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「え…?」



あまりにも音読が早くて(大きい声の割りに)

内容を理解する前に伊織くんは私に手紙を渡してきた。



「…悪い。もう一回読みな」



そう言って今度こそ伊織くんは、私に背を向けて歩いてってしまった。


慌てて、そのくちょくちょの紙を開いて

読み直すとやっぱり伊織くんが言った言葉が正確に並べられていた




あぁ よかった…



嫌がらせとか変なのじゃなくて、よかったぁ




そう思って一回安心してから気づいた



「………え、まさかの大したもの?」



え、待って。待ってよ。

いや誰も待ってないけど


気持ちが整理できてない。



大丈夫 落ち着け




…これはたぶん大したものじゃない。


だって、手紙の高倉くんは隣のクラスの男の

子で同じ委員会だからほんの少し喋ったこともあるけど、会ったら少し『あぁ、あの子だ』と思う程度だし



だから、あれかな。

もし、本当に高倉くんからだとしたら委員会の話し合いとかかな?


イタズラっていうこともあるかもしれないけど。”イタズラ”なら良いや。





私は少し考え直したら、”大したもの”じゃない気がしてさっきよりは安心して

私はくちょくちょの紙を手で綺麗に伸ばして

ポケットに入れて教室へと向かった。




朝の早い廊下は、昼休みの時の声が行き交って、人が行き交って、ざわざわしてる…のとは、まったく違って足音さえ響く

白い廊下がなんだか眩しい


朝ってこんななんだ。


そう思いながら教室に入ると、もう机にうつ伏せになって寝ている伊織くんがいた

こんなに教室は広いのに2人で隣に座るのも

なんか変だけど…まぁ、仕方ないか。



「鈴鹿さん。」


そう言う声が座ろうとした時聞こえた


「…なに?」


朝の初夏の太陽の光が伊織くんの黒髪をキラキラ照らしててなんだかもうすぐ夏だなって思う



「あれ、嘘じゃないよ」


と伊織くんは私の目を見ないで、教科書とかをいじりながら言った

まるで、特に興味ないことを仕方ないから忠告するように。



あれって…手紙?



「手紙のこと?」


「うん」


「なんで伊織くんが分かるの?」



私が言うと、伊織くんはびっくりしたようにこちらを向いた。

あ、まずい。

”伊織くん”と無意識に読んでしまった。

いや、そこに変な感情はなくて…!!

と心の中で弁解していると




「…鈴鹿さんはアホだよな」



伊織くんの面白そうな声が聞こえた



「え。」


「思ってることが顔にでる。

これほど見抜きやすい奴はいないね」


「な、なんで。顔になんて出てないし」



いや、絶対出てない。私意外とポーカーフェース出来るし(と思ってる)

すると、伊織くんは面白そうに話題を変えた




「まぁ、んなことより

あの手紙出してくれる?」


そんなことより!?

自分から言って回収しないの!?

というか変わりよう何!?私なんかした?!


心の中で叫んでも、声には出なかった

…そうは思ってもなんか伊織くんには従っちゃうよーな圧があるんだよね 見えない圧が。


だから仕方ないから、ポッケから手紙を出して伊織くんに渡して隣の椅子に座った。




「鈴鹿さん、これのこと嘘かなんかだと思ってるだろ?」



「え、そうじゃないの?」



私がそう言うと私に手紙を見せながら



「だってさ、見てごらん


意外と、紙の質はいい方だし。

なによりイタズラなんかに封筒は使わないしね。俺がするならわざわざ封筒なんて買わないな


それに、身近な学校にいる人の名前書いてもリスクしかないし」



伊織くんはペラペラペラーーっと語った

そんなに短時間で分析されてるとは思ってなかったからびっくりする。

それにすごく頭良さそうな感じする。



「…というわけで、嫌がらせではないから

安心した方が…いいと思うけど。」


伊織くんは急に目線を外して言う




「え。」


「なに?」


「いや、べ、べつに」




…まさか、



私が手震えてたから

心配してるとおもったのかな?


いやでも、まさか。



そう思ってると伊織君は手紙を私に向けて渡してきた。

その時じっと伊織君の顔を見て見たけど

何を思ってるのかわかんなかった。


気のせい…かな。



まぁ、とりあえずこれは極めて本物っぽいということが伊織君の話で分かってしまった。




そうなると、大したもの説か委員会の話説しかなくなっちゃう。

大したもの説のことを考えると、なんか自分が自惚れてるみたいで恥ずかしい。


できれば、委員会の話説がいいと思うけど

心の何処かで期待している自分がほんのちょっといることに驚いた。



なんだ、この感じ。

告白ってどんな感じか知らないからドキドキするのに、告白だったらどーしようっていう不安もある。




私が座ったままぼーーっとしているのに伊織君は気づいたのか



「高倉は真面目だから手紙なんかわざわざ使わないで隣のクラスなんだから”仕事だったら”直接くるだろ。」



とフォローのつもりなのか、伊織君は

私に言う。

でも、そのフォローが私に追い打ちをかける



それってもう、告白しかないじゃん…

よくわかんないよ。私そーいうの。

…でもこれで、告白じゃなかったら笑える…

誰か助けて。この複雑な乙女心。










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