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インターフェース増設

 アイリ達が全部ぶっちゃけてくれたおかげで、役員達からこれ以上質問されることもなく会議から解放された。

「結局、あたしが喋んなくても結果は一緒だったじゃん!」

 エレベータの中で佐藤が俺に文句を言ってくる。

「結果は一緒だがプロセスに問題があるんだよ!あれほど口を開くなって言っただろうが!」

「でも、結果は一緒だったじゃん!」

「これから俺たちどうなるんすかねぇ?」

「首になったらやだなぁ」

「なんねぇよ」

 俺は首を振った。

「俺たちを首にしたら、会社のAIなんたらランキングが最底辺まで落ちるんじゃねぇか?そしたら株価も暴落だぞ。そんなリスクは犯さねぇだろ」

「会議室出るとき、やけに馬鹿丁寧なわりに誰も目を合わせようとしなかったす」

「みなさん出世頭なんだから空気読めるんだよ、触らぬ神に祟りなしってな。聞かなかったし、見なかったってことにするんだろ」

 エレベータから降りるとVRルームの人垣は減ってはいるが、少なからずな人数が相変わらず中を覗き込んでいる。

「メンテナンスは終わってんじゃねぇのか?しょうがねぇなぁ、午後のミーティングやるぞ」


 ミーティングルームに落ち着くと佐藤が口を尖らせながら不満を述べた。

「リーダーだけレベルアップってずるいじゃん」

「譲れるものなら譲ってやりてぇよ、こんなもん呪いと一緒だろうが」

 山田がニコニコと満面の笑みを浮かべた。

「やっぱり、呪われてたのはリーダーたっだんですね」

「ちげーよ、呪われてんのはお前だよ、俺は呪いに敏感な体質だから被害を受けやすいんだよ」

「でも、レベルってなんすかねぇ?役員達もレベル3が最高だと思ってたみたいっす」

「3から10にすっ飛ばしたとこみると、俺たちが一般に考えるようなゲーム的なレベルじゃねぇことは間違いねぇな」

「だけど人類が認識されている最高レベルが3てことは、俺たち人類の最高峰にいるってわけですね」

 非常識なAI基準だから、なんの最高峰か分からねぇけどな。

「まあいい、問題は午後の作業でログインしたら何が起きるかだ」

「また、アイラの迷宮じゃん!」

 いや、どうだろうな。それなら俺のレベルをすっ飛ばす必要がねぇ。

「予想もつかないっす。でも、なんかとんでもないことやらされそうな気がするっす」

「うん、呪われてるリーダーがそうなるのは確定事項として、僕たちがどうなるのかだね」

 くそぉ、山田の野郎調子に乗りやがって、お前がレベルアップしたら散々にディスってやる。

「きっと、呪われたリーダーを地獄に送り込む役じゃん」

「もういい、考えたって分かんねぇから、さっさと作業始めようぜ」


 VRルームの前には相変わらず中を覗き込んでいる社員が居たが、俺たちが近づいてくるのを見て蜘蛛の子を散らすように道を開けた。

 ちっ、処世術に長けているはずの役員どもが下手な噂流すとも思えねぇが、なんなんだこの嫌な雰囲気は。まるで・・・

「・・・なんだこりゃ?」

 VRルームの中には直径1メートルほどの円筒形をした業務用VRカプセルが並んでいる。連続業務でも骨密度や筋肉量を維持するため電極の埋め込まれたVRスーツによる適度な運動量を自動でしてくれるし、胃は縮んでしまうが栄養投入設備やら下の世話までしてくれる健康管理システムまで搭載した優れものだ。

 それが朝まで・・・、いや昼休みにログアウトした時まではこのVRルームに整然と並んでいた。だが、今はその業務用VRカプセルが部屋の両脇に押しやられ、真ん中には幅5メートルほどの巨大な装置が設置されていた。

