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人形姫ローズ  作者: ブリガンティア
スズキノヤマ編

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146/811

146. スズキノヤマ帝国 ヒスイ城の宴

鬼神・・思い当たるのがたった一人だ、とローズは思った。そう、ファリズしかいない。


ローズたちは護衛官が教えてくれた使用人用の門に行くと、ポポの背中から、いくつかの袋を下ろしているオーラ丸出している大きな体の後ろ姿が見える。やはり間違いない・・ファリズだ、とローズが小走りして、彼の元へ駆けつけて行った。


「兄さん!」

「兄上!」


エフェルガンも走って駆けつけると、ファリズが振り向いて、その白い歯が見えた。


「やぁ、弟!妹も、無事だったか?」

「はい、おかげさまでたくさんの民が救われました。感謝の言葉が見つからないほど、とても大きな恩を感じています」

「まぁ、良かった。気にするな。ほれ、荷物を受け取れ!」


袋からメギケルやジョン、そして数人の敵暗部らしい人々だった。


「そこの一人が怪しいから念のため、縛ってもらったさ」


ファリズは一人の男性を袋から出した。


「こいつは知らんか?宮殿の者と名乗った。えらそうなことを言ったから、気に入らない。魔石から助けたのに、ありがとうの一言も言えないバカだ。俺とモトレアは寝ないで、ずっと魔石を破壊しまくったのにな」

「二人だけで・・魔石を?!」

「おう!やったぜ。全員、無事だった。瀕死だった人がいたけど、医療師が頑張ったおかげでなんとか助かった。今回は誰も死ななくてよかったぜ」


ファリズが笑って、うなずいた。


「ああ、兄上!僕はとても感激してしまいそうです。ありがとうございます!良かった、本当に良かった!」

「俺も良かったと思った。ところで、こいつのことは?」


エフェルガンは先ほど宮殿の者と名乗った人をみて、首を振った。


「知らないな・・誰か、この者の身元が分かる人がいるか?」


エフェルガンは周りに聞くと一人の兵士が前に出てその人の顔を見ている。


「宰相様の付き人です。名前はタギハでございます」


兵士が答えるとエフェルガンは眉をひそめた。


「誰か、暗部のデディーマシュハール長官か、ガレーか、連絡してくれ」


エフェルガンが言うと何人か走って暗部を連絡しに行った。


「あと、これだ」


兄さんはポポの荷物籠から複数の袋を下ろした。明らかに人が入っている。


「これは?」

「モルグ人だ、あと魔法師らしい人なんだけど、ごめん、俺はこいつを戦闘不能にしようと思って、力加減間違えて、一発殴ったら意識不明になった。死んではないけどな・・起きないんだ」


袋をあけるとファリズが言った通りの中身だった。かなりボコボコにされたようだ。


「この人たちはどこで?」

「カラトアという町だと思うが・・、モトレアに聞けば分かるだと思う。こいつらが犯人だぜ。町の住民を丸ごと魔石にした張本人だ。自白したから間違いないぜ」

「すごい。お手柄だよ、兄上」

「こいつは俺の妹を魔石にしようとしたからだ。許さん」

「そうですね」


エフェルガンがうなずいた。


「弟も魔石にされたとき大変だったんだろう」

「はい」

「だからこいつら許さん。あと残りの町は全部無事だったぜ。確認した」

「ありがとうございます!」

「これで全部かな・・あ、言い忘れた。小賢しい罠を仕掛けた奴がいたけど、邪魔だったから潰した。どこの部隊か知らんけど、俺たちがいたメジャカに襲撃を仕掛けてきたんだ」

