表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界に愛を唄え  作者: カメレオン
1/1

少年は灰色の世界を見る

初めて投稿します。

楽しんで頂けたら幸いです。

「ピギャァァァ」

頬に生暖かい赤色の液体が飛び散る。

「ぐしゃ」

足に生肉のような柔らかい感触が伝わる。

俺はいつからこの日常に慣れてしまったのだろうか、そんなことを考えながら一匹、また一匹と葬っていた。

あぁ、あの日もこんな曇り空の日だったな…。


『キンコンカーンコン』という学生ならばお馴染みの音がなり響き、放課後の刻を知らせる。

親友の健と拓人が僕のことを呼ぶ。

「おーい、ユウ、先行っとくぞ~」

「ごめん、あと少しだから待っててー」

そっけない返事をしながら急いでカバンに教科書やらプリントやらをぎゅうぎゅうに詰め込んだ。

「全く。今日は大事な用事あるっていうのに」

「まぁ、そう怒んなよ拓人」

「待って~、二人とも」

僕はなんとか準備し終えて二人と一緒に裏山に向かった。

「おっしゃ、今日こそ成功させるぞ!」

と、健が変なポーズをしながら言う。

「どうせ嘘だと思うがやっておかないと気がすまないからな、とっとと終わらせて俺は塾に行くぞ」

と、ガリガリと少し硬めの木の枝で地面に変な模様を書きながら拓人が言う。

『人類選別計画』川に捨てられていた本を健が拾って来たのだ。

その本は、表紙以外は全てわからない文字で書かれていて、唯一分かるのは本に書いてあった魔方陣とその後ろで三人が手をつないでいる絵だけだった。

けれど、僕たちはその本に異様な魅力を感じた。

いつもは、そういう本を道端の石ほどしか興味を持たない拓人でさえもだ。

そして今日、その本に書いてあったことを実行に移してみたのだ。

何も起こらないかもしれない、けど絶対に何かが起こる。

そういう謎の確信があった。

少しずつ出来上がっていく魔方陣に僕は

「ワクワクするねっ!」

という声がこぼれた。

そしたら、「おうっ」という返事と、

「ふんっ」という返事が同時に返ってきた。

そして、少しずつ日が落ちて来た頃

「できたぞ」と拓人が呼ぶ声が聞こえた。

健が「おぉぉぉぉ」というと

拓人が「早くしてとっとと帰るぞ」と言った

多分この中で一番楽しみにしてたんだろう。

僕らはすぐさま魔方陣の後ろで、僕が真ん中、右に健、左に拓人の順で手をつないだ。

けど、待てど暮らせど何も起こらなかった。

「ちぇっ、何も起きねーのかよ」

「まあ、こんなことだろうとは思ってたけどな。」

と二人が言うのと同時に『ピカッ』という光が差した。

その瞬間、僕の両手に急に重みがかかった。

来るときに、ぎゅうぎゅうに詰め込んだ学生カバンの重さと似ていて、けど、少しだけ違和感がある。

そんな感じだった。

僕がその重みに耐え切れなくなって手を離すと、『ドサッ』という大きな音がした。

何が何だか分からなくなった僕は大きな音がした方を見た…

そしたら、ついさっきまでなかった真っ赤な水溜まりと大きな肉の塊が僕の右と左の方に出来上がっていた。

その時、僕の世界が凍った。

僕は目の前の光景に理解が追い付いていなかったんだ。

いや、本当は理解していたのかもしれない。

ただ、理解したくなくて...

その時間は多分ほんの数秒ほどだろう。

けど、その数秒が僕には一生にも思える長さだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