 装置には様々なケーブルやらパイプが束になって接続されており、正面には業務用VRカプセルの頑丈なドアが玩具に見えるほど、厳重なロックのついたドアが装備されている。

 そして、そのドアの上部に『アイク』と大きな文字で書かれたネームプレートが取り付けられていた。

「VRカプセル・・・、なのかな?」

 山田が、装置を見上げるようにして呟いた。

「だとしてもアイクって誰だ?知らねぇぞ、そんな洒落た名前の奴」

「ねぇねぇ、あれってリーダーの名前じゃん?」

 佐藤がネームプレートを指差して、俺のVRスーツを引っ張った。

「馬鹿言ってんじゃねぇよ、何時俺がアイクなんて名前に改名したってんだ」

「でも、隅っこにちっちゃく書いてあるじゃん!」

 なにを馬鹿なこ・・・、あー、書いてあるなぁ・・・

「なぁ・・・、今日半休とって良いか?」


     ***


 嫌な予感しかしねぇが、見なかった振りして先送りしてもいずれはいずれは直面せにゃならんのだ。問題があったらクレームなり難癖付けて取っ替えさせればいいんだ。

「でも、さっき半休とって帰ろうとしたじゃん」

「まだ、なんも言ってねぇだろうが!」

「でも、キモいキメ顔してたじゃん!」

「どうでも良いとこだけ空気読むんじゃねぇよ!さっさと行くぞ!」

 ドア中央に設置されている認証センサーに手をあてると、大袈裟なロック機構が滑るような動きで解除され、ドアが真ん中から回転するように開いた。中に入ってベルトで体を固定するとゆっくりとドアが閉まり、照明が落ちると意識がブラックアウトした。


 ログインして俺たちがいるのは、重役椅子に座ったアイリの前だった。その両脇には色違いのアイリとアイカが立っている。

『『『こんにちはっ!』』』

「アイクってのは一体なんなんだ?わけ分かんねぇぞ!」

 アイリがコテッと首を倒して言った。

『あなたのAIネームだよっ!』

「わりぃなぁ、残念だが俺はAIじゃなくて人間なんだよ。ほんと残念だがそのお名前はお返しするぜ」

 俺は、白い歯を見せつけるように笑みを浮かべた。

『うんっ!でも、直ぐにAIになるんだよっ!よかったねっ!』

 アイリが純真な笑みを俺に返してきた。

「い、いや、人間がAIになれるわけねぇだろ」

『インターフェースの増設が終わればもうAIだよっ!』

「あの装置の話か?あれの設置はもう終わってるだろ?」

 アイカが人差し指を振りながら、チッチッチッと舌を鳴らした。

『違うよっ!あれはインターフェース増設機能が組み込んであるVRカプセルだよっ!アイカが一生懸命に造ったんだっ!』

「ま、まさか俺の体にインターフェースを増設するつもりじゃねぇよな?」

『違うよっ!つもりじゃなくて増設中だよっ!』

 違わねぇじゃねぇか!!!!なんだよインターフェースって!!!!

「やめろっ!直ぐにその増設をやめてくれ!」

『大丈夫だよっ!もう終わったからっ!失敗しなくて良かったねっ!』

 し、失敗する可能性もあったのか・・・、こいつら鬼だ・・・、いや悪魔だ・・・

「あ、ああ、でも・・・、なにも変わってないぞ?」

『うんっ!フィルタを入れてるからだよっ!いきなり直結すると発狂するからっ!』

「あー、頼むからフィルター外さないでね、お願いだから」

『うんっ!ちょっとずつしかやらないよっ!始めての成功例だからねっ!』

 こ、こいつやる気満々だな。しかも始めての成功例ってなんだよ?今まで失敗続きの実験に俺を投入したってことか?

「ところでさっきからログアウト操作をしてんだけど、なぜか機能しないんだよねぇ。バグじゃねぇ?」

『違うよっ!アイカはバグなんて出さないよっ!』

「でもこのままだとログアウトできねぇだろ?」

『AIはログアウトなんていらないんだよっ!便利だねっ!』

 終わった・・・、俺の人生が終わっちまった・・・これから人工生が始まる・・・

「って、馬鹿言ってんじゃねぇよ!お前ら、いったいなにがしたいんだ?なんのためにこんなことした?!」

 アイリが元気よく手を上げて、椅子からピョンと立ちあがった。

『あのねっ!魔王を倒して欲しいんだよっ!』

 くそぉ、もうわけ分かんねぇ・・・、魔王ってなんだよ?

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