

(はい?)

「敵を見て欲しいんだ」

(見るだけで良いですか?)

「うん。しっかり見てね」

(はい!)


ジョルグがしっかりと敵を見ている。飛行部隊から城へ突入しようとしている暗殺者達が降りてくる。


「マルチロック! ライトニング!」


ジョルグの目から見えた敵を遠距離雷の魔法を放った。魔力を大きく消費したが、結構効果的だった。鏡で雷に打たれて倒れた敵がかなり多くいた。


(ローズ様・・)


ジョルグが震えた声をした。


「ん?」

(あの魔法は?)

「こちらから発動させたよ。あなたの目を使ってね」

(・・・)

「大丈夫?」

(はい)

「引き続き、城へ近づく敵を見て」

(はい!)


今度は上から直接屋根や壁に着陸した敵を見てくれた。早速雷の魔法を唱えた。今度も命中した。けれどもすでに上陸して城に侵入した暗殺者がいると思う。油断にならない実態だ。


(ローズ様、種をすべて城の周りにまきました!)


フォレットの声が聞こえた。


「分かった。ありがとう、フォレット。全員城の外壁から離れてね。交信を切るよ」

(はい)


ローズはフォレットとの交信を切った。


「ジョルグ、ファリズ、リンカ、これから魔法を発動するから、城の壁や門からできるだけ近づかないで下さい。近くにいる護衛官や兵士にも伝えて」


ローズがそう忠告すると、彼らはうなずいた。


(はい!)


(あいよ)


(おう?!)


それぞれの視線から見えた風景を確認した。城の外にいるのはファリズだけだった。ファリズなら大丈夫だ。ジョルグは自分の部下を城の中に入るように命じた。


「自然よ!ローズが命じる:我に力を与えたまえ!」


ドーン!


凄まじい自然の力が一気に集まってきた。


「大地よ!願いを込めた種を育てよ。ギガ・ローズ・フェンス!」


種一つ一つに念じて、そして一気に魔法を発動したら、種から苗が出た。


ズズズズズズ


種が生長して、大きく、太く、ずっと伸びて、城の高さよりも高く、薔薇の木が生えて来た。鋭いトゲがもちろん、絡み合う蔓や枝が複雑に城を囲んで鳥かごのような形になった。そして大きな美しい薔薇の花々が咲いている。その光景はファリズからの映像で分かった。きれいだけれど、不気味で恐ろしい風景でもある。


(すげー! おまえがやったのか、ローズ?)


ファリズの声が聞こえた。かなり興奮しているようだ。


「うん。兄さんは中に入りたいなら門をあけるけど」

(要らん。俺はしばらくこの害虫どもと遊んでやるからな)

「うん。気をつけてね」

(妹、無理するなよ)

「うん」


ファリズに強がって言ったけれど、本当はローズがとても苦しかった。こんなに魔力を消費してしまったから、血を吐いてしまったのだ。エファインもミルザもモトレアもジャワラも慌てて彼女を支えて白湯を飲ましたり、少しずつ食べ物を口に入れてくれた。


「無茶をなさるとは・・」


エファインが文句を言いながらローズを自分の胸に寄せて、支えた。モトレアは持ってきたハンカチでローズの口から流れてきた血を拭いた。


「うん。ごめん・・初めての試しだったから・・つい」


ローズは苦笑いしながら言うとミルザも苦笑いした。


「でもこれでしばらく敵の侵入を防がれました」

「うん」

「これからどうしますか?」

「まず怪我人の手当だ。ゴホゴホゴホ」


血が気管に入ってしまったから咳き込んだ。ジャワラは部屋の外に出て、ハインズを呼んだ。ハインズが慌てて入ったら、ローズの具合を確認して、また外に出た。多分トダか医療師を呼びに行くのでしょう。


ミルザがローズに白湯をさしだして、飲んだ。血の味がするけれど、もう慣れた。そして少しずつ食べ物を口に入れた。今回の準備は前回と違って、結構多めだった。しかも美味しい。これはエメルの料理だ、と彼女が思った。


