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人形姫ローズ  作者: ブリガンティア
スズキノヤマ編
148/811

148. スズキノヤマ帝国 権力と政治(1)

ローズたちがヒスイ城に一時的帰還して一週間が経った。


比較的に平和な日々を過ごしているローズと違って、エフェルガンとモトレアが大変忙しくなっている。パララ領主パレマンタは、パララの状況を改善するためにパララへ戻った。モトレアはエフェルガンの手伝いと皇帝との会談に忙しい毎日を送っている。メジャカの国軍が全滅してしまったため、新たな部隊を送る必要があるのと細かい調整が行われている。


ダモティエル国軍隊長とダナの国軍隊長は各部隊の持ち場へ戻った。パララにいるダナの国軍部隊がダナへ帰った。


タマラの治安維持に残された一部のダナの国軍の代わりに国軍の陸軍部隊がタマラに入り、謀叛した元領主ゲメラの配下たちを取り締まりが始まっている。ちなみにゲメラの妻子はガレーの配下に確保されたそうだけれど、皇帝はまだ何の判決を下していない。元宰相ドルガンディの謀叛によって、一連の問題に加担した貴族達が逮捕され、一時的に首都で騒ぎが起きたという。そのため、ローズはここの数日間学校へ行くことができなかった。というよりか、城から外へ出ることさえ禁止されたため、ローズはおとなしく城で過ごしている。医療の勉強をしたり、植物園の手入れもしたり、エフェルガンの乳母であるヒスイ城の料理長のエメルに料理の勉強したり、ファリズと修業をしたり、ポポと昼寝したり、ローズは城でできることを色々とやっている。


ローズがファリズと修業し始めて一週間が経って、やっとハンカチが金属のような堅さにすることができるようになった。そんなローズの才能に、ファリズが驚きながら褒めた。改善すべきことが多いけれど、とりあえずできるようになったことが大事だ、とファリズが言った。


ファリズの日常はポポの世話や鳥たちの世話の手伝いをして、兵士や騎士団の者、そして非番している護衛官の練習相手をしている。鳥のことなんだけれど、ファリズは鳥の世話や特徴を、フォレットから学んでいる最中だ。いつかポポと旅するためにも、ポポのことをよく知らないと、ポポがかわいそうだ、とフォレットが言った。この意見にファリズが賛成した。実際に鳥の病気や弱点も知らないといけない、とファリズは言った。


ちなみに新たな事実にファリズがびっくりしたという。なんと、ファリズは、ポポが雌であることが知らなかった。ポポが他の大鳥の雄と出会って、卵を産んだら、どうするかという知識も必要だ。動物の生態に詳しいフォレットの言葉に、ファリズがいつも真剣に聞いている。


ローズは魔法のことで、ファリズにあの一瞬で移動できる魔法のことを尋ねると、教えてもらえなかった。まだ早い、とファリズに言われた。それを得るには、修業が必要だとファリズが言ったけれど、どんな修業が必要かと教えてもらえなかった。


とりあえず、体全体に気を回して、纏い包むようなレベルまでできないと、話にならないらしい。ファリズはローズに覇気のことを教えなかったけれど、気で武器の強化を教えている。しかし、ファリズはエフェルガンへの修業のやり方と違って、ローズにとても甘い。疲れたら休めなど、何度も修業が中断されてしまった。それを考えるとダルガの方が厳しかった、とローズは思った。


昼餉が終わって医学の勉強をしたら、肩凝りで頭痛がした。運動不足で最近体が硬くなったと思って、勉強をやめて、練習用の剣をもって、中庭に出て、練習相手を探す。


さすがに勤務中の護衛官を練習相手にしてはいけないので、非番の人を探す、とローズが思った。


ローズは中庭に出ると、ファリズと飼育係の使用人が弁当を持って、これから大鳥の飼育所へ出かける、と彼女に言った。これから生まれてくるひなを見に行く、とファリズがとても嬉しそうに言った。これから彼がフクロウの飼育所にも足を運ぶ、と。最近生まれたばかりの小さなフクロウ達の健康状態を村の獣医と一緒に診るそうだ。これらの飼育所はヒスイ城の近くにある。場所は村はずれにあり、緑に囲まれている広い場所だ、とファリズが言った。


