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水鏡に咲く白き花  作者: 水城ゆま
第三章『 泥中之蓮 』
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「 翡翠と藍晶 」

 

 

「 ――― と、言う訳で 宜しいかしら? 睡蓮(スイレン)さん 」


()の日の夕刻、女官長の珠鱗(しゅりん)が明日から女王の最初の見合いが無事終了する迄の七日間、宮中に泊まり込みで女王に仕えて欲しいと睡蓮(スイレン)に申し出る。


()れは、珠鱗(しゅりん)の考えと言うより女王の考え ――― 側近である晦冥(カイメイ)の考えと言ったほうが正しい。

つまり、睡蓮(スイレン)には選択権は無い ――― 。



「 は…はい!分かりました。 」


「 必要な物は全て支給されるから何も心配いらないわよ? ――― 身一つで来なさい。 」と、紅魚(ホンユイ)が睡蓮に微笑み、「 睡蓮(スイレン)ちゃんの部屋は明日 ――― たぶん、この中の誰かが案内するんじゃないかな? 」と、緋鮒(ひぶな)も陽気に笑うが睡蓮(スイレン)はとても笑える心境では無かった。


( 七日間、ずっと宮中 ――― 晦冥(カイメイ)と云う方の近くに……… )

――― 独りになってしまう時間など、幾らでもありそうで睡蓮(スイレン)の顔色に蒼が増して行く。


蝶美(チョウビ)は、そんな睡蓮(スイレン)の心中を察した訳では無く ――― 彼女らしく屈託の無いの笑顔で「 たぶん、白夜(ハクヤ)さんも泊まりこみだね! 」と睡蓮に微笑んだ。


白夜(ハクヤ)さんも……―――? )




蝶美(チョウビ)の予想通り、同じ頃 ――― 白夜(ハクヤ)にも同様の内容が晦冥(カイメイ)の口から告げられていた。


「 ――― と、言う訳で 宜しくお願いしますね? 」


「 承知致しました。 」


表面上は何時いつも通りだったが、白夜(ハクヤ)晦冥(カイメイ)を取り囲む空気は氷の様な冷たさを醸し出している。


「 部屋は明日 ――― この中の誰かが案内させて頂きますね。 」と、藍晶(らんしょう)が微笑むが、瞳は笑っていない。



( 七日間、ずっと宮中 ――― たぶん、睡蓮(スイレン)もだな……… )

――― 彼女が独りになってしまう時間など、幾らでもありそうで白夜(ハクヤ)はどうやって切り抜けるか考え始めていた。

睡蓮(スイレン)に情が移りつつあるのが気掛かりではあるが、彼女を守る約束は別問題であり、決して忘れてはいない ――― 。






「 ああ!わかった! ――― 君が白夜(ハクヤ)の妹だね? 」


女王の部屋の夜間の見張りを務める翡翠(ヒスイ)が、家路を急ぐ睡蓮(スイレン)を見るなり彼女に声を掛けた。

彼自身には何も思わなかったのだが、彼の手にする鎖の付いた大鎌の鋭い刃に睡蓮(スイレン)は物恐ろしさを感じる。


彼女の()の様子に気付いたのか、もう片方の見張りの 藍晶(らんしょう)が「 君の事はちゃんと気付いていたのだけど、挨拶はまだだったね? 僕は 藍晶(らんしょう) ――― こちらは 翡翠(ヒスイ)だよ? 」と優し気に声を掛けるが、此方(こちら)の青年もまた、手には大鎌を持っており、今にも振り(かざ)しそうな雰囲気を漂わせている。



「 はじめまして、睡蓮(スイレン)と申します……。 」


「 兄妹で陛下に仕えるなんて凄いね ――― 滅多に無いと思うよ? 」


白夜(ハクヤ)の妹なら僕達の妹でもあるな! でも、僕の事を呼ぶ時は " お兄様 " と呼ぶようにな! 」


( ? ――― 兄妹と思われてる? )



睡蓮(スイレン)! 」 ――― と、睡蓮を迎えに来た白夜(ハクヤ)が現れると、「 来た来た!またね、睡蓮(スイレン) 」「 お疲れ様 」と 翡翠(ヒスイ)藍晶(らんしょう) は二人の事を双子の様によく似た笑顔で見送った。



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