伯爵様、夢を語る。
私には、幼い頃からの夢があった。
それが、美少年と美少女を育ていることだった。幼い頃からの成長を見届けることだった。
そしてそれはグランという存在によってかなえられている。よって、私の夢はまた違うものになっている。
それは、
「グランが結婚して、子供を産んで、その子供を可愛がりたい」
っていうそういうことだ。
「それが、マリアージュの夢なの?」
「ええ。そうよ。だからグラン、可愛いお嫁さんを見つけてね!」
グランを引き取ってからもう二年以上経過していた。グランは私に対して怯えを今のところ見せなくなってきていた。
まぁ、あとから聞いた話だけどグランは私がなんて呼ばれているか知って、それで私がどういう人間かわからないっていう恐怖心がなくなって、むしろ《炎剣帝》の引き取った子供としてふさわしくあろうって頑張ってくれていたらしい。
なんていう、可愛い動機なんだろう。
しかも頑張ろうとしたのが私のためだなんて、私キュンキュンしちゃったよ。私の、《炎剣帝》の弟子として恥ずかしくないように頑張ろうとしているんだって。
自慢じゃないけれど、《炎剣帝》って名前は皆知っているぐらい有名になってしまっているし、男の子であるグランは最強の名を持つ私に憧れてくれているらしい。なんだか嬉しいね。
でも私は最強ってわけではないと思う。だって最強って最も強いって意味なんだよ? 私は確かにそれなりに強いかもしれないけれどそこまで強いとは自惚れられないっていうのが本音かな。
「ね、グラン、私ね、昔から美少年と美少女を育てたいって夢があったの。だからグランを引き取れて最高に幸せなのよ」
「……マリアージュって、俺の顔好きだよね」
「ええ、大好きよ! 見ていて飽きないほどきれいだもの」
私はそういって笑った。まぁ、グランにもすっかり私が綺麗な顔が好きなことぐらいばれてしまっているから、今更隠しもしない。そもそも私がそういうことをいって、グランは呆れはするけれども、距離を置くとかそういうことはしないでいてくれる子だから。
もう、性格まで良いなんて可愛い。というか、天使だと思う。こんなに可愛い美少年を育てられるなんて妄想しているだけで吐血しそう。
「ねぇ、マリアージュ」
グランの可愛さにやられて、頭の中で可愛い可愛い可愛いと連呼して、妄想して興奮していたらグランに名前を呼ばれた。
そちらを見れば、グランがまっすぐにこちらを見ていた。
綺麗な瞳が、私を映し出していた。私よりも低い背のグランがこちらを見上げている。そして私の名を呼んで笑っている。
……やばい、幸せすぎる。
こんなに綺麗な美少年が親しみを込めて私の事をマリアージュだなんて呼び捨てにしてくれるなんて興奮して、幸せでならない。
どうして私のグランはこんなにかわいいんだろうか。ああ、もうグランのお嫁さんがはやくみたい。そしてグランの子供も見たい。きっとグランに似て綺麗な顔になるはず。いや、たとえ見た目がグランに似てなかったとしてもグランの子供ってだけで可愛がれる気がする。
でもお嫁さんが私の事嫌ったらどうしよう。私はグランが選んで、グランがお嫁さんにしたいって子とは是非とも仲良くしたいわ。そして小さい時のグランがどんな様子だったかとか得意げに語ったりとかして―――。
「……それって相手は誰でもいいの?」
「誰でもって?」
「どういう人じゃなきゃダメとか、あるの?」
グランはそういって私の事を見ている。
ふーむ、これはグランの奥さんにどんな人がいいかって希望があるかってことかなー。特にそういうことは考えていなかった。だって可愛いグランが選ぶ人なんだからきっと素晴らしい女性に決まっているって勝手に思っていたのももちろんある。
それに、私は―――、
「私の両親ね、恋愛結婚したのよ。貴族社会ではまぁ、仮面夫婦とか沢山いるけれど、私はそういう夫婦を見て育ったの。だからね、グランにもそういう好きな人と結婚する、結婚したい人と夫婦になるっていうのをしてほしいかなーって思っているよ」
そう、思っている。
貴族の中では利害関係の一致による結婚とか、結構あるけれど、私はそういう結婚よりも好きな人同士の結婚の方が断然よいってそんな風に思っているのだから。
私の言葉に、グランは「そっかぁ」と何か考えたように笑うのであった。
―――伯爵様は、夢を語る。