食べ物も口にしたから少し魔力が回復してきた。自分自身に回復魔法をかけた。この体、魔力で維持しているのだ、と彼女がやっと分かってきた。自然回復に頼ったら、どのぐらい時間がかかってしまうか想像するだけでも頭痛がする、と。


ハインズと一緒に来たトダが見えてきた。トダが直ちに回復魔法をかけた。本当にこの人は医療を勉強したら、ガレーのような立派な医療師になれるとローズは思った。今度エフェルガンと相談すると思う。


「ありがとう。もう大丈夫になってきたんだ」

「ローズ様、もう無理をなさってはいけません」

「トダは厳しいな」

「私だけではなく、ここにいる全員が同じ意見をすると思いますよ」

「うむ」

「反省して下さい」

「反省しません」

「・・・」

「これ以上敵に侵入を許したら、怪我人が増える。私はご飯さえ食べれば、なんとかなる。この城を守っている兵士や護衛官は数が少ないから、減ってしまったらそれこそ全滅を意味する」

「ですが・・」

「私は、できることをしただけだよ。援軍が来るまでしばらくの我慢だ」

「来るのですか?」

「来ます」

「来なかったら?」

「聖龍様に頼んで、敵に滅びを与える」

「・・・」


トダは黙って回復魔法をかけてくれた。


「ハインズ」

「はい」


ローズがハインズを呼ぶと、彼は近くに来た。


「城内にかなりの数の敵が入った。注意して」

「心得た」

「あと、怪我人のことも頼む」

「ローズ様も怪我人の一人です」

「私は大丈夫だ。今少し食事もできたから、もうすぐ元に戻る」

「無理をなさらないで」

「無理はしていない」

「そんな状態で言ったら説得力がありませんよ」

「あとであなたの愚痴を何時間も聞いてやる。でも今は皆でこの状況から生き抜くことが最優先だ」

「それは難しい注文かもしれませんよ」

「それでもそうして欲しいんだ」

「強情な。だからローズ様はかなり無茶をなさったまで・・」

「うん。私はハインズ達を失いたくないからだ。ハインズも、エファインも、トダも、ミルザも、ジャワラも、ジョルグも、皆、私の大切な人たちだから」

「ローズ様」


ハインズは言葉を失った。


「だから、絶対に死なないで欲しい。約束して、ハインズ」

「それは・・」

「例えあなたが生きる盾であっても、私はあなたを死なせたくない。エフェルガンに文句を言われても良い。私は人の姿を捨ててもあなたを守るから、それだけを覚えて欲しい」

「パララでのお姿に・・」

「うん。何となく分かるよ。それは何度もできるような技ではない。肉体を捨てる覚悟の・・最後の最後に使う技だ」

「そんなことをしたら殿下が悲しむ」

「それでも、あなた達のためなら、私は惜しみなく・・戦う」

「分かりました。我々が死ななければ良いということですね」


ハインズはうなずいた。


「うん。あなた達は大切だから、死なないで」

「努力します」

「うん。じゃ、侵入者の処理を頼む。フォレット達を守って」

「はい。では、行って参ります」

「お気をつけて、いってらっしゃい」


ハインズは頭を下げて、退室した。エファインに支えられて、もぐもぐとパンを食べた。口の中に血の味しかしなかったけれど、もう気にしない。白湯を飲んで全部おなかの中に流し込んだ。やっと自力で座れるようになった。


「トダ、ありがとう。もう大丈夫だ」


トダは魔法をやめた。そして自分のハンカチを出してローズの顔にある汗を拭いてくれた。また顔についたパンのかけらを拭いた。


「もう、無理をしないで下さい」

「うん。大丈夫だよ」

「私はこれから医療師とともに怪我人の手当をする。何かあったら医療棟にいると思います」

「うん。気をつけて、敵が城内にいる」

「心得た。私も死なないようにがんばります」

「うん。お気をつけて、いってらっしゃい」


トダは頭を下げて退室した。しばらく食事して、魔力が段々戻ってきた。そのままのハムとパンよりも、エメルさんが調理したサンドイッチや肉料理になぜか回復力が高く感じた、とローズは思った。気のせいかもしれないが、あとで詳しく調理したものの内容を聞いてみる。そして懐に入れたミルザの飴玉の箱を出して、一粒を口に入れた。


