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水鏡に咲く白き花  作者: 水城ゆま
序章
2/87

「 蓮の国の姫君 」( 二 )

 

 

花蓮(カレン)の父である(ハチス) 国王の死は突然だった。



余りにも突然で、王宮に仕える人間だけでなく国中が少なからず動揺していた。

(じか)(せっ)する機会の無かった国民の中にまで泣き崩れる者もいた。

それだけ、(ハチス)王は 多くの民達から愛されていたのだ。



(ハチス)王の盛大な葬儀が終わったその夜、

花蓮(カレン)姫は自室の寝台の上に座りこみ 静かに泣いていた。



父親だけじゃなく、母親もすでに ()()にはいない。


まだ幼さが残る少女には、その孤独と 父を継いで一国の(あるじ)になるという

二つの運命の重圧を受け止める事などできなかった。




――― 本来、リエン国では 王の息子・娘は 十六歳になるまでは、あまり人前に出る事が無く過ごす。



()れは、リエン国 王家の独特の仕来(しき)たりで

子供達は十六歳を迎えて、はじめて 国民や他国の王族などにお披露目される。



十六歳を迎えるまでの間は、自身の親である王と王妃と

身の回りの世話をする臣下(しんか)達と顔を合わせる程度で、基本的に王宮の中に引き籠ったように過ごしている。



兄弟姉妹がいる場合は、母親が同じであれば幼少の時から交流する事もあるが

そうじゃない場合は、十六歳になるまでは (ほとん)ど顔を合わせる事はない。



()れは、まだ幼いうちから跡目争(あとめあらそ)いや 敵国などによって

大事な次期国王候補者達が暗殺されたりしない(ため)の対策でもあった。




(ハチス)王は側室そくしつを持たなかったので、此度(こたび)は母親達とその子供達による(みにく)い 後継者争いは避けられそうだが

花蓮(カレン)姫は、まだ十五歳になったばかりだった。



(ハチス)の一人娘なので、次の国王には花蓮(カレン)姫しかいないのだが

十六歳になる際の顔見世・・・簡単に言えば ” 御披露目の儀式 ”をおこなっていない者が

王位を継承した事例はこれまでに無かった。



その(ため)花蓮(カレン)姫は まだ 王位を継ぐのに相応(ふさわ)しくないと云う意見も少なからずあった。

事実、花蓮(カレン)姫には 国王に必要な知識や作法など 全て 欠けている状態である。



(しか)し、一年近くも 国王不在にする事もできない。

そんな事をすれば、()ぐにどこかの国が攻め込んで来るだろう。



例え、十五の少女でも 誰もいないよりかは 幾分(いくぶん)かマシなのだ。




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