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九月二十二日
「今日はハンバーガー食べて帰ろうか」
今日の治療も無事終了し、午後三時頃帰りのバスの中で彼女が呟く。
「私ね、病院行って点滴だの何だのってするのは嫌だからご飯食べに外に出るって考えてるんだ」
元気良く彼女が言った。どんな理由であれ前向きに考えられるならばそれは良い事に違いない。
「それで良いと思うよ。あんまりこっちの方には来る事無かったしね、行った事の無いお店に一杯行ってみよう」
僕も彼女に同意した、彼女が元気で笑顔で居てくれるなら何だってしてあげようと思えた。
彼女はもう抗がん剤の影響で髪の毛もだいぶ薄くなり外に居るときは帽子を脱ぐことが出来ない、なのでラーメンやそば等の汗をかく料理は難しいだろう。いくら寒くなって来たとは言えニット帽を被ったまま食事していては変な目で見られる。
幸いにも抗がん剤は薄めらしく、痛くて動けなくなる程では無い様だ。でもこれから先薬はもっと強くなるかもしれない、その前に色んな所に連れて行って上げなければ。
そんな事も考えながら笑顔で彼女に話しかける。
「行きたい所たくさん考えておかなきゃね」