「ミルザの飴玉、美味しい。いつもありがとう」

「いえいえ。役に立って良かった」

「これって何の味?こだわりがあるの?」

「妹が好きだったの飴玉ですね。ココラ花の味で、首都の城下町で仕入れています」

「そうなんだ。妹さんは元気?」

「7年前、謀叛した武装集団と国軍の戦闘に巻き込まれて命を落としてしまいました」


ミルザがそう答えると、ローズが一瞬で驚いた。


「ごめんなさい」

「いいえ、仕方がなかったのです」

「たまに墓参りをしないとね」

「はい。非番の日に飴玉の仕入れのついでに花を持って、妹の墓に」

「優しいね」


ミルザは微笑んだ。でも考えると、この国では謀叛や暗殺事件が多く、その中で一番の被害者は民である。本当に、政治的な権力争いが激しい国であると感じている。ファリズの言った通り、この国は大変危険だ。けれど、ローズはエフェルガンと結婚した以上、彼女がこの国の一部となった。大国であり、豊かで、軍事力もあり、やはり権力をにぎりたいという者もたくさんいるのでしょう。そしてローズも今、権力争いのど真ん中にいることも自覚している。これはエフェルガンが分けてくれた彼の苦悩なのだ。


「少し元気になった。ちょっと城内の状況を確認する」

「まだ無理をなさってはいけません」


エファインが文句を言った。


「うん。でも気になるんだ」


ローズはジョルグの鏡を見つめている。ジョルグはハインズと話しているようだ。そしてハインズはどこかに行った。ジョルグの目で映ったのは混乱した城内だ。怪我した護衛官を支えているトダの姿も映った。


「ジョルグ、状況はどうなっている?」

(ローズ様!大丈夫ですか?!ローズ様が負傷した、とトダから聞いたのですが?!)

「うん、大丈夫だ。侵入者は?」

(まだ見つかりません!薔薇の木のおかげで新たな侵入者がいないようですが、進入できたものが数十人ほどいると思われます)

「気をつけてね」

(はい!)


数十人か・・厄介だ、と彼女が思った。


「リンカ、状況は?」

(裏庭から進入した者がいなくなった)

「効果があるのね」

(ええ。とっても。でもそっちは大丈夫?)

「平気よ」

(なら、良かった)

「リンカ、城内に暗殺者が入り込んだの。十数人いるらしい」

(分かった。探すよ)

「うん。ありがとう」

(あい)


リンカは動き出した。彼女の目で映った映像をみると、かなり高速に動いていることが分かる。とても迫力のある動きだ。目が回りそう。


あとはファリズの目からみえる映像だ。悲惨でしか言おうがない。素手で戦っている鬼神の相手に、その山のように人や鳥が積み重ねている光景は・・地獄絵図のようだ。モトレアもミルザ達も言葉を失った。ファリズ、ゆらゆらしていて、大丈夫か・・怪我がなければ良いんだけど、とローズが心配そうな様子で思った。


「ファリズにバリアー!ヒール!速度増加エンチャント!攻撃力エンチャント!」

(は!余計なことをするな、妹)

「辛そうだもん」

(これは・・腹が減ったからだ)

「中に入ったら?美味しいパンがあるよ」

(俺は肉が喰いたい)

「焼き豚ならあるけど、食べる?」

(良いね)

「じゃ、送るよ」

(どうやって)

「魔法で」


ローズは油紙に包まれている焼き豚を絨毯において、念じて、呪文を唱えた。手紙と同じ方法で送れば届くかもしれない。短距離だから早く届くと思う。ポン!と呪文を唱え終わったとともに焼き豚が消えた。


(うおおおおおおお!なんか来た!)