「メジャカも襲撃されたのか?!」

「ああ、腹立ったぜ。一所懸命に魔石を解いている最中だったから、頭に来たよ。全部潰してしまったんだ。情報を聞き出すことができなかった。すまんな」

「いいえ、問題ありませんよ、兄上。攻撃した奴らは悪党だから、害虫で、駆除しても問題がありません」

「なら良いけど。ローズも元気そうだから安心した」


エフェルガンの隣に立っているローズをみて、ファリズが笑った。


「うん。なんとかモルグ人の艦隊と飛行船を撃退したよ、兄さん」

「すごいな。さすが俺の妹だ」

「私は艦隊だけを相手にしたの。エフェルガン達は飛行船だった」

「ここまで攻めてきたら、事実上、これが戦争なんじゃないの?」


ファリズが言うとエフェルガンがうなずいた。


「モルグは無差別に他国を攻め込むのです。だから、どの国でも警戒しています」

「モルグを攻める国はないの?」

「まだ・・勝てる気がしないんです。悔しいが、モルグの王は死なないんです。しかもとても強い」

「不死か。やっかいだな」

「はい」

「まぁ、これから考えれば良いさ。俺は腹減ったから、これからフォレットのとこへ・・、おい、どこだっけ?ヒスイだっけ?」


ファリズは一緒にきた使用人に話をかけると、使用人が慌てて走って、寄ってきた。エフェルガンはその使用人をみて、笑った。


「ヒスイ城ですね。僕の住まいなんです」

「弟はここに住んでないのか」

「はい。ここは皇帝陛下の宮殿ですから・・僕にとって住みにくいんですね」

「ふーむ」

「兄上、よろしかったら、ここで食事でもどうですか?食堂もありますし、陛下・・いや、父上にも紹介したいと思います」

「いや、遠慮する。俺は堅苦しい所が苦手でさ、昔を思い出してしまったから」

「そうですか。分かりました、城に行ったら、ポポとゆっくりと休んで下さい。午後に僕とローズが帰るから、自由に過ごして下さい」

「そうするよ、弟」


ファリズが笑って、ポポをぽんぽんと軽く叩く。


「ポプー、ポプー」


ポポが鳴くと、ファリズが笑った。


「こいつはえらい。気に入ったぜ。敵軍に襲われても逃げなかった。強いやつだ。飛ぶ速度が遅いが、力持ちだ」


ファリズがポポを褒めると、エフェルガンが嬉しそうな顔した。


「はい、ポポは5羽兄弟の中で一番の勇敢な大鳥ですよ。母親に似ているんだ」

「ほー、兄弟がいるのか?!」

「います。フォレットに聞けば鳥の飼育場所まで案内してくれますよ」

「そうする。ありがとう、弟。また後でな!」

「はい!」


ファリズはポポの背中の上に乗って、空へ飛び立った。使用人はフクロウに乗って、後を追った。


ファリズ達が飛び立ったあと、デディーマシュハールは見えてきて、ファリズが届けにきた「荷物」を確認した。彼がとても真剣な顔をした。


「この者達が今回のお騒がせの犯人か・・」


デディーマシュハールが言うと、エフェルガンがうなずいた。


「そうだな。兄上に感謝したよ。でないと今頃、我々が途方に暮れて、モルグの餌食になってしまったかもしれない」

「ですな。・・さっきの御仁はローズ様の兄上でしたか。鬼神を初めて見ました。なるほど」

「ああ。しばらくヒスイ城に滞在する。兄上は旅の途中でね、偶然ダナで出会って、僕を助けてくれたんだ」

「彼はどこに向かって旅をしているのですか?」

「世界各地に巡る旅だ。特にどこに行くか決めてないが、ただ左に行こうか、右へ行こうかって感じで、海を泳いだり、山を走ったりした旅なんだ」


エフェルガンが笑いながら説明した。


「とても・・変わった方ですね」

「そうだな。でも気持ちの良い人だ。それにとても強いんだ。彼はメジャカ国軍を滅ぼした敵大軍を、一人で壊滅にしたんだよ。しかも素手で、全力でもなかった。そしてメジャカから一瞬でパララまで送ってくれて、そのおかげでパララが救われた。それに、彼はメジャカを守ってくれたんだ。彼は、僕にとって、最高の兄上なんだ!」

