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結婚式もいよいよあとわずかに迫ったある日。

手紙を見ると、注文していた結婚指輪が出来上がったが、届けに行けないので、取り来てほしいと書いてあった。

「仕方ないわね…」

シャーロットは外出の準備をすると、王都の宝石店に向かった。

つい、いつもの感覚で馬車を出してもらいふらりと出掛けてしまったのだ。すぐ近くに、御者がおり人通りもある。だから…


シャーロットは馬車をおり、店に向かおうと角を曲がったところで突然男たちに行く手を阻まれ何か薬の染み込んだ布を口に当てられ、意識を失った…!



次に目が覚めたシャーロットは、そこが豪華な室内だとぼんやり気づいた。誘拐にしても、ずいぶんと良い部屋にさらわれたものだ。

手足は拘束されていなかったので、シャーロットは鍵を確かめたが、窓も、バルコニーももちろん扉も鍵はぴったりと施錠されていて、逃げれないことを確認しただけだった。

時がじりじりと過ぎ、カチャリと扉が開かれ男を従えた女が入ってきた。

仮面をつけた女はコツコツとシャーロットに近づいた。

「こんばんは。お嬢様、ご機嫌はいかがかしら?」

夜会用の妖艶なドレスを身につけた、迫力のある美女だ。

「これで良かったらおかしいと思わなくて?レディ アビゲイル」

ほほほっと彼女は笑った。

「その、エドワードが牛みたいなって言っていた胸で分かったわ!」

シャーロットはわざと逆撫でする言葉を言った。怖がっているのを悟られただろうか…

アビゲイルと思わしき女は、ピクリとこめかみがひきつったように見えたものの

「まったく、貴女ったら威勢がいい令嬢ね。そんな貴女がこの後泣き叫ぶかと思うと、楽しみだわ」

シャーロットは背筋に汗がながれた。

「教えてあげましょうか?これからどうなるのか?」

嬉しそうにアビゲイルは、赤い唇に笑みを浮かべた。

「聞きたくないわ…!」

シャーロットはしまった!と思ったものの、半分はやけくそになっていた。

「貴女はこれから、気の強い生娘を襲うのが大好きだっていう紳士のお相手をしてもらうのよ?」

「自分がすればいいのではなくて?それにわたくしはもう生娘じゃないかも知れないとは思わなくて?」

シャーロットは精一杯虚勢をはった。

「わたくしは、相手にしないわよ。そしてね、この間の受け答えで、わたくしは貴女を生娘だとおもったわそして、今もね?」

アビゲイルは余裕でにっこりと微笑む。

「こんなことをしたら、わたくしが訴えると思わないの?」

シャーロットの指先は氷のように冷たくなっていた。

「思わないわ。もうすぐ結婚する貴女がすでに純潔を失ったなんて世間に知らしめる?エドワードもお父様も身の破滅よね?」

「どちらにしても、破滅するならわたくしは貴女を告発するわ」

蒼ざめつつも虚勢をはりつづけた。

「まったく、憎らしい娘ね!」

アビゲイルはイライラと言った。

「でもいいわ、これでわたくしをコケにしたエドワードの大事な婚約者を奪えるかと思うと」

くすくすとアビゲイルは笑った。

「そうね、エドワードは貴女みたいな下品な女は嫌いだもの。歯牙にもかけなかったでしょうね」

「自分がいまどんな立場かわかっていないの?

ドレスを着替えさせて」

アビゲイルはメイドをよび、シャーロットのドレスを着替えさせる。

それはデビュタントが着るような真っ白の愛らしいドレスだった。コルセットはしないタイプだったが。

「早速貴女が手に入ったことだし、お客様をお呼びしたのよ」

アビゲイルはそうにっこりと笑みをつくると出ていったが、アビゲイルの配下の男たちとメイドをは残ったままだった。


シャーロットは正に打つ手なし。万事休すだった。

そして、また時がたちカチャリと扉が開きアビゲイルとアビゲイルと同じように仮面をつけた紳士が二人入っていた。

「ようやく手に入った、極上の一品ですのよ」

「ほう、これはなかなか…」

紳士の一人がじりじりとシャーロットに近づき、シャーロットは男たちに腕を捕まれ、身動きは取れなかった。

「こないで!」

無駄と知りながら叫んだ。

「気が強そうだ。ますます良い」

「この変態!少女趣味!エロ親父!獣!」

シャーロットはジタバタと腕と足を動かした!