ファリズの鏡で映った映像を見ると、さっきまで絨毯の上にある焼き豚が彼の手元にあった。便利な魔法だ。


「届いた?」

(いいぜ、妹。こんな使い方があるんだね。ははははは)

「初めて試したけどね」

(ありがたくもらうぜ。もう無理をするな。分かるよ、かなり無理してるんだろう?)

「ちょっとね」

(俺は必ず守るからそこでおとなしく休んでろ、妹)

「うん。頼りにしてるよ、兄さん」

(おう!任せろ!頂きます!)


戦闘中にもかかわらず、上手に焼き豚を喰らう映像がみえている。モトレア達が思わず苦笑いした。


「本当に変わった御仁ですな」

「あはは。兄さんだからね。でも強いよ」

「それは間違いなく、強いお方です」

「父上もとても強かった。私は2歳の時に、父上と喧嘩して、負けてしまって、かなりボコボコにされたわ。それでも手加減してくれたと思うけどね。その時は、やはり父上が鬼神姿でオーラ全開だったわ」

「・・・」

「二人の喧嘩で、建物やグラウンドまで破壊されてしまって、弁償金額が高そうだった。凶暴な娘を持った父上も苦労したんだな・・親孝しないといけないわ」

「そう、そうですね」


モトレアは苦笑いしながら頭をぽりぽりをした。


「見つけた!」


いきなり扉が開いた。明らかに城の者でない姿の男性が現れた。ジャワラが素早く動いて、前に出たが暗殺者の方が早かった。ジャワラを交わし、まっすぐに後ろにいる私を狙い飛び道具を投げたが、ミルザが動いて防いだ。エファインもモトレアも動いて、ローズをかばったが次の暗殺者が粉のような物を投げた。毒だ。


ローズが急いで風を起こして毒を彼らの方向に送り返した。


「ウィンド!」

「ゴホゴホゴホ」


毒をまいた暗殺者の仲間が咳き込んだ。今がチャンスだとジャワラも気づいた。力一杯彼らを部屋の外に追い出した。


「ジャワラにヒール!バリアー!」

「おおおおおおおおおおおおおおおおお!」


体が大きなジャワラがその金属のような硬い体で二人の敵を手でつかんで、部屋の外にある廊下の壁にたたきつぶした。しかし、もう一人は逃げ出して、再び部屋に入ろうとしたけれど、今度はミルザと剣が先に動いた。早い。敵が絶命した。扉の邪魔になるからジャワラはミルザが切った敵を片手でつかみ廊下に捨てた。


