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ってあれ…?
「伊織君 高倉くんと知り合いだったの?」
さっき名前で呼んでしまったので
しょうがないから名前呼びにしてみる。
名字呼びに変換するのもなんだか、逆に意識してるよーに見えるかなって。
「あぁ 中学同じ。」
そう伊織君は言った。
てか、伊織君は素っ気ない。
今だって私の話を一応聞いてくれてるはいるけど、小テストの勉強始めてるし。
「そうなんだ。…じゃあどんな人?」
私が興味本位で聞いた質問に伊織君はぎょっと驚いたような顔をした
「鈴鹿さん、
知らない奴からあんなのもらったの…?」
「いや、違う違う!!
知ってるけどそこまで深く知らないから
知りたいなって!」
と私が慌てて言うと伊織君はぼそっと言った
「知りたい気持ちがあるなら、告われたら
付き合えばいいのに。」
「…伊織君、乙女心分かってないね。」
「いいよ 分かんなくて。」
そう言って、伊織君は本格的に小テストの勉強をするみたいだった。
伊織君が勉強することでこの話は必然的に
お終いになった。
やっと私と伊織君の会話が終了した頃、ちらほらとクラスメイトの人達が登校してきた
私はただ どうしようかと、どうにもならない
事を考えるのに頭が精一杯で、小テストの教材を出す気にはなれなかった。
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「鈴鹿さん。…ドンマイ」
と伊織君が丸つけしてくれたプリントを私に渡しながら言う
その表情で私のテストの点数がどーなったかは一目瞭然だった。
案の定、英語の単語テストで私は20点満点の6点をとってしまった。
対して、私が丸つけた伊織君の小テストはばっちり満点だった。
「伊織君、勉強したんだね」
「まぁ、しないとだし。」
伊織君は当たり前のように小テストのプリントを受け取って、当たり前のように…寝た。
…寝ちゃうのね。
すごく、言ってる事とやってる事が
ちぐはぐな気がするんだけど。
でも、少し謎が解けた
伊織君は授業ずーーっと寝てるけど
たぶんテストの時は勉強してるんだなぁって
じゃないと成績なんか良くないよね。
そうちょっと、尊敬の眼差しを向けた瞬間
見回りで教室を回っていた先生にあっけなく
「ほら、上条おきろ。」
起こされた。
そんな様子をみたら面白くって
笑ってしまった。
考えるのに必死だったけど
考えるのを辞めてもいいかなって思った。
もし告白だったとしても、その時に動いた気持ちで動けばいいかなって。
…いや、
ちょっとカッコイイこと考えて見たけど
無理!!そんなの!!
ごめんなさい。そんなの私にはできないです
考えても意味無いの知ってるけど考えちゃうんだから
お願いだから、誰か。
伊織君は、起こされた後少しすくっと前を見ていたけど気付いたらまた寝ていた
先生も二度も起こす気はないみたいで、伊織君の事は知らんふりだった
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なんで、こうも時間というものは酷なのか。
例えば、「放課後友達と遊ぶ!」という日に限って時間の回りが遅かったりするし
それ反して、「五時間目はレポートの発表会」という時には時間の回りがはやかったりする
私はバイトをしてないけど、たぶん行きたくないバイトの時も時間が回るのがはやいのかなぁって思う。
私に関して言えば今回は明らかに後者で。
気付いたら、わたしはもう帰りのHRをうけていた。
はやい。はやすぎる。
心の準備がまだなのに。
教室中が、授業が終わったと皆嬉しそうにザワザワしているように聞こえるし、(そんなことはない)HRがいつもタラタラ喋って長い担任の先生も今日だけは何故か短い。
そして、あげくの果てには掃除までカットされる。
そんな事にほとんどのクラスメイトは驚きつつ嬉しそうだった。
「んじゃ、さよなら。」
とかるーく先生が最後に挨拶すると、
クラスメイトはいつものようにさらりとその言葉を受け流して、バイトだったり、部活だったりと瞬く間に散らばっていく。
…よし。 覚悟を決めろ
行くんだ 私
そう思っていると、
隣からの視線を感じて隣を見ると
伊織くんがこっちを向いていた
「…鈴鹿さん。」
「な、なんでしょーか。」
「…まぁ、頑張って。」
伊織くんはなんだか面白そうに笑っていた。
「そんな顔するくらいなら私と代わってよ」
「そんなの、高倉が可哀想だ
それに、俺 体育委員で今日委員会ある」
え、体育委員って伊織くんが体育委員?
なんかすごいイメージない。
「…鈴鹿さん。顔に出てるから
気をつけな そーいうの。
…じゃあ、頑張ってね」
「あ…うん。じゃあね」
やれやれと伊織くんは、ため息をついて
そのまま委員会へ行くのか荷物をまとめて
教室から出て行ってしまった。
私はなんとなーく伊織くんに手を振っていた
時刻は午後16時15分
約束の時刻まであと15分。