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宮廷の晩餐会のために、母はいつもの仕立て屋にドレスを注文していた。クリーム色のドレスに銀糸の刺繍がされた上品で美しいラインをえがいている。

パールとダイヤのチョーカーと耳飾りもドレスに良く合う。

あの事がなければもっとうきうきしていただろうに、忌々しい。

靴とバッグは持っているものから、淡いグレーを選んだ。


馬車で、エドワードと共に王宮につくと、ジョージアナたちにも会った。ジョージアナはフェリクスと、ユリアナはイアンと、ダイアナはブレンダンと、ジャスティンはイネス・ブリースデール子爵令息ときていた。

ミリセント・エーヴリーは、とても豪華な紅いドレスを着ていた。

20歳の、彼女は、肉感的な体をしていて、金髪に緑の瞳で、化粧を施した顔は華やかで色っぽい。

声はかけなければならないだろう。

「こんばんはアーヴィン様、ミリセント様」

シャーロットから、言うことにした。張り付かせた笑みを向ける

「こんばんは」

とジョージアナたちも続けて言った。

にやにやと得意気なアーヴィンと、ぼんやりとこんばんはと返すミリセント。

アーヴィンも紹介するとか、いう脳がないのか?する気がないのか?これでは社交界でやっていけない

いきなり不快な気持ちになるが、エドワードの腕をとり、時を待つことにする。

ジョージアナたちと談笑するも、ミリセントとアーヴィンは、手を繋いだり抱き合ったりと、人前とは思えない行動をとる。


晩餐会は、国王夫妻、王太子夫妻、ソフィア王女、アルベルト王子夫妻がデビュタントたちの前に並んでいる。

ジョージアナを真ん中に、シャーロット、ユリアナ、その外にダイアナ、ユリアナの横にミリセント、そしてダイアナだった。

正面に見えなくてよかったとシャーロットは思った。


見えなければ、王族との晩餐会は、素晴らしくて、素敵な料理だった。

「アーヴィン、出来ないわ」

と声がきこえる。

どうやら、魚を上手く切れないらしく、あきれたことにアーヴィンが横から切っているようだ。

「おい、食べにくそうだ。もっと食べやすいものにするよう伝えろ」

とアーヴィンが給仕にいう。

シャーロットの向かいに座るアルベルト王子の目に苛立ちが見える。

「アーヴィン、ここは王宮だ。お前に命じる権利はない」

と冷酷な口調で言った。

「…は…」

アーヴィンはとりあえずそれ以上は言わなかった。


シャーロットはそっとクリスタの方を見た。

涼しい顔をしているが、多分正面にいる、アーヴィンに不快なはずだろう。

王族の方々は涼しい顔で和やかに食事を続けられる。

シャーロットもしゃんとして乗り切る事にする。


エドワードは涼しい顔で食事を続けていて、目か合うとにっこりと微笑んだ。その目は気にするなと告げていた。わかってると、シャーロットは微笑みを返した。


晩餐会は無事に終わり、アーヴィンとミリセントはご機嫌で帰っていった。後ろ姿をちらりとみて

「あの二人はシャーロットを泣かせた。私はそれを忘れないよ」

こそっとエドワードはシャーロットに囁いた。次は許さないという響きがあった。

「エドワード?」

みると、目には危険な光がある。

「私が知るかぎり、シャーロットはどんな時も泣くのを堪えていた。こぼさないように、目に力をいれて…」

エドワードがじっと見下ろしていた。

「みないでと言ったでしょう?もう、忘れて」

「忘れられる訳がない」

吐き捨てるようにいう、エドワードにシャーロットは驚いた。いつも穏やかなエドワードらしくない。

王宮をあとにして、シャーロットはレイノルズ伯爵家の邸宅に帰っていった。

こうして、社交シーズンは終わりを告げ、シャーロットたちも家族揃って領地に帰る。

また、冬がやってくる。



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