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セルジュとソフィアの攻防に、ややげんなりしていたところに、ジョージアナが近づいてきた。

「シャーロット、代わるわ」

と耳打ちしてきた。

ありがとう、とこそっと言って一礼して下がることにした。

壇上から降りて会場の外に向かうと、エドワードが待っていてくれた。

「疲れたんだろ?」

アルコール抜きの飲み物を渡してくれる。

「ありがとうエドワード。本当に疲れたわ…」

ふっとエドワードは笑うと

「そうだろうね…」

エドワードの肘に手をかけて、少しもたれかかるようにするとほっと一息つけた。

「ちょっと座りに行こう」

エドワードとシャーロットは会場の一画にあるソファに向かい、シャーロットは座った。横にエドワードは立ち、少し雑談をする。

「エドワード」

二人に話しかけてきたのは、ベルナルド・ウェルズ卿とマリアンナ夫妻だった。

「こんばんはレディ シャーロット」

にっこりと微笑まれて、シャーロットは立ち上がろうとしたが、

「いいのよ、そのまま座っていて」

マリアンナは、隣に座ると

「懐妊してるんでしょう?無理はしないで」

いわれ、シャーロットはうなずいた。

「ありがとうございます。4月には生まれるそうなんです」

「実はね、わたくしも出来たみたいなの」

こそっと耳打ちしてくる。

「まあ!」

シャーロットは思わず笑顔になった

「無事に生まれたら遊ばせましょうね」

にこにことマリアンナは輝く笑顔で言った。

ベルナルドとエドワードはにこやかに談笑していた。

「悪阻は、大丈夫ですか?」

「ええ、元気すぎるくらい」

くすくすとマリアンナは笑った。

二人が離れると、シャーロットは立ち上がりパウダールームに向かおうとした。


ちらりと壇上を、みると相変わらず浮世離れした表情でセルジュを見るとも見ていないソフィアと、にこやかに話しかけているセルジュ。そして、張り付いた笑顔のジョージアナ。


頑張ってと小さく拳を作った。


パウダールームの外にエドワードを待たせて、中に入ろうした。

「聞きました?レディシャーロット妊娠中だそうよ?」

と、聞こえピタリと止まった

「ええっ!そうなの?ずいぶん早いわね~やっぱりあの噂!婚前に無理矢理部屋に忍び込んだあの…!」

くすくすと笑い声

「あんなうぶそうな顔してねぇ」


はぁ、と息を吐き出すと歩き出そうとしたところ、そっと腕を捕まれた。

えっと見ると、それはフローラだった。

にこっと笑うと一緒にパウダールームに入っていくと、噂話をしていた令嬢たちは、シャーロットにびくりとして、

「わたくしたちは終わりましたから、どうぞ~ほほほほほ~」

と去っていった。


「レディ シャーロットも色々と言われてるのね…」

フローラはにっこりと笑った。夜用のスモーキーローズのドレスを着たフローラは、しっとりと美しい。

「それはそうよ。優良物件だったエドワードと結婚したわたくしは、いい攻撃対象なんですもの」

くすくすと笑った。

「レディ フローラはどう?閣下と上手くいってるのかしら?」

フローラは微笑むと

「凄く気を使って下さるのよ。だから本当に少しずつかしら」

シャーロットはほっとした。

「優しい方なの」

フローラの言葉にそうだろうと、シャーロットはうなずいた。

「良かったわ…!」

フローラとパウダールームを出ると、エドワードとベネディクト・マクラーレン侯爵が立ち話をしていた。

わずかに微笑んだように見えるベネディクトにフローラは手をかけて、シャーロットたちに会釈をして立ち去っていった。

「私たちもいこうか」


あの様子では、フローラが逃げたという噂はデマだと払拭されそうだとシャーロットは思った。


大広間に戻るとソフィアはすでに会場を後にしたようで、セルジュはギルバードを連れて、ウィンスレット公爵とフェリクス、それから、エドワードの父カルロスと談笑していた。


戻ったシャーロットに、ジョージアナが近づいてきて、

『もう、本当にどうしようもないわね。あのお二人ときたら』

ジョージアナはエリュシア国の言葉で話しかけてきた。

『やっぱりあのあとも?』

シャーロットは苦笑した。

『ええ、どちらかというとセルジュ王子の粘り勝ちかしら、明日のお茶を約束してソフィア王女が去るのを許した感じね』

ソフィアを相手に本当に頑張ったものだとシャーロットは感心したものの、セルジュはかなり強引なようだ。明日が不安になる。

『通訳なしで共通の話せる言語があるでしょうに、あのお二人なら…』

早くお役後免になりたいと切に願う…


「では、シャーロット一曲おどっていただけますか?」

エドワードが手を差し出し、踊ることにした。

黒のフロックコートのエドワードは夫ながらうっとりとするほど素敵でシャーロットはドキドキしてしまう。


「でも、一曲だけにしよう、シャーロット」

相変わらず、心配性のエドワードだ。

「…わかったわ…」

少し不満だが、近頃動くのがわかるようになったお腹の赤ちゃんの事も大事だった。

ジョージアナたちの集まる一画に向かうと、ひさしぶりの友人たちだ。

「シャーロットひさしぶりだね」

「キース、元気そうね」

シャーロットは微笑んだ。ユリアナとダイアナ、アルバートとイアン、レンも挨拶を交わした。

しばらく雑談を交わしていたが、ひさしぶりにめまいがきてふらつく。

「帰ろう、シャーロット」

がっちりとシャーロットを、支えると

「みんなすまない、先に帰ることにするよ」

「ああ、大丈夫か?」

キースの言葉にエドワードはうなずくとシャーロットを支えて部屋に向かった。

広間をでると、抱き上げて運ぶ。

「エドワード、歩けるわ…」

「これくらいさせてくれ」

とエドワードは心配そうに言ってきた。シャーロットはエドワードの首に手を回し、頬を肩に当てた。

「ありがとう」

エドワードはシャーロットの大好きな笑みを向けた。




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