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伯爵様は親馬鹿になる。

 「やばいんだって、うちの子、本当才能ある!」

 「……俺はそれに何て反応すればいいんだ。マリアージュ」

 今、私の前には一人の友人が居る。背は私なんかより大分高くて、並ぶと見下ろされるから正直気に食わないけれど、本音を話せる仲の良い友人だ。

 ちなみに完璧地味な私と違って、流石王家に近い大貴族に生まれた爵位持ち! というべく外見は超絶美形である。名をイサーク・トトーシュという。私と同じく戦争で活躍した男で、伯爵位を受け賜っている。

 元々侯爵家の三男で、戦争で活躍しなければ爵位ももらえなかったであろう男だ。でも外見は見ていてニヤニヤする。

 ちなみにグランを引き取ってから既に数か月が経過していたりする。戦争が終結して、平和な今ではこの戦友ともいえる友人と毎日のように顔を合わせるなんてことはもちろんの事なく、イサークと会うのは久しぶりだった。

 「同意して頷けばいいんだよ! うちの子は才能ありまくりで、超可愛いんだから」

 「……お前が養子をとった事は知っていたが、そこまで入れ込んでいるとは」

 「だって綺麗なんだよ! もう、サーラ様と並ぶ美しさを持ち合わせているって言えるぐらいなんだよ。もう見ているだけで涎でそう」

 「おい、変態。養子にしたガキに何を思ってやがる」

 「愛でているだけよ! ちゃんと教育はしているわよ。座学だけではなくて、私的に男は好きな女の子ぐらい守れる方がいいから鍛えているわ」

 全く、変態だなんて失礼な奴だ。私はただ美しいものが大好きなだけなのに。グランは美しく、そして子供らしく可愛いところがあって凄く良いの。

 「実質、『炎剣帝』の弟子ってわけか。それは成長が楽しみだ。でもお前が突然養子なんかとったから王都ではその事で噂で持ちっきりらしいぞ」

 「もう、私その『炎剣帝』って呼び名好きじゃないからやめて! だって戦争も終わって平和なのだから、幼いころからの夢をかなえたっていいじゃない」

 「養子をとるのが夢ってなんだよ」

 「養子を育てるのが夢ってわけではないわ。美少女美少年を育てたいって夢よ!」

 「それ、どんな願望だよ。やっぱ変態だろ」

 イサークに呆れたようにそんなことを言われてしまった。だって本当に幼いころからの夢なのだ。戦争が終わって平和になって、ようやく時間が出来たんだから幼いころからの夢をかなえたっていいじゃないかと思う。

 戦うのは嫌いではないけれど、戦争は好きではない。

 命を奪う事は正直心が痛むし、殺し合いなんて嫌いだ。

 そんな戦争がようやく終わって、戦争で活躍した報酬として爵位などをもらって、のんびり出来るようになったから私は好きな事をしているだけだ。

 最も戦争中だろうと、割と好きな事はしていたけれども。

 「イサークに変態って言われても、私は気にしないからいいもんねー」

 開き直ってそういえば、イサークが益々呆れた表情を作る。そんなに呆れた顔されると何だか嫌だなとか思ったり。

 でもま、それよりも、私は私の養子にとった可愛くて美しくて仕方がないグランについて誰かに語りたくて、語りたくて仕方がないんだよ。

 「もう、そんなことはともかくとして私のグランについての話を聞いて!」

 「なんだよ、私のグランって……」

 「だって私の養子だもん。私のグランだよ」

 別に間違った事は言っていないと思う。私が養子として引き取り、私の子供として存在するグランなんだから私のものっていってもいいと思うんだ。

 そう思ってフフンと鼻を鳴らして自慢げにいってやれば、イサークは「そうか」とだけしか言わなかった。全く、私は事実を言っているだけなのに、そんなに呆れた態度しなくていいじゃないか。

 「あのね――、私のグランは」

 そうして語り始めようとした中で、それは一つの声に止められた。

 「マリアージュ様、グラン様が勉強を終えてこちらに来てますよ」

 それは私の実家からついてきた侍女であるカナデだった。その言葉に私は驚いた。気づけば結構な時間がたっていた。イサークにグランの話をするのに必死になってたら、もうグランの家庭教師の授業は終わっていたらしい。

 「もうそんな時間なの。なら、丁度良いわ。イサーク、グランを紹介するわ」

 「はいはい……」

 イサークの呆れたような声を聞きながらも私はグランを部屋の中へと招き入れた。グランは、イサークに会うのが初めてだからか何処か警戒したような顔を浮かべている。

 「見て、イサーク。可愛いでしょー、私のグランは」

 思わずぐりぐりと私よりも小さなグランの頭を撫でまわせば、子供扱いされるのが不服なのかグランは嫌そうな顔をする。んー、もうそんな顔も可愛いとか、もう美少年は最高よ! なんて気分になってしまう。

 「おい、マリアージュ、顔が残念な事になっているぞ……」

 イサークはそんな失礼な事をいって、グランの方を向く。

 「グランとかいったな。俺はこいつの友人のイサークだ。この変態に何かされたらいうんだぞ」

 「……マリアージュは、俺に変な事しない」

 「へぇ、そうか」

 おい、イサーク、私の可愛いグランに何を聞いているんだ。全く、とそんな気分になる。

 

 結局イサークはしばらく滞在してすぐに去って行った。私はもっとグランについて語りたかったのに!



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