「この場所がもうばれています」


ミルザが言うと彼らが入り込んだ道から次々と暗殺者が見えている。ローズはすべてのリンクの術を解除して、部屋を出た。ずっとここに留まると不利だから、と判断した。


エファインはローズの前に立って、構えている。モトレアも彼の部下も武器を構えている。しかし、この狭い廊下に大きな男達の戦闘はかなり難しい。


敵が廊下の入口をふさいでいる。全部5人か。ジャワラが歩くのにぎりぎりの幅だったから、斬り合いにはかなりきつい。


「私がやるわ」

「ローズ様、なりません」


エファインが制止した。しかし、ローズは首を振り、前に出て、毅然とした態度で暗殺者の前に立った。


「いたぞ! 薔薇姫だ」


一人の暗殺者が言った。彼との距離は約6メートルだ。後ろに四人がいるが、道が狭いため、一人ずつ並ぶしかできない。


「そうよ。なんかご用?」

「その首をもらい受ける!」

「やれるものならやるが良い」


暗殺者が動いた瞬間に地面の下から茨の枝が出てきた。


「バインド・ローズ!」


この狭い廊下に薔薇の枝から彼らの逃げ道がない。枝はするすると上に登り彼らの体を巻き付いて、食い込んで縛った。鋭いトゲが彼らの体を刺し、血がにじみ出た。


「依頼人は誰だ」


一人の暗殺者が突然持ってきた武器で手首で向きを変えて自分自身を刺した。しまった、自害してしまった。他の者が自害できないように強く縛り口までふさいだ。


「さて、困った」

「はい?」


ジャワラが呆れた声をした。


「私達もここから出られないな。こいつらが邪魔だから」

「部屋の中に移動させる必要がありますね」


ミルザが言うと全員頷いた。茨が出た地面から魔法で切ってから、ジャワラは一人ずつひっぱって、隠し部屋の中に入れた。あとでガレーに任せる。全員片づけたら、ローズ達が外に出た。何人かの使用人や衛兵が倒れていたのを見つけた。恐らく、先ほどの暗殺者にやられたでしょう。残念ながら、確認したところで、ほとんど全員死亡してしまった。無念だ、とローズは彼らを見ると、とても腹が立ってしまった。


ローズは居間へ向かって歩いて移動した。やはり城内の暗殺者をおびき出すには広い場所が一番良い。


エファイン達に囲まれて移動したら所々暗殺者が現れてきたけれど、ジャワラとミルザの剣で片づけられた。フル支援の彼らはとても強いのだ。広い居間に着くと、意外と誰もいなかった。ローズは手に鞭を召喚した。トゲがびっしりとした魔力で作られた武器である。鞭を見た瞬間、エファインはミルザとジャワラに合図して、距離ととった。モトレアと彼の部下にも、離れるように指示された。


「私がここにいる。この首、執りたいなら、とるが良い!」


大きな声でいうと、各方面から暗殺者が現れてきた。その数が8人だった。暗殺者ほいほい効果はまぁまぁだ、と彼女が思った。


「かかれ!」


暗殺者の誰か指示出したらしく、ローズに向かって武器を構えながら攻撃してきた。でももうすでに機嫌が悪いローズがもう容赦しない。


パン!


乾いた音をした鞭をならし、そして、回転しながら鞭を振り回した。


「強さ三倍!風属性エンチャント!」


びりびりびりと電気が走っているような光がみえた。そんな鞭に当たった暗殺者が気を失ったか、死んだか、分からないけれど、倒れた。例え魔法耐性が高くても、物理攻撃のダメージも入ったはずだ。鞭に付いたトゲに削られている敵の肉体は良い眺めではなかった。けれど、今は気にしないことにした。数分後、敵が増えてきた。案外城内に入り込んだ敵が多かった。


ローズは二本目の鞭を召喚した。今は両手で鞭をしている。両手の技を使うのが久々だ。剣がない今、複数の相手にすると鞭の方が効果的だ。敵が攻撃してきたけれど、鞭の舞いで血の飛沫が飛んで、次々と彼らが倒れ込んだ。そして同時に攻撃仕掛けた敵に地面から彼らを貫き薔薇の枝が現れた。今思いついた新しい技だ。


「デッドリー・ローズ!」


ズッサ!ズッサ!ズサッ!


名前通り、死の薔薇だ。いちいち縛って敵を生かすなど、もうそのような情けをかける気持ちが残ってない。あの衛兵や使用人達を殺したから、これらの暗殺者集団に滅びを与える!、とローズは怒りながら、暗殺者を攻撃した。


額の光が輝きながら、周りにローズの殺気が漂っている。相当恐ろしい姿だったのか、後ろに下がって逃げようとした敵がいたけれど、もうこの部屋はローズのテリトリーだ。猫に縄張りがあるとしたら、ローズは多分自分の魔力が許す限り、この居間全体、彼女の縄張りであろう。第三の目のおかげで次々と敵の体が床から突然生えてきた薔薇の枝の餌食になった。しかもちゃんときれいな花を咲かせている・・血の色の赤い薔薇だ。やっと全員倒したと思って、怒りを静めた。騒ぎを聞いて駆けつけてくれたハインズが居間に現れてびっくりした。しかし、説明する暇もなく、今度は一人の兵士が現れてまた新たな部隊が現れたと報告した。


もう我慢できない。自分のために、これ以上大切な人々を傷つけたくない。ローズは強く念じて、体が一気に光り出した。


「瞬間移動!」


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