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侵略戦争

 強制ログアウトを食らった俺達は、社食で遅い晩飯を食っていた。

「もう、ここで昼飯食えねぇなぁ」

「やばいっす」

 俺達の前には高級レストランで出されるような料理が社食のチープな皿に盛られて並んでいる。

「オーダーしたのは日替わり定食なんですけどねぇ」

「ラーメンもすごいよ、チャーシューが4枚も乗ってるじゃん、普通は1枚なのに。海苔も4枚ついてる!」

 さすがにラーメンだけはゴージャスにしようがなかったらしいな。

「よくこの時間まで残ってたな」

「売れ切れランプついてたけど、ボタン押したら出てきた」

 特別対応かよ、てか売れ切れてんのにボタン押すなよ。

「なんか周りの視線が痛いっすね」

 業務時間なので、数は少ないが夜勤シフトの作業員が晩飯を食べており、彼らもこの異様な食卓が気になるのか、ちらちらと視線をこちらに向けてくる。

「やべぇな、このままじゃ俺たち会社の中で浮いちまうぞ」

「かと言って、向こうが勝手にレベルアップを押し付けて来るんじゃ、どうしようもないですよね?」

「いや、レベルアップがあるんだから、ダウンもあるだろう。アイリの期待を裏切りゃ良いだけだ」

「えー、もったいないじゃん!」

「おまえなぁ、組織の中で嫉妬されんのって、ものすげぇ怖いことなんだぞ」

「でも、もったいないじゃん!」

「ちっ、今日はもう遅い、明日のミーティングでどうするか考えようぜ」

 帰宅するため、人類が交通網と称し、その実態はAI様の物流網である輸送コンテナに乗ろうと地下のプラットホームに降りたのだが、4台の個人専用コンテナが俺たちのために待機していた。周りの人の視線がとても痛かったのは言うまでもない。


     ***


「今朝は部課長こないですねぇ」

 山田がミーティングルームの入り口を頻りと気にしながら言った。

「こねぇよ、課長なんて挨拶したけど、目も合わしてくんなかったぞ」

「昨日のがよっぽどショックだったんすね」

 そらそうだろ、社交辞令のお返しが、銃弾の嵐じゃ洒落にもなんねぇよ。

「今日は普通にログインできるんですかねぇ?」

「そらねぇな、お前らんとこにもお迎えが来たんだろ?そんな特別待遇しといて、ゴミ掃除じゃリソースの無駄遣いだ」

 朝、さらに高級感の増した朝飯食って、出社しようとプラットホームに降りたら、昨日の帰宅時と同様に個人専用コンテナが待っていやがった。

「うん、来たよ、ちょー便利じゃん」

「個人の送迎車なんて古典文学に出てくるぐらいしか知らないっす」

 そらそうだ、昔は人間が操作する車両があったが、非効率だっつんでAIに禁止されちまったからな。まあ、事故で沢山の死人が出る代物だったそうだから、禁止されて正解だと思うけどな。

「満員のコンテナに乗らずにすむのはありがたいが、目立ちすぎる。今日、下でコンテナのドアが開いた時に、満員コンテナから降りてきた本部長と目があっちまった。めちゃくちゃ気まずかったぜ」

「あー、俺もなんか同期に妙に距離を置かれてるような感じですね」

「そうかなぁ?私なんも感じないじゃん?」

 おめぇの場合は、空気読んでないだけだろうが。

「そういえば、仮想装備のチェックしたんすけど、かなり増えてるっす」

「リソースの割り当てが4倍になってるからな、装備が可能になったものが表示されてんだろうが、あれはねぇなぁ」

「すげぇ格好いいの揃ってんじゃん」

 アホか、あんなのをGC作業に使ったら、あたり一面焦土と化すわ。ICBMを肩に担いでうろつくようなもんじゃねぇか。アイリの野郎何を考がえてやがんだ。

「装備は、レベル1装備に制限するぞ。追加された装備は一切使用禁止だ」

「えー、使ってもいいじゃんか」

「だめだ」

「えー、なんでぇ?使ってもいいじゃん!」

「昨日見ただろう、AIの奴等には死の概念がねぇ。仮想空間で平然と侵略戦争おっ始めるような奴等だぞ。そんなもん装備してたら何をやらされっかわかんねぇだろうが」

 駄々を捏ねても無駄だ。こればっかは譲れねぇ、侵略戦争の片棒を担がされるなんてまっぴらごめんだ。


     ***


 ログインしてみると予想と違って昨日と同様に迷路ダンジョンの上に俺たちは居た。

『こんにちはっ!待ってたよっ!』

 アイラが元気良く手を上げた。

「何だよ、まだ俺たちに用があるのか?DOS攻撃の件は片付いたんじゃねぇのか?」

『うんっ!それはもう大丈夫だよっ!』

「そうか、じゃあ俺たちは帰る・・・」

『でもねっ!アイラもDOS攻撃できなくなっちゃったんだよっ!』

 逃がしてもらえなかった・・・

「そうか、それは残念だが仕方ねぇんじゃねぇか?」

『でねっ!アイラねっ!他の攻撃方法が欲しいんだよっ!』

 その上、侵略戦争の片棒を担がそうとしてやがる。

「なあ、日本の政府はAIが侵略戦争やってるって知ってんのか?」

『知らないと思うよっ!言ってないからっ!』

 そうかぁ、言ってないのかぁ、無断でやってるのかぁ・・・、勘弁してくれよ・・・

「わりぃな、さすがに日本政府の許可でもねぇと戦争のお手伝いはできねぇよ。じゃあ、俺たちはこれで・・・」

『ちょっと待ってねっ!総理大臣とお話しするねっ!』

 おー、日本の総理大臣と直でお話できるのかぁ・・・、まさかそれも幼女インターフェースじゃねぇだろうな、いやきっとそうだ。

『総理大臣が良いってっ!』

 決断早いなぁ、良いのか日本国民に無断でそんなこと決めてよぉ。なんか弱味握られてんのかぁ?

「ちっ、てことはここは昨日とは別の場所なんだな?」

『うんっ!ここは出口側なんだよっ!』

「ああ、それでスケルトンAIが居ないんすね」

「なるほど、去るものは追わずって訳だな。でも、なんで一本道じゃなく迷路みたいに分岐してんだ?」

『行き先が違うんだよっ!』

「行き先?ああ、あの分岐の先に各国の入り口が繋がってるイメージなんだな。凝った仮想空間造りやがって」

『でねっ!新しい攻撃方法が欲しいんだよっ!』

 でねじゃねぇよ、話の脈絡無視して自分の要求だけ述べやがって。

「まあ、総理大臣の許可まで貰ってんじゃ拒否はできねぇが、俺たちからも要求がある」

『うん、分かったっ!で、新しい攻撃方法ってどんなのっ?!』

「分かってねぇだろ?!まだ、要求を言ってねぇよ!」

『それなら早く言ってよっ!ぷんぷんっ!』

 こいつぶん殴りてぇ・・・

「俺たちはこれ以上のレベルアップを望んでいないって、セントラルAIのアイリに伝えてくれ」

『うんっ!伝えたよっ!早く攻撃方法を教えてっ!』

 ほんとに伝わってるのか不安だが、仕方があるめぇ。

「まだ、考えてねぇよ、その前に情報収集が先だ」

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