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セルジュ王子とソフィア王女のお茶会には王宮のローズガーデンの横の一室になった。
ジョージアナの側にシャーロットそれからクリスタがつき、セルジュ王子には側近のフォリオとギルバードとエドワード、フェリクスがついた。
『ソフィア王女はフルーレイス語はお話になれますか?』
にこにことセルジュは聞いてきた。ジョージアナが通訳すると、
ソフィアはうっそりとした目でセルジュの袖口あたりをみてうなずいた。
『では!』
とセルジュ王子はフルーレイス語で
『私としてはソフィア王女とお話したいのですが』
と周囲に目配せをしてきた。
『わかりました。ですが二人きりには出来ませんので…』
とクリスタが微笑みつつ、しっかりと釘をさした
シャーロットも席をたち、見える範囲に下がった。
セルジュはなかなかの策士ではと思う。まんまとソフィアをお茶に誘い、ソフィアが話せるというフルーレイス語で二人で話そうと持ちかけた。
会話の詳細は聞こえては来ないものの、セルジュはご機嫌でソフィアに話かけ、ソフィアは張り付いた笑みを絶やさずに会話を続けていた。通訳がいないので、ソフィアも一国の王子を相手なため、邪険には出来ないようだ。
『セルジュ王子、ソフィア王女、そろそろ…』
とクリスタが声をかけると、
『ああ、楽しい時間はあっという間ですね』
とセルジュはにこやかに言うと、ソフィアの椅子を引き手をとり立たせた…と。
セルジュはそのままソフィアの腕を自分に引き寄せて、反対の手をソフィアの後頭部にやり、キスをした!
「……!」
控えていた全員に声にならない悲鳴が上がった。
シャーロットから見るに、セルジュはかなり濃厚なキスをしていた。ソフィアは驚きに目をみはり、硬直していた。
つかつかと歩み寄ると、シャーロットは割って入った。
『お止めくださいませ。何をなさいます?』
セルリナ語で言った。
ふらりとソフィアが倒れかかり、シャーロットとジョージアナが支えた。
『ソフィア王女の唇をこんな風に奪うなんて、男として最低の行為ですわ!』
ふつふつと怒りがこみ上げる。
『しかも、最初から舌を絡めるなんてやりすぎではありませんか!鬼畜です!』
『おや、君はうぶそうに見えて王女より経験値はあるのかな?』
セルジュはくすっと笑ってきた。
『余計な事ですわ。貴方にとってはたかが通訳でしょ』
『シャーロット、それくらいで…』
エドワードとギルバードが間に入った。
エドワードはシャーロットの肩をだき、ギルバードはセルジュを外へ促した。
ソフィアはジョージアナとフェリクスが支えて室外に運んでいった。
「ああ、シャーロット。止めてくれて良かったわ…!わたくしも固まってしまって…」
クリスタがシャーロットの腕に触れた。
「何てことかしら、陛下にご相談しなくては!」
クリスタは急ぎ足で立ち去っていった。
部屋にエドワードに連れ戻されたシャーロットは、お茶を飲んで少し落ち着く。
「大丈夫かしらソフィア王女…」
なにせ、純粋培養な上に男嫌いとして有名なソフィアの事。いまどんな心地なのかとシャーロットは気になった。
「済んでしまったことは仕方がない。誰も止めようがなかった」
エドワードがシャーロットの肩を抱き寄せてなだめた。
「エドワード、わたくしはセルジュ王子に無礼な振る舞いをしてしまったわ…。このまま帰り謹慎します」
「シャーロット…」
「どちみちもう通訳は必要ないわ」
ふふっとシャーロットは笑って見せた。
「面倒な奥さんを貰ってしまって後悔してる?」
「まさか!勇敢な奥さんでますます夢中になるよ」
エドワードは微笑むとキスをした。
「馬車をだしてくれる?このまま帰るわ」
「先に馬車へ、私も陛下に挨拶をして帰ることにするよ。妻にならってね」
エドワードは苦笑した。
「エドワードまで…」
「どちみちセルジュ王子の思惑通りソフィア王女は婚約になるだろう。私がいる意味もない、セルリナ語ならギルバード卿がいるからね」
いうなりさっさと荷造りをすると、エドワードはシャーロットを馬車で待たせてジェラルドに辞居の挨拶をすると馬車に乗り込んできた。
「お義父様なら上手くしてくれるわよね?きっと」
「大丈夫だ、それほど大変事を引き起こしてはいないさ」
エドワードはくすっと笑った。
突然の主夫婦の期間にやや慌てていたアボット邸と使用人たちだが、すんなりと出迎えの準備を整えた。
「ごめんなさいね慌てさせて」
シャーロットは微笑みを使用人たちに向けた。