「ははは!」

紳士たちは嬉しそうにますます笑みを浮かべ近づいた。

「いや!助けてエドワード!!」

シャーロットはついに泣きながら叫んだ。


叫んだのと同時に

ガチャーーーン!

と派手な音がして、一瞬の後シャーロットを、拘束していた男は突入してきたエドワードとそしてアルベルトにより倒され、紳士とアビゲイルも黒騎士に拘束されていた。

シャーロットはエドワードの腕の中に気づくといて、

「エドワード!助けに来てくれたの」

「ああ、遅くなってすまない。怖かっただろう」

エドワードはシャーロットをきつく抱き締めた。


新たな騎士が入室するとアルベルトにひざまづいた。

「殿下、制圧しました。一人残らず捕らえました」

「ご苦労」

アルベルトはうなずいた、

「さて、どうして俺様がわざわざきて捕まえたのか、理由はよーーーくわかってるよな?」

とアビゲイルにいうと、アビゲイルは憎々しげに睨み付けると騎士たちに引き摺られるように連れていかれた。

「ごめんねシャーロット。怖い思いさせたね?」

アルベルトがにっこりと言った。

「…囮にしたんですか?」

シャーロットは震えながら聞いた。

「…そう、証拠を押さえたくてギリギリまで救出を待った申し訳ない」

アルベルトは軽く謝罪をのべたが、

「殿下、いい加減にしてください。シャーロットは普通の少女ですよ」

エドワードはアルベルトを冷酷な瞳で見ていた。

アルベルトはエドワードを見返したが、淡々と答えた

「エドワードだって王族の一員のようなものだ。堪えろ」

アルベルトの言葉にエドワードの目が氷の矢のように光る。

「では殿下はエセル妃殿下が同じような思いをされてもそう言えますか?」

アルベルトはそこでようやく言葉をつまらせエドワードをまじまじとみた。

「……いや……すまなかった」

深々と頭を下げたアルベルトに、視線をやると

「わかっていただけたようでなによりです。では!」

エドワードはシャーロットを抱き上げ、そのまま階下に降り馬車に乗り込んだ。

その目は怒りを秘めて燻っていた。


4頭立ての馬車のなかで、エドワードはずっとシャーロットの背をゆっくりと撫で続けた。

シャーロットは恐怖から解き放たれて、ポロポロと涙をこぼした。

「囮にしたわけではないんだ。ただ、アビゲイルがシャーロットに目をつけたのではないかと疑い、軍の警護をつけていた」

エドワードは静かに語った。

「今日シャーロットが一人で出掛けてしまったのは不運だった…」

「うん…わたくしがいけなかった…」

「違う。悪いのはあいつらだ…」

「アビゲイルたちは何をしていたの?」

「知らない方がいい事もあるよ?」

エドワードは悲しげにシャーロットをみた。


「でも教えてほしい。ちゃんと知りたい…」

しばらくためらったエドワードだったが、シャーロットの目をみて、うなずいた

「わかった」


シャーロットは一旦ウィンスレット公爵のタウンハウスの1つに通された。そこにはフェリクスが待っていた。

どうやら、フェリクスも今夜の事を知っていたらしい。

「無事で良かった」

と二人をみていった。

「シャーロットにはちゃんと説明をするよ、フェリクス」

フェリクスはうなずいた。


「アビゲイルは、…あの邸で仮面舞踏会を開きつつ、その奥では闇賭博をしていた。そこで負けがかさみ、借金まみれになった諸侯の娘たちに客の相手をさせていた」

シャーロットはぞっとした。

「だが、最近令嬢が誘拐されるという事件が時々おこっていてね」

フェリクスがつげた。

「もしかしたら、組織的な犯罪ではとされていて、アビゲイルが関わっているのではと軍は調査をしていた」

「そう、だったの」

シャーロットはエドワードに身を思わず寄せた

そこでシャーロットに、目つけたのでは無いかと張っていたのだろう。


シャーロットはウィンスレット公爵家のメイドたちに着替えをさせてもらい客間で休むことになったが、エドワードの手を離したくなかった。

「駄目だよシャーロット、まだ」

エドワードはシャーロットを撫でたしなめた。

「わかってるの。でももう少し手を繋いでいて…」

「…わかった…もう少しだけだ」

エドワードはシャーロットが落ち着くまで手を繋いでベッドの横にいてくれた。





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