「ほほほ、殿下のご様子を見れば伝わります。では、これらの悪党どもをもらってきますね」

「ああ。よろしく頼むよ、デディーマシュハール殿」

「お任せを」


エフェルガンはローズの手をとって、また宮殿の中へ入った。暗部らはファリズが届けに来た「荷物」を暗部の収監所に運んで、これから徹底的に調べられるでしょう。


執務室に戻ると、一人の家臣がきて、皇帝からの呼び出しを伝えに来た。エフェルガンは慌てて、身なりを直そうとしたけれど、家臣は今すぐだと言ったため、そのままの身なりで陛下の呼び出しに応じて、皇帝陛下の執務室へ行った。ローズはハインズ達とおとなしくエフェルガンの執務室で本を読みながら待っている。


数時間後、エフェルガンは執務室に戻った。でも一人ではなかった。後ろに一人の男性がいて、よく見るとメジャカ領主のモトレアだった。彼はフォレット達とともに、首都へ来て、犯罪者の移送と状況報告をしに来た。またティカ地方の元領主ガローの妻子を皇帝陛下に差し出した。彼女たちは隠れていたところで確保した、とモトレアはエフェルガンに報告した。


国への裏切り行為をした者の一家全員に対する罰がとても厳しいものだ。何も知らないガローの側室と子どもたちは、かわいそうだけれど、彼らの運命は皇帝次第だ。タマラ地方の領主ゲメラの妻子は見つけ次第、重い罰が下されるでしょう。当然のことだが、宰相ドルガンディの妻子も同じ運命になることを予測できる。法律である以上、最終判決はすべて皇帝の考え次第だ。自分の子どもや側室にとても厳しい皇帝だから大体の結末が想像できる、とローズは思った。


「モトレア伯爵、ご苦労であった。兄上から聞いたよ。全員無事で良かった。感謝する」

「いいえ、こちらこそ。ファリズ殿に大変助けられたのです。あんなに強い方で、驚きました。この命は何度も救われたのです」

「僕も救われた。パララの民も救われた。感謝しかないんだな」

「はい。我々もこれからもっと強くならないと、モルグ人の対応を自分たちでできるようにしたいですね」

「そうだな。兄上は旅の途中だから、居なくなったら、僕たちでなんとか頑張ってしなければいけない」

「大きな課題ですね」

「そうだな。ともに考えよう。皆で考えたら良い知恵があるかもしれないな」

「はい」


モトレアがうなずいた。本当に、言葉通り、大きな課題だ、と彼が思った。


「ところで、今夜はどちらに泊まるのか?」

「これから宿を探そうと思っています。首都が広いから、以前泊まった宿はどこだったかと部下と話していて、全員覚えていない、と判明して・・ははは。まぁ、夕餉の前に、安い宿を探して、そこに泊まることにします。会議が終わるまで、その宿に泊まると思います」


モトレアが苦笑いして、丁寧に説明した。


「ふむ。なら、ヒスイ城で泊まれば良い。部屋ならたくさんある。貴殿の部下も泊まれるし、フクロウ達の世話もできる。僕もことが落ち着いていたら、またティカとタマラへ行くから、その時またメジャカにも行く予定だ。ローズが布のことが気になったらしいし、伯爵夫人とのお茶会もしたいと言っていたし」

「おお、嬉しいです。お言葉に甘えて、・・・いや、恐れ多いのですが・・、本当に宜しいですか?」

「良いとも。僕の住まいは古い屋敷だが、それで良ければ」

「ありがたいです。いやぁ、メジャカの物価はここの半分以下ですから、どのぐらいお金を持参すれば良いか、毎回困っていて、今回は一泊か二泊ぐらいの予定だったが、陛下はまだしばらく話したいと仰ったので、予算を計算しながら三人で宿代をどう節約すれば良いか・・あ、恥ずかしいことを言ってしまいました。申し訳ありませんでした」


