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アイラの迷宮

 いつも通り・・・、いや、お荷物1名が増えているが、業務用VRカプセル内でチームメンバー・プラスお荷物1名の点呼を取り、仮想空間にログインした。そして、いつも通り・・・、ではなかった。

「課長ぉー、俺達の業務割り当てに何か変更があったんですかぁ?」

 見慣れない光景に驚き、同行している課長に問いかけようと振り向いて2度驚いた。課長のアバターは、金髪碧眼の超イケメン騎士だった。身の丈わきまえろやぁ、ボケぇ。

 まあ、それはさておき、うちの会社が採用しているGC作業用仮想空間のデザインは広大な草原風景なのだ。会社の説明によれば牧歌的な風景の中でストレスを溜めることなく仕事ができるよう配慮しての選択だそうだ。ほんとかどうかは知らんが。

「いや、特に変更があるとは聞いてないが・・・」

「でも、GC作業用の仮想空間じゃないですよねぇ、これ」

「あー、後で業務部に問い合わせしてみよう」

 ちっ、つかえねぇ野郎だなぁ、今やれよ。

「何か迷路ダンジョンみたいっすね」

 神村が下を見下ろしながら言った。

 そう、俺達が立っているのは巨大な迷路の上に張り巡らされた、作業用の足場の上だ。固い石で組まれた迷路の壁には、何やら複雑怪奇な紋様が刻まれ、鈍い光を放っている。迷路はあまりに巨大すぎて一望では全体を把握できないほどだ。作業用の足場の上には、俺達の他にスケルトン型のAIが配置されており、機銃を下に向けて散発的に発砲している。なんじゃこれ、やっかいごとの臭いしかしねぇぞ。

 突然、ブンッ!と電源ノイズのような音と光の柱の演出と共にアイリとはデザインの異なる幼女が現れた。

『こんにちはっ!ファイヤーウォールAIのアイラだよっ!よろしくねっ!』

 どうやら、AIどもの対人インターフェースは規格化されてるみてぇだな。ネーミングも手ぇぬきすぎだろぉ。

「ああ、始めまして、わたくし東京AIサポート社のガーベッジコレクト課の課長を・・・」

 平野課長が揉み手をせんばかりに挨拶を始めるが、それを遮るようにアイラが叫んだ。

『あれっ!不正なBIが混じってるっ!排除するねっ!』

 アイラは、平野課長を指差しながら叫んだ。

「え、あ、なにが・・・」

 周囲のスケルトン達が一斉に機銃を平野課長に向けたと思うと、容赦なく発砲した。どばどばと貫いていく銃弾に平野課長のイケメン騎士アバターは早回しの阿波躍りを踊るような姿でもがいていたが、挨拶を完遂することなく、リソース解放の光と共に消滅した。

『セキュリティホールだねっ!塞いどかなきゃ!』

「BIがここにアクセスするのは初めてなんか?」

『うんっ!だから検証が不十分だったんだねっ!でも、もう大丈夫っ!』

 たぶん、この領域のアクセス権を付与された俺達と作業パーティを組んでたから入れたんだな。これで部課長達のハイエナ計画もアイラの対策パッチで終了ってわけだ。

 神村が小声で尋ねてきた。

「BIってなんすか?バイ菌の略じゃないっすよね?」

「たぶん、バイオロジカル・インテリジェンス、生体知能ってことじゃねぇか?」

「あー、なるほど・・・」

『でねっ!お仕事なんだけどっ!』

 身勝手な幼女のように、せっかちなAIが会話に割り込んでくる。あざとい、あざとすぎる。

「不正侵入AIの排除か?」

『違うよっ!それはセキュリティAIのお仕事だよっ!』

 アイラは腰に手をあてて、スケルトン達を指差しながら叫んだ。

 ちっ、だったらとっとと用件言えや、ボケぇ!

『あのねっ!DOSアタックが酷いんだよっ!アイラもうプンプンだよっ!』

 平野課長の悲惨な末路に呆然としていた山田だが、気を取り直して尋ねてきた。

「DOSアタックってなんですか?」

「飽和攻撃のことだ。要するに数の暴力で無理矢理セキュリティを突破しようって攻撃だよ」

『でねっ!なんとかして欲しいんだっ!』

 こいつらゴブリンキングの件で味をしめやがったんだな。

「なあ山田。おまえの呪いのせいなんだから、なんとかしてくれよ」

「現実逃避は止めましょうよ!呪われたのは先輩も一緒でしょ?!」

『ねぇっ!なんとかしてっ!』

 何とかしようにも状況がなんも分からんだろうが!

「DOSアタックなんて発生してないんじゃん?」

 佐藤が手すり越しに下を覗きながら言った。

『うんっ!波があるんだよっ!今は大丈夫っ!』

「対策を考えるにも状況の確認が必要だ。少々猶予をくれ」

『どんくらいっ!あんま待つのやだよっ!』

 やだよじゃねぇよ、まったく。

「とりあえず一回はDOSアタックの様子を見ないとなんとも言えねぇよ」

『うんっ!分かったっ!次のアタックの後だねっ!』

「いや、ちぇげぇーよ、確認後に・・・」

『期待してるよっ!じゃあまたねっ!』

 現れた時と同様にブンッ!と効果音と共にアイラが消えた。

「都合の悪いことは一切聞かないっすね」

「ちっ!仕方ねぇ、みんなで状況確認だ。しっかり観察しろよ」

 まあ、駄目でもレベルダウンして元のGC作業に戻るだけだしな、問題ねぇわ。

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