ファリズ達を見送った後、ローズはエファインと一緒に裏の庭へ進むと、ベンチで休んでいる護衛官や練習中の人がいる。ここは宿舎だそうだ。近くに練習所がある。エファインとハインズもここの宿舎に住んでいるという。勤務中は城の中にある部屋を使うけれど、基本的に非番の時に、この宿舎にいるという。私物などが宿舎においてある。ちなみに今彼らがローズを護衛しているため、寝泊まりは城の中だ。


「おや?ローズ様・・どうされましたか?」


ふっと振り向くと護衛部隊の隊長ジョルグが声をかけてくれた。


「あ、ジョルグ。練習相手を探しているの。最近、組み手の練習をしていないから、体が硬くなって、調子が悪いから、少し練習しようかなと思って・・」

「なるほど。練習所でお待ち下さいね・・今非番の者が何人かいると思うが・・」


ローズは言われた通り、練習所に行って、おとなしく待っている。しばらくしてジョルグが数人の護衛官とともにきた。


「お待たせしました。本日の数人の非番の者を連れてきました。念のため、医療魔法ができるトダも連れてきました」

「ありがとう。でも非番だから個人的な予定がある人に邪魔になると悪いんじゃないかな」


ローズが言うと、ジョルグが笑った。問題ないと言われた。恋相手がいる者は、もうとっくに出かけている。相手がいない独身者と家族が遠くにいる者は、特にやることがないので、大体皆暇つぶしとして練習したり、本を読んだり、音楽を楽しんだりする、とジョルグが言った。それで、ローズの練習相手になってくれる人がいるかと募集かけたら、この5人が現れた。


「じゃ、剣の組み手をやりたいけど、相手になってくれる人はいますか?」

「私が相手にします」


一人の若い護衛官が手をあげた。確か名前はファルマンだった、とローズは思った。体がエファインとほぼ同じ大きさで、ミミズクフクロウ種族で、目の色は明るい茶色だ。


ファルマンは近くにある練習用剣をとって、ローズの前に来た。ローズは自分にバリアー魔法をかけてから練習用の剣を抜いた。一礼をしてから構えて、剣を交える。結構強い!手加減は不要だと言ったので、これは彼の実力かもしれない。一定のリズムで剣のぶつかり合いをして、段々速度を上げている。かなり早い。でもこのぐらいならエフェルガンとの練習と同じだ。激しい武器のぶつかり合いの後、段々速度が遅くなり、最初と始めた時のと同じリズムに戻った。この繰り返しで息を整え、体力を温存する。これは長期戦の秘訣だ、とエフェルガンが以前ローズに教えた。


「はい! そこまで!」


ジョルグの声で、練習が中断された。ローズはファルマンに一礼をして持ってきた魔法瓶から白湯を飲んだ。トダは駆けつけて回復魔法をかけてくれた。


「ファルマンって強いね!剣がぶつかった時の衝撃で結構手がしびれた。すごいね」


ローズが褒めると、ファルマンが照れ笑いをした。


「ローズ妃殿下こそ、結構強かったです」

「ありがとう。今朝お兄さんに習ったことを試してみたかったの。まだ練習が必要だなと実感したんだ」

「何の練習でしたか?」

「気で武器の強化する練習なの。ほら、ダナで兄さんはハンカチで木を切ったと見た人がいると思うけど、その練習なんだ。応用で武器を強化して使い手の力を足していく効果があるんだって」

