表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

小説って、どうして書いているんでしょう?

作者: Laナイト

とあるカフェの一角で、私はスマホをいじっていた。

時折周りを見渡して、人の様子を観察したりしながら、割合としてはスマホをいじる時間の方が長かった。


「待たせた?久しぶりだね~。」


掛けられた声に顔を上げると、高校時代の友人が軽く手を振りながら立っていた。

今日、私がここに来た理由の相手である。


「ううん、大丈夫。本当久しぶりだね。」


私は自然と笑顔になる。学生時代からの友人の中で、今も連絡を取り合う数少ない相手であり、私のことをよく理解してくれている。要は安心できる相手なのだ。


「何してたの?ゲーム?」


友人は対面の席に座りながら、視線で私のスマホを示す。


「ううん、小説書いてたの。」


友人は当然とばかりに、大きな反応は見せなかった。軽く頷いて、納得した様子を見せただけだ。


「高校の頃から何か書いてたもんね。ノートの裏とかにさ。見せてもらったりしてたけど、けっこう面白くて楽しみにしたりしてた。」


友人の言葉に、自分でも表情がひきつったのが分かってしまった。高校時代、いや、中学時代からの趣味である、小説を書くということ。私は周りから本当はどう思われていたのだろう?本当に面白かったのだろうか?


「どうかした?」


私の変化に友人は敏感だ。長年付き合っているからだろうか、ちょっとした変化でさえも気付くのだ。

私は言葉にするのを躊躇ったが、伝えなければいけない気がした。いや、それはきっと言い訳で、私は誰かに聞いて欲しかったのだろう。


「最近さ、小説を書くのが少し辛いんだ。」


辛い。そういう言葉で表したのは、書きたくないというわけではないからだ。私は大きく息をついてから続けた。


「色んな人が小説を書いてる。人の小説を見たら、面白いって思う。それに対して、自分が書いてるのは面白いのかが分からない。書きたいって思った小説も、もしかしたら誰か似たような小説を書いているかもしれないし、きっとその小説の方が自分が書いたやつより面白いんだろうな、とか考えちゃう。」


自然と私の顔は下を向いていた。俯いているせいで、友人がどんな顔をしてるのかも分からない。私の視線の先には闇の様な黒い画面をしたスマホだけがあった。


「小説書くのイヤになったならやめればいいじゃん。」


ふと、友人の言葉が降ってきた。


「書くのがイヤなわけじゃない!」


反射的に答え、顔を上げた私の目に、笑顔を浮かべる友人の姿があった。


「ならさ、書きなよ。別にいいじゃん、自己満足で。そりゃあさ、仕事だったらそんなことじゃダメだと思うよ?でも趣味でしょ?面白くないとダメとか、皆が納得する作品じゃないとダメとか、そんなルールないでしょ?」


友人はどこか諭すように私に伝えてくる。それでも私の心には晴れないモヤがかかっている。


「でも、学生時代はもっと楽しく書けてた。今よりも上手く書けてたような気がするくらいなんだよ?」


私の言葉に、それまで微笑みといった表情だった友人が、少し馬鹿にしたような笑顔に変わった。


「それってさ、それがもう答えだよね?」


私は友人の言葉をすぐ理解することはできなかった。


「だってさ、あの頃って、上手く書こうとか考えてた?書きたいの書いてたから、そりゃ楽しいよね。今はさ、上手く書きたくなったんじゃない?本当に面白いと思える小説読んでさ、自分も面白く書きたいと思ってさ、自分でハードル上げてない?」


それじゃ楽しくないよね、と友人は笑った。

私は自分のことを思い返す。文章とか、伏線とか、何も考えずに書いていた頃を。

いつからだろう。プロットなんて存在に頭を抱えるようになったのは。いつからだろう。設定や口調でキャラに個性を作るようになったのは。


「あの頃書いてたノートと、今書いてるやつ、読み返してみなよ、きっと今書いてるやつの方が面白くて分かりやすいんじゃないかな。それが成長なんだと思う。でもさ、あの頃と今、楽しんでるのはどっちかって言ったら、あの頃だって思うから書くのが辛いんでしょ?なら、あの頃のように書いたらいいよ。」


きっと私は、ハードルを上げすぎていたんだろう。越える未来を想像できないほど。見上げると首が疲れてしまうほど。

それが辛い原因なんだろう。私は何故小説を書いているのかを考えていなかったのだ。

それを気付かせてくれた友人に向けて、私は心から「ありがとう。」と言った。


「なんのなんの。そろそろ出よっか。」


そう言って友人は席を立った。なんだか思っていたよりも時間が経っていたようだ。


「あ、ごめん、なんか話あったはずなのに。」


カフェから出たところで、私は友人から誘われたのに自分の話しかしていないことに気付いた。


「いや、別に話なんかないって、たまには直接会おうと思っただけ。」


そう言った友人は、なんだか晴れやかな表情に見えた。


きっと私はこれからも小説を書き続ける。楽しむことを思い出したから。

何かに設定が似ていても、シチュエーションが似ていても、私の言葉で表現する。

文章が拙くても、言葉が曖昧でも、それでも私は書いていく。

私は自分の考えを文章にすること自体が楽しくて、それで小説を書き始めたんだから。


去っていく友人の背中を見て、私はもう一度、「ありがとう」と呟いた。

小説書いていると、こんな感じになりませんか?

感想を書くのは面倒だと思うので、評価だけでも少しポチポチしてもらえると嬉しいです。

少しでも共感してもらえたかたは、ぜひよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