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恐ろしい事件はあったものの、シャーロットが誘拐されたことは秘密裏に処理されたようで、両親のみは事情を知っていたが、シャーロットはジョージアナの所に独身最後に遊びに行ったことにされていた。


ジョージアナの明るい慰めで助けられたのと、結婚式が迫り忙しさに紛れた…というのとあり次第に元気になっていった。



いよいよ式当日。

大聖堂で準備を終えたシャーロットは、アルフレッドと共にヴァージンロードを進む。

赤い絨毯の祭壇の前には白のフロックコート姿のエドワードがいた。銀色の髪に、白に銀色の装飾の施されたそれは、凛々しくふらりとした肢体を引き立て、眩しいほどだった。

シャーロットの白のウェディングドレスは、シルクの光沢が美しく胴体にはレースと真珠の装飾。トレーンはシフォンレースがふんわりと広がり、淑やかでかつ、可憐なドレスに仕上がっていた。

列席の中にはしっかりとクリスタとシュヴァルドが座っていた。


エドワードの手にアルフレッドから渡されると、それだけで感極まったシャーロットは前が潤んで良くみえなくなってしまった。

「とても綺麗だ。シャーロット…」

エドワードは耳元で囁き、よりじんと熱くなる。

司祭の誓いの言葉に、エドワードは穏やかにいっていたが「誓います」と言うときも声は震えていた。

震える指先のせいで、エドワードの指に指輪はなかなかうまくはまらなかった。

シャーロットのベールをあげたエドワードは、優しく微笑むとそっと唇にキスを送ってくれた。

そのまま、ハンカチで涙を拭いてくれる。やっとそこでシャーロットは笑った。


歓声と拍手があがってシャーロットとエドワードは共に歩き、聖堂の外へ出て、たくさんの見物人に手を振り、後ろ向きにブーケを投げた。

誰か女性が見事に捕らえたようで、きゃーと歓声がきこえた。


二人はそのまま、婚礼の印のついたアボット伯爵家の馬車に乗り込みアボット伯爵邸をめざす。


アボット伯爵家のタウンハウスは、華麗で広く使用人たちが勢揃いしてエドワードとシャーロットを出迎えた。

エドワードはシャーロットを抱き上げて邸に入っていった。


「ねぇ、もういいから下ろして?重いでしょう?」

恥ずかしくもありシャーロットはこそこそと告げた。

「まさか?軽いよ」

くすっとエドワードは笑った。

新しい女主人の為の部屋は美しく女性らしい調度で揃えられていて、アボット伯爵家の裕福さを物語っていた。

「凄いわ!」

「気に入ったかな?」

もちろんとシャーロットはうなずいた。

「隣が私の部屋だ」

夫婦の部屋になっているので、寝室は1つで中で繋がっている造りだ。

後ろから続いてメイドたちが入ってきて、ドレスをならべだした。

「今夜のドレスはどれにしましょう?」

メイドたちはにこやかに聞いてくる。うちでは、ネリーが決めてくれていたし、そもそもそんなに一度の夜会に何枚も用意はしていなかった…。

戸惑いを感じ取ったのか、

「こちらはいかがでしょう?」

白地に銀色のレースの飾りのついた美しいドレスだった。

「エドワード様のお髪の色と合わせてなんて素敵だと思いますわ」

にこやかに告げられ、

「ではそれでお願い」

メイドたちはうなずくと、合わせた靴とジュエリーを持ってきてシャーロットに確認をする。


ウェディングドレスを脱いで、ゆったりとしたワンピースを来て軽食を用意される。

寛いだ服を着たエドワードも一緒に食べる。

「はぁ、なんだかまだ実感がなくてふわふわしてる感じだわ…」

お茶を飲みながら一息ついた。

「花嫁がふわふわしてても大丈夫さ」

エドワードはふっと笑みを漏らした。


「シャーロット様、それではそろそろ準備をいたしませんと」

メイドたちはエドワードを追い出しにかかり、シャーロットはメイドたちにより髪を結いなおし、新たにコルセットとペチコートをつけた。

ネリーも上手なのだが、アボット伯爵家のメイドたちはおそろしく手際が良く、尚且つ腕は確かで

ドレスを着て完成したシャーロットは、妖精のように美しく可憐な美少女だった。動く度に銀の糸が煌めき、幻想的だった。

エドワードの横に立つと、完璧な1対になるだろう。

「すごいわ!貴女たち。まるで魔法みたい…!」

くすくすとメイドたちは笑う。

「いやですわ。シャーロット様は元々おきれいでいらっしゃいます」


カルロスとマーガレットと共にシャーロットとエドワードは、入り口で招待客に挨拶をする。

グレーのテールコートに身を包んだエドワードは、文句なしに素敵な貴公子で、まるで月光を放つように美しい立ち姿だった。

そんなエドワードと共に踊ったシャーロットは夢のようにうっとりとし続けていた。


「じっと見つめあっちゃって、やるわね」

くすくすとジョージアナ。共にユリアナ、ダイアナがやって来た。

「やだ、わかっちゃったの!」

とシャーロットは頬を押さえた。

「仕方ないわ、エドワードは素敵な貴公子だもの。それにエドワードだってシャーロットに見惚れ続けてたわよ」

ユリアナも笑いながら言った。


「なに?楽しそうだね」

エドワードがシャーロットを迎えに来た。

時間と共に喧騒は高まり、そろそろジョージアナたちも帰るようだ。

「幸せそうねってはなしていたのよ」

ジョージアナは扇でちょんとエドワードの胸をついた。

「そうだね、ありがとうと言っておくよ」

穏やかにエドワードは言った。

シャーロットに侍従がよってきて、そろそろと告げてきて、シャーロットはどきりとした。

広間を出ると、メイドたちが待ち構えていて、シャーロットをバスルームに連れていき、楽しげにシャーロットを磨きあげた。

「完璧ですわ!シャーロット様」

満足そうに見つめる。

まっすぐな金髪は艶やかに整えられ、背中にしっとりと垂らされていて、肌は白く滑らかになった。


まだ慣れない自室のベッドの上ででじりじりと待っていると、湯上がりらしく、シャーロットと同じくガウン姿のエドワードがはいってきた。

「はいるよ?」

思わずびくっとさせてしまい、シャーロットは赤くなった。

くくくっとエドワードは笑ってとなりに座った。

「緊張してるね、シャーロット」

無防備な姿を、エドワードとはいえ見せていることがとても恥ずかしく、そしてエドワードの貴族令息の姿を解いた無防備な姿にもドキドキした。

「俺もだ…」

耳元で囁かれ、それも外的な私でなく俺という呼び方にますます鼓動が高まる。

優しく口づけされ、シャーロットはエドワードに身を任せた。エドワードの唇は熱く、そして柔らかで熱に浮かされるかのようにキスに夢中になった。

少し震える手をエドワードの背に回し暖かい体温に心地よさを覚えながら、はじめての夜を過ごした。



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