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水鏡に咲く白き花  作者: 水城ゆま
第二章『 蓮の糸 』
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「 睡蓮と珠鱗 」



「 あら…? あなた…… 」


店の中にいた客の女性 ――― 独りの若い女の子が睡蓮(スイレン)を見て立ち止まった。


「 なんでしょう…? 」


「 いえ、あの……あなたと どこかでお会いしたような気がして 」


「 え? ――― あ……申し訳ありません! 私 過去の記憶を無くしておりまして…――― お会いしていたとしても覚えてないのです……ごめんなさい! 」


「 まあ…!それは大変そうですわね!? ――― あ…!申し遅れまして、(わたくし) は " 珠鱗(しゅりん) " と申します。」


睡蓮(スイレン)と申します。 」


――― 二人は向かい合って立ったまま、軽めに頭を下げて微笑みあった。



「 ここにいらっしゃるという事は、睡蓮(スイレン)さんは お近くにお住まいなのですか? 」


「 はい……――― 」睡蓮(スイレン)は、白夜(ハクヤ)と一緒に暮らしている事を彼女に説明しようと思ったのだが白夜(ハクヤ)の事を何と説明したら良いのか迷い ――― 言葉を失った。

自分にとって彼は何なのか ――― 考えて考えて出した言葉は・・・


「 武官の知人……恩人(?)…の所にお世話になっております。 」


「 まあ!王宮周りは治安の良い所ですけど、何かあった時に心強いですわね…! 」


()の後も 少し雑談を続けると、珠鱗(しゅりん)睡蓮(スイレン)に軽く頭を下げて去って行った ―――。

睡蓮(スイレン)珠鱗(しゅりん)の事を何か思い出さないかと、去り行く彼女の後ろ姿を見つめ続けた。


( そういえば、東雲(シノノメ)さんも同じような事を(おっしゃ)っていたような……? )


「 あ!いたいた!お嬢さん!! ――― 狭い店…と言うか、自分には非常に窮屈な店なんですけど…あまり一人でウロウロしないでくれよ! 」


「 あ……ごめんなさい!光昭(こうしょう)さん ――― あの方とお話しておりましたので… 」


まだ店の入り口の所にいる珠鱗(しゅりん)の姿を見て、光昭(こうしょう)は仰天する。


「 えっ!? ――― あれは花蓮(カレン)様のお付きの女官では!? シャリンだかシュリンだかの名前の……自分らも滅多に会う事は無いんですよ!? ――― そりゃ貴重な瞬間だな!一体、何をお話されてたんですか!? 」


「 何の話という事も無く、ご挨拶した程度なのですが… ――― 花蓮(カレン)様に付いていらっしゃるという事は、あの方は これまで ずっと宮中にいらっしゃったのですか? 」


「 そうっすね。 まあ、女王になる前の花蓮(カレン)様にも彼女が仕えていたかどうかは自分にはわからんのですけど、結構前から 宮廷内で見かけていた気はしますね。 」



――― その様な人物と自分はどこで出会ったのだろうかと睡蓮(スイレン)は考えるが、やはり答えは出て来ない。


珠鱗(しゅりん)さんの勘違い……? )


「 ささっ! ――― お嬢さん!早く桔梗(ききょう)さんの所に戻りましょう!! 」


「 はい… 」



睡蓮(スイレン)は後ろ髪を引かれる思いで光昭(こうしょう)の後を付いて行った ―――。


珠鱗(しゅりん)さん…またお話できるかしら……? )




睡蓮(スイレン)桔梗(ききょう)秋陽(しゅうよう)の三名は家路に着くと、秋陽(しゅうよう)は歩き疲れた足を休める為に畳のある部屋に寝ころび ――― 桔梗(ききょう)は夕食の支度を始め ――― 睡蓮(スイレン)紅炎(コウエン)のご飯の準備を始める。


「 いやぁ~ 何だかんだ言うても、荷物持ちに丁度良い 光昭(こうしょう)がいて助かったのう! 」


「 あの、桔梗(ききょう)さん ――― 今日はお泊りになるのですよね? 」


「 ええ、そうよ? 」

――― 少し引きつった様な笑顔で桔梗(ききょう)睡蓮(スイレン)に返事をした。


「 あの、後で 日葵(ひまり)さんと東雲(シノノメ)さんにお手紙を書こうと思っているのですが…――― お帰りになる時に お預けしても宜しいでしょうか? 」


「 ええ、構わないわよ? 」




「 そう言えば、日葵(ひまり)は全然 顔を見せぬがどうしておる? 」

秋陽(しゅうよう)はごろごろしながら桔梗(ききょう)日葵(ひまり)の事を訊ねた。


「 元気ですよ? ――― ここに来ないのは階段を上るのが嫌みたいです 」


「 まったく…痩せる話はどうなったのじゃ!? 」


「 それじゃあ、桔梗(ききょう)さん ――― 紅炎(コウエン)のお世話が終わったらお手伝いしますね? 」


「 ええ、ありがとう…… 」




―――――― もうすぐ、白夜(ハクヤ)が帰って来る。



自分の心が()の場に耐えられるか、桔梗(ききょう)は少し不安を感じていた。




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