十二月十五日
今日の病院も熱のため抗がん剤治療が受けられず、熱を冷ます点滴だけを受けて早めに家に帰ってきた。
途中何か食べて帰ろうかという話にもなったが疲れているので早めに帰りたいと言うので何処にも寄らずに家に帰ってきた。
彼女は帰るなり布団に横になり深くため息を付いた。
すると
「大丈夫?」
「そんな心配しなくても大丈夫だよ、ただちょっとしんどいだけ」
彼女は横になったまま応えた。
僕はそんな彼女の腰の辺りをグッグッと押しマッサージをした。すると彼女がポツリと呟く。
「うちは幸せもんや」
十年以上もの付き合いだ、その言葉が言葉通りの意味じゃない事に瞬時に気が付く。
彼女は自分の体が危険だと言う事に気が付いている。そしてその言葉の裏には、自分は幸せだったよ、君と一緒に居れたから幸せなんだよと僕に言い残そうとしている。
僕は彼女の真意に気が付きながらもそれを認めない様に言葉を返す。
「何言ってるんだよ、こんな腰揉んでる位で。これからもっと幸せな事が一杯待ってるんだよ」
僕は涙を堪えきれずに泣きながら話しかけた。
彼女もうんと答えるがその言葉には今までの様な力強さは無くなっていた。
絶対に認められない、医者が何と言おうときっと助かる道はある。必ず治してこれからも一緒に笑って、一緒に泣いて一緒に生きるんだ。
「絶対に何とかしてみせるよ」
僕は彼女の腰に当てた手に力を入れ直した。