モトレアが笑って、ごまかした。


「ははは、気にするな。大丈夫、ヒスイ城でしたら、宿賃は必要ない。海が見える部屋にするか、庭が見える部屋にするか、自由に選べるよ」

「海ですか?!」

「そうだ。荒々しい海だが、海であることは違いない。希望したら首都で用事が済むまで、その海が見える部屋に滞在しても良いよ。海に飽きたら別の部屋に移動しても良い」

「おお!はい!お願いします。海か・・」

「メジャカは大陸の真ん中にあるから、海がない。ティカの港町もあるが、少し感じが違う。ヒスイ城の北側の海は穏やかじゃないが、きれいだ。ぜひその風景を楽しんでもらいたい」

「ありがとうございます。お言葉に甘えて、泊まらせて頂きます」

「歓迎する」


モトレアが嬉しそうに言った。


「ローズ、本を片づけて、久しぶりに我が家へ帰るぞ」


エフェルガンは笑いながら言った。いつの間にかヒスイ城が我が家になってしまった。結婚してから、ローズはどの部屋で寝れば良いのか分からない、とローズは思った。


モトレアと一緒にローズたちがヒスイ城に帰って来た。一時的とはいえ、懐かしい感じの建物だった。空に聳える山の上の城だ。とても優雅な感じがする。モトレアも何度も驚きの声をあげた。ともに来た彼の二人の部下もキョロキョロしながら驚いていた。


懐かしい庭で着陸したら、フォレットが迎えに来た。長旅でフォレットだって疲れたはずなのに、彼は疲れを顔に見せず、ローズたちを丁寧に迎えに来た。


使用人達が荷物を運んで、ローズたちはリビングである寛ぎの部屋へ案内された。リビングでパララの絵師ティノハルガが描いたローズたちの絵がきれいに飾られている。それは正装した姿の絵だ。モトレアは絵を眺めながらアルハトロスの服装を見ている。布に関して、彼がとても詳しいのだ。モトレアに夕餉の後、アルハトロスの服や布を見せるとローズが約束した。


フォレットは部屋の準備ができたと知らせに来た。また湯殿も準備ができたので、ローズが数日ぶりの風呂に入れる喜びを感じる。ただ、彼女の部屋がどこになるか分からないから、エフェルガンに聞くしかない。


「ねぇ、エフェルガン」


ローズが小さな声で聞くと彼は耳を傾けた。


「何?」

「私の部屋はどこになる?前の部屋なの?あるいはあなたの部屋なの?」

「基本的に王妃の部屋はローズの部屋だから、荷物や服装は全部その部屋にある。でも寝る時は好きなところでも良いよ。僕はロースがいる部屋で寝るから、どちらでも良い」

「うむ、面倒だな」

「古い建物だからな。それに、基本的に貴族って夫婦でも、部屋が別々なんだから、仕方がないんだ。この城の部屋を改造したいなら陛下・・父上に許可を取らなければいけないんだ」

「うむ、分かった」

「リンカの部屋は別の部屋に移動してもらった。少し離れたが遠くはない。他の護衛官もその辺りで部屋があるから、何かあった時にすぐ駆けつけることができる」

「分かった」

「どうしても留守をしなければいけない時は、猫のリンカで夜の護衛を頼むからな」

「うん。大丈夫」

「じゃ、湯殿に行こうか」

「うん。男女別々だね」

「混浴風呂を作ろうかな」


エフェルガンが言うと、ローズが笑った。


「陛下に許可を取らないとね」

「部屋にも風呂を作ろうか」

「できるの?」


ローズが聞くと、エフェルガンが少し考え込んでいる。


「あなたたち、湯殿に行くの? 行かないの?」


リンカの声で顔が赤くなった二人だった。なぜならリンカの他に、二人がじっと見つめているモトレアも、呆れた顔をしたケルゼックたちもいたからだ。なんか恥ずかしい、と。


「仲が宜しいですなぁ・・ははは・・新婚夫婦か・・良いですね」


モトレアが言うと、エフェルガンは赤面しながら笑った。彼らは男性用の湯殿へ向かった。ローズとリンカはその隣にある女性用の湯殿に入り、久々に体を洗い、汚れを落とした。


