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八月十六日
数日前から彼女が体の不調を訴え始めてきた。どうやらずっと微熱のまま熱が下がらないらしい。
「病院に行こう」
「でも今行ったら保険入れないから」
彼女の言い分としては病院に五年間携わらなければ入れる保険があり、それに加入してから病院に掛かりたいと。そういう訳らしい。
しかし、もう数ヶ月前からその話をしているにも関わらず一行に保険の手続きもしようとしない彼女に対して僕は怒りの感情を覚えながら強めに言った。
「もうそんなのどうでも良い、金なら何とでもしてあげるから病院に行こう」
彼女は癌を患い数年前まで入院していた。
しかしその時に手術は行わず抗がん剤治療と放射線治療のみで退院したのだ。考えたくは無いが今の体調不良も癌のせいだろう。
時間が経てば経つほど治療は難しくなる、嫌がる彼女を連れ病院に向かった。