「なるほど。とても興味深いことですね。それが常にできるようになれば、戦闘に大変有利になるんだと思います」

「うん。私もそう思う。ハンカチだけで木を切ることができるとしたら、気を纏った武器で、実戦の真剣勝負だと、どれほど恐ろしい戦闘になるか、想像するだけで怖い」


ローズが言うと、全員うなずいた。


「はい。我々もその練習を今度ご一緒させて下さい」

「うん。お兄さんに言えば教えてくれると思うよ」


ローズがうなずいた。


「ローズ、そこにいるのか」


後ろから声が聞こえた。エフェルガン達が帰ってきた。


「お帰りなさい」


ローズが挨拶にしたら、エフェルガンは微笑みながらうなずいた。


「ただいま。で、ここで何をしているんだ?」

「練習相手を探していたの。運動不足で、肩が凝って、頭が痛かったの」

「なるほど。もう頭痛が治ったか?」

「うん。ファルマンが組み手の相手になってくれたんだ」


ローズが言うと、エフェルガンが笑った。


「ありがとうな、ファルマン。ジョルグ、あとで執務室に来てくれ。明日の予定が調整したい」


エフェルガンが言うとファルマンとジョルグがうなずいた。その後、ローズはジョルグ達に御礼を言って、エフェルガンと一緒に再び城に戻る。


「明日はどこかに行くの?」


ローズが歩きながら尋ねるとエフェルガンがうなずいた。


「ああ、ちょっとしばらく城を留守にしなければいけない。だからジョルグにローズの警備など、色々と調整したいと思うんだ」

「そうか」

「ここなら、ローズを戦場に連れて行かなくても済むんだ。やはりローズが戦場にいると、どうしても考えてしまうんだ。怪我でもしたらと思うと、気が重い」

「ここで待っている私の気持ちは戦場にいるあなたと考えれば同じぐらいよ。怪我しないか、無事でしょうかって、・・色々と心配してしまうんだ」

「そうだな。でも仕方がない。謀叛軍が集結しているという報告が来たので、討伐にいかなければいけないんだ」

「そうか」

「モトレアはしばらくここから宮殿に通うことが続く。本当は長く領地を離れてはいけないが、陛下が色々と会談や話し合いがあると言ったので、しばらく滞在する。留守中に彼の世話をフォレットに任せるが、たまに話の相手でもしてくれ」

「うん」


ローズがうなずいた。


「そうだ、糸の店を宮殿の侍女長に聞いた。場所はハインズに教えたから、今度彼が宮殿に予定がない午前中にでも一緒に買い物すると良い。糸が高いなら、代わりに買ってやってくれ。僕からの贈り物として理由にすると良い」

「はい」

「そうだな、あとせっかく彼は首都へ来たので、ゆっくりと見学させたい。昼餉はあの里のお店でもすると良い。僕も本当は行きたいが、今回しかたがない。また今度ローズと二人でゆっくりと食事がしたい」

「はい」

「僕が戻る前に、モトレアが先に領地に帰ることになったら、夫人や家族への贈り物も用意してくれ。あの三人だけで移動するから、あまり荷物にならない物が良いかな」

「どんな物がいいの?」

「女人なら宝石か絹が好きだと聞いたが、ローズは短剣と本と試験管とぬいぐるみだったな。一般世論はまったく参考にならないから、そこで少し探って見るのも良いかもしれないな」

「うん」


エフェルガンの言った通りだ。人はそれぞれ好みがあるから、贈り物ならその人にとって喜びそうな物が一番だ、とローズは思った。価格が高いから、豪華だからといって、必ず喜んでくれると限らない。だからまず何が好きなのか、と探る必要がある。


夕餉の仕度をしている間にエフェルガンはジョルグとケルゼックとフォレットに会議をして、明日からの体制や調整を行い、遠征に向かって準備をする。夫が戦場に征くと聞くと、正直に言うと、あまり良い気分ではない。でも役目である以上、無事を祈ることしかできない。


日が沈み、暗くなりまもなく、モトレアと二人の配下が帰ってきた。彼がとても疲れた顔をしている。皇帝とどんな会談したか気になるけれど、聞かないことにした。彼がお風呂に入ってから支度した。ファリズも見えたから、皆で夕餉をした。エフェルガンはファリズにしばらく留守を頼んだ。ファリズがまだしばらく滞在すると言ったから、エフェルガンは安心した顔でローズの手をにぎった。モトレアは三日後に新メジャカ国軍部隊とともにメジャカに帰るそうだ。今はその調整などで、宮殿で忙しいわけだ。


明日宮殿で予定がないため、モトレアは一日休みをとって、買い物がしたいと言ったから、ローズが例のお店に一緒に行くとハインズ達に予定を告げた。その計画を聞いたハインズは了解した。


