一月五日
新年明けてからの診察の日、僕と彼女は先生の話を聞き呆然としてしまった。
「このままでは胸胞という病気になる可能性があります、至急手術が必要になります」
胸に空気が入り込み、それが破裂してしまう可能性があるらしい。手術という言葉を聴き僕達はとても受け入れられずに、ただただ先生からの説明を受けた。
急な事で現実を受け止められず、うろたえている僕達は何時もの点滴を受ける部屋ではなく別の部屋に案内された。
「今日はここで一日過ごしてください、明日手術が出来るように準備しておきます」
看護師の人が部屋を準備してくれている間に彼女と言葉を交わす。
「急だね……」
「うん。年末に熱があっても抗がん剤ちゃんと受けてればこんな事にはならなかったのかな」
彼女が伏し目がちにポツリと呟く。
「そうかもしれないけど、熱のある時に抗がん剤したらもっと悪い事になってたかもしれないよ。とにかく今はちゃんと手術を受けよう。大丈夫だよ、手術したら治る病気みたいだし」
先生からの話は殆ど耳に入って来なかった、だが手術をしたら取りあえずの危機は避けられると……その話だけは覚えていた。
不安がる彼女の手を握りながら精一杯勇気付けた。
「一度家に帰りたいな」
彼女の言っている意味は解っている。手術には入院が必要。そしてここで診察を受け始めた時に先生から入院したらもう出られないかもしれないと怖い言葉を告げられていたのだ。
僕は部屋の準備をしている看護師に話しかけた。
「すいません、急な話だったので全く準備してきていないのです。一度家に帰っても平気でしょうか」
「構いませんが十二時までには帰ってきてくださいね」
そう言われ外出許可の紙を貰った。
その紙を受け取り不安がより一層深まる、彼女はこれから入院して手術を行う……今まで考えないで置こうとした事がじわりじわりと現実味を帯びてくる。
怖い、不安でどうにかなりそうだ。
「それじゃ行こうか」
外出届を書き終え、彼女と寄り添うに病院を出た。




