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伯爵様、国王陛下の前でも我が道を行く。

 「お久しぶりですね。陛下」

 「久しぶりだな、マリアージュ。して、そちらがお前の養子か?」

 サーラ様のもとに早くいきたいなーなどと思っているわけだけど、王宮に来たから陛下には挨拶をしなければならない。この場には私とグランとワオと、あとは陛下と側近たちぐらいしかいない。

 私があまり大勢の人の前に出るのやだなーって思っているのを知っているから考慮してくれたんだと思う。だってほかの貴族ってば、私の事怖がっているのか遠目にしか見てこないし、なんか言いたいことあるならはっきり言えよーって思って苛々しちゃうんだよね。

 「ええ、そうですわ」

 「グ、グランと申します。本日は陛下の――」

 「わー、可愛いー」

 一生懸命陛下に向かって挨拶をしようとするグランを見て、私は思わず頭をなでなでしてしまった。だって可愛い。どうせ、ここにいる人たちなんて私がどういう人間か知っている人しかいないわけだし、何も気にせず愛でた。

 「え、ちょ」

 「むふふ、可愛いねー。グラン。一生懸命だねー」

 「……マリアージュよ、グランが戸惑っておるぞ」

 「可愛いですよねー。グラン。ねー、陛下」

 「……そうだの」

 「むふふ、ですよねー」

 にこにこと笑いながら同意を求めれば、陛下もうなずいてくれた。流石陛下、見る目がある!

 そんな私と陛下の会話にグランが唖然としているのが視界に映る。もう、そういうグランも可愛い。やばいね。美しい人はどんな顔をしていても、美しいよ。

 私はそんなグランの事を育てられることが本当にうれしい。ずっと、それは夢だったから。

 美しい人を、自分の手で育ててみたいと思っていたから。こうして近くにいるからこそ、見逃すことなくずっと見つめていられる。ああ、なんて至福なことなのだろうと嬉しくて仕方がないよ!

 「ところで、マリアージュよ」

 「なんですか?」

 「今日はサーラに会いに来たのであろう?」

 「ええ、そうですわ! サーラ様はどこにおられますか? 私はサーラ様に会いたくてたまらないのですよ!」

 本音をぶちまけたら、陛下に呆れた顔をされた。横でグランが私を見て唖然としているけれど、何でそんな風に唖然となんでしてるんだろうねー?

 私はいつでも陛下にこんな感じだよ? 陛下も自然体の私でいることを許してくれているしね。まぁ、友人家族にはそんな態度できるのお前だけだ! って凄い変なものを見られる目で見られてこっちがびっくりしたけどさ。

 もー。陛下は確かにこの国の最高権力者だし、不敬な行いしたらと思うと怖いけどさ、正直陛下はそんな心狭くないし、よっぽどの事をやらかさなきゃ不敬罪で死刑とかないよーって思ってたりする。

 やっぱりそれには、お前だけだ! と、滅茶苦茶突っ込みを入れられたけどさー。

 「相変わらずサーラの事が大好きだな」

 「ええ、それはもちろん! サーラ様は国宝ともいえる美しい方ですから。私はサーラ様に滅多に会えなくなって、久しぶりに会えるため、とても嬉しくてたまりませんわ」

 何を当たり前の事を。

 私があんなに綺麗で優しいサーラ様の事を大好きなのは、当たり前である。あんなすばらしい方はほかにいないと私は断言できる。

 「そうか」

 「ええ、そうですよ。サーラ様は天使ですから」

 「そうか、天使か……」

 「ええ! 現世に舞い降りた天使。それこそ、サーラ様をあらわすのに最もふさわしい言葉と言えるでしょう。それにサーラ様の美しさは何も見た目だけではありませんわ。あの慈愛に満ちた心には、戦場で何度癒されたことか。声までもサーラ様のすべてにふさわしく綺麗で優しい声色を聞くだけで私はもう―――「……ああ、もうわかった。サーラの素晴らしさが父親である私にわからないはずがないだろう」

 遮られた。

 折角サーラ様の言葉に言い表せないほどの素晴らしさを陛下に語ろうと思っていたのに。陛下なら聞いてくれると思ったのに。

 というか、ここが人前だからか。陛下とは前に数時間サーラ様の素晴らしさについて語った事があるしね!

 「サーラのところに行くが良い。サーラならいつも通り自室におるからの」

 「はい! では、失礼しますね、陛下。また、帰りにごあいさつにきますね」

 「うむ」

 そんなこんなで、陛下への挨拶は終わった。




 そのあとに、グランに信じられないものを見る目で、「マリアージュって、いつもああなの?」と聞かれてしまった。いつものことだよ?




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