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十一月十日
今日は診察の日、彼女は駅まで歩く事でさえ辛そうに見える。
「ゆっくりで良いよ、休みながら行こう」
僕は先に行って切符を二枚買って一枚渡した。彼女はそれを受け取り声は出さずに頷いた。
「今日は何食べて帰ろうか?」
「明石焼きにしよっか」
「いいね、久しぶりに」
どうやら食欲はあるようだ、ひとまず安心して病院に向かった。
………
………
病院に辿り着き、いつもの様に抗がん剤の点滴を打つためにベットに上がると看護婦さんから話しかけられた。
「あら、熱があるみたいですね。熱があると抗がん剤投与も危険なので今日は熱を冷ます薬だけにしておきましょうか」
高い熱ではないのだが、ずっと微熱が続いているらしい。家で計ったときも三十七度だった。
「じゃあ今日は早く帰れるね」
彼女は嬉しそうに言うが僕は内心複雑だ、治療はしてほしい。だが熱がある時に無理にさせても逆効果になってしまうのだろう。
僕は不安を顔に出さないように彼女に話しかけた。
「そうだね、それじゃ明石焼き食べて帰ろうか」




