清掃のアルバイト
マサキは、夜勤終えると、次の仕事はテレビ局の清掃の仕事であった。マサキと下條はコンビとなり、一週毎に、バキュームの清掃と、ゴミ集めを交代で勤めた。僅か三時間余りの仕事だが、交通費も含めて十万円近く支給されるので、馬鹿に出来なかった。下條はマサキに、兎に角百万円貯めなさい、そうすれば、投資の道は開ける、と。マサキは、清掃のアルバイト代を全額貯金することに決めた。順調に行けば後半年で目標額達成となる。
清掃の仕事にはたびたび驚かされた。兎に角、ゴミの分別がいい加減なのである。テレビで某地区のゴミ屋敷を取材していて、コメンテイターが、余りに常識ない、と怒っていたが、おまえの会社も似たようなものだ、と言い返したかった。特にロケの帰りのゴミ袋は、缶やペットボトルや、煙草の吸い殻まで、乱雑に放り込んであり、それを分別する作業はやりきれない気持ちで心底情けなかった。また、部長とか上司の机のゴミ箱ほど、分別しなくて、中には飲みかけの缶コーヒーや缶ビールが溢れていて、その匂いや、気持ち悪さには辟易した。近くに分別の大きなゴミ箱があるにも関わらず。ある時は分別の処理中、捨ててあった包丁で指を深く切り、しばらくは治療に費やした時期もあった。流石に、これは大きな問題となった。
今では、マサキは割り切って、分別しないゴミは放置することに決め込んだ。しかし、それはやがて問題となり、管理会社からきついお咎めとなった。
まずは百万円の為、耐えて頑張るしかない、とマサキは悟った。終えてからの下條とのコンビニビールは格別に美味く、寒い時期はおでんを摘みに二時間ばかし話し込んだのだった。