風呂から上がって、侍女達が用意した服で身を包み再び寛ぎの部屋に戻った。もう部屋に冷たい飲み物を楽しんでいる殿方が会話しながらしている。ファリズも笑いながら会話して、ローズとリンカが見えると、ご飯の時間だと彼が嬉しそうに言った。おなかが空いたのに、女性組がまだ来ないと、先に食べられないからずっと待っていたようだ。


食堂で大きなテーブルが設置された。以前ローズとエフェルガンだけの食べる机しかなかったから、広い食堂がとても寂しい感じがしたけれど、エフェルガンの提案で今日はともに遠征したヒスイ城の者達で、この大きな食堂で宴を行う。続々と集まっているけれど、ガレーが見あたらない。やはり忙しいのか、とローズが思った。


「遅れて申し訳ありません」


食堂の扉からガレーが現れた。ちゃんと正装しているが、ローズたちが全員ほぼ・・普段着だった。エフェルガンが自分のミスを気づいて、ガレーに謝罪して、使用人にガレーのための着替えを用意するようにと命じた。ガレーのための部屋も用意して、着替えてもらう。普段着に着替えたガレーはとても新鮮な感じがした。


ガレーが来たことで、全員で乾杯した。ローズはお酒を飲まないので、フォレットが用意したジュースで乾杯した。


ホームパーティなんだから、上下関係なしということで、親しみのある食事会になった。美味しい葡萄酒が振る舞われて、リンカもオレファと良い雰囲気になっている。彼女は美味しい葡萄酒が好きだから、オレファはわざとフォレットに頼んでリンカが好きそうな甘みのある葡萄酒を買ってもらった。その葡萄酒はオレファの自腹だったそうだ。オレファ、頑張れ!、とローズは笑いながら彼らを見ている。


楽しい食事が始まって、数々の料理が運び出された。どれも美味しくて、ローズの舌を楽しませている。モトレアの会話も、ファリズの会話も、とても面白くて、興味深いことがたくさんあった。


エフェルガンはファリズに気遣って、わざとこのような雰囲気の宴にした。全員が普段着で来たら、家族の食事会のような雰囲気になる。服装がバラバラで、というか、男性はほとんど上半身裸でズボンのみになっている。お酒も食事も自由にして、会話などを楽にして賑やかな宴となっている。また音楽も護衛官らや騎士団の者らが自分たちが得意とする楽器で演奏して、歌ったり踊ったりして、会場が楽しい雰囲気に包まれている。


フォレットはモトレアからもらったおみやげを運んで来た。それはみかんだ。使用人たちは宴会に出席した全員にみかんを配った。これはメジャカの特産品だそうで、とても甘いみかんだ。皇帝のためにもみかん一袋も献上したらしい。ローズが一つを取って、食べてみると、とても甘くてみずみずしく、美味しいみかんだった。


「モトレア、このみかん、なんでこんなに甘いの?」


ローズが聞くと、モトレアが微笑みながら説明してくれた。それは温度差によることだそうだ。昼が熱く、夜が寒く、果物にとって厳しい環境だから甘くなるという。彼はみかんの話になると、とても誇らしげに語っている。けれど、苦い経験もあった、と彼が言った。宮殿で、どこかの貴族にみかんの話しをしたら笑われてしまったそうだ。田舎貴族だと言われ、笑いものにされたけれど、モトレアは気にしなかったと言った。実際に自分の領地が小さく、特別に豊かではないけれど、領民が安心して生き生きと生活できて、国へ税金を納めることができればそれで良いと言った。それを聞いたエフェルガンらもうなずきながら、みかんを食べている。


ちなみにモトレアの夫人は、自分で布を織り、服を作っているそうだ。メジャカのティルタの別邸で、ローズが褒めた彼の肩掛け布は、夫人の手織りだったと嬉しそうに話した。


楽しい食事会が終わって、そろそろ皆が休まないといけない。エフェルガン達は明日から一連の謀叛の報告書を皇帝に提出しなければいけないため、朝っぱらから宮殿へ仕事に出かけなければいけないと言った。ちなみにモトレアもエフェルガンの手伝いをするという。エフェルガンはパララと首都へ駆けつけた間に、モトレアはエフェルガンの代わりにティカ地方の町々へ回り状況報告を確認して、魔石の破壊など、細かい話を皇帝に報告をしなければいけない、と彼が言った。だから明日からこの二人が仕事で忙しいでしょう。