「殿下、報告しなければいけないことがあります」


モトレアはまじめな顔でエフェルガンに向かってゆっくりと話した。


「なんだ?」


エフェルガンが問うと、ますますモトレアが緊張している様子になった。


「皇帝陛下はティカ地方を解体なさるかもしれません。またタマラ地方に国軍基地を作り、新たな体制にすると計画していらっしゃいます」

「ティカの解体か。その辺りの貴族はどうなるんだ」

「タマラと同様、すべてお取り潰しとなると仰いました」

「ふーむ」

「領主の裏切り行為を見ぬふりことをしたからだという理由で、陛下が大変お怒りになられた、と」

「なるほど。また荒れるな」


エフェルガンがうなずいた。


「それで、陛下は旧ティカ地方をメジャカに合併すると」

「貴殿は大変だ・・ティカは広いぞ」

「はい。私も陛下にそう申し上げたのですが、陛下は今のティカを建て直すことができるのは私しかいないと仰いました」

「なるほど」

「それで、メジャカの首都を移動しなければならないと。移動距離を計算して、すべての地方に目が届くように拠点をモントからティルタに移すと提案したら、陛下は了承してくださいました」

「なるほど」

「またメジャカの国軍にも空軍や海軍を備え、スズキノヤマ南周辺の防衛拠点として検討すると仰いました」

「思いっきり勝負に出たな」

「勝負とは?」

「その辺りの貴族との対立を、貴殿に任せたという意味だ」


エフェルガンの答えで、モトレアが考え込んでしまった。


「困りましたな」


モトレアがそう言って、首を傾げた。


「モトレア伯爵ならできると陛下が判断したものだ。精一杯と頑張るしかないな」

「はい」

「それに、貴殿なら、ティカの良さを引き出すことができる気がした」

「良さ・・」

「正直言って、小さくて、何もないメジャカがこんなにも頼もしく感じたのは貴殿のおかげだ。領民のことを思うからこそ、自分の手の平にある物を最大に生かす方法を考えて、今のメジャカがある。あの甘いみかんはその一つの結果だ」

「メジャカは資源がなく、広い土地も少ない。みかんや綿や麻ならできると思って取り込んだ。うまくできて良かったが、私はティカのことがまだ何も知りません」

「これから知れば良い。ゆっくりと新たな挑戦に取り込むと良いと思う」

「はい」


エフェルガンが微笑みながら言った。


「明日私が遠征しなければならないが、貴殿はローズとともに買い物して、メジャカにいる夫人や家族におみやげを買ってくると良い。糸の店はもう護衛官に伝えてある」

「おみやげか・・妻は織物と裁縫が好きだから糸を買う予定ですが、他に首都らしい物があれば教えてもらいたいのですが・・」

「宝石がお好きか?」

「ある程度身につけているのですが・・」

「そこまで特別に欲しいとは言わない方なんだね」

「はい」

「ローズと同じか」

「そうでしたか」


モトレアが言うと、エフェルガンが笑って、うなずいた。試験官なら喜ぶ、と彼が言うと、モトレアが驚いた。


「首都らしいというのなら、各地からの良いものが集まっている市場がある。また海外の珍しいものもたくさんある。価格次第だがな」

「あまり高いと予算が・・ははは」


モトレアは苦笑いをした。確かに宿代に困っていたぐらいだったから、今懐に大金を持ち歩いていないということだ。


「安くて良い物を探したいなら商店街で散策するのが一番だ。でも服装も旅人風にすると良い。身分があると分かると高く売りつけられるからな。服が必要ならフォレットと相談するが良い」

「そうですね。分かりました。ありがとうございます」


その後、エフェルガンとモトレアとファリズがしばらく会話した。そして明日の遠征に向けて、今日は早めに休むことにした。





翌朝。


朝餉のあと、エフェルガンとケルゼック達は騎士団の者達とともに首都へ出発して、首都で待機している将軍達とこれから謀叛軍の討伐へ征く。ローズは彼らが無事に帰ってくるようにと祈った。


