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水鏡に咲く白き花  作者: 水城ゆま
第一章 『 一蓮托生 』
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「 鏡の中に咲く睡蓮の花 」

 

 

  

 

「 ――――――…と、いう事なんだけど……睡蓮(スイレン)、聞いてる?」



白夜(ハクヤ)()の呼びかけは 睡蓮(スイレン)には聞こえていなかった ――― 。


助ける為に『 裸体(からだ)を見てしまった 』所までは、角燈(ランタン)の灯りだけでも判るぐらいに顔を赤らめて(うつむ)きながらも、" ご迷惑おかけしました…… " と白夜(ハクヤ)に返事をする事が出来たのだが、続けて『 口付け 』の話を聞いた時は、最初は口付けの意味が分からなかったので詳細を聞いた所、聞かれた白夜(ハクヤ)のほうも頬を染めて戸惑ったが話を聞き終えた睡蓮(スイレン)驚愕(きょうがく)の表情で瞳を見開くと、口元を自身の両手で(おお)って固まった様に動かなくなり『 リエン国の結婚観 』の辺りでは、何も耳に入っておらず 睡蓮(スイレン)の頭の中は真っ白になっていた ――― 。



睡蓮(スイレン)? ――― 睡蓮、聞いてる!? 」


「 きゃああぁっ!! 」



白夜(ハクヤ)が少し(かが)んで睡蓮(スイレン)の顔を覗きこもうとすると、

睡蓮(スイレン)(たちま)ち悲鳴を上げて部屋から飛び出し、胸の傷の痛みも忘れて 一目散に逃げて行った ―――――― 。



「 今のお嬢さんか!? ――― おい貴様!!お嬢さんに何をした!? 」

悲鳴を聞きつけた光昭(こうしょう)が別の病室から顔を出し、その驚異的な膂力(りょりょく)白夜(ハクヤ)胸倉(むなぐら)を掴むと僅かに持ち上げた ――― 。

流石(さすが)白夜(ハクヤ)も、重心が浮いた状態で巨漢の光昭(こうしょう)の腕を簡単に振り払う事は出来ないので焦る。



「 誤解だ!誤解だよ!!落ち着け!! 」


桔梗(ききょう)さんというものがありながら、お嬢さんにまで手を出すとは!!男の風上にも置けん奴だ!! 」


桔梗(ききょう)!? なんでお前が桔梗(ききょう)の事を知ってるんだ!? 」 ――― 言いながら、白夜(ハクヤ)光昭(こうしょう)の腹に片脚で蹴りを入れた。



「 ぐおっ!? 」


白夜(ハクヤ)が自分よりも細身な為、油断していた光昭(こうしょう)は もろに受けた蹴りの威力に咄嗟(とっさ)白夜(ハクヤ)から腕を放し、体勢を整える為に間合いを取りながら、白夜(ハクヤ)と静かに睨み合った ――― 。


「 悪いが、お前の相手をしてる暇は無いんだ ――― さっさと寝ろ!! 」


白夜(ハクヤ)の周囲に居る人間が余り目にした事の無い険しい表情で 光昭(こうしょう)に そう吐き捨てると、白夜(ハクヤ)は乱れた胸元を整え、睡蓮(スイレン)を探しに廊下を歩き去って行った ――― 。










「 父さん…――― 睡蓮(スイレン)を見なかった? 」


食器を洗い終わって自身の部屋で(くつろ)いでいた秋陽(しゅうよう)は、白夜(ハクヤ)の声で転寝(うたたね)から目覚める事となった。


「 いや……寝ておったから分からん。お前、睡蓮(スイレン)に ちゃんと伝えたのか……? 」


「 うん… でも、あの様子は最後まで聞いて無かったような気がする。 」


「 良いから、今日の所は そっとしておくのじゃ……後の事は流れに任せれば良い…――― 」


言い終わると、秋陽(しゅうよう)は寝返りを打って、また夢の世界へと戻って行った ―――――― 。




( そうは言っても、夜だしな……――― 外に出て行ってはいないよな? )


桔梗(ききょう)が外に居た時の事を思い出し、念の為に外に出て確認して回ったが、目に見える所にはいない様子なので白夜(ハクヤ)は意識を研ぎ澄ませ " 人の気配 " を探した ――― 睡蓮(スイレン)が居る気配は無い。


( ――― 外じゃ無いなら、あの廊下は真っ直ぐ伸びてるから…… )



家屋に戻り、白夜(ハクヤ)は浴室の扉を そっと開けて中を覗き込んだ ――― 。

出会ってから自分が最初に睡蓮(スイレン)を案内した場所で、家の中に()睡蓮(スイレン)も出入りしているであろう場所だ。


一見(いっけん)、誰もいなかったが 置いてある水瓶(みずがめ)の上の部分の壁にある鏡の中に顔を両手で覆って(うずく)まったように座って物陰に隠れている睡蓮(スイレン)の姿が映っていたので、白夜(ハクヤ)は安心して そっと扉を閉じた ――― 。


( ――― 泣いてはいないようだな……? )

 

睡蓮(スイレン)が泣く程 に精神的に参ってはいない様子に白夜(ハクヤ)安堵(あんど)し、 桔梗(ききょう)の手前、喜んで良いのか迷ったが・・・迷ってる時点で喜びの感情が湧いている事は(わか)ってはいた。

 

 

――― (しばら)くして、睡蓮(スイレン)が浴室から ふら付いた様子で出て来て病室に戻って鍵を掛けたのを見届けると、白夜(ハクヤ)は入浴する為に浴室に入り、睡蓮(スイレン)に気付かないまま 湯浴みを始める事にならなくて良かったと鏡に感謝するのだった。

 

 

 

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