ガレーも明日取り調べや報告書を作成しなければならないと言った。また薬の調達もするから大変忙しくなりそうだ。ちなみにファリズは明日、フォレットと一緒に鳥の飼育所へ出かけるらしい。ポポの兄弟などを見に行くと言った。ファリズは今夜もポポと一緒に寝るから、フォレットは開いている大鳥小屋に寝台と毛布と設置してポポのためにはわらを置いたりした。ヒスイ城は山の上にあり、海のそばにあるから、夜がかなり冷える。そのまま野宿すると風邪をひいてしまう。鳥だってかわいそうだ、とフォレットが言った。フォレットの言葉を聞いたファリズがうなずいて、ヒスイ城に滞在する間、その小屋でポポと一緒に過ごすそうだ。彼は本当にポポが好きなんだ、とローズが感心した。


学校のことだが、エフェルガンが許可した。ただし、護衛官らが増やされてしまう。結果から言うと、ジャワラとミルザが追加されることになった。


そういえば以前ローズがダナからヒスイ城にできた課題を送った。それらの課題をフォレットの部下が学校に提出したけれど、まだ新しい課題と教科書が届いてないと言われた。だから明日それらを含めて確認するつもりだ。


騎士団の者や護衛官達がそれぞれの家や宿舎に帰った。使用人達は宴会で使用された食器を片づけ始めた。エフェルガンはケルゼックに休みを与えて、3日間奥さんと過ごすように、と命じた。ケルゼックがいない間オレファとガジャマダという護衛官らがエフェルガンの守りをするそうだ。


部屋に戻る前に、いつも通り、ガレーはローズの脈と熱を測って、回復薬をくれた。苦い。でも今回は甘い物がなかった。その代わり、モトレアが持ってきたみかんで口の中に残った苦みを消した。エフェルガンにも回復薬を与えて、ちゃんと休むようにと注意した。ちなみに今夜ガレーがこの城で泊まると言った。お酒を呑んだから、フクロウで首都にある自宅へ帰れないという。


この世界でも飲酒運転もダメなんだ、とローズが思った。空の交通安全のために、お酒を飲んだらフクロウの操縦は絶対禁止だそうだ。当然のことだけれど、馬車や馬の操縦も、飲酒運転禁止対象になるという。自分の翼でぱたぱたと飛んだら問題ないらしいけれど、酔っぱらい鳥人族の飛んでいる姿を想像したら、ローズが一人で笑ってしまった。


ローズたちはそれぞれの寝室に向かってお休みの挨拶した。エフェルガンはローズの手をとり、自分の部屋に連れ込んだ。この部屋に入ったのが2回目だ。ただ、今回はリンカに睨まれていない。リンカはもうどこかに行った。多分酔いさましに、外にいるでしょう。オレファと良い雰囲気になるのかな、とローズが期待してしまう。


「お邪魔します~」


ローズが言うと、エフェルガンが笑った。


「ローズはもう僕の妃なんだから、ここもローズの部屋だよ」

「まだ慣れてないんだ」

「これから慣れれば良い」

「う、うん」


相変わらず入ったすぐ剣や短剣の棚が見えて、そしてずらりと本がある。部屋に入って緊張した気持ちが一瞬で解けて短剣を眺めて目が輝いてしまった。エフェルガンが苦笑いした。


「やはり今度ローズの部屋で寝るか。ここだとローズが、僕よりも棚の中身に目が行ってしまうんだね」

「うむ、ごめんなさい」

「さて、どうしようかな・・」


エフェルガンは魔法で灯りを消し、部屋を暗くした。そして彼女を抱きかかえて、寝台へ向かってゆっくりと歩いた。


「愛しているよ、ローズ」

「私・・んー・・」


彼の情熱な口づけを受け、ローズは目を閉じた。改めて互いの温もりを感じて、互いの存在を感じて、心から愛し合う二人である。


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