エフェルガン達が出発した後、しばらくしてから旅人の姿でローズたちも首都へ出発した。念のため、首飾りを服装の下に隠した。


フクロウを首都の預かり所に置いてから、ローズたちが歩いて、目当ての店に向かった。糸の店は商店街にあるため、所々珍しいものもあって、ローズとモトレア達が興奮してしまった。見たことがない道具や飾りものもたくさんあって、ハインズ達に説明を受けながら、良いものを探しながら、糸の店に向かった。糸のお店に到着すると、モトレアがびっくりした。本当に大きな店だ。数々の糸があって、目が回るほど糸に囲まれている。布に詳しいメジャカの領主モトレアは、びっくりしたあまりに口が開いてしまった。彼は大きな衝撃を受けてしまったのだ。こんなにもたくさんの糸の種類があるとは、彼にとって新鮮な体験でしょう。早速彼は店に入り、隅々まで色々な糸を選び出した。大体布一枚のために、どのぐらい糸が必要か目安があるらしい。ローズも店の人と話して、物珍しい糸を見せてくれるようにと頼んだ。するとお店の人はローズの身なりをみて、地味な糸を見せたが、ハインズが店主にこっそりと話したら店員の無礼を詫びて、店主が自らローズを奥の部屋へ案内した。


そこにあるのは、宮殿で使われているキラキラと光る糸だ。とても上品で美しい。大体布一枚に必要な数など細かく教えてもらって、その中から数セットを頼んだ。また貴族に良く注文がある刺繍用の糸も数セット注文した。ローズは刺繍するのが苦手なんだけれど、刺繍そのものが好きだ。そして店主に尋ねて良い裁縫道具屋を教えてもらった。モトレアにばれないようにこれらの糸の支払いをして、荷物をヒスイ城まで届けにするように頼んだ。


モトレアは目当ての糸を手に入れて、とても嬉しそうだった。そして糸問屋の店主のおすすめの道具屋に行って、色々な道具を見て回る。モトレアは息子と三人の娘に何かを探そうとした。ローズも店に入って、ハインズが店主に話をしてもらって、裁縫道具を探した。なんとこの店は宮廷御用達の店だから、紋章を付けることができると店主が言った。皇太子の紋章もあって、裁縫道具箱にその紋章を付けることが可能だと店主は説明した。ローズはさっそく最上級の裁縫道具一式を頼んだ。またモトレアのためには最上級のペンとインクのセットを頼んだ。すべて皇太子の紋章付きで、きれいな箱に入れてもらうことにした。糸と同様、ヒスイ城までの配達をお願いした。モトレアは娘達にきれいな鏡とクシのセットを買って、息子にペンを買ったそうだ。その悩む姿はとても微笑ましく見える。また彼の護衛の二人も自分の家族のために何かを買ってきたそうだ。


昼餉はあの里料理のお店にした。やはり里式となると、新鮮な感じがしたけれど、彼らは戸惑っていた。しかし、料理が出ると、我を忘れてぐらいの食べっぷりだった。大きな猪の丸焼きが出てくると、彼らがますます興奮してしまった。初めての里料理に驚きを隠せないモトレア達であった。帰りに、アルハトロスの焼き菓子専門店に行って、数箱を買った。ローズはモトレアと二人の配下にはきれいな箱の焼き菓子を買ってプレゼントにした。彼らはとてもびっくりしたけれど、笑顔しながら、うれしそうに焼き菓子をもらった。中身は同じなんだけれど、箱がきれいだから贈り物として相応しい。これから食べる分は普通の箱にした。安くて美味しい、とローズが笑いながら言った。


帰り道に、飾り職人の工房に行ってきた。ここで前にエフェルガンに飾り物を買ってもらったことがある。デザインが上品で、質が良くて、値段も高くなかった。そしてやはりモトレア達が興奮してしまった。見たことがない飾りもあって、彼らはかなり悩んで、いくつか買って箱に入れてもらった。もうこれ以上お買い物するお金がないと言ったから、ローズたちがヒスイ城に帰った。


ヒスイ城に帰ったら、宮殿からの使者が来ている。ローズが見えると、使者は丁寧に頭を下げて用件を伝える。


「皇帝陛下は明日、皇太子妃殿下とメジャカ領主モトレア公爵(・・)を晩餐会に招きます」


あれ?、とローズが首を傾げた。


「あの・・私は伯爵ですが・・何かの間違いのではないのでしょうか?」


モトレアもその伝言の内容に気づいて、恐る恐ると問いかけた。使者は頭を傾げた。


「ご存じありませんでしたか?本日付け、貴殿の位は公爵になったと正式な発表がありました」


モトレアは固まってしまった。ことの流れは彼の想像以上に大きく発展してしまったようだ。これからは大変だ。


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