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伯爵様は男なら好きな女の子ぐらい守れる強さを持つべきと考えている。

 「男の子なんだから、好きな女の子ぐらい守れるようになった方が良いわよ」

 グランを引き取ってから半年がたった。最初の半年は貴族の子息としてある程度知っておくべき礼法と知識を教え込むだけだった。

 やっぱ男の子なんだから、戦い方とか教えたかったんだけど、引き取られたばかりのグランは警戒心バリバリだったし、安心させてからかなと思ったのよね。

 「だから、私が貴方に戦い方教えてあげる」

 「マリアージュが?」

 グランは私がどう呼ばれているかも、私がどうして爵位を持っているかも奴隷であるが故に知らないのだろうと、その疑問も尤もだろうと思った。それか、『炎剣帝』という存在は知っているけれど、それが私だと思っていないか。

 私は有名ではあるけれども、私の見た目って決して強そうには見えないらしい。まぁ、それもそうかと思う。私は見た目だけならばどこにでもいる村娘だってサーラ様にも言われた。私は平凡な顔立ちで、どこにでも紛れる事が出来て、それもあって何処かに忍び込んで仕事をするとか結構簡単にできたんだろうけれども。

 『炎剣帝』

 私につけられたその呼び名は有名だ。そして、私の名前もある程度有名だ。だけど、私の事を知らない人は私を同名なだけで本人だなんて考えないのだ。本当に面白い事だけれども。

 「ええ。私が教えるわ。こう見えて私、強いのよ」

 折角養子にしたグランに怖がられるのも嫌で、『炎剣帝』という呼び名に対しては言わずに私はそういって笑った。

 それに対して訝しげにこちらを見るグランの顔も美しくて、思わず悶えそうになった。どうして美しい人はどんな表情を浮かべていても目を奪われそうなほどに綺麗なのだろう。どんな表情でも、見ていて嬉しくなる。

 「ふふ、グラン、剣を振った経験は?」

 「……あんまない」

 「なら、素振りから始めましょうか。まずは木剣で」

 まだ身体が出来ていないのだから、きっと振る事さえも難しいと思うからそういった。

 実際に木剣を振るグランは、フラフラしていた。

 実際の剣はもっと重いのだから、大丈夫かなと思いながらもしばらくは様子を見る事にした。

 あとは、魔法。

 魔法はまず、体内に魔法を使うだけの魔力がなければ使えない。そして適性属性以外はほとんど実践に使える事はない。

 適性は教会で図る事が出来る。そういう魔法具がある。なんでも何百年か前のおえらいさんが、適性を図れないのは不便だとかいってそうなったらしい。詳しくは知らないけれど。

 属性は火、水、風、土、雷、光、闇ってあるんだよ。適性は上から白銀、金、銀、銅って示されるの。ちなみに私は火だけ白銀で、雷と闇が金で、風と水が銀。残念なことに土と光は適性がなかった。とはいっても五属性も魔法が使えるだけで異常って色んな人に言われたけれど。

 「グラン、教会いこっか」

 「教会?」

 「ええ。貴方に魔法の才能があるのか適性を見てみようと思って」

 私はそういって、戸惑うグランを教会へと連れて行って適性を図ってもらった。

 グランの適性は、素晴らしいの一言に尽きた。まず、全属性に適性があった。その時点で凄まじいといえた。私も大概だけど、グランも大概だと思う。

 白銀の適性は、光のみ。金が土、火、風、銀が闇、銅が水、雷。教会の人たちってば、グランの適性に目を剥いていたからね。私も正直びっくりした。でも同時に嬉しかった。

 この子は磨けばいくらでも鍛える事が出来そうだってそう思えたから。自分の身を守るためにも、大切な人を守るためにも”強さ”を持っていた方が絶対に良い。

 それは別に物理的な強さだけの事を指すわけではない。

 人を味方につける才能とか、交渉術とか、そういうものだって別に良い。なんでもいいから一つでも”強さ”を持っていれば少なからずそれは何かを守るための力になるのだから。

 でも物理的な強さの方が、私が教えやすいからいいのよね。私はそこまで頭もよくない。人を味方につける才能とかそんなものが自分にあるかと問われればないと正直思う。私はどっちかっていうと一人で好き勝手にするタイプだって自分で思っている。

 一人でも絶対死なずに好きに生きてそうって家族にも言われたしね。

 「凄いね、グラン。これは教え甲斐があるわ」

 「……マリアージュは魔法も出来るの?」

 「ええ。出来るわ。私を甘く見ないでね。剣も魔法も私が教えてあげる」

 「そんなに鍛え上げてどうするの?」

 「強い方がこの世界自分のしたいように生きられるもの。だからよ。でも、使い方を間違えたら怒るからね」

 私がそういって笑えば、グランは頷いた。

 どうやら私が戦うところを見た事がないからか、私が本当に強いのかわからないらしい。正直見た目で弱いと思われる事は慣れているけれど、言っても信じてもらえない事は私悲しい。

 折角養子にしたんだから、もっともっと信頼関係を作りたいのに。

 でもいいもんね、先は長いもん。特訓を通してでも信頼関係を勝ち取ってやるから。


 とりあえず、グランを鍛えますか。



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